点滴を受けながら窓の外を見る女性|片頭痛の点滴予防薬ビエプチ

この記事で分かること

  • ビエプチは、3か月(12週)に1回、医療機関で点滴する片頭痛の予防薬であること
  • エムガルティ・アジョビ・アイモビーグなど、皮下注射の予防薬との違い
  • 臨床試験でわかっていること、副作用、当院での点滴の流れ

「毎月の自己注射が負担になってきた」「注射を打ち忘れてしまう」「いまの予防薬では、まだ片頭痛の日が多い」。片頭痛の予防治療を続けている方から、こうした声をよく伺います。

2026年9月、片頭痛の新しい予防薬「ビエプチ(一般名:エプチネズマブ)」が国内で承認されました。片頭痛に関わる物質「CGRP」の働きを抑える薬で、同じ仕組みの薬のなかで唯一、点滴で投与するのが特徴です(ルンドベック・ジャパン 2026)。

この記事では、ビエプチがどのような薬か、これまでの皮下注射の予防薬と何が違うのか、臨床試験の結果と副作用、当院での点滴の流れを順に整理します。

本記事は、製造販売元の公表資料や臨床試験の報告にもとづく一般的な医療情報です。ご自身に合う治療は、片頭痛の頻度やこれまでの治療歴によって異なります。実際に使うかどうかは、診察のうえで医師が判断します。


目次



片頭痛の予防治療について、まずはご相談ください。初診の方もお受けしています。

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1. ビエプチとはどんな薬か

片頭痛の発作には、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が深く関わっています。CGRPが神経から放出されると、脳の血管が広がり、周りに炎症が起きて、痛みの信号が強まると考えられています。

ビエプチは、このCGRPそのものにくっついて働けなくする「抗体」の薬です。発作が起きてから飲む痛み止めではなく、片頭痛が起きる回数を減らすための予防薬です(ルンドベック・ジャパン 2026)。

ビエプチの基本情報

  • 製品名:ビエプチ点滴静注100mg(一般名:エプチネズマブ)
  • 効能・効果:片頭痛発作の発症抑制
  • 使い方:成人に100mgを12週間(約3か月)ごとに点滴
  • 国内承認:2026年9月16日
  • 海外:2020年に米国で承認され、30以上の国と地域で使われています

(ルンドベック・ジャパン 2026)

CGRPの働きを抑える予防薬は、ビエプチより前にも皮下注射の薬が3種類使われています。それぞれの特徴は CGRP予防薬の比較 で詳しく解説しています。



2. 皮下注射の予防薬との違い

いちばんの違いは投与のしかたです。皮下注射の3剤は、慣れればご自宅で自分で注射できます。ビエプチは腕の静脈から点滴で入れるため、医療機関で投与します。そのかわり、通院は3か月に1回で済みます。

薬 投与のしかた 間隔
ビエプチ 点滴(医療機関で) 12週に1回
エムガルティ 皮下注射(自己注射できる) 月1回
アジョビ 皮下注射(自己注射できる) 4週に1回、または12週に1回(3本・医療機関で)
アイモビーグ 皮下注射(自己注射できる) 4週に1回

エムガルティ・アジョビ・ビエプチはCGRPそのものに、アイモビーグはCGRPを受け取る側(受容体)に働きます。


点滴のよい点と、気をつけたい点

内容
よい点
  • 自分で注射をする必要がない
  • 3か月に1回なので、打ち忘れの心配が少ない
  • 薬が血液に直接入るため、投与の直後から効き始めることが期待される(Lipton et al. 2020)
気をつけたい点
  • 3か月ごとに医療機関へ来ていただく必要がある
  • 点滴の時間(当院では30分〜1時間ほど)がかかる
  • 腕の静脈に針を入れる

どれがよいかは、通院のしやすさや、自己注射が負担かどうかによって人それぞれです。診察のときに、生活に合う方法を一緒に考えます。


いまの予防薬からの切り替えを考えている方も、ご相談ください。

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3. 臨床試験でわかっていること

国内の承認は、海外で行われた試験に加えて、アジアの方が多く参加した試験と、日本人を対象にした長期の試験の結果にもとづいています(ルンドベック・ジャパン 2026)。ここでは、国内で承認された用量(100mg)の結果を紹介します。

試験では、薬の成分を含まない点滴(プラセボ)を受けた人と比べて、1か月あたりの片頭痛の日数がどれだけ減ったかを調べています。

試験 対象 片頭痛の日数の変化(1か月あたり)
SUNRISE 慢性片頭痛の方978人(約6割がアジアの方) ビエプチ 7.2日減/プラセボ 4.8日減
PROMISE-2 慢性片頭痛の方1,072人 ビエプチ 7.7日減/プラセボ 5.6日減
PROMISE-1 反復性片頭痛の方888人 ビエプチ 3.9日減/プラセボ 3.2日減

(Yu et al. 2025;Lipton et al. 2020;Ashina et al. 2020)

※慢性片頭痛=頭痛が月に15日以上ある状態。反復性片頭痛=それより少ない状態です。数字はいずれも、投与後12週間の平均です。

ほかにわかっていること

  • 投与の翌日から、片頭痛が起きた人の割合がプラセボより少なかった(Yu et al. 2025;Lipton et al. 2020)
  • 日本人159人が60週間にわたって使い続けた試験では、新たな安全上の問題は見つからず、片頭痛の日数が減った状態が続いた(Takeshima et al. 2025)
  • これまでに2〜4種類の予防薬で効果が得られなかった方を対象にした試験でも、プラセボより片頭痛の日数が減った(Ashina et al. 2022)

プラセボでも日数が減っているのは、試験に参加して頭痛を記録すること自体の影響などによるものです。薬の効果は、プラセボとの差で見るのが基本です。また、試験の数字は参加者全体の平均であり、効果の出方には個人差があります。すべての方に同じように効くわけではありません。



4. 対象となる方

ビエプチの対象は、片頭痛と診断された成人の方です(ルンドベック・ジャパン 2026)。

なお、皮下注射のCGRP予防薬(エムガルティ・アジョビ・アイモビーグ)を保険で使う場合は、次のような条件があります。

皮下注射のCGRP予防薬の主な条件(参考)

  • 医師に片頭痛と診断されている
  • 過去3か月間で、片頭痛が平均して月に4日以上ある
  • これまでの予防薬で効果が不十分だった、または副作用などで続けられなかった

ビエプチを保険で使う際の条件は、発売に合わせて示される予定です(2026年10月時点で未定)。決まりしだい、このページでお知らせします。

次のような方は、一度ご相談ください。

  • 飲み薬の予防薬を続けても、片頭痛の日が多い
  • 自己注射が苦手、または打ち忘れが多い
  • エムガルティ・アジョビ・アイモビーグなどを使っているが、別の方法も考えたい

当院では、はじめて受診される方のご相談も、ほかのCGRP予防薬からの切り替えのご相談もお受けしています。片頭痛かどうかの診断から始める必要がある方は、まず初診でお越しください。



5. 副作用と点滴当日の流れ

臨床試験で主にみられた副作用は、過敏症反応(体が薬に対してアレルギーのように反応すること)と、点滴に伴う反応でした(ルンドベック・ジャパン 2026)。

副作用 どんな症状か
過敏症反応 皮膚の発疹やかゆみなど、アレルギーのような反応。まれに、重いアレルギー反応(アナフィラキシー)も報告されています(Ashina et al. 2022)
点滴に伴う反応 点滴中や点滴の直後に起こる体調の変化

点滴中や点滴後に、息苦しさ、全身のじんましん、気分の悪さなどを感じたら、すぐにスタッフにお伝えください。ご帰宅後に気になる症状が出た場合も、当院へご連絡ください。


当院での点滴の流れ

1. 診察
片頭痛の頻度やこれまでの治療を伺い、ビエプチが合うかどうかを医師が判断します。必要に応じてMRI検査を行います。

2. 点滴
腕の静脈から点滴します。時間は30分〜1時間ほどです。

3. 体調の確認
点滴のあとに体調に変わりがないかを確認し、ご帰宅いただきます。

4. 次回は12週後
頭痛の記録をもとに効果を確認しながら、3か月ごとに点滴を続けます。


点滴の流れや、ご自身が対象になるかどうかは、診察でご説明します。

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6. 費用の目安

ビエプチは保険診療で使う薬です。費用は、薬の値段(薬価)と診察・点滴の費用の合計で決まります。

費用は未定です(2026年10月時点)。薬の値段(薬価)が決まりしだい、このページでお知らせします。

ご加入の健康保険によっては、一定額を超えた自己負担が払い戻される「付加給付」がある場合があります。詳しくはご自身の健康保険組合にお問い合わせください。



7. よくある質問

Q. 点滴と皮下注射では、どちらがよく効きますか。

ビエプチと皮下注射の薬を直接比べた試験はないため、どちらが優れているとは言えません。点滴は薬が血液に直接入るため、投与の翌日から効果がみられたという報告があります(Lipton et al. 2020)。通院のしやすさや自己注射が負担かどうかも含めて、診察で一緒に考えます。

Q. いまエムガルティ(またはアジョビ・アイモビーグ)を使っています。切り替えはできますか。

ご相談いただけます。切り替えるかどうか、どのタイミングで切り替えるかは、いまの効き具合や副作用、生活の状況をふまえて医師が判断します。

Q. 当院にかかったことがなくても相談できますか。

はい、初診からご相談いただけます。まず片頭痛の診断と、これまでの治療の確認を行います。お薬手帳や、頭痛の記録(頭痛ダイアリー)があればお持ちください。

Q. ビエプチを使えば、痛み止めは要らなくなりますか。

ビエプチは片頭痛が起きる回数を減らすための予防薬で、起きてしまった発作を止める薬ではありません。発作が起きたときの痛み止め(急性期治療薬)は引き続き使います。予防治療で発作の回数が減ると、痛み止めを使う回数が減ることが期待されます。

Q. 妊娠中や授乳中でも使えますか。

妊娠中・授乳中の方、妊娠を希望されている方は、必ず事前に医師にお伝えください。使うかどうかは、添付文書や個別の状況をふまえて医師が判断します。



8. まとめ

  1. ビエプチ(一般名:エプチネズマブ)は、2026年9月に国内で承認された片頭痛の予防薬です(ルンドベック・ジャパン 2026)。
  2. CGRPの働きを抑える薬で、12週に1回、医療機関で点滴します。自己注射は必要ありません。
  3. アジアの方が多く参加した試験や日本人の長期試験でも、片頭痛の日数の減少が確認されています(Yu et al. 2025;Takeshima et al. 2025)。
  4. 主な副作用は過敏症反応と点滴に伴う反応です。まれに重いアレルギー反応が起こることがあります。
  5. 当院では、初診の方のご相談、ほかのCGRP予防薬からの切り替えのご相談もお受けしています。

片頭痛の予防治療は、選択肢が少しずつ増えています。「いまの治療で十分なのか」「別の方法はないか」と感じている方は、どの方法が生活に合うかを一緒に整理しましょう。



お問い合わせ・ご予約

いわた脳神経外科クリニック(大阪市城東区成育2丁目13番27号/電話 06-6935-2335/京阪本線・野江駅から徒歩4分)です。昼休みをはさまない通し診療を行っています。ご予約は下記から可能です。

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当院公式LINEにてご質問等もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。

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重要:本記事の位置づけ(医療情報として)

  • 本記事は、製造販売元の公表資料や臨床試験の報告に基づく「一般的な医療情報」です。
  • 特定の治療を推奨・保証するものではありません。効果や副作用の出方には個人差があります。
  • 実際に使うかどうかは、問診や検査の結果などを踏まえて医師が判断します。
  • お薬の使用については、必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。
この記事を書いた先生のプロフィール
いわた脳神経外科クリニック 院長 岩田 亮一
医師・医学博士/日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/日本脳神経血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医/日本頭痛学会認定 頭痛専門医
(日本脳卒中学会・日本認知症学会 所属)

脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。
脳血管内治療(カテーテル治療)の専門医でもあり、くも膜下出血や脳動脈解離など「危険な頭痛」の鑑別・初期対応にも力を入れています。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛と付き合ってきました。だからこそ、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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参考文献

  1. ルンドベック・ジャパン 2026, ‘ルンドベック、片頭痛発作の発症抑制を適応として、ビエプチ(エプチネズマブ)の日本における製造販売承認を取得’, プレスリリース, 16 September, viewed 29 October 2026, <https://www.lundbeck.com/jp/jp/press/news-archive>.
  2. Ashina, M, Saper, J, Cady, R et al. 2020, ‘Eptinezumab in episodic migraine: a randomized, double-blind, placebo-controlled study (PROMISE-1)’, Cephalalgia, vol. 40, no. 3, pp. 241–254, DOI 10.1177/0333102420905132.
  3. Ashina, M, Lanteri-Minet, M, Pozo-Rosich, P et al. 2022, ‘Safety and efficacy of eptinezumab for migraine prevention in patients with two-to-four previous preventive treatment failures (DELIVER): a multi-arm, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3b trial’, The Lancet Neurology, vol. 21, no. 7, pp. 597–607, DOI 10.1016/S1474-4422(22)00185-5.
  4. Lipton, RB, Goadsby, PJ, Smith, J et al. 2020, ‘Efficacy and safety of eptinezumab in patients with chronic migraine: PROMISE-2’, Neurology, vol. 94, no. 13, pp. e1365–e1377, DOI 10.1212/WNL.0000000000009169.
  5. Takeshima, T, Danno, D, Imai, N et al. 2025, ‘Long-term tolerability and effectiveness of eptinezumab in Japanese adults with chronic migraine: results of the 60-week open-label SUNSET trial’, The Journal of Headache and Pain, vol. 26, no. 1, p. 275, DOI 10.1186/s10194-025-02214-w.
  6. Yu, S, Matsumori, Y, Kim, BK et al. 2025, ‘Efficacy and safety of eptinezumab in a predominantly Asian population with chronic migraine: results of the randomized, double-blind, placebo-controlled SUNRISE trial’, Cephalalgia, vol. 45, no. 10, 3331024251386095, DOI 10.1177/03331024251386095.