メマリーで全脳照射の脳壊死は防げる?脳神経外科専門医が解説

この記事で分かること

  • メマリー(メマンチン)が全脳照射の文脈で話題になる本当の理由
  • RTOG 0614試験の結果の「正確な読み方」(主要評価項目は未達でした)
  • 「認知機能の保護」と「遅発性脳壊死の治療」がなぜ別の話なのか
  • 遅発性脳壊死の現在の治療選択肢と本邦での扱い
  • 全脳照射後の症状変化に気づいたとき、ご家族にできること

※効果や副作用には個人差があります。最終判断は主治医にご相談ください。

大切なご家族が脳腫瘍や転移性脳腫瘍と診断され、全脳照射(WBRT:Whole Brain Radiotherapy)を受けることになった——そう聞いて、急いで治療内容を調べているうちに、主治医から「メマリーという薬を飲んでもらいます。全脳照射の副作用を予防するためです」と説明されたご家族も多いのではないでしょうか。

そして、おそらく検索された後にこう感じられたのではないでしょうか。「メマリーって、認知症のお薬じゃないの?」「全脳照射で認知症になるってこと?」「飲ませても大丈夫?」「むしろ脳が壊れたりしない?」——もっともなご不安です。

本記事では、全脳照射に伴う「認知機能の変化」と「遅発性脳壊死」という、性質の異なる2つの話題を整理しながら、メマリー(メマンチン)の位置づけと、本邦での扱い、ご家族が今できることをお伝えします。

本記事は、全脳照射を受けられた患者さん・ご家族向けの一般的な医療情報の提供を目的としています。診断・治療の代替ではなく、薬剤の使い方・治療選択肢は患者さんごとに異なります。具体的な判断は主治医とご相談ください。


目次



全脳照射後のお薬や症状の変化について、当院でもセカンドオピニオン・フォロー外来を承っています。

 

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1. 結論:メマリーは「脳壊死治療薬」ではありません

結論からお伝えします。全脳照射に関連してメマリー(一般名:メマンチン)が話題に上ることは多いのですが、その目的は「遅発性脳壊死そのものの治療」ではなく、「放射線治療に伴う認知機能障害の予防・遅延」です。両者は性質がまったく異なります。

さらに重要な点として、本邦におけるメマリーの承認適応は「中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」のみです。海外の臨床試験で報告されている「全脳照射時の認知機能予防」は、日本では適応外使用という位置づけになります。

「機能」と「構造」は別物:メマリーは、神経細胞の「過剰な働き」を抑える、いわば機能レベルに作用するお薬です。一方、遅発性脳壊死は、血管が傷ついて組織が壊死してしまう構造レベルの変化です。働きを整える薬と、壊れた組織を直す治療は、目的も手段も異なります。



2. メマリーが全脳照射で話題になる理由

では、なぜ全脳照射の説明でメマリーの名前が挙がるのでしょうか。背景には、米国で行われた1つの臨床試験があります。


RTOG 0614試験とは

RTOG 0614は、全脳照射を受ける患者さんに対して、メマンチンの神経保護効果(認知機能低下の抑制)を検証したプラセボ対照ランダム化二重盲検試験です(Brown et al. 2013)。

試験デザイン(要点)

  • 対象:全脳照射を受ける患者さん 554名登録(適格 508名)
  • 投与:メマンチン 1日20mg を全脳照射開始3日以内から24週間 vs プラセボ
  • 放射線量:37.5Gy/15回分割
  • 主要評価項目:投与開始24週後のHVLT-R 遅延再生(記憶テスト)

主要評価項目は「未達」だった

多くの解説では「メマンチンで認知機能低下が抑えられた」と紹介されますが、原典に当たると、もう少し慎重に読む必要があります。

24週後のHVLT-R 遅延再生では、メマンチン群の方がプラセボ群より低下が少ない傾向にあった(中央値で低下なし vs プラセボは中央値-0.90低下)ものの、その差はP=0.059と統計的有意差には届きませんでした。これが事前に設定された「主要評価項目」の結果です。

なぜ有意差が出なかったのか:研究グループは当初442名の患者さんで分析する計画でした。しかし、脳転移の患者さんは予後が短いため、24週後まで認知機能評価が完了したのは149名にとどまり、検出力は計画の80%から35%まで低下しました。「効果が無かった」というより「症例数が想定より集まらず、明確な有意差を示すには力不足だった」と理解する必要があります。


副次的解析で示された認知機能低下の遅延

主要評価項目は未達でしたが、事前に設定された副次的な解析では、より明確な差が報告されています。

本記事で出てくる統計用語のメモ

  • ハザード比(HR):「起こりやすさの比」のような指標。1.0より小さいほど「起こりにくい」ことを示します。
  • 95%信頼区間(95% CI):真の値が含まれる可能性が高い範囲。区間がすべて1.0未満なら、HRが1.0未満であることに統計的な裏付けがあります。
  • P値:偶然そう見えるだけの可能性を表す指標。慣習的に0.05未満なら「統計的に有意」とされます。

RTOG 0614 副次解析の主な結果

  • 認知機能障害までの時間(time to cognitive failure):ハザード比0.78(95%信頼区間 0.62-0.99)、P=0.01 → 有意な遅延
  • 24週時点の認知機能障害確率:53.8%(メマンチン群)vs 64.9%(プラセボ群)
  • 実行機能:8週後 P=0.008/16週後 P=0.0041
  • 処理速度:P=0.0137
  • 遅延認識:P=0.0149

研究者は結論として「メマンチンは良好に耐容され、認知機能低下までの時間を延長し、記憶・実行機能・処理速度の低下率を低減した」と報告しています。「主要評価項目は未達だが、副次的な指標では一貫してメマンチン群が有利だった」というのが、原典に忠実な読み方になります。


現在の標準アプローチ:海馬回避+メマンチン

RTOG 0614に続いて行われたNRG CC001試験では、海馬回避全脳照射(HA-WBRT)にメマンチンを併用する群と、通常の全脳照射にメマンチンを併用する群が比較されました(Brown et al. 2020、518名を無作為化)。

NRG CC001 主要結果

  • 認知機能障害までの時間:ハザード比0.74(95%信頼区間 0.58-0.95)、P=0.02 → 海馬回避群で有意に遅延
  • 実行機能(4ヶ月時):23.3% vs 40.4%(P=0.01)
  • 学習・記憶(6ヶ月時):11.5% vs 24.7%(P=0.049)
  • 遅延認識(6ヶ月時):16.4% vs 33.3%(P=0.02)
  • 全生存・頭蓋内無増悪生存に有意差なし

研究者は「海馬回避全脳照射+メマンチンは、認知機能と患者報告症状をより良好に保持し、標準治療として考慮されるべき」と結論づけています。海馬回避照射を行える施設は限られます。実施可能な施設や、転移個数・予後に応じた適否については、主治医や放射線腫瘍科にご相談ください。


本邦での適応について

ここまで紹介してきたのは、いずれも海外で行われた試験です。日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)が承認している、メマリーの効能・効果は「中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」のみです。添付文書には「アルツハイマー型認知症以外の認知症性疾患において本剤の有効性は確認されていない」と明記されています。

つまり、全脳照射に伴う認知機能予防目的でメマンチンを使う場合は、適応外使用という位置づけになります。これは違法ではありません。海外で蓄積されたエビデンスを参考に、医師が個別の判断で投与することは、日本の医療現場でも行われている診療行為です。ただし、患者さん・ご家族が「適応外使用である」と事前に説明を受け、納得した上で服用することが大切です。


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3. なぜ遅発性脳壊死には効かないのか

ここからは、もう1つの話題——遅発性脳壊死について整理します。「脳壊死」という言葉に強い不安を覚える方もおられると思いますので、まず病態から順にお伝えします。


遅発性脳壊死とは

遅発性脳壊死は、放射線治療から数ヶ月〜数年後(時には10年後)に発生する遅発性の合併症です。定位放射線治療後の発生頻度は最大で10〜14%と報告されています(症候性放射線脳壊死診療ガイドライン2017)。

MRIではガドリニウム造影される病変と、その周囲の強い脳浮腫が特徴的です。腫瘍の再発と画像所見が似ているため、鑑別が難しい場合もあります。


病態:血管の障害から始まる「組織レベル」の変化

遅発性脳壊死は、放射線によって脳内の微小な血管(毛細血管)の内皮細胞が傷つくことから始まります。

遅発性脳壊死の流れ(簡略)

  • ① 放射線で微小血管の内皮細胞が傷つく
  • ② 血管が閉塞し、周囲組織が虚血になる
  • ③ 白質が凝固壊死を起こす
  • ④ 虚血部位からVEGF(血管内皮増殖因子)が分泌され、脆い新生血管ができる
  • ⑤ 新生血管から血液成分が漏れ、強い脳浮腫が生じる
  • ⑥ 浮腫により頭痛・麻痺・けいれんなどの症状が現れる

メマリーが介入できない理由

メマリー(メマンチン)はNMDA受容体拮抗薬として、神経細胞の「過剰な働き」を抑える薬です。これは神経の「機能」を整える作用であり、すでに起きてしまった組織の壊死を修復したり、血管の透過性亢進(浮腫)を改善する作用は持ち合わせていません

そのため、メマリーが遅発性脳壊死そのものの治療薬として承認・推奨されている記録は、国内外のいずれにも存在しません。「メマリーを飲んでいるから脳壊死は心配いらない」というのは誤りで、逆に「メマリーを飲んでいるから脳壊死になる」というのも誤りです。両者は別の話題として整理して考える必要があります。

「機能」を守る薬と、「構造」を修復する治療は別物。同じ「全脳照射の副作用」というキーワードで語られても、対象となる現象と必要な手段は異なります。



4. 遅発性脳壊死の現在の治療選択肢

遅発性脳壊死は、壊死そのものを「無かったこと」にする治療はまだ存在しません。治療の中心は、脳浮腫を抑え、それによる神経症状(頭痛・麻痺・けいれんなど)をコントロールすることです。現在用いられている主な選択肢を、国内外のガイドラインや専門医の見解を参考に整理します。


第一選択:副腎皮質ステロイド

欧州神経腫瘍学会(EANO)・欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のガイドラインや国内ガイドラインでも、副腎皮質ステロイドが第一選択とされています。脳浮腫の軽減、炎症の抑制、血液脳関門の透過性低下といった作用で、症状の改善が期待できます。

ステロイド使用の注意:長期投与により、耐糖能異常(血糖値の上昇)、感染症、骨粗鬆症、消化性潰瘍、精神症状などの副作用が起こり得ます。ガイドラインでは「最低用量で、最短期間使用」が原則とされています。自己判断での減量・中止は、リバウンドのリスクがあるため避け、必ず主治医の指示に従ってください。


ステロイド不応例:ベバシズマブ(アバスチン)

ステロイドで十分な効果が得られない、あるいは副作用のためにステロイドを継続できない症例で、ベバシズマブ(商品名:アバスチン)が用いられることがあります。VEGFを標的とした分子標的薬で、遅発性脳壊死における異常な新生血管・血管透過性亢進を抑える作用があります。

ベバシズマブの主なエビデンス

  • Levin et al. 2011 ランダム化試験(N=14):T2 FLAIR浮腫体積がベバシズマブ群で-59%、プラセボ群で+14%。Class I evidence(最も信頼性の高い、ランダム化試験レベルのエビデンス)と評価
  • システマティックレビュー・メタ解析(Liao et al. 2021、12研究・236名):症状改善率91%、画像改善(T1造影病変-50%、T2 FLAIR-59%)、ステロイド減量効果は全例で確認
  • 安全性:重篤な有害事象はほとんど認められず、ステロイドと同等とされる

本邦での扱い:適応外と先進医療の経緯

  • 本邦のアバスチン添付文書では、症候性放射線脳壊死は承認適応に含まれていません(承認は結腸直腸癌、非小細胞肺癌、悪性神経膠腫、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、肝細胞癌など)
  • 2011年4月、厚生労働省により「神経症状を呈する脳放射線壊死に対する核医学診断+ベバシズマブ静脈内投与療法」が先進医療として認定されました
  • 2013年から悪性神経膠腫に対しては保険適用となっています(原疾患によって保険適用の扱いが異なるため、ご自身の病状で適用されるかは主治医にご確認ください)
  • 国内で報告されている投与プロトコル:5mg/kg を2週間ごとに3回、効果判定後にさらに3回

外科切除

内科的治療(ステロイド・ベバシズマブ)でも改善せず、壊死巣による腫瘤効果(mass effect)が強く、生命の危機や重篤な神経症状がある場合に検討されます。摘出が成功すれば脳浮腫が急速に改善することがありますが、適応は限定的です。


高気圧酸素療法(HBO)

高気圧酸素療法(HBO)は、海外(米国 Undersea & Hyperbaric Medical Society 等)では遅発性放射線壊死を承認適応の一つとしており、虚血部位への酸素供給・組織修復・血管新生促進の効果が期待されています。一方、本邦の脳神経外科専門医のなかには「ランダム化比較試験が不足し効果は不明瞭で、むしろけいれん発作を誘発する可能性がある」との見解を示す方もおられます。

専門家の間でも見解が分かれる治療法です。実施の可否や適否は、主治医・脳神経外科医・放射線腫瘍科医の総合的な判断が必要です。


治療選択肢の俯瞰

治療 位置づけ 本邦保険適用
副腎皮質ステロイド 第一選択 適応
ベバシズマブ ステロイド不応例 症候性放射線脳壊死は適応外(先進医療・原疾患による違いあり)
外科切除 腫瘤効果・内科治療無効例で限定的に 適応
高気圧酸素療法 専門医間で見解が分かれる 一部条件で適応


5. 全脳照射後のフォローで、ご家族にできること

ここまで読まれた患者さん・ご家族の中には、「では具体的に何をすればいいのか」と感じている方もおられるかもしれません。実際に役立つアクションを3つに整理します。


主治医・放射線治療科とのコミュニケーション

全脳照射後に最も大切なのは、変化の「記録」と「共有」です。

記録しておきたいこと

  • 認知機能の変化:物忘れ・会話の戸惑い・段取りの混乱が「いつ」「どんな場面で」「どの程度」あったか
  • 神経症状:頭痛・吐き気・しびれ・脱力・呂律不良・けいれんの有無と頻度
  • 服薬状況:飲み忘れ・体調の変化・主治医から伝えられた指示
  • 気分の変化:イライラ・抑うつ・不安・睡眠の質

これらは主治医の診察で「だいぶ前から…」とぼんやり伝えるよりも、メモやスマートフォンに残しておくと、薬剤調整や検査追加の判断材料になります。特に、適応外使用の薬を継続するかどうかの判断は、メリットとリスクの両方を踏まえた相談が必要です。


当院でできるサポート

いわた脳神経外科クリニックの全脳照射に関する立場

当院では全脳照射(WBRT)・定位放射線照射(SRS)といった放射線治療そのものは実施しておりません。実施は連携病院等の放射線腫瘍科で行われます。当院は、退院後・治療後のフォロー、認知機能の評価、セカンドオピニオン対応など、患者さんとご家族を支える役割を担います。

当院でご提供できるサポートには、以下のようなものがあります。

  • 認知機能の評価:物忘れ外来との連動で、認知機能検査・MRI・血液検査による包括的な評価が可能です。認知機能の維持を補助するサプリメント(フェルガード等)のご紹介も承っております
  • セカンドオピニオン対応:治療方針の整理、治療選択肢の確認、適応外使用の薬の続け方のご相談など
  • 主治医の治療計画を尊重した併診:主治医との連携を前提に、近隣でのフォロー診療をサポート
  • 悪性神経膠腫(膠芽腫)の患者さんへ:自由診療として自家がんワクチン療法(AFTVac)のご紹介も可能です(適応・費用は個別にご相談ください)

受診を急いだほうがよいサイン

以下の症状が出た場合は、救急受診を優先してください。

  • 急激に強くなる頭痛、嘔吐の悪化
  • 半身の脱力・しびれ・呂律不良
  • けいれん発作
  • 著しい意識レベルの低下、呼びかけへの反応の鈍化

これらは、急性期の合併症(脳浮腫の悪化や、再発・出血など)の可能性があります。「ちょっと様子を見よう」と判断する前に、救急外来やかかりつけ病院に連絡をお取りください。



6. よくあるご質問

Q1. メマリーを飲むのが怖いのですが、断ってもよいですか?

A. 服用は患者さんとご家族の意思で決められます。ただし、主治医は効果が期待できると判断して提案されている以上、まずは「不安に思っている点」「副作用への懸念」を主治医と共有することをお勧めします。RTOG 0614試験の副次解析では、認知機能障害までの時間を有意に延長したという結果(ハザード比0.78、P=0.01)が報告されており、適応外ではあるものの参考になるエビデンスです。

Q2. メマリーは本邦で認可されていないと聞きました。違法ではないですか?

A. 違法ではありません。メマリー自体は本邦でも「中等度〜高度アルツハイマー型認知症」に対して承認されているお薬です。日本の医療現場では、海外で蓄積されたエビデンスに基づき、医師の裁量で「適応外使用」が行われることがあり、これは法令上認められた診療行為です。事前に医師から十分な説明を受け、ご納得の上で服用してください。

Q3. 全脳照射の認知機能低下は必ず起こるのですか?

A. 必ずではありません。発生率は試験により幅があり、評価基準を厳格にすると「臨床的に意義のある低下」は約37%との報告もあります(新潟市医師会 2019)。海馬回避照射+メマンチンの組み合わせや、定位放射線照射(SRS)単独療法の選択により、認知機能を保持する工夫が進んでいます。原疾患・転移個数・全身状態によって最適な放射線療法は変わるため、主治医と相談の上で治療計画が立てられます。

Q4. 遅発性脳壊死が起きてしまった場合、ベバシズマブは受けられますか?

A. 受けられる可能性はありますが、原疾患・施設の体制・費用負担により条件が異なります。本邦の添付文書では「症候性放射線脳壊死」は適応外で、悪性神経膠腫の患者さんは2013年から保険適用、それ以外の原疾患の方は先進医療または自費診療となる場合があります。実施可能施設は限られますので、主治医を通じてご相談ください。

Q5. 高気圧酸素療法は試したほうがいいですか?

A. 一概には勧められません。海外では一部効果が期待される報告もありますが、本邦の脳神経外科専門医のなかには「ランダム化比較試験が不足しており効果は不明瞭で、むしろけいれん発作を誘発する可能性」を指摘する見解もあります。症例ごとに、主治医・脳神経外科医・放射線腫瘍科医の総合判断が必要です。



7. まとめ

  1. メマリー(メマンチン)は、海外試験では全脳照射に伴う認知機能障害の遅延が報告されていますが、本邦では「中等度〜高度アルツハイマー型認知症」のみが承認適応で、全脳照射での使用は適応外となります。
  2. RTOG 0614試験の主要評価項目は未達でしたが、副次解析では認知機能障害までの時間を有意に遅延(ハザード比0.78、P=0.01)。後続のNRG CC001試験では海馬回避全脳照射との併用がより有効と報告されています(ハザード比0.74、P=0.02)。
  3. 一方、遅発性脳壊死は血管内皮の損傷から始まる「組織レベル」の変化で、メマリーで治療や改善ができるという報告はありません。
  4. 遅発性脳壊死の治療は、ステロイドを第一選択とし、効果不十分例にベバシズマブ(症候性放射線脳壊死は適応外・先進医療経由)、限定的に外科切除、高気圧酸素療法は専門医間で見解が分かれる、という選択肢があります。
  5. 全脳照射後の認知機能変化や神経症状の変化は、早めに主治医にご相談ください。当院は退院後のフォロー・セカンドオピニオン対応を承っています。

全脳照射という大きな治療を選ばれたご家族の不安や戸惑いに、少しでも整理がつくよう本記事をお届けしました。

当院では、認知機能の維持を補助するサプリメント「フェルガード」のご紹介や、悪性神経膠腫の患者さんに対する自由診療「自家がんワクチン療法(AFTVac)」のご相談など、患者さんごとの状況に合わせた選択肢を一緒に考えます。お薬の続け方・止め方、検査の追加、治療方針のセカンドオピニオンなど、迷いがあれば、いつでもご相談ください。一人で抱え込まず、医療チームと一緒に「次の一手」を考えていきましょう。



お問い合わせ・ご予約

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重要:本記事の位置づけ(医療情報として)

  • 本記事は、研究報告や公的資料に基づく「一般的な医療情報」です。
  • 特定の治療を推奨・保証するものではありません。効果や副作用には個人差があります。
  • 実際の治療は、症状・既往歴・併用薬・原疾患などを踏まえて医師が判断します。
  • 本記事で紹介した薬剤の一部は、症候性放射線脳壊死・全脳照射後の認知機能予防に対して本邦で適応外使用となります。具体的な判断は必ず主治医とご相談ください。
この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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参考文献

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