
この記事で分かること
- 熱中症では、めまい・立ちくらみは軽い段階(Ⅰ度)、頭痛は中等症(Ⅱ度)のサインです
- 「突然の激しい頭痛」「手足のまひ・ろれつが回らない」は熱中症らしくない症状で、脳の病気を疑うサインです
- 涼しい場所で冷やして水分をとっても良くならないとき、救急車を呼ぶ3つの目安をお伝えします
うだるような暑さのなか、「頭がズキズキする」「立ち上がるとクラッとする」。そんなとき、多くの方は「熱中症かな」と考えると思います。実際、頭痛やめまいは熱中症のとても多いサインです。
ただ、ごくまれにですが、その頭痛やめまいの奥に、脳の病気が隠れていることがあります。夏でも脳梗塞やくも膜下出血は起こります。「暑さのせい」と思い込んで様子を見ているうちに、受診が遅れてしまうことは避けたいものです。
この記事では、熱中症による頭痛・めまいがどの段階のサインなのかを整理したうえで、脳神経外科の視点から「これは脳の病気を疑ったほうがよい」という見分け方と、受診・救急の目安をお伝えします。予防や夏の頭痛全般の対処法については、別の記事でくわしく解説していますので、あわせてご覧ください。
本記事は「見分け方と受診の目安」に絞ってお伝えします。夏の頭痛の原因と予防法は「夏に起こる頭痛の原因は?対処法を解説」もご参照ください。
目次
大阪で夏の頭痛・めまいのご相談は、いわた脳神経外科クリニックの頭痛外来へお気軽にどうぞ。
1. 夏の頭痛・めまいと熱中症
暑い季節になると、頭痛やめまいを訴えて来院される方が増えます。その背景の多くにあるのが熱中症です。汗で体の水分と塩分が失われ、体温が上がり、脳への血流が保ちにくくなることが重なって、頭痛・めまい・吐き気といった症状につながると考えられています。
熱中症は決して「屋外で運動する人だけの病気」ではありません。総務省消防庁(2025)によると、2025年5〜9月に熱中症で救急搬送された方は10万510人と、調査開始以来はじめて10万人を超えました。搬送がもっとも多かったのは7月で、発生場所は住居が全体の約38%と最多、65歳以上の高齢者が約57%を占めています。家のなかで過ごしていても、誰にでも起こりうる身近な不調です。
2025年 月別の熱中症救急搬送人員(総務省消防庁 2025)。7月にピークを迎えます。
| 月 | 救急搬送人員 | 人数 |
|---|---|---|
| 5月 | 2,614人 | |
| 6月 | 17,229人 | |
| 7月 | 39,375人 | |
| 8月 | 31,526人 | |
| 9月 | 9,766人 |
頭痛やめまいは、熱中症の代表的なサインです。まずは涼しい場所で体を冷やし、水分・塩分をとることが基本になります。予防や生活の工夫については「夏に起こる頭痛の原因は?対処法を解説」でくわしく紹介しています。
2. 重症度と症状のサイン
熱中症は、症状の重さによってⅠ度(軽症)からⅢ度(重症)に分けられます。環境省(2022)の熱中症環境保健マニュアルをもとに、頭痛・めまいがどの段階のサインなのかを整理します。判断のいちばんの決め手は「意識がしっかりしているかどうか」です。少しでも意識がおかしいと感じたら、Ⅱ度以上と考えて対応します。
※スマホでは横スクロールできます
| 重症度 | 主な症状 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| Ⅰ度(軽症) | 立ちくらみ・めまい、こむら返り、手足のしびれ、大量の汗(意識ははっきりしている) | 涼しい場所で休み、水分・塩分をとる |
| Ⅱ度(中等症) | 頭痛、吐き気・嘔吐、体のだるさ・力が入らない、「なんとなく意識がおかしい」 | 早めに医療機関を受診する |
| Ⅲ度(重症) | 意識障害、けいれん、まっすぐ歩けない、体が熱い、汗が出ない | ためらわず救急要請(119番) |
めまい・立ちくらみは「Ⅰ度」のサイン
暑い場所で立ち上がったときにクラッとする、目の前が暗くなる——これは熱失神とも呼ばれ、Ⅰ度にあたります。暑さで皮膚の血管が広がり、血液が手足のほうにたまることで、脳へ向かう血流が一時的に減って起こると考えられています。多くは横になって涼み、水分をとることで回復します。
頭痛・吐き気は「Ⅱ度」のサイン
頭痛や吐き気、強いだるさが出てきたら、中等症のⅡ度にあたります。この段階は「そろそろ体が悲鳴を上げている」状態です。がまんして動き続けず、涼しい場所で休んでも良くならないときは、早めに医療機関を受診してください。
意識障害・けいれんは「Ⅲ度」
呼びかけへの反応がおかしい、けいれんしている、体が熱いのに汗が出ない、まっすぐ歩けない——これらは重症のⅢ度で、命にかかわる状態です。日本救急医学会(2024)の熱中症診療ガイドラインでも、この段階は入院・集中治療の対象とされています。ためらわず119番を呼んでください。
重い熱射病では、体温が40℃を超えると脳が特に影響を受けやすく、回復後も神経の症状が残ることがあると報告されています(Yoneda et al. 2024)。高温下での作業で熱射病から脳症をきたし、神経症状が残った症例の報告もあります(Harale et al. 2024)。だからこそ、早めに涼しい場所で体を冷やし、重い段階に進める前に対応することが大切です。
「これは熱中症だろうか、それとも別の病気だろうか」と迷うときは、ご相談ください。
3. 脳の病気の見分け方
ここが、脳神経外科としていちばんお伝えしたいところです。熱中症の頭痛・めまいと、脳の病気による頭痛・めまいは、症状の「出方」に違いがあります。次のようなサインは熱中症らしくなく、脳の病気を疑う目安になります。
熱中症らしくない「危険なサイン」
ひとつは、突然おそってくる、これまで経験したことのない激しい頭痛です。バットで殴られたような、と表現されることもあり、くも膜下出血で起こることがあります。もうひとつは、片側の手足のまひ・しびれ、ろれつが回らない、顔の片側がゆがむといった症状です。これらは脳梗塞や脳出血で起こりやすく、熱中症では通常みられません。
脳卒中を見分ける合言葉として、日本脳卒中協会(2024)などが普及させている「ACT FAST」が知られています。暑い時期でも、次のサインがあれば熱中症より脳卒中を優先して考え、すぐに119番を呼んでください。
| 合言葉 | みるポイント |
|---|---|
| F(Face・顔) | 笑うと顔の片側がゆがむ・下がる |
| A(Arm・腕) | 両腕を上げると片方だけ下がる・上がらない |
| S(Speech・言葉) | ろれつが回らない・言葉が出てこない |
| T(Time・時間) | 発症した時刻を確認し、すぐ119番 |
危険な頭痛の見分け方については「くも膜下出血の「見逃し」はなぜ起きる?」で、めまいと脳卒中の関係は「突然のふらつきやめまいは脳卒中の前兆?」でくわしく解説しています。
夏でも脳梗塞は起こります
脳梗塞は冬の病気というイメージが強いかもしれません。たしかに心臓が原因のタイプは冬に多い傾向があります。一方で、日本人に多いラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞は、脱水が引き金になることがあり、暑い季節も油断できません。
国立循環器病研究センター(2018)も、夏の脱水と脳梗塞の関わりに注意を呼びかけています。とくに就寝中は水分をとれず脱水に傾きやすいため、脳梗塞は夜間から早朝に起こりやすいことが知られています。
水分補給による予防は「水分補給が脳梗塞の予防になる?」もご覧ください。どの科を受診すればよいか迷うめまいについては「めまいの放置は危険?何科を受診すべきか」が参考になります。
4. 応急処置と受診の目安
熱中症かなと思ったら、まずできることがあります。あわてず、次の順番で対応してください。
まずは涼しい場所で冷やす
風通しのよい日陰や、冷房の効いた室内へ移りましょう。衣服をゆるめ、体を冷やします。環境省(2022)のマニュアルでは、太い血管が通る首の付け根の両側・脇の下・脚の付け根を冷やすと効率よく体温を下げられるとされています。自分で飲めるようなら、水分と塩分を補います。大量に汗をかいたときは、経口補水液やスポーツドリンクが適しています。手元になければ、水1リットルに食塩1〜2gを溶かしたもので代用できます。
救急車を呼ぶ目安は3つです。自分で水分を飲めない、意識がおかしい、けいれんしている——このいずれかがあれば、すぐに119番を呼んでください。呼ぶかどうか迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
「冷やしても治らない頭痛」は受診を
涼しい場所で休み、水分をとっても頭痛やめまいが良くならない、あるいはくり返すときは、体からの相談のサインです。頭痛薬を飲み続けて様子を見るよりも、一度診察を受けていただくほうが安心です。前の章でお伝えした脳のサインがなくても、「いつもと違う」と感じたら、遠慮なくご相談ください。
夏の頭痛・めまいが続くとき、脳の状態が気になるときは、頭痛外来でご相談いただけます。
5. よくある質問
Q. 熱中症の頭痛は、どのくらいで受診すればよいですか?
頭痛は中等症(Ⅱ度)のサインです。涼しい場所で休み、水分・塩分をとっても良くならない、くり返す、吐き気を伴うといったときは、早めの受診をおすすめします。意識がおかしい・けいれんがあるときは、受診より先に119番を呼んでください。
Q. 熱中症のめまいと、脳の病気のめまいはどう見分けますか?
随伴する症状がポイントです。手足のまひ・しびれ、ろれつが回らない、顔のゆがみ、突然の激しい頭痛を伴うめまいは、脳の病気を疑うサインです。暑い時期でもこうした症状があれば、すぐに119番を呼んでください。
Q. 熱中症の頭痛に、市販の痛み止めは効きますか?
熱中症の頭痛は、涼しい場所で体を冷やし水分・塩分を補うことが基本で、環境を整えることが先決です。痛み止めだけで様子を見て根本の対処が遅れると、かえって長引くことがあります。頻回に痛み止めが必要なときは、一度ご相談ください。
Q. 高齢の家族が夏にぼんやりしています。熱中症でしょうか?
意識がなんとなくおかしいときは、熱中症では中等症(Ⅱ度)以上のサインで、脳の病気の可能性もあります。ご高齢の方はのどの渇きを感じにくく脱水に気づきにくいため、早めの声かけと受診が大切です。反応がおかしい・けいれんがあれば119番を呼んでください。
6. まとめ
- 熱中症では、めまい・立ちくらみは軽症(Ⅰ度)、頭痛・吐き気は中等症(Ⅱ度)のサインです。
- 突然の激しい頭痛、手足のまひ・ろれつが回らない・顔のゆがみは熱中症らしくなく、脳の病気(脳卒中)を疑うサインです。
- 夏でも脱水をきっかけに脳梗塞は起こり、夜間から早朝に多いことが知られています。
- まず涼しい場所で首・脇・脚の付け根を冷やし、水分・塩分を補給します。自分で水が飲めない・意識がおかしい・けいれんがあれば119番を呼びます。
「暑さのせい」と思っていた頭痛やめまいの奥に、脳の病気が隠れていることがあります。いつもと違うと感じたら、どうか一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。
お問い合わせ・ご予約
大阪で夏の頭痛・めまい、脳の病気が気になる方は、いわた脳神経外科クリニックへお気軽にご相談ください。ご予約は、下記から可能です。
当院公式LINEにてご質問等もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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重要:本記事の位置づけ(医療情報として)
- 本記事は、公的資料や研究報告に基づく「一般的な医療情報」です。
- 特定の治療を推奨・保証するものではありません。症状の感じ方や経過には個人差があります。
- 実際の診断・治療は、症状・既往歴などを踏まえて医師が判断します。気になる症状があるときは受診してください。
参考文献
- 環境省 2022, 熱中症環境保健マニュアル2022, 環境省, viewed 29 July 2026, <https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php>.
- 国立循環器病研究センター 2018, 脳梗塞は冬の病気?夏の病気?, 国立循環器病研究センター, viewed 29 July 2026, <https://www.ncvc.go.jp/pr/release/20180425_press/>.
- 総務省消防庁 2025, 令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況 確定値, 総務省消防庁, viewed 29 July 2026, <https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r7/heatstroke_nenpou_r7.pdf>.
- 日本救急医学会 2024, 熱中症診療ガイドライン2024, 日本救急医学会, viewed 29 July 2026, <https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf>.
- 日本脳卒中協会 2024, 脳卒中の予防・発症時の対応, 日本脳卒中協会, viewed 29 July 2026, <https://www.jsts.gr.jp/common/asset/pdf/onset.pdf>.
- Harale, M, Yekkaluru, S, Pancholi, T, Oommen, AB & Jagirdar, A 2024, ‘Exertional heatstroke encephalopathy with chronic neurological deficit’, Cureus, vol. 16, no. 10, e72257, DOI 10.7759/cureus.72257, viewed 29 July 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39583393/>.
- Yoneda, K, Hosomi, S, Ito, H, Togami, Y, Oda, S, Matsumoto, H, Shimazaki, J, Ogura, H & Oda, J 2024, ‘How can heatstroke damage the brain? A mini review’, Frontiers in Neuroscience, vol. 18, 1437216, DOI 10.3389/fnins.2024.1437216, viewed 29 July 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39450121/>.















