
この記事で分かること
- 強い片頭痛が72時間を超えて続く状態は「片頭痛発作重積」と呼ばれ、医療機関での治療が必要になることがあります
- まず確かめたいのは「いつもの片頭痛と同じかどうか」。突然の激しい痛みや発熱、手足の麻痺があれば救急へ
- 一度起きた方は繰り返すこともあるため、治まったあとに薬の使い方と予防治療を見直しておくことが大切です
「いつもなら1日で治まるのに、今回は3日目になっても痛い」「薬を飲んでも少し楽になるだけで、また戻ってくる」。片頭痛をお持ちの方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
片頭痛の発作には、おおよその「長さ」の目安があります。それを大きく超えて続くときは、ふだんの対処とは別の考え方が必要になります。
この記事では、3日以上続く片頭痛を「どう見分け、いつ受診し、どう繰り返さないか」という順番で、国際頭痛分類と日本の診療ガイドラインをもとに整理します。
本記事は、国際的な診断基準や診療ガイドライン、研究報告にもとづく一般的な医療情報です。診断・治療は症状や経過をふまえて医師が判断します。3日以上続く頭痛には片頭痛以外の原因もあり、ここでご紹介する内容がそのまま当てはまるとは限りません。
目次
片頭痛が長引いてつらいときは、いわた脳神経外科クリニックの頭痛外来へご相談ください。
はじめて受診される方
当院に通院中の方(頭痛再診)
1. 片頭痛の「長さ」の目安
国際頭痛学会の診断基準(国際頭痛分類 第3版)では、片頭痛の発作は、治療しなかった場合や治療が効かなかった場合に4〜72時間続くものとされています(Headache Classification Committee of the International Headache Society 2018)。72時間は、ちょうど3日です。
この上限を超えて、日常生活が送れないほど強い片頭痛が72時間を超えて続く状態を、片頭痛発作重積(へんずつう ほっさ じゅうせき)と呼びます。日本の『頭痛の診療ガイドライン2021』も、同じ定義を採用しています(日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 2021)。
片頭痛発作重積と考えるときの目安
- もともと片頭痛があり、痛み方はいつもの発作と同じ
- 違うのは長さと強さだけ:72時間を超えて続き、日常生活に支障が出るほどつらい
- ほかの病気では説明がつかない
「少し楽になった時間」があっても、続いていると考えます
患者さんがいちばん迷われるのが、ここです。「薬を飲んだら半日くらい楽だった」「寝たら少しましになった」。そうした時間があると、「発作が一度終わって、また始まった」と考えたくなります。
国際頭痛分類では、薬や睡眠によって痛みが和らいだ時間が12時間以内であれば、発作は続いているものとして扱うと注記されています(Headache Classification Committee of the International Headache Society 2018)。つまり、途中で少し楽になっても、全体として3日を超えていれば「長引いている」と考えてよい、ということです。
一方、日常生活に支障が出るほどではない程度の長引きは、別の区分(片頭痛の疑い)に分けられます。長さと強さの両方がそろったときの言葉だと覚えておいてください。
2. どんな人に起こりやすいか
片頭痛発作重積は、頻度の高いものではありません。フランスの大学病院の専門外来で11年間の受診記録を調べた研究では、8,821人の患者さんのうち、片頭痛発作重積が確認されたのはわずか20人あまりでした(Beltramone & Donnet 2014)。専門外来に来られる方のなかでも、まれな状態だということです。
この研究では、引き金になった出来事についても調べられています。
| 報告されたこと | 割合など |
|---|---|
| 引き金として多かったもの:ストレス | 68.8% |
| 引き金として多かったもの:月経 | 31.3% |
| もともとの片頭痛の頻度 | 少ない方に多い |
| 再び起きた方 | 8人 |
注目したいのは、ふだんの発作が少ない方に起こりやすかったという点です。「たまにしか片頭痛が来ないから大丈夫」とは限りません。また、一度起きた方のなかに、再び起きた方が少なくなかったことも報告されています(Beltramone & Donnet 2014)。
月経との関係が気になる方は、月経関連片頭痛の記事もあわせてご覧ください。
薬の使いすぎが隠れていることがあります
国際頭痛分類には、もうひとつ大事な注記があります。片頭痛発作重積のように見える頭痛は、痛み止めの使いすぎが原因になっていることが少なくないというものです(Headache Classification Committee of the International Headache Society 2018)。
痛み止めを月に10〜15日以上(薬の種類によって基準が異なります)使う状態が3か月を超えて続くと、薬そのものが頭痛を長引かせる「薬剤の使用過多による頭痛」が起こることがあります。この場合は、発作を止める治療だけでなく、薬の使い方そのものを見直すことが治療の中心になります。詳しくは市販薬の使いすぎと頭痛の記事で解説しています。
「いつもと長さが違う」と感じたら、早めにご相談ください。
はじめて受診される方
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3. 先に確かめたい危険な頭痛
頭痛が何日も続くとき、最初に確かめるべきことは「片頭痛かどうか」です。日本の診療ガイドラインも、片頭痛の重い発作や発作重積の治療では、まず片頭痛以外の原因による頭痛(二次性頭痛)を除外することを、強く推奨しています(日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 2021)。
次のような特徴がある場合は、片頭痛が長引いているのではなく、別の病気が隠れている可能性を考えます。国際的に使われている危険な頭痛のチェックリストをもとに、代表的なものを挙げます(Do et al. 2019)。
すぐに医療機関へ(夜間・休日は救急へ)
- 突然、これまでに経験したことのない激しい痛みが始まった
- 発熱がある、首が硬くて前に曲げにくい
- 手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、ものが二重に見える・見えにくい
- 意識がぼんやりする
- 頭を打った後から始まった
- 妊娠中・出産後に始まった
- 50歳を過ぎてから初めてこのような頭痛が出た
- いつもの片頭痛と痛み方や場所が明らかに違う
迷ったときは、大阪府では救急安心センターおおさか(#7119)に電話で相談できます。救急車を呼ぶべきか、すぐに受診すべきかを判断する手助けをしてもらえます。
これらに当てはまらず、「痛み方はいつもの片頭痛と同じで、長さだけが違う」という場合でも、3日を超えて続くときは受診をおすすめします。脱水や、薬の使いすぎによる頭痛が重なっていることがあるためです。
4. 医療機関で行う治療
片頭痛発作重積については、大規模な研究や比較試験がありません。そのため、救急外来などでの片頭痛治療の研究をもとに、日本の診療ガイドラインは次のような進め方を示しています(日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 2021)。
| 治療 | 目的 |
|---|---|
| 二次性頭痛の除外 | ほかの病気が隠れていないかを最初に確かめる |
| 点滴(補液) | 吐き気や嘔吐で失われた水分を補い、薬の副作用に備える |
| 吐き気止め | 吐き気をおさえる。片頭痛の痛みにも効果が報告されている薬がある |
| トリプタンの注射 | 片頭痛の発作を止める薬(スマトリプタン)を皮下注射で使う |
| ステロイド | 長引いた発作や、治療後の再燃をおさえる選択肢のひとつ |
ガイドラインで、二次性頭痛の除外と点滴による補液は「強い推奨」、薬による治療は「弱い推奨」とされています。どの薬をどれだけ使うかは、症状や持病、それまでに飲んだ薬をふまえて医師が判断します。
受診のときに伝えていただきたいこと
- いつから痛いか(何日目か)
- この間に飲んだ薬の名前と回数(市販薬も含めて)
- 吐き気や嘔吐があるか、水分がとれているか
- いつもの片頭痛と違う点があるか
薬の箱や、お薬手帳をそのまま持ってきていただくのが確実です。
とくに飲んだ薬の記録は大切です。トリプタンには1日に使える量の上限があり、すでに何回使ったかによって、次に選べる治療が変わるためです。
長引く片頭痛は、我慢を続けずにご相談ください。
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当院に通院中の方(頭痛再診)
5. 家での過ごし方と再発予防
受診までのあいだ、あるいは受診したあとのご自宅での過ごし方です。
| やってみてよいこと | 避けたいこと |
|---|---|
| 暗く静かな部屋で横になる | 効かない痛み止めを、間隔を詰めて重ねて飲む |
| 少しずつこまめに水分をとる | 吐いて水分がとれないまま様子を見続ける |
| 飲んだ薬と時刻をメモしておく | 種類の違う市販薬を次々に試す |
| 頭や首を冷やす(心地よい範囲で) | 「もう少し待てば治まる」と4日、5日と我慢する |
一度起きた方は、予防治療の見直しを
片頭痛発作重積は、治まったら終わりではありません。先ほどの研究のとおり、繰り返す方がいるからです。長引く発作をきっかけに、次の2点を見直すことをおすすめしています。
- 月に何日、頭痛があるか・薬を使っているか:記録してみると、思っていたより多いことがあります。記録のつけ方は薬だけに頼らない頭痛治療の記事で紹介しています
- 予防治療が必要かどうか:発作の回数そのものを減らす治療です。飲み薬のほか、CGRPという物質に働く注射薬などがあります。詳しくは頭痛薬が効かないときの予防治療の記事をご覧ください
予防治療が向いているかどうか、どの薬を選ぶかは、頭痛の頻度や生活への影響、持病などをふまえて医師と相談しながら決めます。
6. 当院での対応
当院は、昼休みを設けない通し診療を行っている脳神経外科のクリニックです。京阪本線「野江」駅から徒歩約4分。長引く頭痛で仕事や家事の合間しか動けないときでも、受診の時間を合わせやすい体制にしています。
当院でできること
- MRIでほかの病気がないかを確認:医師が必要と判断した場合、受診されたその日に検査を行うことがあります
- 発作時の点滴:吐き気止めや、吐いて飲み薬が使えないときの痛み止め(アセトアミノフェンの点滴)などを使います
- 予防治療:発作が治まったあと、繰り返さないための治療を一緒に考えます。飲み薬のほか、CGRPに働く注射薬による予防治療も行っています
院長は日本脳神経外科学会認定の脳神経外科専門医、日本頭痛学会認定の頭痛専門医です。「いつもの片頭痛が長引いているだけ」なのか、「別の病気が隠れている」のかを見分けることを、診療の出発点にしています。
なお、突然の激しい頭痛や手足の麻痺など、3章に挙げた症状がある場合は、ためらわずに救急を受診してください。
7. よくある質問
Q. まだ72時間たっていませんが、受診してもよいですか。
もちろんです。72時間は診断のための目安であり、受診してよいかどうかの基準ではありません。吐いて水分がとれない、いつもの薬がまったく効かない、いつもと痛み方が違うといった場合は、日数にかかわらずご相談ください。
Q. 救急車を呼ぶべきか迷います。
突然の激しい痛み、手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、意識がぼんやりする、けいれんといった症状があれば、救急車を呼んでください。判断に迷うときは、大阪府では救急安心センターおおさか(#7119)に相談できます。
Q. 手元のトリプタンをもう一度飲んでもよいですか。
トリプタンには、1回に使う量と1日に使える量の上限が決められています。処方された際の説明や薬の説明書を確認し、上限を超えて使わないでください。上限まで使っても治まらない場合は、追加で飲むより受診をおすすめします。
Q. 生理のたびに片頭痛が長引きます。
先ほどの研究でも、月経は引き金の3割ほどを占めていました(Beltramone & Donnet 2014)。生理の時期に合わせて短い期間だけ予防する方法もあります。詳しくは月経関連片頭痛の予防の記事をご覧ください。
Q. 一度起きたら、また起きますか。
必ず起きるわけではありませんが、繰り返した方がいることが報告されています。発作が治まったあとに、薬の使い方や予防治療を見直しておくことが、次に備えるための大切な一歩です。
8. まとめ
- 片頭痛の発作はふつう4〜72時間。日常生活に支障が出るほど強い片頭痛が72時間を超えて続く状態を「片頭痛発作重積」と呼びます。
- 薬や睡眠で12時間以内だけ楽になった時間があっても、発作は続いているものとして扱います。
- まれな状態ですが、引き金はストレスや月経が多く、繰り返す方もいると報告されています。痛み止めの使いすぎが隠れていることもあります。
- 突然の激しい痛み、発熱、手足の麻痺などがあれば、片頭痛以外の病気を考えて救急へ。
- 医療機関では、点滴・吐き気止め・トリプタンの注射などを組み合わせます。治まったあとは予防治療の見直しが大切です。
「そのうち治まるはず」と我慢しているうちに、3日、4日と過ぎてしまうことがあります。いつもと長さが違うと感じたら、それ自体が受診のきっかけです。飲んだ薬のメモを持って、お気軽にご相談ください。
お問い合わせ・ご予約
大阪で長引く片頭痛にお困りの方は、いわた脳神経外科クリニックへお気軽にご相談ください。ご予約は、下記から可能です。
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重要:本記事の位置づけ(医療情報として)
- 本記事は、公的資料や研究報告に基づく「一般的な医療情報」です。
- 特定の治療を推奨・保証するものではありません。症状の感じ方や経過には個人差があります。
- 実際の診断・治療は、症状・既往歴などを踏まえて医師が判断します。気になる症状があるときは受診してください。
参考文献
- 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会(監修) 2021, 頭痛の診療ガイドライン2021, 医学書院, 東京, viewed 19 September 2026, <https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf>. (CQ II-2-12 片頭痛重症発作,発作重積の急性期治療はどのように行うか)
- Beltramone, M & Donnet, A 2014, ‘Status migrainosus and migraine aura status in a French tertiary-care center: an 11-year retrospective analysis’, Cephalalgia, vol. 34, no. 8, pp. 633-637, DOI 10.1177/0333102414520763, viewed 19 September 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24504530/>.
- Do, TP, Remmers, A, Schytz, HW, Schankin, C, Nelson, SE, Obermann, M, Hansen, JM, Sinclair, AJ, Gantenbein, AR & Schoonman, GG 2019, ‘Red and orange flags for secondary headaches in clinical practice: SNNOOP10 list’, Neurology, vol. 92, no. 3, pp. 134-144, DOI 10.1212/WNL.0000000000006697, viewed 19 September 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30587518/>.
- Headache Classification Committee of the International Headache Society 2018, ‘The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition’, Cephalalgia, vol. 38, no. 1, pp. 1-211, DOI 10.1177/0333102417738202, viewed 19 September 2026, <https://ichd-3.org/1-migraine/1-4-complications-of-migraine/1-4-1-status-migrainosus/>.






















