【結論】片頭痛の予防薬「CGRP製剤」を使う人は、緑内障リスクが低いという関連が最新研究で報告されました(ただし“予防薬”ではありません)。

1. 25%低い「関連」が報告: 片頭痛患者約7.3万人を調べた2026年の研究で、CGRP製剤使用者の緑内障リスクが約25%低いと報告されました(Chou et al. 2026)。

2. あくまで観察研究=因果は未証明: 「飲めば緑内障を防げる」と証明したものではなく、関連が見られた段階です。

3. 差が出たのは「注射の抗体製剤」だけ: 飲み薬のゲパント系(アクイプタ等)では明確な差は出ませんでした。

4. 緑内障の予防目的では使えません: CGRP製剤は片頭痛予防のための薬で、緑内障治療・予防の承認はありません。

5. 当院の頭痛外来: いわた脳神経外科クリニック(大阪市城東区・京阪「野江」駅徒歩4分)では、頭痛専門の視点でCGRP製剤を含む片頭痛治療をご相談いただけます。

本記事は2026年6月時点の情報です。薬剤の適応・費用は変わることがあり、最終的な治療判断は必ず医師にご相談ください。

大切なお知らせ
本記事はCGRP製剤と緑内障に関する研究結果の一般的な情報整理を目的としており、特定の治療効果や緑内障予防効果を保証するものではありません。紹介する研究は「関連(相関)」を示した観察研究であり、因果関係を証明したものではありません。CGRP製剤は片頭痛予防の薬であり、緑内障の予防・治療薬として承認されたものではありません。効果や副作用には個人差があります。最終的な判断は必ず医師にご相談ください。

「片頭痛の薬を使っていると、緑内障になりにくいって本当?」——2026年5月、米国神経学会の学術誌『Neurology』にそんな話題を呼ぶ研究が掲載され、ニュースでも取り上げられました。片頭痛の新しい予防薬であるCGRP製剤を使っている人は、目の病気である緑内障のリスクが低かった、という内容です。ただし、見出しだけが独り歩きすると「片頭痛の薬で緑内障が防げる」という誤解につながりかねません。本記事では、脳神経外科専門医の視点で、この研究で何がわかったのか・何はまだ言えないのかを、できるだけ正確に、わかりやすく整理します。


片頭痛のお薬選びで迷っていませんか?大阪市城東区・京阪「野江」駅徒歩4分/頭痛専門の視点でCGRP製剤を含む治療をご相談いただけます。

 

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目次



1. そもそも「CGRP製剤」とは?

CGRP(シー・ジー・アール・ピー)とは、「カルシトニン遺伝子関連ペプチド」という体内の物質のことです。片頭痛の発作が起きるとき、この物質が脳の血管周辺で増え、痛みや血管の拡張に関わると考えられています。そこで、このCGRPのはたらきをブロックして片頭痛発作を起こりにくくする(=予防する)ために開発されたのが「CGRP製剤」です。発作が起きてから飲む痛み止めとは違い、発作そのものを減らすことを目的にした予防薬である点が特徴です。

CGRP製剤は、大きく2つのタイプに分かれます。この「2タイプの違い」が、今回の研究を理解するうえでとても重要になります。

CGRP製剤の2つのタイプ

  • ① 抗体製剤(注射タイプ): 月1回などの皮下注射。日本ではエムガルティ(ガルカネズマブ)・アジョビ(フレマネズマブ)・アイモビーグ(エレヌマブ)の3剤が2021年から使われています。
  • ② ゲパント系(飲み薬タイプ): 経口薬。日本ではアクイプタ(アトゲパント)が2026年4月に発売されました。

どちらもCGRPの経路に作用しますが、「抗体(注射)」と「ゲパント(飲み薬)」では作用のしかたが少し異なります。CGRP製剤そのものの効果・継続期間については、当院の別記事「片頭痛治療薬(CGRP製剤)について」「CGRP製剤はいつまで続ける?」もあわせてご覧ください。



2. 最新研究でわかったこと(Neurology 2026を数字で読む)

今回話題になったのは、米国神経学会の学術誌『Neurology』に2026年5月6日に掲載された研究です(Chou et al. 2026)。ブラウン大学の研究チームが、大規模な医療データベースを使って、片頭痛患者およそ7万3千人を後ろ向きに調べました。


2-1. 研究の概要

研究では、CGRP製剤を使った36,822人と、それ以外の片頭痛予防薬(バルプロ酸・トピラマート・降圧薬・抗うつ薬など)を使った36,822人を、年齢・片頭痛の頻度・高血圧の有無などの条件をそろえて比較し、最長3年間追跡しました(Chou et al. 2026)。


2-2. 結果:緑内障リスクが約25%低かった

追跡期間中に緑内障を発症した人の割合は、次のとおりでした。

グループ 緑内障を発症した人数 割合
CGRP製剤を使った群 153人 0.42%
他の予防薬を使った群 223人 0.61%

※ 各群36,822人。年齢・片頭痛頻度・高血圧歴などを補正した結果、CGRP群のリスクは約25%低いと報告されました(Chou et al. 2026)。


2-3. 差が出たのは「注射の抗体製剤」だけ

ここがこの研究のいちばん大切なポイントです。リスク低下の関連が見られたのは、注射の抗体製剤(エレヌマブ・フレマネズマブ・ガルカネズマブなど)を使った人たちでした。一方で、飲み薬のゲパント系(アトゲパント・リメゲパント)では、はっきりとした差は確認されませんでした(Chou et al. 2026)。同じ「CGRPに作用する薬」でも、タイプによって結果が違ったのです。なお、リスク低下の関連はとくに女性や高齢の方で強くみられたと報告されています(Chou et al. 2026)。


「自分の片頭痛にはどのタイプが合う?」——頭痛専門の視点でご一緒に考えます。

 

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3. ここを誤解しないで(観察研究の限界と「予防薬ではない」こと)

ニュースの見出しだけを見ると「CGRP製剤で緑内障が防げる」と受け取ってしまいがちですが、それは正確ではありません。この研究の「言えること」と「まだ言えないこと」を整理します。

この研究から言えること まだ言えないこと
CGRP製剤の使用と、緑内障リスクの低さに「関連」があった CGRP製剤が緑内障を「防ぐ」と因果関係が証明されたわけではない
差が見られたのは注射の抗体製剤だった 飲み薬のゲパントで効果があるとは言えない(差が出ていない)
大規模なデータで一定の傾向が示された 緑内障の家族歴など、調べきれていない要因が結果に影響した可能性がある

※ 研究著者自身も「結果の確認にはさらなる研究が必要」と述べています(AAN 2026)。

とくに大切な2点
・これは「観察研究」です。薬を飲んだから緑内障が減ったのか、それとも別の要因なのかを確定はできません
・CGRP製剤はあくまで片頭痛を予防するための薬であり、緑内障の予防・治療を目的に使うことはできません(そのような承認はありません)。緑内障が心配な方が、緑内障対策としてCGRP製剤を使うことは適切ではありません。

つまり今回の研究は、「片頭痛治療を考えるうえで頭の片隅に置いておくとよい、興味深い“追加情報”」であって、治療方針を決定づけるものではありません。なお、飲み薬のゲパントについては当院の「アクイプタ(アトゲパント)とは」もご参照ください。



4. なぜ関連が? 推測されるしくみと、緑内障の基礎知識

では、なぜCGRP製剤と緑内障リスクに関連が見られたのでしょうか。現時点でははっきりとした理由はわかっておらず、あくまで仮説の段階です。


4-1. 推測されているしくみ(仮説)

CGRPという物質は、血管の収縮・拡張や炎症の調節に関わっています。研究者らは、片頭痛と緑内障の両方に「血管の反応の乱れ」が関係している可能性があり、CGRPに作用する薬が何らかの形で目の状態にも影響したのではないか、と推測しています(AAN 2026)。ただし、これはあくまで一つの考え方で、今後の研究で確かめる必要があります。


4-2. 知っておきたい緑内障の基礎

緑内障は、目から脳へ情報を送る視神経が少しずつ傷んで、見える範囲(視野)が欠けていく病気です。日本では40歳以上の約20人に1人にみられるとされ、中途失明の原因として上位に挙げられます(日本緑内障学会)。やっかいなのは、初期にはほとんど自覚症状がないことです。視野の欠けは少しずつ進むため、気づいたときには進行していることも少なくありません。

緑内障で大切なこと

  • 早期発見が何より重要: 自覚症状が出にくいため、定期的な眼科検診が役立ちます。
  • 診療科は眼科: 緑内障の検査・治療は眼科で行います。気になる方は眼科にご相談ください。
  • 片頭痛とは別の病気: 片頭痛の治療をしていても、緑内障の検診は別途必要です。

「片頭痛で頭の検査(MRIなど)はしたけれど、目の検査はしていない」という方は、この機会に眼科検診も検討してみてはいかがでしょうか。


片頭痛のこと、お薬のこと。気になる点はお気軽にご相談ください。

 

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5. 当院での片頭痛・CGRP製剤へのご相談

いわた脳神経外科クリニックは、大阪市城東区・京阪「野江」駅から徒歩4分の頭痛外来です。片頭痛は「市販薬でしのぐしかない」と思われがちですが、近年はCGRP製剤をはじめ、予防の選択肢が大きく広がっています。当院では、お一人おひとりの頭痛のタイプや生活に合わせて、治療方針をご一緒に考えます。


5-1. 通いやすい体制

当院は昼休みなしの通し診療を行っており、お仕事や家事の合間にも通院いただきやすい体制です。WEB予約・LINEにも対応しています。「片頭痛くらいで受診してよいのかな」とためらう必要はありません。発作の回数が多い・市販薬が手放せない、という方こそ一度ご相談ください。


5-2. CGRP製剤を含めた治療のご相談

CGRP製剤は、これまでの予防薬で十分な効果が得られなかった方などが対象となる治療です。注射の抗体製剤と飲み薬のゲパントのどちらが向くかは、頭痛の状態・通院しやすさ・費用などを踏まえて検討します。今回ご紹介した研究のような「緑内障リスクとの関連」については、現時点では治療を決める根拠にはなりませんが、ご質問があれば診察時にお答えします。緑内障そのものが心配な場合は、眼科での検診もあわせておすすめしています。



6. よくある質問

Q1. 緑内障を予防するためにCGRP製剤を使えますか?

A. いいえ。CGRP製剤は片頭痛を予防するための薬で、緑内障の予防・治療を目的に使うことはできません。今回の研究も「関連」を示したもので、緑内障予防の効果が証明されたわけではありません。緑内障が心配な方は眼科にご相談ください。

Q2. 注射(抗体製剤)と飲み薬(ゲパント)、どちらがよいですか?

A. 一概には言えません。頭痛の頻度や程度、通院しやすさ、費用など、人によって向き不向きがあります。今回の研究では緑内障リスクとの関連が見られたのは注射の抗体製剤でしたが、これだけで薬を選ぶべきではありません。診察で総合的に検討します。

Q3. すでにCGRP製剤を使っています。緑内障の検査は必要ですか?

A. 片頭痛治療とは別に、緑内障の検診は年齢に応じて受けることをおすすめします。緑内障は初期に自覚症状が出にくいため、40歳以上の方は定期的な眼科検診が早期発見に役立ちます。

Q4. CGRP製剤の費用はどのくらいですか?

A. CGRP製剤は保険適用の治療です(一定の要件があります)。費用は製剤や3割負担などの条件によって異なるため、診察時に最新の情報をご案内します。費用面のご不安も遠慮なくご相談ください。



まとめ

  1. 2026年の研究で、CGRP製剤を使う片頭痛患者は緑内障リスクが約25%低いという「関連」が報告されました(Chou et al. 2026)。
  2. これは観察研究で、因果関係(防げるという証明)ではありません。CGRP製剤は緑内障の予防薬ではありません。
  3. リスク低下の関連が見られたのは注射の抗体製剤で、飲み薬のゲパントでは明確な差はありませんでした。
  4. 緑内障は初期に症状が出にくい病気です。心配な方は片頭痛治療とは別に、眼科検診をご検討ください。
  5. 片頭痛の治療やCGRP製剤については、大阪市城東区・野江駅徒歩4分のいわた脳神経外科クリニックにご相談ください。

片頭痛の予防には、いまいくつもの選択肢があります。「市販薬でしのぐしかない」とあきらめる前に、一度、頭痛専門の視点でご相談ください。あなたに合った治療をご一緒に考えます。


お問い合わせ・ご予約


大阪市城東区・京阪「野江」駅徒歩4分のいわた脳神経外科クリニックでは、片頭痛をはじめとする頭痛の診療を行っています。CGRP製剤を含む予防治療のご相談から、検査・フォローまで一貫して対応します。昼休みなしの通し診療で、通いやすさにも配慮しています。

※ 本記事は2026年6月時点の情報です。薬剤の適応・費用は変わることがあり、治療の最終判断は医師の診察によります。

医療機関名: いわた脳神経外科クリニック/診療責任者: 院長(日本脳神経外科学会 専門医・指導医)/所在地: 大阪市城東区

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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参考文献

  1. 日本頭痛学会 2021, CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版), 日本頭痛学会, viewed 15 June 2026, <https://www.jhsnet.net/guideline_CGRP.html>.
  2. 日本緑内障学会 2022, 緑内障診療ガイドライン(第5版), 日本緑内障学会, viewed 15 June 2026, <https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/glaucoma5th.pdf>.
  3. American Academy of Neurology 2026, Certain migraine prevention drugs associated with reduced risk of glaucoma, American Academy of Neurology, viewed 15 June 2026, <https://www.aan.com/PressRoom/home/PressRelease/5338>.
  4. Chou, CC, Wu, JW, Lin, HJ, Wang, IJ, Pan, SY & Weng, CH 2026, ‘Glaucoma Risk Associated With Calcitonin Gene–Related Peptide Inhibitor Use in Migraine: A Multinational Cohort Study’, Neurology, vol. 106, no. 11, p. e218035, DOI 10.1212/WNL.0000000000218035, viewed 15 June 2026, <https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000218035>.

免責事項
本記事はCGRP製剤と緑内障に関する研究の一般的な情報提供を目的としており、診断・特定の治療効果・緑内障予防効果を保証するものではありません。紹介した研究は関連を示した観察研究であり、因果関係を証明したものではありません。CGRP製剤は片頭痛予防の薬であり、緑内障の予防・治療薬ではありません。効果・副作用には個人差があります。症状や治療については必ず医師にご相談ください。本記事は2026年6月時点の情報に基づきます。