
この記事で分かること
- 生理前の頭痛には、片頭痛の発作が月経の時期に集中する「月経関連片頭痛」と、PMS(月経前症候群)やPMDDに伴う頭痛という、しくみの異なる2つがあります
- 見分けのポイントは「頭痛が主役か、多彩な不調のなかの一つか」「症状が出る時期」「いっしょに出る症状」の3つです
- 数か月ぶんの記録(頭痛ダイアリー)をつけると見分けやすくなり、タイプに合った対策につながります
「生理の前になると、決まって頭が痛くなる」「イライラや気分の落ち込み、体のむくみと重なって、毎月しんどい時期がやってくる」。生理前の不調にくり返し悩まされている方は、少なくありません。頭痛だけのこともあれば、心と体のいろいろな症状がまとめて押し寄せてくることもあります。
じつは「生理前の頭痛」とひとことで言っても、そのなかには性質の違うものが混ざっています。片頭痛の発作が月経の時期に集中して起こるタイプと、PMS(月経前症候群)という心身の不調のなかの一症状として頭が重くなるタイプです。この2つは、起こるしくみも対策の考え方も少し異なります。
この記事は、生理前の頭痛を「どちらのタイプに近いのか」という視点で整理する見分け方の記事です。難しく感じるかもしれませんが、いくつかのポイントを知っておくだけで、ご自身の不調とのつき合い方が見えやすくなります。
本記事は、公的なガイドラインや研究報告にもとづく一般的な医療情報です。ここでお伝えする見分け方は、あくまで受診前の整理のためのものです。実際の診断や治療は、症状や経過をふまえて医師が判断します。生理のたびの頭痛でお困りのときは、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。
目次
大阪で生理前の頭痛にお悩みの方は、いわた脳神経外科クリニックの頭痛外来へお気軽にご相談ください。
1. 生理前の頭痛はなぜ起こる
生理前は、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが、どちらも大きく変動する時期です。排卵のあと高くなっていた2つのホルモンは、月経が近づくと急に低下します。このホルモンのゆらぎに体が反応して、さまざまな不調が現れやすくなります。頭痛もそのひとつです。
ここで大切なのは、生理前の頭痛の背景には、性質の違う2つのしくみが関わりうるということです。ひとつは、エストロゲンの急な低下が引き金になって起こる片頭痛の発作です。もうひとつは、PMS(月経前症候群)という心身の不調の一部として現れる頭痛や頭の重さです。同じ「生理前の頭痛」でも、この2つは分けて考えると理解しやすくなります。
どちらに近いのかを知っておくと、対策の立て方や相談する診療科を選ぶときの手がかりになります。次の章から、2つの違いを順に見ていきます。
2. PMSと片頭痛は別のもの
PMS(月経前症候群)は、月経が始まる前の黄体期(排卵から月経までの時期)に、イライラ・気分の落ち込み・不安・むくみ・乳房の張り・だるさ・頭重感など、心と体の多彩な症状がくり返し現れ、月経が始まるとやわらいでいく状態を指します。症状が特に強く、気分の落ち込みなど精神面が前面に出るものはPMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれます。PMSやPMDDでは、プロゲステロンから作られる神経ステロイド「アロプレグナノロン」に対する脳のGABA-A受容体の感受性がうまく調整できないことが関わると考えられています(Gao et al. 2023)。この考え方では、頭痛は数ある症状のなかの一つという位置づけになります。
いっぽう片頭痛は、頭痛そのものが主役の病気です。月経に関連する片頭痛では、月経前のエストロゲンの急な低下(エストロゲン離脱)が発作の引き金になると考えられています(Raffaelli et al. 2023)。ズキンズキンと脈打つ痛み、光や音への過敏、吐き気などを伴い、日常生活に支障が出るほどのつらさになることが特徴です。
「PMSがひどい人は片頭痛も持っているのでは」と感じるかもしれませんが、研究では、片頭痛のある女性のうちPMSの症状の多さは、月経に関連する片頭痛があるかどうかで大きく変わらなかったと報告されています(Vetvik et al. 2018)。つまり、PMSと月経に関連する片頭痛は、同じ時期に重なって起こることはあっても、しくみの異なる別のものと考えられています。両方をあわせ持つ方もいらっしゃいます。
ざっくり整理すると、片頭痛は「エストロゲンの低下」が引き金で、頭痛が主役。PMS/PMDDは「プロゲステロン由来の神経ステロイドへの感受性のゆらぎ」が関わり、頭痛は多彩な不調の一つ、という違いです。
3. 見分け方3つのポイント
ご自身の生理前の頭痛が、片頭痛タイプとPMSタイプのどちらに近いかを考えるとき、手がかりになるのが次の3つの視点です。日本頭痛学会(2021)は、月経に関連する片頭痛を、月経開始日の前後(おおむね前2日から後3日)に発作が起こるものとして整理しています。以下はあくまで受診前の整理のための目安で、はっきりした診断は医師が行います。
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| 見分けの視点 | 月経に関連する片頭痛 | PMS/PMDDに伴う頭痛 |
|---|---|---|
| 頭痛の位置づけ | 頭痛が主役。脈打つ痛みで寝込むこともある | 多彩な不調のなかの一つ。頭が重い・締めつけられる感じが中心のことも |
| 出やすい時期 | 月経開始日の前後(おおむね前2日〜後3日)に発作が集中しやすい | 排卵後から月経開始までの黄体期に続き、月経が始まると全体にやわらぐ |
| いっしょに出る症状 | 光・音への過敏、吐き気、前兆(閃輝暗点など)を伴うことがある | イライラ、気分の落ち込み、不安、むくみ、乳房の張り、だるさなど心身の症状 |
おおまかには、「ズキンズキンと脈打つ強い頭痛が主役で、月経の前後に集中する」なら片頭痛タイプ、「頭の重さがイライラやむくみなど多くの不調とセットで、月経が始まると全体にやわらぐ」ならPMSタイプに近いと考えられます。もっとも、両方が重なっている方も多く、実際には線引きが難しいこともあります。生理中のこめかみの痛みについては「生理中のこめかみの頭痛」もご参照ください。
頭痛の前後に、視野の一部にギザギザした光が見える「閃輝暗点」などの前兆を伴う片頭痛は、ピルの選び方にも関わる大切なサインです。前兆のある片頭痛とピルの関係については「ピルと片頭痛・脳梗塞リスク」で解説しています。
「自分の頭痛がどちらのタイプか分からない」と感じるときは、頭痛外来でご相談いただけます。
4. セルフチェックの考え方
タイプを見分けるいちばんの近道は、記録をつけることです。研究でも、月経周期と頭痛の関係を確かめるには、数か月ぶんの頭痛ダイアリーをつけることがすすめられています(Raffaelli et al. 2023)。特別な道具は要りません。カレンダーやスマートフォンのメモに、次のことを2〜3か月ぶん書きとめてみてください。
| 記録する項目 | 見えてくること |
|---|---|
| 月経が始まった日 | 頭痛が月経のどのタイミングで起こるかの基準になる |
| 頭痛が起こった日と痛み方 | 月経前後に集中しているか、脈打つ痛みかどうか |
| いっしょに出た症状 | イライラ・むくみなど心身の不調が伴うか(PMSタイプの手がかり) |
| 月経が始まったあとの変化 | 月経開始で全体にやわらぐか(PMSタイプに多い経過) |
数か月つけてみると、「頭痛が月経の前後に集中している」のか、「頭の重さがほかの不調とセットで黄体期に続き、月経が始まると軽くなる」のか、ご自身のパターンが見えてきます。この記録は、受診の際に医師がタイプを判断するうえでも役立ちます。セルフチェックだけで結論を出さず、気になるときは記録を持って相談していただくと安心です。
5. 受診の目安と関連テーマ
生理前の頭痛は、「毎月のことだから」とあきらめてしまいがちですが、対策の余地が大きい不調です。次のようなときは、我慢を続けるより一度ご相談いただくことをおすすめします。
| こんなとき | おすすめの相談先・対応 |
|---|---|
| 生理のたびに寝込む・予定を休むほどの頭痛がある | 頭痛外来で治療・予防を相談する |
| 市販の痛み止めが効きにくい・使う量が増えている | 薬の見直しのため受診する |
| 気分の落ち込み・イライラなど心の不調が強い | 婦人科・心療内科など、症状に合った窓口も選択肢になる |
| 前兆(閃輝暗点など)があり、ピルの使用を考えている | 頭痛と婦人科の両面から相談する |
頭痛そのものの診断や、片頭痛の治療・予防は、頭痛外来(脳神経外科・脳神経内科)でご相談いただけます。いっぽうで、これまでに経験したことのない突然の激しい頭痛や、手足のまひ・ろれつが回らないといった症状は、月経とは関係のない別の病気のサインのことがあります。こうしたときは、月経周期にかかわらず、ためらわず119番を呼んでください。呼ぶかどうか迷うときは、救急安心センター(#7119)に相談できます。
なお、生理前の頭痛や気分の症状に対して低用量ピルなどが検討されることもありますが、前兆のある片頭痛の方では脳梗塞などのリスクという観点から慎重な判断が必要です。自己判断はせず、頭痛と婦人科の両面から医師にご相談ください。くわしくは「ピルと片頭痛・脳梗塞リスク」もご覧ください。
生理前後に起こる片頭痛(生理関連片頭痛)の原因と対処については、当院の解説動画でもお伝えしています。あわせてご覧ください。
6. よくある質問
Q. 生理前の頭痛は、PMSと片頭痛のどちらなのでしょうか?
どちらの可能性もあり、両方が重なっていることもあります。頭痛が主役で脈打つ痛みが月経の前後に集中するなら片頭痛タイプ、頭の重さがイライラやむくみなど多くの不調とセットで月経開始とともにやわらぐならPMSタイプに近いと考えられます。数か月ぶんの記録をつけてから頭痛外来でご相談いただくと、タイプに合った対応を考えやすくなります。
Q. PMSの頭痛と片頭痛では、対処のしかたが違いますか?
起こるしくみが異なると考えられているため、対策の考え方も変わります。片頭痛では発作を抑える薬や月経前後にしぼった予防という考え方があり、PMS/PMDDでは生活の工夫や、症状に応じた婦人科・心療内科での相談が選択肢になります。どちらに近いかで相談先も変わるため、自己判断で市販薬を続けるより、一度受診して整理することをおすすめします。
Q. 生理前のイライラや気分の落ち込みも、頭痛と関係がありますか?
イライラや気分の落ち込み、不安などが黄体期に強く出て月経開始でやわらぐ場合は、PMSやPMDDの症状の一部と考えられます。頭痛がこうした心身の不調とセットで現れているなら、頭痛だけでなく全体を見てもらえる窓口での相談が向いていることがあります。気分の症状が強く生活に支障が出ているときは、我慢せずにご相談ください。
Q. 生理前の頭痛は、何科に相談すればよいですか?
頭痛そのものの診断や片頭痛の治療・予防は、頭痛外来(脳神経外科・脳神経内科)でご相談いただけます。気分の落ち込みやイライラが強い、ホルモンの調整を考えたいといった場合は、婦人科や心療内科と連携して進めることもあります。突然の激しい頭痛やまひなどがあるときは、月経とは別の病気を考え、ためらわず119番を呼んでください。
7. まとめ
- 生理前の頭痛には、片頭痛の発作が月経に集中する「月経に関連する片頭痛」と、PMS/PMDDに伴う頭痛という、しくみの異なる2つがあります。
- 片頭痛はエストロゲンの急な低下が引き金で頭痛が主役、PMS/PMDDはプロゲステロン由来の神経ステロイドへの感受性のゆらぎが関わり頭痛は多彩な不調の一つ、と考えられています。
- 見分けのポイントは「頭痛が主役か」「出る時期」「いっしょに出る症状」の3つで、両方が重なることもあります。
- 数か月ぶんの頭痛ダイアリーをつけると見分けやすくなり、受診の際にも役立ちます。タイプに合った対策のため、我慢を続けず一度ご相談ください。
毎月の生理前の頭痛は、「体質だから」とあきらめる必要はありません。ご自身のタイプを知ることが、楽になるための第一歩です。つらい生理前の頭痛でお困りのときは、どうぞお気軽にご相談ください。
お問い合わせ・ご予約
大阪で生理前の頭痛、くり返す片頭痛が気になる方は、いわた脳神経外科クリニックへお気軽にご相談ください。ご予約は、下記から可能です。
当院公式LINEにてご質問等もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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重要:本記事の位置づけ(医療情報として)
- 本記事は、公的資料や研究報告に基づく「一般的な医療情報」です。
- 特定の治療を推奨・保証するものではありません。症状の感じ方や経過には個人差があります。
- 実際の診断・治療は、症状・既往歴などを踏まえて医師が判断します。気になる症状があるときは受診してください。
参考文献
- 日本頭痛学会 2021, 頭痛の診療ガイドライン2021, 日本頭痛学会, viewed 30 July 2026, <https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf>.
- Gao, Q, Sun, W, Wang, YR, Li, ZF, Zhao, F, Geng, XW, Xu, KY, Chen, D, Liu, K, Xing, Y, Liu, W & Wei, S 2023, ‘Role of allopregnanolone-mediated γ-aminobutyric acid A receptor sensitivity in the pathogenesis of premenstrual dysphoric disorder: toward precise targets for translational medicine and drug development’, Frontiers in Psychiatry, vol. 14, 1140796, DOI 10.3389/fpsyt.2023.1140796, viewed 30 July 2026, <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10017536/>.
- Raffaelli, B, Do, TP, Chaudhry, BA, Ashina, M, Amin, FM & Ashina, H 2023, ‘Menstrual migraine is caused by estrogen withdrawal: revisiting the evidence’, The Journal of Headache and Pain, vol. 24, no. 1, 131, DOI 10.1186/s10194-023-01664-4, viewed 30 July 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37730536/>.
- Vetvik, KG, MacGregor, EA, Lundqvist, C & Russell, MB 2018, ‘Symptoms of premenstrual syndrome in female migraineurs with and without menstrual migraine’, The Journal of Headache and Pain, vol. 19, no. 1, 97, DOI 10.1186/s10194-018-0931-6, viewed 30 July 2026, <https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6755584/>.















