
この記事で分かること
- 月経に関連する片頭痛は、急性期の痛み止めだけでは対応しきれないことがあり、「予防」という考え方があります
- 発作が月経の時期に集中している場合は、その前後だけ薬を使う「短期予防(ミニ予防)」という方法があります
- 短期予防でも発作が多いときは、CGRPに関わる予防薬などが選択肢になることがあり、向き不向きは医師が判断します
「生理のたびに片頭痛で寝込んでしまう」「痛み止めを飲んでも、月経のときだけはなかなか効かない」。毎月くり返す重い頭痛に、市販薬や急性期の治療だけでは追いつかず、つらい思いをされている方は少なくありません。仕事や家事を休めない日に限って動けなくなり、ご自身を責めてしまう方もいらっしゃいます。
月経に関連する片頭痛は、月経以外のときの発作にくらべて重く、長引き、治療が効きにくい傾向があると報告されています。だからこそ、「痛くなってから抑える」だけでなく、「起こりにくくする」という予防の発想が助けになります。発作の起こり方によって、予防の方法にはいくつかの選択肢があります。
この記事は、難治性になりやすい月経の片頭痛を「予防」という切り口で整理する記事です。それぞれのお薬のくわしい比較は個別の記事にゆずり、ここでは「月経という軸で、どう予防を考えるか」に絞ってお伝えします。
本記事は、公的なガイドラインや研究報告にもとづく一般的な医療情報です。どの治療・予防が向いているかは、症状やほかのお薬との兼ね合いをふまえて医師が判断します。
目次
大阪で月経のたびの重い片頭痛にお悩みの方は、いわた脳神経外科クリニックの頭痛外来へお気軽にご相談ください。
1. 月経の片頭痛と予防
片頭痛は女性に多い頭痛で、とくに20〜40代の働き盛りの世代で目立ちます。その背景のひとつに、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの変動があります。月経の前になるとエストロゲンは急激に低下し、この「エストロゲン離脱」と呼ばれる急な落ち込みが、片頭痛発作の引き金になると考えられています(Raffaelli et al. 2023)。
月経に関連する片頭痛への対応は、大きく「発作が起きたときの治療(急性期治療)」と「発作を起こしにくくする予防」に分けて考えます。急性期治療は痛みが出てから抑える方法、予防は発作そのものを減らす方法です。月経のたびに決まって重い発作が起こる方や、痛み止めが追いつかない方では、予防を組み合わせることで楽になる余地があります。
予防を考えるうえで大切なのが、「自分の発作が、月経の時期にどれくらい集中しているか」を知ることです。頭痛が起こった日付を数か月記録する頭痛ダイアリーをつけると、月経との関係が見えてきて、どの予防が向いているかを相談しやすくなります。
2. 急性期治療だけでは難しい理由
「生理のときの頭痛は、いつもよりつらい」。多くの方が感じているこの実感には、根拠があります。月経の前後に起こる片頭痛発作は、月経以外の時期の発作にくらべて、痛みが強く、持続時間が長く、治療が効きにくい傾向があると報告されています(Raffaelli et al. 2023)。痛み止めを使ってもぶり返しやすく、急性期の治療だけでは乗り切りにくいことがあります。
急性期には、消炎鎮痛薬(NSAIDs)や、片頭痛に用いるトリプタン系の薬が使われます。日本頭痛学会(2021)では、過去の発作でNSAIDsの効果が乏しかった場合に、トリプタン系薬剤が選択肢になると整理されています。ただ、「効きにくいから」と痛み止めを重ねてしまうと、かえって頭痛が慢性化してしまう「薬剤の使用過多による頭痛」につながることもあります。
月経のたびに寝込む、市販薬を使う量が増えているといったときは、我慢を続けたり薬を足したりするより、予防という選択肢を含めて一度ご相談いただくほうが安心です。生理中のこめかみの痛みについては「生理中のこめかみの頭痛」もご参照ください。
「毎月の頭痛が重くて、痛み止めが追いつかない」と感じるときは、頭痛外来でご相談いただけます。
3. 月経前後の「短期予防」
発作が月経の時期に集中している場合に選択肢となるのが、「短期予防(ミニ予防)」という考え方です。毎日薬を飲み続けるのではなく、頭痛が起こりやすい月経の前後だけにしぼって、予防的に薬を使う方法です。以下は一般的な考え方で、実際にどの方法が向いているかは医師が判断します。
短期予防とはどんな方法か
日本頭痛学会(2021)は、月経の1〜2日前から数日間だけ、トリプタン系やNSAIDsを予防的に用いる短期予防を、月経に関連する片頭痛の選択肢として整理しています。月経の時期をねらって短期間だけ備えるため、毎日の予防薬にくらべて負担が少ないのが特徴です。月経周期が規則的で、発作の時期を予測しやすい方に向いていることがあります。
月経片頭痛の治療をまとめたメタ解析でも、月経前後に予防薬を用いる方法や予防薬による発作の減少が報告されています(Khoo et al. 2024)。どの薬をいつから使うかは、月経周期の規則性や発作の重さによって変わるため、頭痛ダイアリーをもとに相談して決めていきます。
ホルモンを整えるという選択肢
エストロゲンの急な低下が引き金になるという考え方から、ホルモンを安定させる目的で、婦人科と連携してエストロゲン・プロゲスチン配合薬(低用量ピルなど)を検討することもあります。ただし、前兆のある片頭痛(頭痛の前に視野の一部にギザギザした光が見える閃輝暗点などを伴うもの)の方がエストロゲンを含むピルを使う場合は、脳梗塞などのリスクという観点から慎重な判断が必要です。
「リスクを正しく知り、安全に付き合っていく」ために、自己判断せず、頭痛と婦人科の両面から医師にご相談ください。ピルと片頭痛・脳梗塞リスクの関係は「ピルと片頭痛・脳梗塞リスク」でくわしく解説しています。
月経前後の短期予防については、当院の解説動画でもお伝えしています。あわせてご覧ください。
4. 発作が多いときの予防薬
短期予防を行っても発作のコントロールが難しい場合や、月経以外の時期にも発作が多い場合には、定期的に使う予防薬が検討されます。そのひとつが、片頭痛の発症に関わるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質に作用する「CGRP関連薬」です。ここでは月経という軸から一般的な位置づけを整理し、個々のお薬のくわしい比較は個別の記事にゆずります。
CGRP関連薬には、月に1回などの間隔で使う注射薬と、内服薬があります。月経に関連する片頭痛を持つ女性を対象にした解析では、CGRPに作用する予防薬で片頭痛の日数が減ったことが報告されています(Pavlovic et al. 2020)。月経片頭痛のメタ解析でも、予防薬による発作の減少が示されています(Khoo et al. 2024)。ただし効果や副作用には個人差があり、どのお薬が向いているかは、経過をみながら医師が判断します。
お薬選びは医師と相談して
CGRP関連薬には複数の種類があり、投与の間隔(毎日の内服か、定期的な注射か)や使い方が異なります。それぞれの特徴の比較は「CGRP関連薬(片頭痛予防薬)の比較」で、内服のCGRP関連薬については「アクイプタ(内服の片頭痛予防薬)」で整理しています。特定のお薬が常に良いということではなく、月経周期や生活スタイル、ほかのお薬との兼ね合いをふまえて選んでいきます。
なお、妊娠・授乳を考えている時期は、使えるお薬が変わります。予防薬を始める前には、そうしたライフプランも含めてご相談いただくと安心です。
5. 受診の目安と関連テーマ
月経に関連する頭痛は、予防という点で対策の余地が大きい頭痛です。次のようなときは、我慢を続けるより頭痛外来でご相談いただくことをおすすめします。
※スマホでは横スクロールできます
| こんなとき | おすすめの対応 |
|---|---|
| 月経のたびに寝込む・予定を休む | 短期予防を含めて頭痛外来で相談する |
| 痛み止めが効きにくい・使う量が増えている | 薬の見直しと予防のため一度受診する |
| 短期予防をしても発作が多い・月経以外にも起こる | 定期的な予防薬の選択肢を相談する |
| 前兆(閃輝暗点など)があり、ピルの使用を考えている | 頭痛と婦人科の両面から相談する |
いっぽうで、これまでに経験したことのない突然の激しい頭痛、手足のまひ、ろれつが回らないといった症状は、月経とは関係のない別の病気のサインのことがあります。こうしたときは、ためらわず119番を呼んでください。呼ぶかどうか迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
月経の片頭痛は、季節や体調の影響も受けます。夏場の頭痛やめまいの見分け方は「熱中症の頭痛・めまいと脳の病気」もあわせてご覧ください。気になるテーマから読み進めていただくと、ご自身の頭痛への理解が深まります。
6. よくある質問
Q. 月経のたびの片頭痛は、予防できますか?
発作が起こる時期や回数によって、予防の考え方があります。発作が月経の前後に集中している場合は、その時期だけ薬を使う短期予防が選択肢になります。発作が多い場合や月経以外の時期にも起こる場合は、定期的な予防薬を検討することもあります。まずは頭痛が起こった日付を数か月記録し、頭痛外来でご相談いただくと、ご自身に合った方法を考えやすくなります。
Q. 短期予防は、どのように行うのですか?
月経の1〜2日前から数日間だけ、トリプタン系やNSAIDsなどを予防的に用いる方法です。毎日薬を飲み続けるのではなく、頭痛が起こりやすい時期にしぼって備えます。月経周期が規則的で、発作の時期を予測しやすい方に向いていることがあります。どの薬をいつから使うかは、症状や周期をふまえて医師が判断しますので、自己判断で始めず一度ご相談ください。
Q. CGRPに関わる予防薬は、月経の片頭痛にも使えますか?
月経に関連する片頭痛を持つ女性を対象にした解析でも、CGRPに作用する予防薬で片頭痛の日数が減ったことが報告されています。ただし効果や副作用には個人差があり、種類や使い方もさまざまです。特定のお薬が常に良いということではなく、発作の状況やライフプランをふまえて医師が判断します。妊娠・授乳を考えている時期は使えるお薬が変わるため、その点も含めてご相談ください。
Q. 低用量ピルは、月経の片頭痛の予防になりますか?
エストロゲンを安定させることで片頭痛が和らぐ場合がある一方、前兆のある片頭痛の方では脳梗塞などのリスクという観点から慎重な判断が必要です。効果もリスクも個人差があるため、自己判断はせず、頭痛と婦人科の両面から医師にご相談ください。くわしくはピルと片頭痛・脳梗塞リスクの記事もご覧ください。
7. まとめ
- 月経に関連する片頭痛は重く長引きやすいため、急性期の治療だけでなく「予防」という考え方が助けになります。
- 発作が月経の前後に集中している場合は、その時期だけ薬を使う短期予防(ミニ予防)が選択肢になります。
- 短期予防でも発作が多いときは、CGRPに関わる予防薬などが検討され、種類や使い方は医師が判断します。
- 前兆のある片頭痛の方のピル使用は慎重な判断が必要で、妊娠・授乳の予定によっても使えるお薬が変わります。
毎月の頭痛は、「体質だから」とあきらめる必要はありません。発作の起こり方に合わせて予防を組み立てることで、楽になる余地は十分にあります。つらい月経の頭痛でお困りのときは、どうぞお気軽にご相談ください。
お問い合わせ・ご予約
大阪で月経に関連する頭痛、くり返す片頭痛の予防が気になる方は、いわた脳神経外科クリニックへお気軽にご相談ください。ご予約は、下記から可能です。
当院公式LINEにてご質問等もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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重要:本記事の位置づけ(医療情報として)
- 本記事は、公的資料や研究報告に基づく「一般的な医療情報」です。
- 特定の治療・お薬を推奨・保証するものではありません。効果や副作用の感じ方には個人差があります。
- 実際の診断・治療・予防は、症状・既往歴などを踏まえて医師が判断します。気になる症状があるときは受診してください。
参考文献
- 日本頭痛学会 2021, 頭痛の診療ガイドライン2021, 日本頭痛学会, viewed 30 July 2026, <https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf>.
- Khoo, CCW, Liu, CC, Lu, M, Huang, YC & Weng, HY 2024, ‘Acute and preventive treatment of menstrual migraine: a meta-analysis’, The Journal of Headache and Pain, vol. 25, no. 1, 143, DOI 10.1186/s10194-024-01848-6, viewed 30 July 2026, <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11373287/>.
- Pavlovic, JM, Paemeleire, K, Göbel, H, Bonner, J, Rapoport, A, Kagan, R, Zhang, F, Picard, H & Mikol, DD 2020, ‘Efficacy and safety of erenumab in women with a history of menstrual migraine’, The Journal of Headache and Pain, vol. 21, no. 1, 95, DOI 10.1186/s10194-020-01167-6, viewed 30 July 2026, <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7398400/>.
- Raffaelli, B, Do, TP, Chaudhry, BA, Ashina, M, Amin, FM & Ashina, H 2023, ‘Menstrual migraine is caused by estrogen withdrawal: revisiting the evidence’, The Journal of Headache and Pain, vol. 24, no. 1, 131, DOI 10.1186/s10194-023-01664-4, viewed 30 July 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37730536/>.
















