ピルを内服する目的

ピルを内服する目的としては、避妊もありますが、生理痛の軽減や生理不順の改善、PMS(月経前症候群)による頭痛などの緩和を目的として、産婦人科医から低容量経口避妊薬ピルを処方されるケースがあります。

 

 

 

閃輝暗点を前兆とする片頭痛がある方はピルがダメな理由

閃輝暗点を前兆とする片頭痛を過去・現在問わず経験したことのある患者さんには、ピルの処方はできないことになっています。
なぜなら、片頭痛患者がピルを常用することで脳内血管に血栓ができやすくなるためです。

ピルの副作用の中でも、最も恐ろしいのが血栓症です。そもそも血栓症とは、血液が血管の中で固まってしまう病気です。 普段は血液がスムーズに流れていますが、 血栓症が起こると、 血液が固まって血管の中に 「詰まり」 ができてしまいます。 これが 「血栓」 と呼ばれるものです。私たちの体にはたくさんの血管があり、 これらの血管は水道管のようなもので非常に重要な役割を果たしています。 しかし血栓ができると、 血液がうまく流れなくなり、 組織や器官への酸素や栄養素の供給が阻害されてしまうのです。

これによって引き起こされるのが、 脳梗塞や心筋梗塞といった重大な疾患であり、最悪の場合、死に至ります。

 

 

 

低用量ピル服用で血栓症が起こる原因

原因①エストロゲンに血液を固める作用がある

低用量ピルには、“卵胞ホルモン(エストロゲン)”と“黄体ホルモン(プロゲステロン)”という成分が含まれており、これが主成分の薬になっています。

この低用量ピルに含まれるエストロゲンには、血液を固まりやすくしてしまう“凝固作用”があるため、低用量ピルの服用により、血液中のエストロゲン濃度が高くなることで血液が固まってしまい、血栓ができやすくなると考えられているのです。

 

原因②水分不足で脱水症状を引き起こしている

低用量ピル服用中は、エストロゲンの作用により血液が固まりやすくなると解説しましたが、そのうえで水分不足による脱水症状を引き起こした場合、体内の血液が濃縮され、ドロドロとした状態になってしまいます。

こうした状態を作り出してしまうことで、血液の循環が悪くなり、血栓症を引き起こしてしまうリスクも高くなるのです。

 

原因③長時間同じ体勢で体を動かさなかった

血栓症を引き起こしてしまう原因のひとつとして、電車や車、デスクワークなどで長時間同じ体制で体を動かさない状態でいることも挙げられます。
長時間同じ体勢でいることにより起こる血栓症は、“エコノミークラス症候群(肺塞栓症)”と呼ばれ、脚の血流が滞り、そこに血栓ができてしまうことにより発症します。

低用量ピル服用中は血液が固まりやすく、血栓ができやすい状態になっているため、できるだけ長時間同じ体勢のままでいることは避けましょう。

 

原因④ピル服用中に1日15本以上喫煙をしていた

低用量ピルを服用中に喫煙をする場合、以下のようなリスクが高まるといわれています。

静脈血栓症

エコノミー症候群(肺塞栓症)

心筋梗塞

脳卒中(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)

特に35歳以上で1日に15本以上タバコを吸う方の場合、このような重大な病気を発症してしまうリスクが増加してしまいます。そのため、35歳以上で1日15本以上タバコを吸う方には低用量ピルを処方することはできません。

また、タバコの本数が多くなり、年齢が高くなるほど、副作用を引き起こすリスクが高くなってしまうため、低用量ピルを服用するためには喫煙量を減らすか禁煙が必要です。

 

原因⑤40歳以上での服用、肥満や高血圧などの持病がある

低用量ピルを服用する際には、年齢にも注意しなければいけません。
基本的には40歳以上でピルを服用する場合には血栓症を発症するリスクが高まることを理解しておきましょう。
加齢によりリスクが増加する原因は、卵巣機能のバランスが崩れることや余剰なホルモンの摂取により、血管障害を引き起こしてしまうことなどが挙げられます。

実際の症例写真

 

①矢印の位置を見ていただけると、横静脈洞に血栓があることが分かります。

 

 

②静脈が閉塞し、脳浮腫静脈性梗塞を起こしている症例写真です。

 

③左横静脈洞が閉塞している症例写真です。

 

 

まとめ・頭痛専門外来のご紹介

 

今回は、『閃輝暗点のある片頭痛患者は、ピルを服用してはいけない理由』というテーマで、その理由・予防方法について解説しました。

当院では”頭痛専門外来”をおこなっており、閃輝暗点のある片頭痛を含む様々な種類の頭痛に対し、エムガルティをはじめとしたCGRP製剤など、頭痛をしっかりと治すために最新治療の提供に注力しています。エムガルティ(CGRP製剤)の処方実績では大阪で1位・全国で3位の実績を誇っており、患者さんが新たな治療に触れる機会損失にならないよう、早期治療・早期改善に努めています。

 

頭が痛くてやっとの思いで病院やクリニックに行ったのに、「市販でも買えるようなロキソニンを処方されて終わり」といった経験はありませんか?

当院では様々な薬を使って効果判定をしながら、次の選択肢を提案することで”頭痛難民”の患者さんを救うべく日々診療をしております。

 

あなたも『頭痛から卒業』を目指して一緒に治療しませんか?

 

 

 

 

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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