抱っこや授乳の中でできるタミータイム(うつ伏せ遊び)のイメージ

【結論】この記事で分かること(一番お伝えしたいこと)

  1. タミータイム(うつ伏せ遊び)を赤ちゃんが嫌がって続かないのは、とてもよくあることです。床にマットを敷いてうつ伏せにする方法だけが、タミータイムではありません。
  2. 抱っこ・授乳・げっぷ・オムツ替え・お風呂上がりといった毎日のお世話の中に、少しずつ「腹ばい」と「向きを替える」を混ぜていくやり方があります(Children’s Healthcare of Atlanta 2014)。1回の長さより、1日の合計と左右のバランスを意識するほうが続けやすくなります。
  3. 世界保健機関は、まだ寝返りやハイハイをしない乳児について、起きているあいだの腹ばいを1日合計30分以上、こまめに分けてとることを推奨しています(World Health Organization [WHO] 2019)。「1回で30分」ではありません。
  4. 眠るときは、1歳になるまで仰向け(あおむけ)が基本です(こども家庭庁 2025)。タミータイムは「起きているとき・大人がそばで見ているとき」に限って行ってください。
  5. タミータイムには粗大運動の発達や後頭部が平らになるかたち(短頭)の予防と正の関連が報告されていますが、斜頭(左右のゆがみ)への効果はまだはっきりしていないと整理されています(Hewitt et al. 2020)。

※本記事は医療情報の提供であり、診断・治療の代替ではありません。発達のペースやかたちの変化には個人差があります。気になることは自己判断せず、ご相談ください。

「タミータイムがいいと聞いたので、うつ伏せにしてみたんです。でも、置いた瞬間から泣いて、10秒ももたなくて……」。3〜4か月健診の前後に、こうお話しくださる保護者の方は本当に多いのです。スマホで検索すれば「1日30分」「1回3〜5分を2〜3回」といった数字が並んでいて、その数字と目の前で泣いている我が子とのあいだで、途方に暮れてしまう。

そして多くの方が、こうおっしゃいます。「うちの子はうつ伏せが嫌いみたいで、私がちゃんとやってあげられていないんです」。でも、どうか思い出してください。うつ伏せを嫌がるのは、赤ちゃんにとってごく自然な反応です。生まれて数か月の赤ちゃんにとって、自分の頭は体重のおよそ4分の1を占める重たいもの。それを自分の力で持ち上げるのは、大人が腕立て伏せをするのに近い重労働なのです。嫌がるのは、お世話のしかたの問題でも、愛情の量の問題でもありません。

この記事でお伝えしたいのは、「がんばって長くうつ伏せにする方法」ではありません。抱っこのしかた、授乳の腕の替えかた、オムツ替えの向き、お風呂上がりの数十秒——すでに毎日していることの中に、腹ばいの時間と向きの変化を少しずつ足していく考えかたです。米国アトランタの小児病院がまとめた保護者向け資料「タミー・タイム・ツール」の考えかたをもとに、大阪のクリニックで実際にご相談を受けている立場から、無理なく続けられる形に整理してお話ししていきます。一緒に、肩の力を抜いていきましょう。

まず知っておいてほしいこと

タミー・タイム・ツールの資料では、タミータイムを「かたい面の上で同じ姿勢のまま横にならないようにする働きかけ」「抱く・ポジショニング・遊びの中でうつ伏せになる時間」と、幅のある考えかたで説明しています(Children’s Healthcare of Atlanta 2014)。つまり、床のマットの上だけが舞台ではないのです。だからこそ、「できなかった日」があっても大丈夫。1日のどこかに少しずつ散らばっていれば、それは立派なタミータイムです。

目次


今すぐWeb予約

大阪で赤ちゃんの頭のかたち・向き癖のご相談なら、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。



1. うつ伏せぎらいはよくあること

タミータイムが続かない理由を、保護者の努力不足に求める必要はありません。研究でも、タミータイムの実施時間には月齢・生活環境・保護者があらかじめ時間を決めているかどうかなど、さまざまな要因が関係することが示されています(Hewitt et al. 2017)。つまり「赤ちゃんのやる気」だけの話ではなく、暮らしの組み立てかたの話でもあるのです。


なぜ赤ちゃんは嫌がるのでしょう

生後まもない赤ちゃんは、首や肩まわりの筋肉がまだ育っている途中です。うつ伏せにすると、視界は床でふさがれ、大好きな保護者の顔も見えなくなります。頭を持ち上げようとすれば大きな力がいり、数十秒で疲れてしまう。泣くのは「嫌い」というより、「しんどい」「顔が見えなくて不安」というサインだと考えると、対策が見えてきます。顔が見える姿勢にする、体を少し起こして負担を減らす——これがこの記事の中心になる工夫です。


向き癖と頭のかたちは、めずらしいことではありません

数字で見ると(研究デザインもあわせて)

カナダ・カルガリーで生後7〜12週の健康な赤ちゃん440人を診察した前向きコホート研究では、なんらかの位置による斜頭(頭の左右のゆがみ)がみられた赤ちゃんは46.6%と報告されました。そのうち78.3%は軽度で、63.2%は右側でした(Mawji et al. 2013)。およそ2人に1人という数字は、「うちの子だけ」ではないことを示しています。ただしこれは1つの地域・1つの評価法による研究で、日本の赤ちゃんにそのまま当てはまる数字ではない点には注意が必要です。

あおむけ寝はSIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクを下げる大切な習慣であり、これをやめる理由にはなりません(こども家庭庁 2025)。あおむけで安全に眠らせながら、起きているあいだに姿勢の変化を足していく——この両立が、いま世界的にすすめられている考えかたです(Moon et al. 2022)。



2. 「床でうつ伏せ」だけではない

ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。多くの育児情報では、タミータイム=「プレイマットの上でうつ伏せにする」と紹介されます。けれども、もともとの考えかたはもう少し広いのです。

タミー・タイム・ツールでの定義

  • かたい面の上で、赤ちゃんが同じ姿勢のまま横になり続けないようにする働きかけ
  • 抱く・ポジショニング・遊びの中で、うつ伏せ(腹ばい)になる時間

そして「抱っこ、オムツ替え、ポジショニング、授乳、遊びなど、赤ちゃんと一緒にできるアクティビティ」であり、「赤ちゃんが起きているとき、そばに付き添っているとき、いつでもできる」ものだと説明されています(Children’s Healthcare of Atlanta 2014)。


1日の合計で考えると、ぐっと楽になります

世界保健機関のガイドラインは、まだ寝返り・ハイハイをしない乳児について「起きているあいだに、1日合計30分以上の腹ばいを、1日の中に分散して」と示しています(WHO 2019)。1回30分続ける必要はありません。30秒を10回でも、1分を数回とお風呂上がりの数十秒でも、合計に積み上がっていきます。

さらに同ガイドラインは、ベビーカーやチャイルドシート、抱っこひもなどで1時間以上続けて体を固定したままにしないこともすすめています(WHO 2019)。長時間のおでかけでは、途中で一度おろして姿勢を変えてあげる。これも、頭にかかる圧を分散させる立派な工夫です。


「腹ばい」と「向きを替える」の2本立てで

この記事の工夫は、次の2つの軸で整理できます。どちらか一方だけでも、意味があります。

  • ① 腹ばい(うつ伏せ)の時間をつくる:後頭部にかかる圧をやわらげ、首・肩・体幹の筋肉を使う機会になります。
  • ② 左右の向きを替える:抱く腕、授乳の向き、話しかける方向、寝かせる頭の向きを日ごとに入れ替え、同じ側ばかりに圧がかからないようにします。


3. 抱っこでできるタミータイム

まずは、床に置かずにできる工夫からです。泣いてしまってどうしても床でのうつ伏せが難しい時期は、ここだけでも十分に価値があります。

抱きかた やりかた ねらい
① 左右交互の脇抱え わきに抱えるように支え、右わき・左わきを毎回交代する 両側を見る、向きを替える、バランスをとる練習になります
② 肩まで縦抱き 大人の肩の高さまで抱き上げ、体をまっすぐ支える。抱く側を交代する 左右どちらにも顔を向けられます。筋力がつくと支えは少なくてすみます
③ 前向き抱っこ 大人も赤ちゃんも同じ方向を向いて抱く。頭がまっすぐになるようやさしく支える 頭を回して部屋の様子を見ることができます
④ おなかを下にした腕抱き 胸から上腹部にかけて大人の前腕を入れ、おなかを下にして抱く。小さいうちは頭も支える これ自体が腹ばいの姿勢です。泣きやすい子でも取り入れやすい形
⑤ 抱き寄せ(対面) 対面で肩に抱き、両腕でやさしく抱えこむ。頭を静かに左右に向ける 頭を持ち上げて大人の顔を見る動きを引き出せます
⑥ 左右から前向きに 右側から前向きに抱く日、左側から抱く日をつくる 同じ側だけに体重や視線が偏るのを避けられます

(Children’s Healthcare of Atlanta 2014 の内容をもとに、日本の生活に合わせて整理しました)

「飛行機だっこ」は首がすわってから

資料では、赤ちゃんの力が強くなってきたら抱えながらの「飛行機遊び」もできると紹介されています。ただしこれは首がしっかりすわり、体を支えられるようになってからにしてください。首がすわる前に体を大きく揺らす遊びは避けましょう。



4. 授乳・オムツ替え・お風呂の工夫

1日に何度もくり返す場面ほど、小さな工夫の積み重ねが効いてきます。「新しくやることを増やす」のではなく、いま毎日していることの向きを替えるだけです。


授乳・げっぷのとき

  • 抱く腕を毎回交代します。ミルクの場合も、左右の腕を交互に。赤ちゃんが左右どちらにも顔を向ける機会になり、大人の腕による後頭部への圧も一方に偏りにくくなります。
  • 背中をもたれさせて座り、ひざを立てて赤ちゃんのおなかをひざで支える形も紹介されています。授乳のあいだ、頭がまっすぐになるように意識します。
  • げっぷはひざの上で腹ばいに。大人のももの上に、おなかを下にしてそっと寝かせ、背中をさすります。これも短いタミータイムです。

オムツ替えのとき

  • オムツ替え台では、毎回ちがう向きから作業します。テープを留めながら、赤ちゃんの向きを左右に替えてあげましょう。
  • 話しかける方向を毎回変えるだけでも、赤ちゃんは声のするほうへ首を回します。
  • 床やベッドで対面のオムツ替えをすると、赤ちゃんは頭をまっすぐにして目を合わせようとします。
  • オムツ替えのあと、抱き上げる前に2〜3分だけ腹ばいに。そばで見守りながら遊ばせます。「オムツのあとは腹ばい」と決めておくと、1日5〜6回分が自然に積み上がります。

お風呂・着替えのとき

興味深いことに、タミータイムに関わる要因を調べたレビューでは、入浴に費やす時間とタミータイムの実施に正の関連がみられたと報告されています(Hewitt et al. 2017)。お風呂まわりは、もともと姿勢が大きく動く場面だからかもしれません。

具体的には、タオルで拭くときに一度うつ伏せにする、服を着せるときに左右へやさしく向きを替える、お風呂上がりに頭からつま先までマッサージするといった形が紹介されています(Children’s Healthcare of Atlanta 2014)。裸で機嫌のよい時間は、短いタミータイムのチャンスです。


寝かせるとき・おでかけのとき(圧を分散させる)

  • 寝かせるときの頭の向きを日替わりで入れ替えます。あおむけのまま、頭を向ける側だけを交代させる方法です。ベビーベッドのそばにカレンダーを置いて印をつけると、忘れにくくなります。
  • ベビーベッドの位置や、声をかける立ち位置を時々変えると、赤ちゃんの興味の向きも自然に変わります。
  • チャイルドシートでは、頭が中央にくるように座らせます。純正のヘッドサポート以外のクッションや枕を、体の下や背中に入れるのは避けてください。ヘッドサポートが必要な場合は、その製品の取扱説明書とメーカーの純正品に従いましょう。
  • 長時間のおでかけでは、1時間以上続けて座席や抱っこひもで固定したままにしないよう、途中で姿勢を変えてあげます(WHO 2019)。

今すぐWeb予約

「向き癖が強い気がする」「頭のかたちが気になる」——大阪・城東区のいわた脳神経外科クリニックで、まずはご相談ください。



5. 床でのタミータイム 5ステップ

抱っこや生活の中の工夫に慣れてきたら、床でのタミータイムも少しずつ試してみましょう。いきなりマットの上に置くのではなく、負担の軽い姿勢から順番に進めるのがコツです。なお、頭のかたちのセルフチェックや体位変換のしかたは「赤ちゃんの絶壁・向き癖、まず家でできること」でくわしく解説していますので、あわせてご覧ください。


負担の軽い順・5ステップ

  1. 大人の胸の上(対面):大人があおむけに寝て、胸の上に赤ちゃんを対面でうつ伏せにのせます。顔が見えるので安心しやすく、体が斜めになるぶん頭も持ち上げやすくなります。ここから始めるのがおすすめです。
  2. ひざの上でうつ伏せ:座った大人のももの上に、おなかを下にしてのせます。片足を少し高くすると、赤ちゃんは頭を持ち上げやすくなります。
  3. 胸の下に丸めたタオル:床でうつ伏せにするとき、胸の下に薄く丸めたタオルを当てます。上体が少し起きるので、頭を上げる負担が軽くなります。※タオルは大人が見ている場面だけで使い、そのまま寝かせないでください。
  4. おもちゃを左右に置く:体の両側におもちゃを置くと、頭の向きを替えて手を伸ばそうとします。左右で置く時間を同じくらいにするのがポイントです。
  5. 床で一緒に寝そべる:大人も同じ高さで寝そべり、顔を見せて声をかけます。赤ちゃんはひじをついて体を起こし、顔を見ようとします。

月齢別・時間の目安

下の表はあくまで目安です。この通りにできないことがあっても、心配はいりません。1日の合計で少しずつ増えていけば十分です。

月齢 1回の長さ・回数の目安 おすすめの形
生後0〜1か月
(退院後から)
1回1〜2分を1日数回 大人の胸の上・ひざの上・腕抱き中心。床でなくて大丈夫です
生後1〜2か月 1回3〜5分を1日2〜3回
(合計10〜15分程度から)
胸の下にタオル、オムツ替え後の腹ばいを習慣に
生後3〜4か月 合計20〜30分程度/日
(こまめに分けて)
床でひじをついて体を支える練習。おもちゃで顔を上げるよう誘う
生後5〜6か月 合計30分以上/日を目安に 寝返りの練習と組み合わせて。手を伸ばす遊びを増やす
生後6か月〜 自発的なうつ伏せが増えていきます 床での自由な遊びが中心に。時間より「動く機会」を重視

※合計30分以上という数字は、まだ寝返り・ハイハイをしない乳児に対する世界保健機関の推奨にもとづくものです(WHO 2019)。月齢ごとの内訳は、続けやすさを考えた一般的な目安として整理したもので、決められた基準値ではありません。

泣きはじめたら、それが終わりのサインです

ぐずり出したり、眠そうになったりしたら、そこで切り上げてあおむけに戻してください。泣くのをがまんさせて続けると、赤ちゃんは「うつ伏せ=いやな時間」と覚えてしまうことがあります。短く・機嫌のよいときに・何度もが、結果的に合計時間を増やす近道です。



6. 安全のための5つのルール

ここだけは、しっかり守ってください

  1. 眠るときは、1歳になるまであおむけに。SIDSの予防方法は確立していませんが、あおむけ寝・母乳育児・禁煙の3点でリスクを下げられることが研究で示されています(こども家庭庁 2025)。タミータイムは、あおむけ寝をやめる理由にはなりません。
  2. 起きているとき・大人がそばで見ているときだけ。腹ばいのままで赤ちゃんを一人にしないでください(Children’s Healthcare of Atlanta 2014)。
  3. 眠ってしまったら、すぐにあおむけに戻します。うつ伏せのまま眠らせないことが大切です。
  4. 寝具はかためのものを。やわらかい布団・枕・クッション・ぬいぐるみは顔まわりに置かないでください。安全な睡眠環境については、国際的な推奨でも重ねて示されています(Moon et al. 2022)。
  5. 授乳の直後は避けます。吐き戻しが心配な時期は、授乳から少し時間をおいてから行いましょう。

なお、頭のかたちを整える目的で市販されている枕やクッションのなかには、乳児の睡眠中の安全性が確かめられていないものもあります。寝かせるときに使う製品は、安全性の表示をよく確認し、迷ったら使わないという判断で構いません。



7. 効果はどこまで分かっているか

ここは、正直にお伝えしておきたい部分です。タミータイムは良いものですが、「これをすればかたちの心配がなくなる」と言い切れるものではありません。


系統的レビューでの整理

研究デザインと結果の読み方

8か国・16本の研究(対象4,237人)をまとめた系統的レビュー(同じテーマの研究を一定の基準で集めて整理した研究)では、タミータイムと健康アウトカムの関連が次のように整理されました(Hewitt et al. 2020)。

  • 正の関連がみられたもの:粗大運動(首すわり・寝返り・ハイハイなど体全体を使う動き)の発達と全体的な発達、BMI-zスコア(同じ月齢の中での体格の位置を表す指標)の低下、短頭(後頭部が平らになるかたち)の予防、腹ばい・あおむけ・ハイハイ・寝返りでの動きやすさ
  • はっきりしなかったもの(不確定):社会性・認知の領域、斜頭(左右のゆがみ)、歩行・立位・座位
  • 関連がみられなかったもの:微細運動の発達、コミュニケーション

研究の限界:含まれた研究の多くは観察研究で、ランダム化比較試験のような厳密さはありません。選択バイアス・実施バイアスも大きいと評価されています(Hewitt et al. 2020)。したがって、ここに挙げた関連は「因果関係が証明された」という意味ではありません。

つまり、「絶壁ぎみのかたち(短頭)の予防」については前向きな報告がある一方、「左右のゆがみ(斜頭)」への効果は、現時点でははっきりしていないということです。それでもタミータイムをおすすめするのは、運動発達や日々の動きやすさという別の面での利点が報告されているからです。


向き癖が強いときは、専門的なアプローチが役立つことがあります

強い向き癖(体の一方向にばかり向く傾向)がある赤ちゃんを対象に、オランダで行われたランダム化比較試験があります。生後7週の時点で向き癖があった65人を、小児理学療法を4か月間受ける群(33人)と通常のケアの群(32人)に振り分けて比べたものです。

この試験で分かったこと

  • 理学療法を受けた群では、生後6か月時点で重度の斜頭になるリスクが46%低く(相対危険度0.54、95%信頼区間0.30-0.98)、生後12か月時点では57%低い(0.43、0.22-0.85)と報告されました。
  • 興味深いのは保護者側の変化です。介入を受けた群のご家族は、生後6か月の時点で授乳・ポジショニング・抱きかたの左右バランスがより対称的になっていたと述べられています。
  • 一方で、運動発達には両群で意味のある差はみられませんでした(van Vlimmeren et al. 2008)。

この研究は参加人数が65人と多くはなく、対象も「向き癖のある赤ちゃん」に限られています。すべての赤ちゃんに当てはめられる結果ではない点に注意が必要です。

それでもこの結果は、この記事でお伝えしてきた「毎日のお世話の左右バランスを整える」という考えかたを後押しするものだと解釈できます。ご家庭での工夫だけでは向きが替わらないときには、専門職の関わりが選択肢になり得ます。気になる場合は、かかりつけの小児科や当院でご相談ください。



8. こんなときはご相談ください

早めのご相談をおすすめする様子

  • いつも同じ方向にばかり首が向く/反対を向かせようとすると強く嫌がる、首が片側に傾いている(首の筋肉のかたより=斜頸の可能性があります)
  • 首の片側にしこりのようなふくらみを触れる
  • ご家庭での工夫を続けても、生後6か月をすぎて向き癖や頭のかたちが改善しない
  • 頭のかたちが月齢とともに悪くなっていく/骨のつなぎ目に沿ってすじ状の盛り上がりを触れる(頭蓋骨縫合早期癒合症など、別の病気の可能性が考えられます)(Dias et al. 2020)
  • 顔の左右バランス(耳やほおの位置)の差がはっきりしてきた
  • 首のすわりなど、運動発達のペースが気になる/うつ伏せで顔を上げようとしない

これらは「すぐに治療が必要」という意味ではなく、一度専門的に確かめておくと安心できるという目安です。

当院では「赤ちゃんの頭のかたち外来」で、頭のかたちのご相談をお受けしています。まずは現在のかたちを確認し、位置によるかたちのくせなのか、ほかに考えるべき所見がないかを見きわめるところから始めます。「治療をすすめられるのでは」と身構えずに、気がかりをそのままお持ちください。


今すぐWeb予約

大阪で赤ちゃんの頭のかたち・向き癖のご相談なら、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。



9. よくあるご質問(FAQ)

Q1. タミータイムはいつから始められますか?

A. 産院を退院したころから、短い時間で始めることができます。タミー・タイム・ツールの資料では「赤ちゃんの月齢にかかわらず有効」とされています(Children’s Healthcare of Atlanta 2014)。ただし、はじめは大人の胸の上やひざの上など、赤ちゃんの負担が軽い形からで十分です。早産で生まれたお子さんや医学的な管理を受けているお子さんは、始める時期をかかりつけ医にご確認ください。

Q2. 泣いてすぐ嫌がります。がまんさせて続けるべきでしょうか?

A. がまんさせて続ける必要はありません。泣きはじめたら切り上げて、あおむけに戻してあげてください。そのかわり、大人の胸の上での対面うつ伏せ、ひざの上、おなかを下にした腕抱きなど、顔が見えて負担の軽い形に置き換えてみましょう。「床でのうつ伏せができない=タミータイムができていない」ではありません。

Q3. 授乳の直後は避けたほうがよいですか?

A. 吐き戻しが心配な時期は、授乳の直後を避け、少し時間をおいてから行うほうが安心です。げっぷのときにひざの上で腹ばいにする形は、短時間で自然に取り入れられます。

Q4. タミータイム中に寝てしまいました。そのまま寝かせてよいですか?

A. うつ伏せのままにせず、あおむけに戻してください。1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけが基本です(こども家庭庁 2025)。タミータイムは「起きているとき・見守れるとき」だけの時間、と切り分けて考えていただくと安全です。

Q5. 抱っこひもやベビーカーの時間が長いのは、よくないのでしょうか?

A. 使うこと自体が問題なのではありません。世界保健機関のガイドラインでは、乳児について「1時間以上続けて体を固定したままにしない」ことがすすめられています(WHO 2019)。長時間のおでかけでは途中で一度おろし、抱きかたを変える、腹ばいの時間を少し入れる、といった工夫で十分です。

Q6. タミータイムをしていれば、絶壁や頭のゆがみは防げますか?

A. 系統的レビューでは、タミータイムと短頭(後頭部が平らなかたち)の予防との正の関連が報告されている一方、斜頭(左右のゆがみ)についてははっきりしていないと整理されています(Hewitt et al. 2020)。含まれた研究の多くは観察研究であり、結果の解釈には注意が必要です。「これをすればかたちの心配がなくなる」とは言えませんが、運動発達などの面で意味のある習慣だと考えられています。かたちが気になる場合は、タミータイムを続けながら一度ご相談ください。



10. まとめ

  1. タミータイムを嫌がるのは、赤ちゃんにとって自然な反応です。お世話のしかたや愛情の問題ではありません。
  2. タミータイムは「床でうつ伏せ」だけではなく、抱っこ・授乳・げっぷ・オムツ替え・お風呂といった毎日の場面の中に組み込むことができます(Children’s Healthcare of Atlanta 2014)。
  3. 目安は「起きているあいだの腹ばいを1日合計30分以上、こまめに分けて」。1回で30分ではありません(WHO 2019)。
  4. 眠るときは1歳になるまであおむけが基本。タミータイムは起きているとき・見守れるときだけに限ります(こども家庭庁 2025)。
  5. 粗大運動の発達や短頭の予防との正の関連は報告されていますが、斜頭への効果は不確定です。強い向き癖や、かたちが悪くなっていく場合は、早めにご相談ください(Hewitt et al. 2020; van Vlimmeren et al. 2008)。

今日1日、うつ伏せが1分もできなかったとしても、大丈夫です。抱く腕を替えた、話しかける向きを変えた、お風呂上がりに数十秒だけ腹ばいにした——その小さな積み重ねが、赤ちゃんの体づくりにつながっていきます。睡眠が細切れになる毎日のなかで、あなたはもう十分にがんばっておられます。うまくいかない日があっても、それはあなたのせいではありません。気がかりなことがあれば、一人で抱え込まず、私たちに聞かせてください。※発達のペースやかたちの変化には個人差があります。診断・方針は診察のうえで決定します。



お問い合わせ・ご予約

大阪・城東区で、赤ちゃんの頭のかたちや向き癖、発達のことが気になる方は、いわた脳神経外科クリニックへお気軽にご相談ください。

今すぐWeb予約

大阪で頭痛・脳の病気・お子さんの頭のかたちの相談なら、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。


LINEで友だち追加

ご質問やご予約は、LINEからもお気軽にどうぞ。



絶壁・向き癖、まず家でできること

体位変換やセルフチェックの方法を、あわせて解説しています。

記事はこちら

新生児の抱き方のコツと注意点

頭・首・股関節を守る抱っこのしかたをくわしく解説しています。

詳細はこちら


重要:本記事の位置づけ 本記事は医療情報の提供を目的としたものであり、診断・治療の代替となるものではありません。記載内容は一般的な情報であり、すべてのお子さんに当てはまるものではありません。発達のペースや頭のかたちの変化には個人差があります。気になる様子がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。なお、本記事で紹介した研究には、観察研究が中心である・対象とした地域や月齢が限られるなどの限界があり、結果の解釈には注意が必要です。時間の目安として示した数値は、決められた基準値ではなく、続けやすさを考えた一般的な目安です。

この記事を書いた先生のプロフィール
いわた脳神経外科クリニック 院長 岩田 亮一
医師・医学博士/日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/日本脳神経血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医/日本頭痛学会認定 頭痛専門医
(日本脳卒中学会・日本認知症学会 所属)

脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。
脳血管内治療(カテーテル治療)の専門医でもあり、くも膜下出血や脳動脈解離など「危険な頭痛」の鑑別・初期対応にも力を入れています。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛と付き合ってきました。だからこそ、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

詳しい医師のご紹介はこちら
院長写真

参考文献

  1. こども家庭庁 2025, 赤ちゃんが安全に眠れるように ~1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ~, こども家庭庁, viewed 21 August 2026, <https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kenkou/sids>.
  2. Children’s Healthcare of Atlanta 2014, タミー・タイム・ツール ポジショニング、抱く、抱きかかえる、遊ぶ際に役立つアクティビティ, Children’s Healthcare of Atlanta, Atlanta, GA, viewed 21 August 2026, <https://www.choa.org/-/media/Files/Childrens/teaching-sheets/tummy-time-tools-japanese.pdf>.
  3. Dias, MS, Samson, T, Rizk, EB, Governale, LS & Richtsmeier, JT 2020, ‘Identifying the Misshapen Head: Craniosynostosis and Related Disorders’, Pediatrics, vol. 146, no. 3, e2020015511, DOI 10.1542/peds.2020-015511, viewed 21 August 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32868470/>.
  4. Hewitt, L, Kerr, E, Stanley, RM & Okely, AD 2020, ‘Tummy Time and Infant Health Outcomes: A Systematic Review’, Pediatrics, vol. 145, no. 6, e20192168, DOI 10.1542/peds.2019-2168, viewed 21 August 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32371428/>.
  5. Hewitt, L, Stanley, RM & Okely, AD 2017, ‘Correlates of tummy time in infants aged 0-12 months old: A systematic review’, Infant Behavior and Development, vol. 49, pp. 310-321, DOI 10.1016/j.infbeh.2017.10.001, viewed 21 August 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29096238/>.
  6. Mawji, A, Vollman, AR, Hatfield, J, McNeil, DA & Sauvé, R 2013, ‘The incidence of positional plagiocephaly: a cohort study’, Pediatrics, vol. 132, no. 2, pp. 298-304, DOI 10.1542/peds.2012-3438, viewed 21 August 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23837184/>.
  7. Moon, RY, Carlin, RF & Hand, I 2022, ‘Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations for Reducing Infant Deaths in the Sleep Environment’, Pediatrics, vol. 150, no. 1, e2022057990, DOI 10.1542/peds.2022-057990, viewed 21 August 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35726558/>.
  8. van Vlimmeren, LA, van der Graaf, Y, Boere-Boonekamp, MM, L’Hoir, MP, Helders, PJ & Engelbert, RH 2008, ‘Effect of pediatric physical therapy on deformational plagiocephaly in children with positional preference: a randomized controlled trial’, Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine, vol. 162, no. 8, pp. 712-718, DOI 10.1001/archpedi.162.8.712, viewed 21 August 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18678802/>.
  9. World Health Organization 2019, Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age, World Health Organization, Geneva, viewed 21 August 2026, <https://www.who.int/publications/i/item/9789241550536>.