
この記事で分かること
- 月経の前後に片頭痛が悪化するのは、エストロゲンの急な低下(エストロゲン離脱)が引き金になると考えられています
- 月経に関連する片頭痛には「純粋月経性片頭痛」と「月経関連片頭痛」の2つのタイプがあります
- 月経時の発作は重く長引きやすい傾向があり、急性期治療と月経前後の短期予防という考え方があります
「生理の前になると、決まって頭が締めつけられるように痛む」「ふだんの頭痛より重くて、痛み止めもなかなか効かない」。毎月くり返すその頭痛に、つらい思いをされている方は少なくありません。仕事や家事を休めない日に限って寝込んでしまい、ご自身を責めてしまう方もいらっしゃいます。
その頭痛は、気のせいでも我慢が足りないせいでもありません。月経の周期に合わせて女性ホルモンが大きく変動することが、片頭痛と深く関わっていることが分かってきています。しくみを知っておくと、対策も立てやすくなります。
この記事は、月経と片頭痛の関係を全体像として整理する「入口」です。ピルとの関わりや妊娠・授乳期の頭痛薬など、テーマごとの記事へもご案内します。気になるところから読み進めていただけます。
本記事は、公的なガイドラインや研究報告にもとづく一般的な医療情報です。診断・治療は症状や経過をふまえて医師が判断します。月経のたびに頭痛で困っているときは、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。
目次
大阪で月経のたびの頭痛にお悩みの方は、いわた脳神経外科クリニックの頭痛外来へお気軽にご相談ください。
1. 月経周期と片頭痛の関係
片頭痛は女性に多い頭痛で、とくに20〜40代の働き盛りの世代で目立ちます。その背景のひとつに、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの変動があります。月経の前になるとエストロゲンは急激に低下します。この「エストロゲン離脱」と呼ばれる急な落ち込みが、片頭痛発作の引き金になると考えられています(Raffaelli et al. 2023)。
逆に、エストロゲンが高いまま安定している時期は、片頭痛が起こりにくくなる傾向があります。妊娠中期以降に片頭痛が楽になる方がいるのは、このためだと説明されています。日本頭痛学会(2021)も、月経に関連する片頭痛をホルモン変動と結びつけて解説しています。
つまり、月経前後の頭痛は「ホルモンのゆらぎに体が反応している」状態と考えると理解しやすくなります。だからこそ、月経周期のどのタイミングで頭痛が起こるかを記録しておくことが、対策の第一歩になります。
なお、閉経に向かう時期はエストロゲンの変動が不規則になり、片頭痛の出方も変わってきます。40代以降の変化については「更年期と頭痛」でくわしく解説しています。
2. 月経に関連する片頭痛の種類
ひとくちに「生理のときの頭痛」といっても、医学的には2つのタイプに分けて考えます。国際頭痛分類(ICHD-3)にもとづき、日本頭痛学会(2021)は、前兆のない片頭痛のうち月経に関連するものを次のように整理しています。判断の目安は「月経以外の時期にも発作が起こるかどうか」です。
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| タイプ | 発作が起こる時期 |
|---|---|
| 純粋月経性片頭痛 | 月経開始日(Day1)の前後(Day −2〜+3)だけに発作が起こる。月経3周期のうち2周期以上でみられ、それ以外の時期には起こらない |
| 月経関連片頭痛 | 上記の月経の時期に加えて、月経以外の時期にも発作が起こる |
どちらのタイプかによって、対策の立て方が少し変わります。純粋月経性片頭痛のように発作が月経の時期に集中している場合は、その前後だけ集中的に備える「短期予防」が向いていることがあります。ご自身がどちらに近いかは、頭痛ダイアリーで発作の日付を数か月記録すると見えてきます。
生理前のイライラや気分の落ち込み、むくみといった症状と重なるときは、PMS(月経前症候群)との見分けも手がかりになります。両者の違いは「PMSと片頭痛の見分け方」で整理しています。
頭痛の前後に、視野の一部にギザギザした光が見える「閃輝暗点」などの前兆を伴うことがあります。前兆のある片頭痛は、ピルの選び方にも関わる大切なサインです。くわしくは「閃輝暗点とピルの関係」でも解説しています。
3. 月経時の発作が重い理由
「生理のときの頭痛は、いつもよりつらい」。多くの方が感じているこの実感には、根拠があります。月経の前後に起こる片頭痛発作は、月経以外の時期の発作にくらべて、痛みが強く、持続時間が長く、治療が効きにくい傾向があると報告されています(Raffaelli et al. 2023)。日記をつけた研究では、月経前後の発作はほかの時期より長引きやすく、痛み止めを使ったあとにぶり返しやすいことも示されています。
その理由として有力なのが、先ほどのエストロゲン離脱です。月経前のエストロゲンの急な低下が、片頭痛を起こしやすい状態を作ると考えられています(Raffaelli et al. 2023)。ホルモンの落差が大きい時期にあたるため、発作も手ごわくなりやすいのです。
「効きにくいから」と痛み止めを重ねてしまうと、かえって頭痛が慢性化してしまうこともあります。月経のたびに頭痛で寝込む、市販薬の量が増えているといったときは、我慢を続けるより、一度ご相談いただくほうが安心です。生理中のこめかみの痛みについては「生理中のこめかみの頭痛」もご参照ください。
「毎月の頭痛が重くてつらい」と感じるときは、頭痛外来でご相談いただけます。
4. 治療と予防の考え方
月経に関連する片頭痛の対応は、大きく「発作が起きたときの治療(急性期治療)」と「発作を起こしにくくする予防」に分けて考えます。以下は一般的な考え方で、実際にどの方法が向いているかは、症状やほかのお薬との兼ね合いをふまえて医師が判断します。
発作が起きたときの治療
急性期には、消炎鎮痛薬(NSAIDs)や、片頭痛に用いるトリプタン系の薬が使われます。日本頭痛学会(2021)では、過去の発作でNSAIDsの効果が乏しかった場合にトリプタン系薬剤が選択肢になると整理されています。市販薬で乗り切れないときは、発作を抑える薬の選択肢を含めて相談していただけます。
月経前後の短期予防
発作が月経の時期に集中している場合、日本頭痛学会(2021)は、月経の1〜2日前から数日間だけトリプタン系やNSAIDsを予防的に用いる「短期予防(ミニ予防)」を選択肢として整理しています。これを支持する治療研究の解析も報告されています(Khoo et al. 2024)。毎日薬を飲み続けるのではなく、頭痛が起こりやすい時期にしぼって備える方法です。ホルモンを安定させる目的で、婦人科と連携してエストロゲン・プロゲスチン配合薬(低用量ピルなど)を検討することもあります。
ただし、前兆のある片頭痛の方がエストロゲンを含むピルを使う場合は、脳梗塞などのリスクという観点から慎重な判断が必要です。「リスクを正しく知り、安全に付き合っていく」ために、自己判断せず受診してご相談ください。くわしくは「ピルと片頭痛・脳梗塞リスク」で解説しています。
予防が難しいとき
短期予防などを行っても発作のコントロールが難しい場合には、片頭痛の予防薬としてCGRP関連薬などの選択肢が検討されることがあります。月経に関連する片頭痛を含む片頭痛全般で、予防の有効性が報告されています(Khoo et al. 2024)。どのお薬が向いているかは個人差が大きいため、経過をみながら相談して決めていきます。CGRP関連薬の考え方は「CGRP製剤と月経関連片頭痛」でくわしく解説しています。なお、妊娠・授乳を考えている時期は使えるお薬が変わります。妊娠中の頭痛薬については「妊娠中の頭痛とカロナール」もご覧ください。
生理前後の頭痛とのつき合い方は、当院の解説動画でもお伝えしています。あわせてご覧ください。
5. 受診の目安と関連テーマ
月経に関連する頭痛は、対策の余地が大きい頭痛です。次のようなときは、我慢を続けるより頭痛外来でご相談いただくことをおすすめします。
| こんなとき | おすすめの対応 |
|---|---|
| 月経のたびに寝込む・予定を休む | 頭痛外来で治療・予防を相談する |
| 市販薬が効きにくい・使う量が増えている | 薬の見直しのため一度受診する |
| 前兆(閃輝暗点など)があり、ピルの使用を考えている | 頭痛と婦人科の両面から相談する |
いっぽうで、これまでに経験したことのない突然の激しい頭痛、手足のまひ、ろれつが回らないといった症状は、月経とは関係のない別の病気のサインのことがあります。こうしたときは、ためらわず119番を呼んでください。呼ぶかどうか迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
月経の頭痛は、季節の影響を受けることもあります。夏場は脱水も頭痛の引き金になりやすいため、夏の頭痛やめまいの見分け方は「熱中症の頭痛・めまいと脳の病気」もあわせてご覧ください。気になるテーマから読み進めていただくと、ご自身の頭痛への理解が深まります。
月経と片頭痛については、テーマごとにくわしい記事をご用意しています。
| 記事 | こんな方に |
|---|---|
| PMSと片頭痛の見分け方 | 生理前の頭痛が、PMSによるものか片頭痛かを整理したい方 |
| CGRP製剤と月経関連片頭痛 | 短期予防などを行っても発作が抑えにくい方 |
| 更年期と頭痛 | 40代以降で頭痛の出方が変わってきた方、閉経後の経過が気になる方 |
6. よくある質問
Q. 生理のたびに頭痛がひどくなります。片頭痛でしょうか?
月経の前後に決まって強い頭痛が起こる場合は、月経に関連する片頭痛の可能性があります。月経の時期だけに起こるタイプと、ほかの時期にも起こるタイプがあり、対策の立て方が変わります。まずは頭痛が起こった日付を数か月記録し、頭痛外来でご相談いただくと、タイプに合った対応を考えやすくなります。
Q. 月経時の頭痛に市販の痛み止めは使ってよいですか?
軽い痛みのうちに市販の消炎鎮痛薬を使うことは対処のひとつですが、月経時の発作は効きにくく長引きやすい傾向があります。使う量や回数が増えているときは、飲み続けることでかえって頭痛が慢性化することもあるため、一度受診して薬の見直しをご相談ください。
Q. 低用量ピルを飲むと片頭痛は良くなりますか?
エストロゲンを安定させることで片頭痛が和らぐ場合がある一方、前兆のある片頭痛の方では脳梗塞などのリスクという観点から慎重な判断が必要です。効果もリスクも個人差があるため、自己判断はせず、頭痛と婦人科の両面から医師にご相談ください。
Q. 月経の頭痛は何科を受診すればよいですか?
頭痛そのものの診断や治療・予防は、頭痛外来(脳神経外科・脳神経内科)でご相談いただけます。ピルの使用やホルモンの調整が関わる場合は、婦人科と連携して進めることもあります。突然の激しい頭痛やまひなどがあるときは、受診より先に119番を呼んでください。
7. まとめ
- 月経前のエストロゲンの急な低下(エストロゲン離脱)が、片頭痛発作の引き金になると考えられています。
- 月経に関連する片頭痛には、月経の時期だけに起こる純粋月経性片頭痛と、ほかの時期にも起こる月経関連片頭痛があります。
- 月経時の発作は、痛みが強く長引きやすく、治療が効きにくい傾向があると報告されています。
- 急性期治療に加え、月経前後にしぼった短期予防という考え方があります。前兆のある片頭痛の方のピル使用は慎重な判断が必要です。
毎月の頭痛は、「体質だから」とあきらめる必要はありません。しくみに合わせて備えることで、楽になる余地は十分にあります。つらい月経の頭痛でお困りのときは、どうぞお気軽にご相談ください。
お問い合わせ・ご予約
大阪で月経に関連する頭痛、くり返す片頭痛が気になる方は、いわた脳神経外科クリニックへお気軽にご相談ください。ご予約は、下記から可能です。
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重要:本記事の位置づけ(医療情報として)
- 本記事は、公的資料や研究報告に基づく「一般的な医療情報」です。
- 特定の治療を推奨・保証するものではありません。症状の感じ方や経過には個人差があります。
- 実際の診断・治療は、症状・既往歴などを踏まえて医師が判断します。気になる症状があるときは受診してください。
参考文献
- 日本頭痛学会 2021, 頭痛の診療ガイドライン2021, 日本頭痛学会, viewed 29 July 2026, <https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf>.
- Khoo, CCW, Liu, CC, Lu, M, Huang, YC & Weng, HY 2024, ‘Acute and preventive treatment of menstrual migraine: a meta-analysis’, The Journal of Headache and Pain, vol. 25, no. 1, 143, DOI 10.1186/s10194-024-01848-6, viewed 29 July 2026, <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11373287/>.
- Raffaelli, B, Do, TP, Chaudhry, BA, Ashina, M, Amin, FM & Ashina, H 2023, ‘Menstrual migraine is caused by estrogen withdrawal: revisiting the evidence’, The Journal of Headache and Pain, vol. 24, no. 1, 131, DOI 10.1186/s10194-023-01664-4, viewed 29 July 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37730536/>.





















