【結論】クマ外傷は「顔」と「頭」に集中します。見た目の傷だけでなく、外からは見えない“脳の損傷”が命に関わることがあり、受傷後は危険なサインを見逃さず早く受診することが何より大切です。
1. 被害は過去最多: 2025年度(令和7年度)のクマによる人身被害は全国で死亡13人にのぼり、これまでで最も多くなりました(環境省 2026)。
2. 外傷は顔・頭頸部に集中: クマは人の顔や頭を狙う傾向があり、ある報告では13例すべてが顔面の外傷で、10例に顔面骨の骨折がみられました(鈴木ほか 2018)。
3. 本当に怖いのは“見えない脳の損傷”: 頭蓋骨骨折や頭蓋内出血(硬膜下血腫など)は、最初は元気でも数時間〜数日後に急変することがあります。
4. このサインは迷わず119番: 意識がもうろうとする・繰り返す嘔吐・けいれん・手足の麻痺・透明な鼻水(髄液漏の疑い)などは緊急受診の目安です。
5. 当院でできること: いわた脳神経外科クリニック(大阪市城東区・京阪「野江」駅徒歩4分)では、クマに限らず「頭を打った」「頭部のケガが心配」というご相談に、脳神経外科専門医の視点で対応します。
※ 本記事は2026年6月時点の情報です。緊急時は迷わず119番通報・救急受診を優先してください。最終的な判断は必ず医師にご相談ください。
大切なお知らせ
本記事はクマによる外傷(頭部・顔面のケガ)に関する一般的な情報の整理を目的としており、診断や治療効果を保証するものではありません。症状やケガの程度には個人差があり、応急処置は状況によって最適な対応が異なります。重いケガや意識の異常がある場合は、記事を読むより先に119番通報・救急受診を行ってください。最終的な判断は必ず医師にご相談ください。
「クマに襲われて大ケガ」——2025年以降、こうしたニュースを目にする機会が急に増えたと感じていませんか。実際に、2025年度(令和7年度)のクマによる人身被害は全国で過去最多を記録しました(環境省 2026)。クマによるケガは、すり傷や打撲では済まないことが多く、とくに顔と頭に重い損傷が集中するのが特徴です。そして脳神経外科の視点で最も注意したいのは、外からは見えない“脳の中”の損傷です。本記事では、クマ外傷の実態・受傷直後の応急処置・「すぐ病院へ行くべき危険なサイン」、そして遭遇を防ぐ行動までを、脳神経外科専門医の視点でできるだけ正確に、わかりやすく整理します。
目次
1. いま「クマ外傷」が深刻化している(被害の現状)
クマによる人身被害は、近年はっきりと増えています。環境省のまとめによると、2025年度(令和7年度)の死亡者は全国で13人にのぼり、これまで最も多かった2023年度(令和5年度)の6人を大きく上回って過去最多となりました(環境省 2026)。被害は東北地方に集中し、秋田県・岩手県・福島県などで多く報告されています。
背景には、クマの分布が広がり、人の生活圏の近くに出てくるようになったことがあります。実際、被害は山奥だけで起きているわけではなく、自宅の敷地内や畑、集落の近くでも起きています。「山に入らなければ大丈夫」とは言い切れないのが、近年の特徴です。
クマ被害で知っておきたいポイント
- 時期: 被害は春から増え、エサを探して活動が活発になる秋(9〜11月、とくに10月)に集中します。
- 場所: 山林だけでなく、人の生活圏(住宅地周辺・畑・通勤通学路)でも発生します。
- 種類: 本州・四国はツキノワグマ、北海道はヒグマ。どちらも重い外傷を起こしえます。
2. クマ外傷はなぜ「顔と頭」に集中するのか
クマは前足の一撃(殴打)や鋭い爪・牙で攻撃します。立ち上がって人と向き合う形になると、ちょうど顔から頭、首のあたりが攻撃を受けやすく、ここに重いケガが集中するのが大きな特徴です。秋田大学のグループが報告したクマ外傷13例の検討では、13例すべてが顔面の外傷を伴い、10例で顔面骨の骨折が認められました(鈴木ほか 2018)。
2-1. 顔のケガ——出血が多く、見た目も深刻になりやすい
顔は血流が豊富なため出血が多くなりやすく、鼻の骨や頬の骨の骨折、まぶたや目そのものの損傷を伴うことがあります。前述の報告でも、鼻骨骨折が最も多く、目のケガで片方の視力を失った例が4例ありました(鈴木ほか 2018)。顔面の損傷は、目・涙の通り道・顔の神経などにも及ぶことがあり、複数の診療科が連携して治療にあたる必要があります。
2-2. 本当に怖いのは「見えない脳の損傷」
脳神経外科の視点で最も警戒すべきなのは、頭蓋骨の骨折や頭の中(脳)の損傷・出血です。同じ報告では、頭蓋底の骨折に髄液漏や硬膜下血腫を合併した例や、頭皮が大きく損傷した例も報告されています(鈴木ほか 2018)。こうした損傷は、受傷直後は意識がはっきりしていても、あとから急に悪化することがあるため、外見の傷の大きさだけで安心することはできません。
| 受傷部位 | 起こりうる主なケガ | 注意点 |
|---|---|---|
| 顔面 | 深い裂創、鼻骨・頬骨などの顔面骨骨折、目の損傷 | 出血が多い。視力・顔の神経に関わることも |
| 頭部(頭蓋・脳) | 頭皮の裂創・剥脱、頭蓋骨骨折、頭蓋内出血(硬膜下血腫など) | 外から見えにくく、時間差で悪化することがある |
| 頸部 | 大きな血管・気道周囲の損傷 | 大量出血・出血性ショックの危険 |
| 腕・体 | かみ傷・引っかき傷、骨折 | 顔・頭をかばう際に負傷しやすい |
※ 受傷部位の傾向は文献に基づく一般的な整理です。実際のケガは状況により異なります(鈴木ほか 2018)。
3. もし襲われたら——受傷直後の応急処置
クマによるケガは重症化しやすいため、応急処置の基本は「安全を確保して、できるだけ早く救急(119番)につなぐ」ことです。自分や周囲の人が落ち着いて行動できるよう、流れを知っておきましょう。
受傷直後にすること(基本の流れ)
- ① 安全な場所へ: まずクマから離れ、屋内や車内など安全を確保します。
- ② 119番通報: 顔・頭のケガや大きな出血、意識の異常があれば、迷わず救急要請を。
- ③ 出血を抑える: 清潔な布やタオルで傷口を直接おさえて圧迫します。
- ④ 頭・首を動かしすぎない: 首のケガの可能性があるため、不用意に揺らさない・無理に起こさないようにします。
- ⑤ 意識・呼吸を確認し保温: 反応や呼吸を確かめ、嘔吐がある場合は体を横向きにして、体を冷やさないようにします。
傷口を水で強くこすったり、刺さった異物を無理に抜いたりするのは避け、救急隊や医療機関の判断を待つのが安全です。とくに目のケガは触らず、ガーゼなどでそっと保護してください。
4. 危険なサインと受診の目安【最重要】
頭部のケガで本当に怖いのは、受傷直後は元気そうに見えても、あとから脳の症状が出てくることです。次のサインが一つでもあれば、ためらわず救急車(119番)を呼ぶか、脳神経外科のある救急病院を受診してください。
このサインがあれば迷わず119番・救急受診
・意識がもうろうとする/呼びかけへの反応が鈍い/すぐ眠ってしまう
・繰り返す嘔吐
・けいれん(ひきつけ)
・手足の麻痺・しびれ、力が入らない
・呂律が回らない・言葉が出ない、物が二重に見える
・透明〜うっすら血の混じった水のような鼻水・耳だれ(髄液漏の疑い)
・押さえても止まらない出血、傷が深い・陥没している
これらは脳や頭蓋内に問題が起きているおそれを示すサインです。とくに打撲・受傷の直後6時間、その後も24〜48時間は急変が起こりやすい時間帯とされ、慎重な経過観察が必要です。受傷時に大きな症状がなくても、あとから様子がおかしくなったときは、すぐに脳神経外科のある病院へ向かってください。
とくに注意したい方
- 高齢の方: 症状が出にくく、数週間〜2か月後に「慢性硬膜下血腫」として現れることがあります。
- 血をサラサラにする薬(抗血栓薬)を飲んでいる方: 頭蓋内出血のリスクが高まります。
- 乳幼児・お子さん: 自分で症状を訴えにくいため、機嫌・顔色・嘔吐などの変化に注意してください。
「頭を打ったとき、本当に怖いのは何か」については、当院の「頭を打ったとき、本当に怖いのは何か?」でもくわしく解説しています。時間差で進む硬膜下血腫についてもあわせてご覧ください。
5. 遭遇を防ぐ・襲われないための行動
クマ外傷は重症化しやすいからこそ、「そもそも出会わない・襲われない」ことが最大の防御です。環境省や自治体が示す対策のポイントを整理します(環境省 出没対応マニュアル;林野庁 n.d.)。
5-1. 遭遇を防ぐ
クマは基本的に人を避けます。問題は、お互いに気づかず突然出会ってしまうことです。山や畑、クマの出没情報がある地域では、クマ鈴やラジオなどで音を出して自分の存在を知らせること、単独行動を避け複数人で行動すること、見通しの悪い場所では立ち止まって周囲を確認することが有効です。早朝・夕方は活動が活発になりやすいので注意します。また、生ごみや収穫しない果実はクマを引き寄せるため、食べ物のにおいを生活圏に残さないことも大切です。
5-2. 遭遇・襲撃されたときの行動
もしクマに出会ってしまったら、大声を出したり背を向けて走ったりせず、落ち着いてクマを見ながらゆっくり後退します。走って逃げると追いかける本能を刺激してしまいます。クマ撃退スプレーがあれば、十分に近づいたときに目と鼻をめがけて噴射します。それでも襲われてしまった場合は、地面にうつ伏せになり、両手を首の後ろに回して頭と首を守る防御姿勢をとります。リュックを背負っていれば背中の保護になります。北海道のヒグマへの対処は、知床財団の情報もご参照ください(知床財団 n.d.)。
| 場面 | するとよいこと | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 山・畑に入る前 | 音を出す・複数人・出没情報の確認 | 単独で無音で行動する |
| 遠くにクマを見たら | 静かにその場を離れ、距離をとる | 近づく・刺激する・写真を撮りに行く |
| 至近距離で遭遇 | クマを見ながらゆっくり後退、スプレー準備 | 背を向けて走る・大声で騒ぐ |
| 襲われたとき | うつ伏せで頭と首を両手で守る | あおむけ・頭や顔を無防備にする |
※ 環境省・自治体の対処情報をもとにした一般的な整理です。状況により最適な行動は異なります(環境省 出没対応マニュアル)。
6. 当院でできること
いわた脳神経外科クリニックは、大阪市城東区・京阪「野江」駅から徒歩4分の脳神経外科です。大阪の都市部にクマはいませんが、「頭を打った」「頭部のケガのあと、頭痛や違和感が続く」といったご相談は、転倒・事故・スポーツなど日常のあらゆる場面で起こりえます。クマ外傷で学べる「頭部のケガで本当に怖いのは見えない脳の損傷」という視点は、こうした身近なケガにもそのまま当てはまります。
6-1. 頭を打ったあとの不安に対応します
当院では、頭部外傷後の頭痛・めまい・違和感などのご相談に対応しています。とくに、高齢の方が転倒して頭を打った、血をサラサラにする薬を飲んでいる方が頭をぶつけた、といったケースは、時間差で進む頭蓋内出血に注意が必要です。気になる症状があれば、早めにご相談ください。なお、意識障害・繰り返す嘔吐・けいれん・麻痺など重い症状がある場合は、当院ではなくまず救急要請(119番)をお願いします。
6-2. 通いやすい体制
当院は昼休みなしの通し診療を行っており、お仕事や家事の合間にも受診いただきやすい体制です。WEB予約・LINEにも対応しています。「これくらいで受診してよいのかな」とためらう必要はありません。頭部のケガは“念のため”の受診が安心につながります。
よくある質問
Q1. 意識があってしっかり話せれば、受診しなくても大丈夫ですか?
A. いいえ、安心はできません。頭部のケガは、受傷直後は意識がはっきりしていても、あとから頭蓋内出血などが進んで急変することがあります。クマによるケガのように傷が大きい場合はもちろん、軽くみえても、繰り返す嘔吐・強い頭痛・様子の変化があれば受診してください。とくに受傷後24〜48時間は注意が必要です。
Q2. たんこぶ(こぶ)ができていれば、かえって安心と聞きました。
A. 一概には言えません。こぶの有無と頭の中の損傷の重さは必ずしも一致しません。こぶがあってもなくても、上記の危険なサインがあれば受診が必要です。見た目だけで判断しないことが大切です。
Q3. 子どもや高齢の家族が頭を打ちました。気をつけることは?
A. お子さんは自分で症状をうまく伝えられないため、機嫌・顔色・嘔吐・元気のなさなどの変化に注意してください。ご高齢の方は症状が出にくく、数週間〜2か月後に「慢性硬膜下血腫」として頭痛・物忘れ・歩きにくさなどが現れることがあります。気になる変化があれば早めにご相談ください。
Q4. 頭やケガは何科を受診すればよいですか?
A. 頭の中(脳)の評価は脳神経外科が専門です。一方で、クマ外傷のように顔面・目・皮膚の損傷を伴う重いケガは、形成外科・眼科・耳鼻咽喉科など複数科の連携が必要になり、救急対応のできる総合的な病院での治療が基本です。重症が疑われるときは、まず救急要請を優先してください。
まとめ
- クマによる人身被害は2025年度に過去最多となり、誰にとっても他人事ではなくなっています(環境省 2026)。
- クマ外傷は顔と頭に集中し、顔面骨骨折や目の損傷、頭蓋内出血など重いケガを伴いやすいです(鈴木ほか 2018)。
- 本当に怖いのは“見えない脳の損傷”。受傷後6時間〜48時間は急変に注意し、危険なサインがあれば迷わず119番を。
- 遭遇を防ぐ行動(音を出す・複数人・出没情報の確認)と、襲われたときの防御姿勢を知っておきましょう。
- クマに限らず「頭を打ったあとが心配」というときは、大阪市城東区・野江駅徒歩4分のいわた脳神経外科クリニックにご相談ください。
頭部のケガは、「大丈夫だろう」と様子を見ているうちに進むことがあります。少しでも不安があれば、一度、脳神経外科専門医にご相談ください。念のための受診が、安心につながります。
お問い合わせ・ご予約
大阪市城東区・京阪「野江」駅徒歩4分のいわた脳神経外科クリニックでは、頭部外傷後の頭痛・違和感をはじめ、頭に関するさまざまなご相談に対応しています。問診・診察から必要な検査、その後のフォローまで一貫して対応します。昼休みなしの通し診療で、通いやすさにも配慮しています。
※ 本記事は2026年6月時点の情報です。重いケガ・意識の異常など緊急時は、受診より先に119番通報を優先してください。
医療機関名: いわた脳神経外科クリニック/診療責任者: 院長(日本脳神経外科学会 専門医・指導医)/所在地: 大阪市城東区
当院公式LINEにてご質問等もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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参考文献
- 環境省 2026, クマ類による人身被害について(令和7年度・速報値), 環境省, viewed 15 June 2026, <https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html>.
- 環境省 n.d., クマ類出没対応マニュアル(改定版), 環境省, viewed 15 June 2026, <https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/>.
- 鈴木真輔, 辻正博, 椎名和弘, 小谷野博正, 小泉洸, 川嵜洋平, 佐藤輝幸 & 山田武千代 2018, ‘クマによる顔面外傷13症例の検討’, 頭頸部外科, vol. 28, no. 2, pp. 183-190, viewed 15 June 2026, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjshns/28/2/28_183/_pdf>.
- 林野庁 n.d., 森林内作業等におけるクマ被害の防止について, 林野庁東北森林管理局, viewed 15 June 2026, <https://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/apply/nyurin/attach/pdf/index-6.pdf>.
- 知床財団 n.d., 出会った時は(ヒグマ対処法), 公益財団法人知床財団, viewed 15 June 2026, <https://www.shiretoko.or.jp/higumanokoto/bear/bear2/>.
免責事項
本記事はクマによる外傷および頭部外傷に関する一般的な情報提供を目的としており、診断・治療効果を保証するものではありません。症状・ケガの程度には個人差があり、本記事の応急処置や受診目安はすべての状況に当てはまるものではありません。緊急時は記事の内容より119番通報・救急受診を優先してください。症状や治療については必ず医師にご相談ください。本記事は2026年6月時点の情報に基づきます。















