硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)とは
硬膜動静脈瘻は、瘻孔(シャントと言います)ができる部位によって症状が異なります。 海綿静脈洞と呼ばれる眼の奥の場所に瘻孔(シャント)ができた場合は、眼の方に海綿静脈洞から血液が逆流して眼が赤くなったり、眼の奥に痛みが出たり、眼を動かす神経に障害を与えると複視(ものが二重に見える)をきたしたりします。
また、頭の後ろにある静脈洞に瘻孔ができた場合は、耳鳴りで見つかることが多いです。耳の病気と思って耳科を受診される方もおられます。
これだけでも日常生活に支障をきたしますが、最悪の問題は、どの部位にこの病気ができても静脈の流れが悪くなるため、脳浮腫や脳出血を起こすリスクがあります。元気がなくなったり、辻褄の合わない話をしたり、物忘れの症状がでることがあります。
放置して静脈うっ血が増悪してしまうと脳で出血し、頭痛・意識障害・手足の麻痺など重大な後遺症を起こしたり、最悪命に関わることがあるため、治療が必要となります。
無症状で、脳ドックなどで見つかる場合もあります。当院では、脳血管障害のエキスパートが治療の相談に乗りますので、脳ドッグなどで異常を指摘された際にはお気軽に相談ください。
治療
この病気は自然に治ることがあります。そのため無症状で、血液の逆流もなく軽いものであれば、そのまま様子をみます。しかし、消失するまでは、経過観察のためMRI検査が必要です。見た目上は無症状であっても、血液の流れが悪くなっている場合もあります。複視や耳鳴りといった症状があり、検査で脳や目の血管への血液逆流が確認されたものは、症状を改善するために治療が必要です。
治療は原則としてカテーテルによる塞栓術が第1選択となります。特殊な例では、開頭手術やカテーテル治療を合わせた開頭術も選択されます。
脳出血まで至らず逆流によって起きていた耳鳴り・複視・物忘れなどの症状は治療によって改善します。
カテーテルによる塞栓術
治療は血液の逆流を止めるために瘻孔(シャント)を閉塞することです。その方法として、カテーテルという細い管を動静脈瘻のある部分に、足の静脈から逆行するようにもっていき、動静脈瘻がある異常な静脈洞の部分を金属のコイルで詰めてしまいます。動静脈瘻の異常な血管が簡単に見つければ、その点だけを詰めれば治癒できますが、動静脈瘻の異常な部分が複数ある場合などは、広い範囲を詰めなければ治癒できないことがあります。また異常な血管を動脈側から液体塞栓物質を用いて閉塞することを行うこともあります。液体塞栓物質にはNBCAとONYXがあります。
●院長は、ONYXの実施認定資格を有しています。
< ONYX 実施認定資格証 >
それぞれの患者さんの状態によって、治療法が複雑になることがあるため、理解しにくいかもしれません。当院では、脳血管障害のエキスパートが治療相談に乗りますので、お気軽に受診ください。