脱水と脳梗塞 夏も冬も要注意 寝る前の一杯で防ぐ

この記事で分かること

  • 脳梗塞は病型によって多い季節が異なり、脱水が引き金になるタイプは夏も注意が必要です
  • 脱水で血液が濃くなると血管が詰まりやすく、就寝中〜早朝はとくに起こりやすい時間帯です
  • 「寝る前・起きたらコップ1杯」の習慣と、受診・救急の目安(FAST)をお伝えします

脳梗塞は、脳の血管が詰まって血流が途絶える病気です。一度起こると後遺症が残りやすく、日常生活に大きな影響を与えることがあります。忙しい毎日のなかで、私たちは知らないうちに脱水に傾きがちで、これが脳梗塞のリスクを高める一因になります。

「脳梗塞は寒い冬の病気」と思われがちですが、実は季節を問わず注意が必要です。とくにご高齢のご家族がいる方は、「この暑さで水分は足りているだろうか」と気になる場面もあるのではないでしょうか。

この記事では、脳梗塞と季節の関係、脱水がなぜ脳梗塞につながるのか、そして今日からできる水分補給の習慣と受診の目安を、脳神経外科の視点でお伝えします。

夏の頭痛・めまいと脳の病気の見分けは「熱中症の頭痛・めまいと脳の病気の見分け方」でも解説しています。あわせてご覧ください。


目次



大阪で脳梗塞や脳の健康が気になる方は、いわた脳神経外科クリニックへお気軽にご相談ください。

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1. 脳梗塞と季節の関係

脳梗塞は脳卒中の約7割を占め、片側の手足のまひや言語障害などの後遺症が残ることがある病気です。「冬に多い」というイメージは、半分だけ正しいといえます。脳梗塞にはいくつかのタイプ(病型)があり、多く起こる季節が異なるためです。

国立循環器病研究センター(2018)は、急性期脳梗塞の患者を解析し、心臓が原因で起こる心原性脳塞栓症は冬に多い一方、日本人に多いラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞は脱水が引き金になりやすく、暑い季節も注意が必要だと報告しています。冬は寒暖差による血圧変動やヒートショック、夏は脱水と、季節ごとに気をつけたいポイントがあります。

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脳梗塞のタイプ 多い季節 背景
心原性脳塞栓症 冬に多い傾向 寒暖差・血圧変動、心房細動(不整脈)
ラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞 夏も注意 脱水による血液の濃縮が引き金になりやすい


2. なぜ脱水が招くのか

体内の水分が不足すると、血液中の水分も減り、血液が濃く、流れにくくなります。いわゆる「どろどろ血」の状態です。すると血液の流れが滞り、脳の血管で血栓(血のかたまり)ができやすくなると考えられています。

① 脱水(水分が減る) ② 血液が濃くなる(流れにくい) ③ 血管が詰まりやすくなる

脱水と脳卒中の関係は、研究でも整理が進んでいます。Bahouth et al.(2018)は25の研究・急性脳卒中患者8,699人分を系統的にまとめ、脱水が転帰(回復の見通し)の悪さと関連しうることを報告しました。またShi et al.(2019)は、脱水が発症早期の症状悪化と独立して関連することを示しています。とくにご高齢の方は体内の水分が少なく、のどの渇きも感じにくいため、意識的な水分補給が大切です。



3. 夜間・早朝が危ない

脱水による脳梗塞で、とくに気をつけたいのが夜間から早朝の時間帯です。私たちは寝ている間にも汗をかき、水分をとれないため、明け方にかけて体は脱水に傾きやすくなります。

さらに、睡眠中は血圧が下がって血液の流れがゆるやかになります。国立循環器病研究センター(2018)も、夜間は血流が滞って血管が詰まりやすいと説明しています。実際、脳梗塞は夜間から早朝に起こり、朝起きたときに症状に気づく「起床時発症」のかたちをとることがあります。

だからこそ効くのが「寝る前と起きたらコップ1杯」の習慣です。就寝前に水分をとり、枕元に水を置いておくと、夜間の脱水をやわらげる助けになります。


気になる症状や脳の健康については、大阪のいわた脳神経外科クリニックにご相談ください。

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4. 脳梗塞を防ぐ水分習慣

いちばんの対策は、のどが渇く前にこまめに水分をとることです。のどの渇きを感じたときには、すでに軽い脱水が始まっていることがあります。起床時・食事の前後・運動の前後・入浴の前後・就寝前は、とくに水分が不足しやすいタイミングです。

こまめな水分補給のイメージ

飲み方は、一度にたくさんではなく、コップ1杯ほどをこまめに。水や白湯、麦茶などが適しています。コーヒーや紅茶などカフェインの多い飲み物や、アルコールには利尿作用があり、水分補給には向きません。大量に汗をかいたときは、環境省(2022)がすすめるように経口補水液で塩分も補うとよいでしょう。尿の色が濃いときは脱水のサインなので、水分を多めにとってください。

ただし、心不全や腎臓の病気などで水分の量を制限されている方は、自己判断で増やさず、主治医の指示を優先してください。水だけを大量にとると、血液中の塩分が薄まることもあります。



5. 水分以外の予防

水分補給は大切ですが、それだけでは十分ではありません。脳梗塞のリスクを総合的に減らすには、生活習慣全体を整えることが役立ちます。


持病の管理を続ける

高血圧・糖尿病・脂質異常症などは、脳梗塞の代表的なリスクです。血圧が高め(上が140、下が90を超える)の方は主治医に相談を。心房細動などの不整脈があると血栓ができやすくなります。自己判断で薬を中止したり量を変えたりせず、気になることは主治医に相談してください。


食事・運動・禁煙・睡眠

塩分を控えめにし、野菜や魚(とくに青魚)をバランスよくとる食事が向いています。ウォーキングなどの適度な運動、禁煙、節酒も血管を守る助けになります。慢性的なストレスや睡眠不足は血圧を上げやすいため、休息と睡眠を整えることも大切です。


冬のヒートショックにも注意

冬は、暖かい部屋と寒い浴室・トイレの温度差で血圧が急に変動する「ヒートショック」に注意が必要です。脱衣所や浴室を事前に暖め、入浴前にコップ1杯の水を飲むとよいでしょう。夏の脱水とあわせ、季節ごとの備えが脳を守ります。



6. この症状は救急?FAST

脳梗塞は、いかに早く治療を始められるかが回復を左右します。次のようなサインがあれば、脱水や暑さ・寒さのせいと考えず、脳梗塞を疑ってすぐに119番を呼んでください。日本脳卒中協会(2024)などが広める合言葉「ACT FAST」が役立ちます。

合言葉 みるポイント
F(Face・顔) 笑うと顔の片側がゆがむ・下がる
A(Arm・腕) 両腕を上げると片方だけ下がる
S(Speech・言葉) ろれつが回らない・言葉が出ない
T(Time・時間) 発症した時刻を確認し、すぐ119番

脳梗塞の前ぶれや、めまい・ふらつきとの関係は「突然のふらつきやめまいは脳卒中の前兆?」、脳梗塞の初期症状は「脳梗塞の前兆・初期症状」でくわしく解説しています。



7. よくある質問

Q. 脳梗塞は冬の病気ではないのですか?

心臓が原因のタイプは冬に多い一方、日本人に多いラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞は脱水が引き金になりやすく、夏も注意が必要です。季節を問わず、水分補給と生活習慣の管理が大切です。

Q. 1日にどのくらい水分をとればよいですか?

環境省は、飲み物として1日およそ1.2リットルを目安としています。一度に多く飲むより、コップ1杯ほどをこまめにとるのが効果的です。ただし水分制限がある方は主治医の指示を優先してください。

Q. 寝る前に水を飲むと、夜中にトイレで困りませんか?

心配な方はコップ1杯程度から始めるとよいでしょう。夜間から早朝は脱水に傾きやすい時間帯のため、就寝前と起床時の水分は大切です。量や回数に不安があれば、主治医にご相談ください。

Q. 高齢の親が夏に水をあまり飲みません。どうすれば?

ご高齢の方はのどの渇きを感じにくく、脱水に気づきにくい傾向があります。時間を決めて声かけをし、枕元やテーブルに水を置くとよいでしょう。顔のゆがみやろれつの異常があれば、すぐ119番を呼んでください。



8. まとめ

  1. 脳梗塞は病型で多い季節が異なり、脱水が引き金になるタイプは夏も注意が必要です。
  2. 脱水で血液が濃くなると、脳の血管が詰まりやすくなります。
  3. 就寝中〜早朝は脱水に傾きやすく、脳梗塞が起こりやすい時間帯です。
  4. 「寝る前・起きたらコップ1杯」を習慣に。顔のゆがみ・腕の脱力・言葉の異常があれば、すぐ119番を呼んでください。

脱水は、気づかないうちに脳の血管に負担をかけます。今日の一杯の積み重ねが、未来の脳を守ります。気になる症状があれば、どうかお気軽にご相談ください。



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重要:本記事の位置づけ(医療情報として)

  • 本記事は、公的資料や研究報告に基づく「一般的な医療情報」です。
  • 特定の治療を推奨・保証するものではありません。症状の感じ方や経過には個人差があります。
  • 実際の診断・治療は、症状・既往歴などを踏まえて医師が判断します。気になる症状があるときは受診してください。
この記事を書いた先生のプロフィール
いわた脳神経外科クリニック 院長 岩田 亮一
医師・医学博士/日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/日本脳神経血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医/日本頭痛学会認定 頭痛専門医
(日本脳卒中学会・日本認知症学会 所属)

脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。
脳血管内治療(カテーテル治療)の専門医でもあり、くも膜下出血や脳動脈解離など「危険な頭痛」の鑑別・初期対応にも力を入れています。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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参考文献

  1. 環境省 2022, 熱中症環境保健マニュアル2022, 環境省, viewed 30 July 2026, <https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php>.
  2. 国立循環器病研究センター 2018, 脳梗塞は冬の病気?夏の病気?, 国立循環器病研究センター, viewed 30 July 2026, <https://www.ncvc.go.jp/pr/release/20180425_press/>.
  3. 日本脳卒中協会 2024, 脳卒中の予防・発症時の対応, 日本脳卒中協会, viewed 30 July 2026, <https://www.jsts.gr.jp/common/asset/pdf/onset.pdf>.
  4. Bahouth, MN, Gottesman, RF & Szanton, SL 2018, ‘Primary ‘dehydration’ and acute stroke: a systematic research review’, Journal of Neurology, vol. 265, no. 10, pp. 2167-2181, DOI 10.1007/s00415-018-8799-6, viewed 30 July 2026, <https://link.springer.com/article/10.1007/s00415-018-8799-6>.
  5. Shi, Z, Zheng, WC, Yang, H, Fu, XL, Cheng, WY & Yuan, WJ 2019, ‘Contribution of dehydration to END in acute ischemic stroke not mediated via coagulation activation’, Brain and Behavior, vol. 9, no. 6, e01301, DOI 10.1002/brb3.1301, viewed 30 July 2026, <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6576170/>.