こんにちは、大阪の頭痛外来「いわた脳神経外科クリニック」です。片頭痛を感じるとき、強い眠気を感じたことがある方も多いのではないでしょうか。本記事では、片頭痛と眠気の関係性について詳しく解説します。さらに、脳の病気のリスクを高める睡眠時無呼吸症候群についても触れています。 [1]片頭痛や眠気にお悩みの方の参考になれば幸いです。

睡眠時無呼吸症候群についてはこちらの診療ページもご参照ください。

 

 片頭痛と眠気の関係性 

片頭痛があるとき、眠気も一緒に感じたことのある方がいるかもしれません。実は、片頭痛が起こると、高確率で日中の眠気が起こります。[2]

また、片頭痛を引き起こす原因の1つに睡眠不足や睡眠過多があります。[3]一方で、片頭痛の患者さんにおいては睡眠時間を十分に確保することで、片頭痛が改善できることもわかっています。[2]

 

片頭痛は耳鳴りとも関係が。耳鳴りと片頭痛の関係はこちらで詳しく説明しています。

 

片頭痛にともなう眠気の原因と対処法 

片頭痛が起こると、以下の睡眠に関連する病気や症状が伴っているおそれがあります。気になる症状のある方は、かかりつけ医へ相談するか、医療機関を受診しましょう。

 

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、睡眠時の気道が狭くなることによって、無呼吸もしくは低呼吸、いびきがみられ、日中の眠気や疲労感などを生じる病気です。[4]

早朝に頭痛の症状を有する片頭痛患者さんを対象にした研究によると、片頭痛患者さん8例のうち7例が閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断を満たしていたという報告があります。[5]

 

閉塞性睡眠時無呼吸症候群を治療する方法は、おもに以下の3つです。[4]

軽症例では口腔内装置の装着により、咀嚼筋の筋緊張が高まり、頭痛を引き起こす可能性もある[5]ため、頭痛をともなう場合は主治医に相談しましょう。

 

  • 飲酒・高血圧・肥満などのリスク要因の改善
  • 持続陽圧呼吸療法(CPAP)による治療
  • 口腔内装置の装着

 

睡眠時遊行症

睡眠時遊行症とは、睡眠中に自覚症状がない状態で無意識に歩き回る現象です。子どもに多くみられますが大人になっても続く場合があります。ノンレム睡眠から不完全に覚醒した際に起こるとされており、睡眠中の行動によって危険が生じる場合は寝室の環境を整えるなどの対策が必要です。[6][7]

片頭痛の中でも前兆のある片頭痛の場合に、睡眠時遊行症の既往歴が高かったとされています。[8]生活リズムの乱れや睡眠時間の不足が起こらないように生活リズムを整え、睡眠時間を十分に確保することが大切です。[7]

レストレスレッグス症候群

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)とは、夕方から真夜中にかけて、足を中心に痛みやかゆみなどが生じる病気です。足を動かすと一時的に違和感が消えるものの、静止しているとむず痒さが再び生じる場合があります。[9]

レストレスレッグス症候群になると、眠気がきても眠りにつくことができません。眠れても浅い眠りとなるため、寝不足を引き起こして日中における眠気の原因となる可能性があります。[9]

24以上の研究により、片頭痛はレストレスレッグス症候群のリスクが高く、ドパミンおよび視床下部が関与していると想定されています。[7]

 

 ナルコレプシー

ナルコレプシーとは、日中に耐えられないほどの眠気を感じたり、歩行中や食事中など、眠る状況ではない場面で眠気が繰り返し起こったりする睡眠障害です。眠気以外には、幻覚や脱力感、睡眠麻痺(身体を動かせず声を出せない状態が数秒~数分続く)などが起こります。[10]

 

ナルコレプシーと一次性頭痛の有病率を調べた研究によると、ナルコレプシーの患者さんにおいて片頭痛が確認されています。[7]

ナルコレプシーの対策としては、夜に十分な睡眠をとるよう心がけ、睡眠の質を低下させるアルコール・カフェイン・ニコチンなどの摂取を控えましょう。日中の眠気で学業や仕事に支障がある場合は睡眠障害を専門的に診療する医療機関を受診することも大切です。 [10]

 

 

特発性過眠症

特発性過眠症は、日中の耐え難い眠気と居眠りがみられる状態です。夜間の長時間の睡眠をともなうケースとそうでない場合があり、目覚めのすっきり感がないのが特徴です。ナルコレプシーのように幻覚や睡眠麻痺などがみられる頻度は少なく、朝起きられない、失神などを伴うことも少なくありません。[10]

特発性過眠症と一次性頭痛の有病率を調べた研究によると、特発性過眠症の患者さんにおいて片頭痛の有病率が高いことが報告されています。[7]

特発性過眠症は自然に改善する場合もありますが、日常生活への影響がある場合は適切な治療を受けることが必要です。[10]

 

片頭痛はストレスからも起こります。片頭痛とストレスの関係はこちらで詳しく解説しています。

 

 片頭痛と眠気に関係する視床下部

片頭痛は、さまざまな睡眠障害と併発する場合があります。睡眠障害と片頭痛の間には、視床下部の関与が示唆されています。[2]また、片頭痛の発症には視床下部の活性化が三叉神経を刺激し、片頭痛を引き起こすと考えられています

 

この三叉神経の過剰な活性化を抑え、片頭痛の発症を予防する治療薬が「ヒト化抗 CGRP モノクローナル抗体製剤(「CGRP」頭痛薬剤)」です。

エムガルティ(ガルカネズマブ) 【片頭痛発作を抑制する薬】

 

片頭痛の治療には眠気がこない治療薬を

睡眠障害と片頭痛の改善を図るためには、睡眠の質を高めるための入眠環境の調整や、睡眠障害や片頭痛を治療する必要があります。

 

ヒト化抗 CGRP モノクローナル抗体製剤(「CGRP」頭痛薬剤)」は、眠気がくるといった副作用はほとんどありません。[11]薬の影響で日中睡魔におそわれる可能性は低い薬です。

 

「CGRP」頭痛薬剤の治療は保険適用です。治療の適応となる対象範囲があるため、頭痛に悩む方はまずはご相談ください。当院では、エムガルティ(ガルカネズマブ)のほかに、アジョビ、アイモビーグも取り扱っています。

アジョビ【片頭痛発作を抑制する薬】

アイモビーグ【片頭痛を予防する薬】

 

片頭痛治療薬に関する解説はこちらの動画でもおこなっております。ぜひ参考にしてみてください。

 

大阪市城東区の頭痛外来のある「いわた脳神経外科クリニック」では頭痛外来にて頭の痛みを改善したい方のために治療をおこなっております。

 

「慢性的な頭痛に悩まされている」「頭の痛みを改善する方法がわからない」「頭痛以外にもさまざまな症状が起きている」

上記に該当する方は、ぜひ当院へお気軽にご相談ください。頭の痛みを改善するための方法を一緒に検討していきましょう。

 

 

 

参照リンク

[1] H Klar Yaggi et al Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death  New England Journal of Medicine 2005;353:2034-2041

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16282178/

[2] 鈴木圭輔 片頭痛と中枢性過眠症 2019 神経治療36.p.250-253

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/36/3/36_250/_pdf

[3] 頭痛の診療ガイドライン作成員会|頭痛の診療ガイドライン2021

https://neurology-jp.org/guidelinem/pdf/headache_medical_2021.pdf

[4] 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会|睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020

https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf

[5] 関口耕史ら 早朝頭痛を認めた片頭痛患者における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の検討 2021日本頭痛学会誌48(3)p.566-570

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjho/48/3/48_566/_pdf/-char/ja

[6]国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部|睡眠時随伴症

https://www.ncnp.go.jp/nimh/sleep/sleep-medicine/parasomnia/index.html

[7] 竹島多賀夫 片頭痛と睡眠 神経治療 2022 39 p.564-568

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/39/4/39_564/_pdf/-char/ja

[8] 健康づくりのための睡眠指針の改訂 に関する検討会|健康づくりのための睡眠ガイド2023

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf

[9]厚生労働省 e-ヘルスネット|レストレスレッグス症候群 / むずむず脚症候群

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-068.html

[10] 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部|中枢性過眠症

https://www.ncnp.go.jp/nimh/sleep/sleep-medicine/hypersomnia/index.html

[11]柴田護 片頭痛の最新治療 日本内科学会雑誌 2021 110(11)2449~2457

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/110/11/110_2449/_pdf

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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