頭痛薬が効かない原因とは?
頭痛の種類と頭痛薬
頭痛は大まかに分けて「緊張型頭痛」、「片頭痛」、「群発頭痛」などがあり、それぞれに適した薬が異なります。例えば、緊張型頭痛には抗不安薬や抗うつ薬が、片頭痛にはトリプタン系の薬や新しいタイプの抗CGRP製剤が効果的です。そのため、自己判断で市販薬を選んでいると、頭痛の種類に合っていない薬を使用してしまい、効果を感じられないことがあります。

頭痛薬の使用方法
頭痛薬は、頭痛が始まったらすぐに飲むことが大切です。痛みが強くなってからではなく、頭痛の初期症状が出た段階で飲むことで、効果的に痛みを抑えることができます。また、適切な量を飲むことも重要で、必要以上に多量に飲むと逆に頭痛が悪化する「薬物乱用性頭痛」を引き起こす危険性があります
頭痛の原因
頭痛の原因が身体の他の病気である可能性もあります。例えば、くも膜下出血など脳の病気や高血圧・甲状腺疾患などの内科的な疾患、歯科疾患、眼科疾患などが原因で頭痛が起こることがあります。このような場合、頭痛薬を飲んでも根本的な原因が解消されないため、頭痛が改善されないことがあります。
以上の理由から、頭痛薬が効かない場合は、頭痛の種類を正しく診断してもらい、適切な薬を選び、正しい使用方法で飲むことが大切です。また、長期間にわたり頭痛が続く場合や頭痛の性質が変わった場合は、医療機関に相談することをおすすめします。
頭痛の種類とそれぞれの特徴
頭痛はその原因や特徴により、大きく分けて「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分類されます。
一次性頭痛
一次性頭痛は頭痛自体が主な症状であり、特にそれが引き起こされる明確な原因が見つからないものを指します。代表的な一次性頭痛には「緊張型頭痛」、「片頭痛」、「群発頭痛」などがあります。
「緊張型頭痛」は最も一般的な頭痛で、頭全体が締め付けられるような鈍い痛みが特徴です。ストレスや長時間の同じ姿勢が引き金となることが多く、痛みは比較的軽度から中度です。
「片頭痛」はズキンズキンと拍動性の痛みが特徴で、吐き気や光・音への過敏さを伴うことがよくあります。発作的に起こり、数時間から数日間続くことがあります。
「群発頭痛」は非常に激しい痛みが特徴で、眼の周囲や顔の一側に突然現れます。発作は短時間ですが、その間はほとんど動けないほどの強烈な痛みが続きます。
二次性頭痛
二次性頭痛は他の病気が原因で頭痛が起こるもので、脳腫瘍、脳血管障害、脳炎、副鼻腔炎、高血圧などが原因となることがあります。特に頭痛が急に始まり、激しい痛みが続く場合や、他の症状(めまい、視覚障害、高熱など)と一緒に頭痛が起こる場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。

頭痛薬の正しい使用方法
頭痛薬の正しい使用方法は、その種類や症状により異なります。まず、どんな薬でも指示された量と時間を守ることが基本です。過剰な摂取は副作用を引き起こす可能性があります。また症状が改善しない場合には適切な診断と治療のために医療機関で相談しましょう
市販の頭痛薬
市販の非ステロイド性抗炎症薬(イヴ)やアセトアミノフェンなどの一般的な頭痛薬は、頭痛が始まった初期段階で服用することが推奨されます。これらの薬は痛みを和らげる作用がありますが、痛みがピークに達してから服用しても効果は限定的です。
医療機関で処方する頭痛薬
片頭痛の場合、トリプタン系の薬が処方されることがあります。これらの薬もまた、片頭痛の初期症状が現れた段階で服用することが最も効果的です。トリプタン系の薬は脳の血管を収縮させ、痛みを和らげる作用があります。
頭痛薬を長期間、頻繁に使用すると、「薬物乱用性頭痛」を引き起こす可能性があります。薬物乱用性頭痛は、頭痛薬の使用を中止すると一時的に頭痛が悪化する状態を指し、この状況から抜け出すためには医師の指導のもとで薬の使用を段階的に減らすことが必要となります。
頭痛薬を服用する際は、空腹時よりも食後の方が胃への負担が少なくなります。また、水やぬるま湯と一緒に服用し、アルコールと一緒に服用することは避けましょう。
頭痛が頻繁に起こる場合や、頭痛薬を服用しても改善しない場合は、医療機関に相談することをおすすめします。
抗CGRP製剤
抗CGRP製剤は、主に片頭痛の治療に用いられる新しいタイプの薬物で、近年の神経科学の進歩により開発されました。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、脳内の神経伝達物質で、痛みの伝達や血管の拡張などに関与しています。特にCGRPは、片頭痛の発症に深く関わっていると考えられています。
抗CGRP製剤は、CGRPやその受容体に作用し、その活性化を阻害することで、片頭痛の予防や症状の軽減に寄与します。具体的には、CGRPが血管の拡張や炎症反応を引き起こすことを抑え、痛みの伝達を防ぎます。これにより、頭痛の発生を予防し、既に発生した頭痛の痛みを和らげることが可能となります。
抗CGRP製剤は、片頭痛の頻度や重症度が高い患者や、他の治療法が効果を示さない患者に対して特に有用とされています。また、従来の片頭痛治療薬と比較して副作用が少ないという特徴もあります。これにより、長期的な治療においても患者の生活の質を維持しながら、片頭痛の頻度や強度を減らすことが可能となります。
当院ではアジョビ、エムガルティ、アイモビーグの3製剤の豊富な使用経験があります。
頭痛薬が効かない時の対処方法
頭痛薬が効かない場合には、リラクゼーションテクニック、ストレッチング、適度な運動、十分な睡眠、バランスの良い食事、水分補給などを実施しましょう。これらの生活習慣の改善は、頭痛の予防だけでなく、一度起きてしまった頭痛の緩和にも役立ちます。
頭痛が続く場合や、頭痛が日常生活に影響を及ぼす程度に悪化する場合は、頭痛専門の医師に相談しましょう。
ストレスや生活習慣が頭痛に与える影響
ストレスと頭痛
ストレスや生活習慣は頭痛に大きな影響を与えます。ストレスは体全体に影響を及ぼし、特に自律神経系に作用して頭痛を引き起こすことがあります。ストレスが原因で起こる頭痛には緊張型頭痛があり、長時間の集中や緊張からくる筋肉のこりが頭痛を引き起こすことがあります。詳細は片頭痛とストレスの関係に記載しております。
生活習慣と頭痛
生活習慣も頭痛に影響を与えます。睡眠不足や過剰な睡眠、不規則な生活リズム、適度な運動不足、不健康な食事などは頭痛を引き起こす可能性があります。特に睡眠は体を回復させ、ストレスを軽減する重要な要素であるため、睡眠不足は頭痛の一因となり得ます。
また、飲酒やカフェインの摂取も頭痛に影響を与えることがあります。アルコールは脱水症状を引き起こし、脳の血管を拡張させることで頭痛を引き起こします。カフェインもまた頭痛の引き金となり得ます。カフェインは初めは痛みを和らげる効果がありますが、過剰摂取や急なカフェイン摂取の中断は頭痛を引き起こすことがあります。
規則正しい生活リズムを保つ、健康的な食事を心掛ける、適度な運動を行う、十分な休息をとるなどが基本的な対策となります。また、リラクゼーションテクニックやマインドフルネスなどを活用することでストレスを管理し、頭痛の発生を抑えることができます。

「回数そのもの」を減らす治療という選択肢
ここまで、痛みが出たときのお薬についてご説明してきました。ただ、「飲めばその日は治まるけれど、頭痛が起きる日そのものが減らない」という方の場合、痛み止めをいくら見直しても状況はあまり変わりません。
必要になるのは、発作そのものを起こりにくくする「予防治療」という別の考え方です。痛み止めをやめる、という話ではありません。痛み止めはそのまま持っておいて、そこに「回数を減らす」治療を足すという組み立てになります。
二つの治療の役割
- 急性期治療:起きてしまった発作の痛みを止める
- 予防治療:発作が起きる回数・程度そのものを減らす
この予防治療について、2026年8月、米国神経学会(AAN)と米国頭痛学会(AHS)が14年ぶりに指針を改訂しました(Potrebic et al. 2026)。ここからは、その内容と、日本で実際に受けられる治療との違いをご説明します。
予防治療を始める目安
では、どのくらいの頻度になったら予防を考えるのでしょうか。2026年に改訂された指針は、次の二つを目安として示しています(Potrebic et al. 2026)。
| 目安 | 内容 |
|---|---|
| 回数で考える | 月に4日以上の片頭痛、または月に4日以上の中等度から重度の頭痛がある |
| 支障で考える | 片頭痛によって、仕事や家事など日常生活に大きな支障が出ている |
注目していただきたいのは、二つ目です。回数が月に4日に届かなくても、その頭痛のせいで仕事を休む、予定を諦める、家事が回らないといったことが起きているなら、予防治療を検討してよい、と示されています。
「まだ月に2〜3回だから」「みんな我慢しているだろうから」と受診を先延ばしにされる方は、とても多くいらっしゃいます。日数だけで線を引かなくてよい、というのが今回の指針の伝えていることです。
「4日」はあくまで目安であり、これを下回るから治療できない、という基準ではありません。回数・程度・生活への支障を合わせて、診察のうえで判断します。
早めに考えることには、理由があります
片頭痛は、頻度が高い状態が続くと、より頭痛の日数が多い状態へ移行していくことがあります。頭痛が月に15日以上、3か月を超えて続き、そのうち月に8日以上が片頭痛の特徴をもつものを慢性片頭痛と呼びます(Potrebic et al. 2026)。
指針では、予防治療がこの移行を防ぐ可能性に触れています。ただし「予防すれば必ず防げる」と示されているわけではありません。可能性がある、という段階の話としてお受け取りください。
「支障」は、どうやって測るのか
「生活に支障がある」と言われても、自分がそれに当てはまるのか判断しにくいかもしれません。目安になるのは、次のような場面です。
- 頭痛のために、仕事や学校を休んだ日がある
- 出勤はしたが、能率が半分以下になった日がある
- 家事や育児ができなかった日がある
- 頭痛が起きるのが怖くて、予定を入れられない
思い当たる項目があれば、回数にかかわらず一度ご相談ください。診察では、こうした支障の程度を確かめる質問票を使うこともあります。感覚ではなく数字にしておくと、治療を始めたあとの変化も比べやすくなります。
診察で伝えていただくと、選びやすくなること
今回の指針は、予防薬を「医師が決めて渡すもの」ではなく、患者さんと相談して一緒に決めるものとして扱っています。そのために、次のようなことを共有してほしい、と示されています(Potrebic et al. 2026)。
診察の前に整理しておくとよいこと
- これまでの病気と、いま治療中の病気:血圧、気分の落ち込み、てんかん、腎臓や肝臓のことなど
- いま飲んでいるお薬とサプリメント:お薬手帳をお持ちください
- 副作用について、とくに避けたいこと:眠くなるのは困る、体重が変わるのは避けたい、など
- 飲み薬と注射のどちらがよいか:通院の頻度や、注射への抵抗感も含めて
「どれでもいいので、効くものをください」とおっしゃる方もいらっしゃいます。お気持ちはよく分かるのですが、何を避けたいかを教えていただけると、候補はかなり絞れます。眠気が困るのか、体重が気になるのか、毎日飲むのが負担なのか。そこが分かるだけで、話が前に進みます。
日本で使える薬・使えない薬
予防薬にはいくつも種類があります。では「いちばんよく効く薬」はどれなのでしょうか。
今回の指針は、その問いにこう答えています。薬同士を直接比べた研究では、どれかが明確に優れていると言えるだけの質の高い根拠は得られていない(Potrebic et al. 2026)。つまり、万人にとっての一番はない、ということです。
そのうえで示されたのが、何を優先するかによって候補が変わるという考え方です。
指針が示した「選ぶときの四つの軸」
- 効果の根拠の確かさを優先する
- 副作用の少なさを優先する
- 長く使われてきた実績を優先する
- 費用を優先する
どれを大事にするかは、お一人ずつ違います。仕事を休めない方と、注射に抵抗がある方と、費用を抑えたい方とでは、選ぶべき薬が変わってきます。だからこそ、診察で一緒に決めるという前提が、指針の中で繰り返し強調されています。
日本と海外で、事情が違うところ
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
今回の指針は米国のものであり、そこに挙げられた薬のすべてが、日本で同じように使えるわけではありません。海外の情報をそのまま読むと、日本では受けられない治療を期待してしまうことがあります。
| お薬 | 日本での扱い |
|---|---|
| ロメリジン(ミグシス) | 片頭痛の予防に保険が使えます。日本で広く使われてきたお薬です |
| プロプラノロール(インデラル) | 片頭痛の予防に保険が使えます |
| バルプロ酸(デパケン) | 片頭痛の予防に保険が使えます。妊娠の可能性がある方には使いません |
| CGRP関連の注射薬(エムガルティ・アジョビ・アイモビーグ) | 保険が使えますが、回数や治療歴などの条件があります |
| アトゲパント(アクイプタ) | 2026年2月に国内で承認された飲み薬です |
| リメゲパント(ナルティーク) | 片頭痛の急性期治療と、発作の発症抑制の両方で承認されています |
| トピラマート | 日本では片頭痛の予防に保険が使えません(適応外) |
| ボツリヌス療法 | 日本では慢性片頭痛に保険が使えません(適応外・自費) |
とくにトピラマートは、米国の指針の中で何度も名前が挙がるお薬です。効果の根拠がある薬としても、長く使われてきた薬としても、体重が気になる方への選択肢としても登場します。ところが日本では、片頭痛の予防を目的とした使用に保険が使えません。海外の記事を読んで「この薬を試したい」とお越しになる方がいらっしゃいますが、日本ではそのままの形では処方できないのです。
ボツリヌス療法も同じです。慢性片頭痛に対しては海外で広く行われていますが、日本では保険の対象外で、自費診療となります。
「適応外」とは、国内で承認されている効能・効果とは異なる目的で使うことをいいます。海外で使われている、あるいは効果が報告されている、ということと、日本の保険で使える、ということは別の話です。
一方で、日本には日本の事情もあります。ロメリジン(ミグシス)は日本で開発され、国内で長く使われてきた予防薬ですが、米国の指針には登場しません。海外の情報だけを見ていると、こちらは逆に見落とすことになります。
CGRP関連の注射薬については、当院でも多くの方に使用しています。飲み薬タイプについては、アトゲパント(アクイプタ)を別の記事で詳しくご説明しています。
四つの軸を、もう少し具体的に
先ほどの四つの軸は、実際にはこのように働きます。
| 優先すること | どう選ぶことになるか |
|---|---|
| 効果の根拠 | 研究の裏づけがしっかりしているものから選びます。CGRP関連の薬や、古くから使われてきた一部の飲み薬が候補になります |
| 副作用の少なさ | やめる理由になりにくい薬から選びます。指針では、この軸ではCGRP関連の薬が挙げられています |
| 長く使われた実績 | 新しい薬の未知の影響が気になる方向けです。何十年も使われてきた薬が候補になります |
| 費用 | 保険の仕組みによって変わるため、日本では日本の制度に沿って考えることになります |
四つのうち、どれかを選べば残りを諦めることになる、というわけではありません。多くの場合、いくつかの候補が重なります。重ならないときに、何を優先するかを決めるための軸だとお考えください。
なお、最初に選んだ薬で十分な変化が得られなかった場合には、根拠の確かさが一段下がる薬も選択肢に入ってくる、という段取りも示されています。一つ目で決まらなくても、その先があるということです。
日本では、いまどう位置づけられているのか
ここまでは米国の指針の話でした。日本にも、これに対応する動きがあります。
日本頭痛学会は2025年10月27日、CGRP関連抗体薬について次のように推奨しました(日本頭痛学会理事会 2025)。
CGRP関連抗体薬を、国内で既に承認されている他の片頭痛予防薬と同等に、成人の予防療法の「第一選択薬」に含めることを推奨する
以前は「まず飲み薬を試し、それで足りなければ注射へ」という順番で考えられることが多かったのですが、医学的な位置づけとしては、最初から選択肢に入れてよいという整理になったということです。
ただし、保険で使うための条件は別にあります
学会の推奨とは別に、最適使用推進ガイドラインという仕組みがあり、CGRP関連抗体薬を保険で使う際には、次のような条件を確認することになっています。
- 片頭痛の診断がついていること
- 投与開始前3か月以上にわたり、1か月あたりの片頭痛日数が平均4日以上であること
- 睡眠・食生活・体重・ストレスへの対応や、発作時の治療を既に行っていること
- 国内で承認されている予防薬(プロプラノロール、バルプロ酸、ロメリジンなど)のいずれかが、効果が十分でない・副作用などで続けられない・使えない理由があるのいずれかに当てはまること
つまり「希望すればすぐに注射から始められる」という意味ではありません。診察のうえで、条件に当てはまるかを一緒に確認していくことになります。
この違いは、外来でもよくご質問をいただくところです。「第一選択に含める」という学会の推奨と、「保険で使うための条件」は、別のものとお考えください。
日本の目安は「月3日以上」です
予防治療を始める目安について、先ほど米国の指針では月4日以上とご説明しました。日本の「頭痛の診療ガイドライン2021」では、生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合に、予防療法の実施を検討することがすすめられています(日本頭痛学会理事会 2025に引用)。
数字としては日本のほうが一段早く、月に3日でも、生活に支障が出ているなら検討してよいということになります。ここでも「日数だけで線を引かない」という考え方は共通しています。
持病があるときは、選び方が変わります
ほかに治療中の病気がある場合、予防薬の選び方はさらに変わります。指針は、一つの薬で両方に対応するか、それぞれ別の薬で治療するかを、患者さんと相談して決めるようすすめています(Potrebic et al. 2026)。
たとえば血圧の治療をされていない方では、血圧を下げる薬のなかに、片頭痛にも使える可能性のあるものがあります。一つにまとめられれば、飲むお薬の数は減ります。ただし日本では、こうした薬の多くは片頭痛の予防を目的とした使用が承認されておらず、適応外の扱いになります。使えるかどうかは、診察のうえで判断します。
今回の指針は、血圧のお薬について名前を挙げて整理しています。高血圧の治療をされていない方に提案しうるものとして挙げられているのはエナラプリル、ニフェジピン、テルミサルタンです。一方でカンデサルタンについては、片頭痛の予防に広く使われているものの、それを支持する根拠は十分ではないという評価が示されました(Potrebic et al. 2026)。カンデサルタンについては予防効果を報告した研究もあり、当院でも別の記事でご紹介していますが、指針としては推奨に足る根拠とは見なされなかった、ということです。いずれも日本では、片頭痛の予防を目的とした使用は適応外にあたります。
体重が増えていることが気になる方については、指針はトピラマートを挙げています。しかしこれも、日本では片頭痛の予防に保険が使えません。米国の指針をそのまま当てはめられない、代表的な例です。
ご高齢の方の場合は、また別の注意が必要です。指針では、血圧が下がりすぎることや、立ちくらみ、転倒、眠気、ぼんやりする感じに気をつけ、必要に応じて少ない量から始めるようすすめています。腎臓や肝臓のはたらき、ほかのお薬との飲み合わせも確認します。
一つにまとめる方法を選んだ場合も、効き目と副作用を見ながら、途中で分けたほうがよいと判断することがあります。始めたら固定、ではありません。
効果を判断するまでの時間
予防治療で、いちばん行き違いが起きやすいのがここです。
予防薬は、飲んだその日に効くお薬ではありません。今回の指針は、効果を判断するまでに待つべき期間を、はっきりと示しています(Potrebic et al. 2026)。
| 治療の種類 | 効果を判断するまでの目安 |
|---|---|
| 飲み薬など多くの予防薬 | 適切な量で8週から12週 |
| ボツリヌス療法 | 24週 |
2週間飲んで「効かない」と判断するには、早すぎるということです。指針では、8週の時点で手応えが乏しければ、いったん量を調整して様子をみる、という手順も示されています。そのうえで、それでも変化がなければ別の薬に切り替えていきます。
「1か月飲んだけれど変わらなかったので、自分でやめました」というお話をうかがうことがあります。もったいない、と感じる場面です。やめる前に、一度ご相談ください。
また、予防薬を使い始めても、生活面の工夫は続けてくださいと指針は述べています。睡眠・食事・引き金の管理は、薬と置き換わるものではなく、並行して続けるものです。
痛み止めを使いすぎている方こそ
痛み止めを飲む日数が増えると、その薬自体が頭痛を起こしやすくする状態になることがあります。これを薬の使いすぎによる頭痛といいます。
「使いすぎだと言われそうで、受診しづらい」とためらう方がいらっしゃいます。けれども今回の指針は、薬の使いすぎがある方にも、予防治療を提案してよいと明記しています(Potrebic et al. 2026)。まず痛み止めをやめてから、ではありません。
むしろ、そういう状態のときこそ予防治療の出番だという整理です。受診をためらう理由にはなりません。
妊娠を考えている方へ
予防薬のなかには、妊娠中に使うべきでないものがあります。指針は、妊娠の可能性がある方には、バルプロ酸とトピラマートを避けることを、最も強い推奨として示しています(Potrebic et al. 2026)。
妊娠を考えている、あるいはその可能性がある場合は、必ず診察時にお伝えください。お薬の選び方が変わります。妊娠中・授乳中の頭痛については、あらためて別の記事でご説明する予定です。
いつまで続けるのか
予防治療は、一度始めたら一生続けるものではありません。指針では、6か月ほど続けたところで、減らしていくかどうかを相談することがすすめられています(Potrebic et al. 2026)。
ただし、やめたあとに頭痛の日数が戻ることがある、という報告にも触れられています。やめどきも、自己判断ではなく相談して決めるものとお考えください。
「効いている」は、何で判断するのか
効果の判定は、なんとなくの感覚ではなく、いくつかの項目を並べて行います。指針が挙げているのは次の点です(Potrebic et al. 2026)。
効果をみるときの項目
- 頭痛が起きた日数
- 痛みの程度
- 吐き気や光のまぶしさなど、伴う症状
- 生活のしやすさ
- 痛み止めを飲んだ日数
とくに痛み止めを飲んだ日数は、見落とされがちですが大切な指標です。頭痛の日数が同じでも、痛み止めを飲む日が減っていれば、発作が軽くなっている可能性があります。
そして指針は、効果の判定は患者さん本人の目標に沿って行うべきだと、最も強い表現で述べています。頭痛をゼロにすることが目標の方もいれば、仕事を休まずに済めば十分という方もいます。何をもって「よくなった」とするかは、人によって違ってよいということです。
「効かない」と感じたまま続けておられる方は、一度ご相談ください。
はじめて受診される方
当院に通院中の方(頭痛再診)
よくある質問
Q. 予防治療を始めたら、痛み止めはやめるのですか。
やめる必要はありません。予防治療は痛み止めの代わりではなく、そこに足す治療です。発作が起きたときの痛み止めは、これまでどおりお持ちいただきます。ただし、飲む日数が多くなっている場合は、その点もあわせて診察でご相談ください。
Q. どのくらいで効果が分かりますか。
飲み薬では、適切な量で8週から12週ほど続けてから判断するのが目安とされています。ボツリヌス療法では24週です。効果の現れ方には個人差があり、期間や程度をお約束することはできません。
Q. 保険は使えますか。
お薬によって異なります。ロメリジン、プロプラノロール、バルプロ酸などは片頭痛の予防に保険が使えます。CGRP関連の注射薬も保険が使えますが、頭痛の回数やこれまでの治療歴などの条件があります。一方で、トピラマートの片頭痛予防や、慢性片頭痛へのボツリヌス療法は、日本では保険の対象外です。診察のうえでご説明します。
Q. 注射と飲み薬では、どちらがよいのでしょうか。
どちらが優れている、と一律に言えるものではありません。今回の指針でも、薬同士を直接比べて優劣を示せるだけの根拠はないとされています。通院のしやすさ、副作用の受け止め方、費用など、何を優先したいかによって適した選択肢が変わります。
Q. 妊娠を考えています。予防薬は続けられますか。
お薬の種類によります。妊娠の可能性がある方には避けるべきとされているお薬があります。自己判断で中止せず、必ず診察時にお申し出ください。お薬の選び方を見直します。
Q. 市販の痛み止めをよく飲んでいます。受診しても怒られませんか。
そのようなことはありません。痛み止めを使う日数が増えている状態は、予防治療を考えるきっかけになります。まず薬をやめてから受診してください、ということもありません。今の状況をそのままお話しください。
Q. 血圧の薬を飲んでいます。予防薬と一緒に飲めますか。
飲み合わせを確認したうえで判断します。血圧の薬のなかには、片頭痛にも使える可能性があるものもあり、一つにまとめられる場合があります。ただし日本では片頭痛の予防を目的とした使用が承認されていないものが多く、その場合は適応外の扱いになります。お薬手帳をお持ちのうえ、診察でご相談ください。
Q. 予防薬は、一生飲み続けることになるのでしょうか。
そうとは限りません。6か月ほど続けたところで、減らしていくかどうかを相談するのが一つの目安とされています。ただし、やめたあとに頭痛の日数が戻ることがあるという報告もあります。やめる時期も、経過を見ながら一緒に決めていきます。
参考文献
- Potrebic, S, Tanveer, S, Becker, WJ et al. 2026, ‘Pharmacologic treatment for migraine prevention in adults practice guideline recommendations: report of the AAN Guidelines Subcommittee and the American Headache Society’, Neurology, vol. 107, no. 7, p. e214881, DOI 10.1212/WNL.0000000000214881.
- アッヴィ合同会社 2026, 「アクイプタ(アトゲパント)について、片頭痛発作の発症抑制に関する日本における製造販売承認を取得」, プレスリリース, 2026年2月19日.
- 日本頭痛学会理事会・日本頭痛学会ガイドライン委員会 2025, 「成人の片頭痛予防療法におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連抗体薬の使用に関する日本頭痛学会のポジションステートメント」, 2025年10月27日発行.
https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_cgrp.pdf
頭痛を予防するための生活習慣の改善策
〇 過度なアルコールやカフェインの摂取は頭痛を引き起こす可能性があります。適度な摂取を心掛けましょう。
〇 栄養バランスの取れた食事を摂りましょう。体の機能を正常に保つことができます。特に、血糖値の急激な上下は頭痛を引き起こす可能性があるため、小分けにしてこまめに食事を摂ることがおすすめです。
〇 睡眠不足は頭痛の一因です。一日に7~8時間の睡眠を心掛け、就寝時間と起床時間を一定にすることで、生体リズムを整えましょう。
〇 適度な運動は血流を良くし、ストレスを減らす効果があります。特に有酸素運動は頭痛予防に有効とされています。
〇 ストレスは頭痛を引き起こす大きな要因です。リラクゼーションテクニックやマインドフルネス、ヨガなどを取り入れ、ストレスを適切に管理しましょう。
〇 長時間のパソコン作業や読書は目の疲れを引き起こし、それが頭痛につながることがあります。適度に休憩を取り、視力を保つためのケアを心掛けましょう。
〇 脱水症状が頭痛を引き起こすことがあります。こまめに水分補給を行いましょう。
これらの生活習慣を改善することで、頭痛の発生を予防し、健康的な生活を送ることができます。ただし、これらの予防策が全ての頭痛に効果的とは限らないため、頭痛が続く場合やひどい頭痛が起こる場合は、医療機関を受診することが重要です。
また、当院では頭痛ナースが生活習慣についてアドバイスいたしますので、ご相談ください。
日本頭痛学会認定 頭痛専門医への相談の重要性
頭痛は多くの人が経験する一般的な症状であり、多くの場合は一時的なもので、特に深刻な健康問題を示すものではありません。しかし、頭痛が頻繁に起こる、または非常に強い痛みを伴う場合、専門医に相談することが重要です。
日本頭痛学会認定 頭痛専門医は、頭痛の原因を詳しく診断し、適切な治療法を提供します。頭痛は多種多様で、その原因も様々です。一次性頭痛(片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛など)、二次性頭痛は、それぞれ特徴と治療法が異なります。特に、頭痛が他の病状から来ている二次性頭痛の場合、その背後にある病状を適切に診断・治療することが必要となります。
日本頭痛学会認定 頭痛専門医は、頭痛の症状に対する最新の治療法や薬物についての知識が豊富です。市販の頭痛薬が効かない場合や、頭痛が日常生活に大きな影響を与えている場合、専門医に相談することでより効果的な治療法を見つけることができます。また、生活習慣の改善やストレス管理など、薬物治療だけでないアプローチを提案することもあります。これらは頭痛の予防や、頭痛が起こった時の対処法として有効です。
頭痛が頻繁に起こる、頭痛の強度や性質が変わった、頭痛が日常生活に影響を及ぼす、市販の薬が効かないなどの症状がある場合、日本頭痛学会認定 頭痛専門医への相談をおすすめします。専門医は頭痛の原因を的確に診断し、あなたの症状に最適な治療法を提供します。
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