顔面けいれん、眼瞼けいれん(顔のピクツキ)について
このような症状がありませんか?
疲れていたり、睡眠不足だったりするとまぶたや目のまわりがピクピクする。
症状は出たりでなかったり、緊張するとでたりなどさまざま。
- 光がまぶしい
- まばたきの回数が多くなった
- 片目をつぶる
- 口元がピクピク
- 目が乾いてショボショボ
- 目を開けているのがつらい
- 顔が引きつってこわばってしまう
- 目の下側がピクピクして目が閉じてしまう
顔面痙攣とは何か?
顔面痙攣とは、顔の筋肉が自分の意志に反して動いてしまう状態のことを指します。
この症状は一般的に片側の顔面に現れることが多く、目の周囲から始まり、徐々に口元へと広がっていきます。最初のうちは、まぶたがぴくぴくする程度ですが、次第にあごの下の筋肉もけいれんするようになります。
けいれんの頻度や持続時間は個人差がありますが、日常生活に支障をきたすほど深刻になる場合もあります。
けいれんは最初は軽微なピクピクとした動きから始まることが多いですが、放置すると頻度が増し、けいれんが持続的になることもあります。
女性に多く、過剰なストレスが原因になることもあります。
はじめのうちは光がまぶしかったり目がショボショボしたりしますが進行すると目を開けられなくなったりします。ドライアイの治療を受けたけど良くならないといった方もいます。
顔面痙攣は、腫瘍や血管で顔面神経を圧迫することによって引き起こされることが多く、特に顔面神経が圧迫されると神経が過敏になり、筋肉が不随意に動くようになります。この状態は神経・血管圧迫症候群とも呼ばれます。
引用元:
Vascular compression of the left facial nerve by the anterior inferior cerebellar artery (AICA) within the entry zone of the left facial nerve at the brainstem. CN indicates cranial nerve. Modified and used with permission from Zubay G, Porter RW, Spetzler RF: Transpetrosal approaches. Operative Techniques 4 (1):24-29, 2001
まぶたがぴくぴくと痙攣するミオキミアという生理現象もあります。
顔面けいれんと違って、他の顔面に波及することはありません。顔面けいれんの初期もまぶたのみに限局する場合がありますので、注意が必要です。
睡眠不足やストレス、眼精疲労が原因となります。
セルフケアとしては、十分な睡眠やバランスの取れた食事、規則正しい生活が有効です。
多くは1週間程度で改善しますが、持続する場合や口元にもピクツキが出現した場合は受診して下さい。
顔面痙攣が進行すると、患者は目の周りや口の周りの筋肉が勝手に動くことに悩まされ、視界が遮られたり、話すことが難しくなることがあります。また、けいれんが頻繁に起こると、社会生活や仕事に大きな影響を及ぼすため、早期の診断と治療が必要です。
顔面痙攣の症状と初期兆候
顔面痙攣の主な症状
顔面痙攣は、その発症から進行まで様々な症状を伴います。以下に、顔面痙攣の主な症状を詳しく説明します。
- 1. 目の周りのけいれん(眼瞼けいれん)
- 顔面痙攣の最も一般的な症状は、目の周りの筋肉が不随意に動くことです。このけいれんは、まばたきが頻繁に起こる形で現れ、最初は軽いピクピクとした動きから始まることが多いです。時間が経つにつれて、けいれんの頻度や強度が増し、目を開けているのが難しくなることもあります。これにより、読書やテレビ鑑賞、運転などの日常的な活動が困難になることがあります。
- 2. 口の周りのけいれん
- 顔面痙攣は、口の周りの筋肉にも影響を及ぼします。口の片側が不随意に引きつるような感じになり、話すことや食べることが難しくなることがあります。特に、口を開けたり閉じたりする際にけいれんが強くなることがあり、食事中に飲み物をこぼしたり、発音が不明瞭になることがあります。
- 3. 顔全体のけいれん
- 顔面痙攣が進行すると、顔全体にけいれんが広がることがあります。最初は目や口の周りだけに限られていたけいれんが、頬や額、顎の筋肉にまで及びます。このような広範囲のけいれんは、見た目にも大きな影響を与え、他人からの視線や反応が気になる原因となることがあります。
- 4. 持続的なけいれん
- 初期段階では一時的なけいれんが多いですが、症状が進行するとけいれんが持続的になることがあります。数秒から数分間続くけいれんが頻繁に発生し、これが一日に何度も繰り返されると、患者の生活の質に深刻な影響を与えます。特に、社会的な場面や仕事中に発生する持続的なけいれんは、大きなストレスの原因となります。
- 5. その他の関連症状
- 顔面痙攣に伴うその他の症状として、目の乾燥や疲れ、顔の痛みや違和感などがあります。また、持続的なけいれんが原因で、筋肉の疲労感やこりを感じることもあります。
初期兆候を見逃さないためのポイント
顔面痙攣の初期兆候を早期に発見し、適切な対応を取ることは、症状の進行を防ぐために非常に重要です。以下に、初期兆候を見逃さないための具体的なポイントを詳しく説明します。
- 1. 目の周りのピクピクとした動き
- 最も一般的な初期兆候の一つは、目の周りに現れる軽いピクピクとした動きです。この動きは一時的なものとして感じることが多いですが、頻繁に起こる場合は注意が必要です。例えば、ストレスが溜まったり、疲労が蓄積したりすると、こうしたけいれんが出やすくなります。もし、リラックスしている時にも頻繁に感じる場合は、早めに専門医に相談することが推奨されます。
- 2. 口の周りの軽い引きつり
- 口の片側が軽く引きつるような感覚も、顔面痙攣の初期兆候であることが多いです。特に、笑ったり話したりする時に口元が不自然に動くことに気付いた場合は、注意が必要です。この症状が頻繁に起こる場合、早期に対策を講じることで進行を防ぐことができます。
- 3. 筋肉の違和感や軽い痛み
- 初期の段階では、顔の特定の部分に軽い痛みや違和感を感じることがあります。例えば、目の周りや頬の筋肉が疲れやすくなったり、軽い痛みを伴ったりすることがあります。これらの症状は一過性のものとして見過ごされがちですが、顔面痙攣の兆候である可能性があるため、症状が持続する場合は医師の診察を受けるべきです。
- 4. 瞬きを頻繁にする
- 顔面痙攣の初期兆候として、無意識に瞬きを頻繁にすることがあります。特に、何もしていない時やリラックスしている時に瞬きが多くなる場合は、顔面の筋肉が過敏になっている可能性があります。このような症状を自覚した場合は、専門医に相談することが重要です。
- 5. 顔の片側に違和感を感じる
- 顔面痙攣は通常、顔の片側に現れることが多いため、片側に違和感を感じる場合は特に注意が必要です。例えば、顔の片側だけがピクピクと動いたり、引きつったりする場合は、顔面神経に異常がある可能性があります。このような初期兆候を見逃さず、早めに対応することが重要です。
診断に必要な検査
当院では、MRIによる検査を実施しております。
- MRI(磁気共鳴画像法)
- 顔面を動かす筋肉である顔面神経を評価するためにMRI検査を行います。顔面神経の周囲に血管病変や腫瘍などによる圧迫がないかCISS画像といって確認します。
また顔を動かす顔面神経核がある脳幹や大脳にも病変がないか確認します。
CISS(Constructive Interference I Steady State)とは、水を強調した画像で、優れた空間分解脳があり、拍動している脳脊髄液の流れのアーチファクトを抑えた画像です。脳脊髄液お高信号とすることで、脳槽内の血管や神経などの微細構造を明瞭に描出できます。
治療法
経過観察
顔面けいれんは生命に関わる病気ではないので、けいれんが軽度で患者さんが気にならないようなら、経過観察とすることもあります。 その場合には、顔に冷気が当たらないようにすること、睡眠不足やストレスを避けること、禁煙や禁酒などが悪化の防止になります。
薬物療法
残念ながら薬のみでは完治することはありません。症状緩和のために、神経の過剰な興奮を抑制するためにテグレトール(カルバマゼピン)などの抗てんかん薬を使用します。
副作用として、肝機能障害、ふらつき・眠気、皮疹などがあります。副作用は重篤になる場合がありますので、症状が出現時は、服用を中断し、受診してください。
1. ボトックス(A型ポツリヌス毒素製剤)による治療
ボツリヌス毒素注射は、顔面痙攣の治療において最も効果的で一般的な方法の一つです。この治療法は、ボツリヌス毒素を顔の特定の筋肉に注射することで、筋肉の異常な収縮を抑制します。根本的な治療法ではありませんが、症状の緩和には有効です。
- 【効果】
- ボツリヌス毒素は、神経から筋肉への信号伝達をブロックすることで、筋肉の収縮を抑制します。これにより、けいれんを緩和し、症状の改善が期待できます。効果は通常数日から1週間で現れ、3~4ヶ月間持続します。
- 【副作用】
- ボツリヌス毒素注射の主な副作用には、注射部位の痛み、腫れ、赤み、軽い筋力低下などがあります。まれに、目の周りの注射が視覚の一時的なぼやけを引き起こすことがあります。重篤な副作用はまれですが、異常が現れた場合は速やかに医師に相談することが重要です。
2. 抗けいれん薬
抗けいれん薬は、顔面痙攣の症状を抑えるために使用されることがあります。これらの薬は、神経の異常な活動を抑制し、けいれんを減少させます。
- 【効果】
- 抗けいれん薬は、神経の過剰な興奮を抑えることで、けいれんを軽減します。代表的な抗けいれん薬には、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリンなどがあります。これらの薬は、三叉神経痛やてんかんの治療にも使用されます。
- 【使用法】
- 抗けいれん薬は、錠剤やカプセルの形で経口投与されます。医師の指示に従って、一定の時間間隔で服用することが重要です。薬の効果が現れるまでに数週間かかることがあり、最適な効果を得るためには継続的な服用が必要です。
- 【副作用】
- 抗けいれん薬の主な副作用には、めまい、眠気、疲労感、消化不良、体重増加などがあります。まれに、アレルギー反応や重篤な副作用が発生することがあります。副作用が現れた場合は、医師に相談し、適切な対応を取ることが重要です。
3. 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬物)
抗不安薬は、ストレスや不安が顔面痙攣の原因となっている場合に使用されます。これらの薬は、筋肉の緊張を緩和し、けいれんを減少させます。
- 【効果】
- 抗不安薬は、中枢神経系に作用して不安を軽減し、筋肉の緊張を和らげます。これにより、けいれんの頻度と強度が減少します。代表的な抗不安薬には、ジアゼパム、ロラゼパム、クロナゼパムなどがあります。
- 【使用法】
- 抗不安薬は、錠剤やカプセルの形で経口投与されます。医師の指示に従って、一定の時間間隔で服用することが重要です。短期間の使用が推奨され、長期使用は依存のリスクがあるため注意が必要です。
- 【副作用】
- 抗不安薬の主な副作用には、眠気、めまい、筋力低下、集中力の低下などがあります。長期間使用すると、依存症や離脱症状が発生することがあります。副作用が現れた場合は、医師に相談し、適切な対応を取ることが重要です。
手術
顔面神経の圧迫を解消するための根治的治療として、開頭手術が行われます。手術は耳の後ろを切開し、小脳を引っ張って顔面神経周囲の責任血管を剥離し固定する方法です。手術の成功率は80~90%ですが、数%の患者で再発します。
手術のリスクとして、聴力障害があり、経験豊富な術者でも3-5%の確率で発生します。このリスクを軽減するため、手術中に聴性脳幹反応(ABR)を監視します。また、顔面麻痺や嚥下障害などの可能性もあります。
一般的な手術のリスクとして、出血、脳梗塞、脳浮腫、髄液漏などが挙げられます。特に重要な静脈損傷は生命の危険に繋がることがありますが、経験豊富な術者による手術ではその可能性は低いです。また、全身麻酔や長時間の手術による合併症もあります。
患者さんの希望に応じて、適切な病院を紹介することが可能です。
実績が多い連携病院としては、当院から近隣にある大阪医療センター、北野病院、藍の都脳神経外科病院などがあります。
治療法の選択について
当院ではチーム医療として複数医師の体制で診療を行っています。個々の患者さんに応じて、適切な治療を提案できるようにしています。経験豊富な医師によるボトックス治療や手術の相談も可能です。不安なことや不明な点はお気軽にご相談ください。
よくある質問
- Q) 顔面けいれんはどの科に相談するべきですか?
-
A)
脳神経外科での受診が重要です。
脳神経外科では、顔面けいれんの内科的治療から手術まで幅広い治療が可能です。特に、顔面けいれんの原因が脳内部の神経に関連しているため、脳神経外科の受診が早期発見・治療に繋がります。
- Q) 手術が必要な場合の連携病院はどこですか?
-
A)
患者さんの希望に応じて、適切な病院を紹介することが可能です。
実績が多い連携病院としては、当院から近隣にある国立大阪病院、北野病院、済生会野江病院、藍の都脳神経外科病院などがあります。
- Q) MRI検査の費用はいくらですか?
- A) 健康保険(3割負担)をご利用の場合、MRI検査の患者さん負担額は約6,000円~7,000円が目安です。