この記事で分かること
- 妊娠すると、多くの方で片頭痛はむしろ軽くなっていきます。
- 急性期(痛いとき)の第一に考える薬はアセトアミノフェン(カロナール)です。
- 解熱鎮痛薬(NSAIDs/ロキソプロフェンなど)は妊娠後期には使いません。時期によって考え方が変わります。
- 予防はまず生活の工夫から。薬を使う場合も妊娠中に避けたいものがあります。
- 薬の可否は自己判断せず、主治医・産科の先生と相談して決めます。
「妊娠中に頭痛がつらいけれど、薬を飲んで赤ちゃんに影響しないか心配」。そう感じて、痛みをじっと我慢されている妊婦さんは少なくありません。頭痛はもともと女性に多く、妊娠という大切な時期に重なると、余計に不安が大きくなるのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、妊娠中は「使える薬」と「その時期には控えたい薬」があり、それは妊娠の週数によっても変わっていきます。やみくもに我慢する必要はなく、主治医と相談しながら選べる選択肢があります。
この記事では、大阪で頭痛外来を行う脳神経外科の視点から、妊娠中の片頭痛について「どの薬が、どの時期に使えるのか」を、時期別・薬剤別に整理してお伝えします。カロナール(アセトアミノフェン)そのものの安全性の詳しい解説は、別記事にゆずります。
アセトアミノフェン(カロナール)の安全性や、赤ちゃんの発達に関する研究のくわしい内容は、別記事「妊娠中カロナール使用と赤ちゃんの発達リスク」で解説しています。本記事は「どの薬をどの時期に使えるか」に絞ってご説明します。
目次
妊娠中の頭痛でお困りの方は、我慢せず一度ご相談ください。
1. 妊娠中の片頭痛の経過
まず知っておいていただきたいのは、多くの方にとって妊娠は片頭痛が軽くなりやすい時期だということです。片頭痛と妊娠に関する研究をまとめた報告では、妊娠が進むにつれて発作が減る妊婦さんが多く、とくに妊娠中期から後期にかけて改善しやすいとされています (Negro et al. 2017)。女性ホルモン(エストロゲン)の変動がゆるやかになることが関係すると考えられています。
一方で、前兆(閃輝暗点など)のある片頭痛の方では、妊娠中に頭痛が変わりにくかったり、かえって強く出たりすることもあります。「軽くなる人が多い」というのはあくまで全体の傾向で、感じ方には個人差があります。
いつもと違う頭痛は要注意
妊娠中に「経験したことのない強い頭痛」「急に始まった頭痛」「手足のしびれ・見えにくさ・強いむくみや血圧上昇をともなう頭痛」が出たときは、片頭痛とは別の病気(妊娠高血圧症候群など)のサインのこともあります。
自己判断せず、早めに産科や医療機関にご連絡ください。
2. 急性期に使える薬(時期別)
頭痛が起きたとき(急性期)に使う薬は、妊娠の週数によって考え方が変わります。まず全体像を、妊娠初期・中期・後期の3つの時期でまとめました。
※スマホでは横スクロールできます。表の内容は一般的な考え方で、最終的な可否は主治医が判断します。
| 薬の種類 | 妊娠初期 (〜15週ごろ) |
妊娠中期 (16〜27週ごろ) |
妊娠後期 (28週ごろ〜) |
|---|---|---|---|
| アセトアミノフェン (カロナール) |
まず考える薬 | まず考える薬 | まず考える薬 |
| NSAIDs (ロキソプロフェン・イブプロフェンなど) |
医師の判断で慎重に | 慎重に(動脈管に注意) | 使いません |
| トリプタン (スマトリプタンなど) |
医師が有益性と危険性を検討 | 医師が有益性と危険性を検討 | 医師が有益性と危険性を検討 |
| 悪心(吐き気)の薬 (メトクロプラミド) |
医師の判断で使用可 | 医師の判断で使用可 | 医師の判断で使用可 |
週数の区切りはおおよその目安です。実際の判断は妊娠週数・体質・持病・ほかに飲んでいる薬をふまえて医師が行います。
アセトアミノフェン(カロナール)
妊娠中に痛みや熱をやわらげる目的で、まず考えられるのがアセトアミノフェン(商品名カロナールなど)です。妊娠のどの時期でも比較的使いやすい薬として、頭痛の急性期に選ばれることが多い薬です (Negro et al. 2017)。用量や飲むタイミングは医師の指示に従い、自己判断で量を増やさないようにしてください。
アセトアミノフェンそのものの安全性や、赤ちゃんの発達に関する研究の読み方は、別記事(7065)でくわしく解説しています。市販のアセトアミノフェンと病院で処方されるカロナールの違いについては、こちらの記事(4466)もご参照ください。
NSAIDs(ロキソプロフェンなど)の時期別注意
ロキソプロフェン(ロキソニン)やイブプロフェンといった解熱鎮痛薬は、まとめてNSAIDsと呼ばれます。ふだんの頭痛によく使われる薬ですが、妊娠中は時期によって扱いが大きく変わります。
とくに妊娠後期には、これらの薬が赤ちゃんの血管(動脈管)を早く閉じさせてしまうおそれや、羊水が減るおそれが知られており、この時期には使いません。米国食品医薬品局は、妊娠20週以降はNSAIDsの使用を避けること、そして妊娠30週以降は動脈管が早く閉じるおそれからとくに使用しないことを求めています (U.S. Food and Drug Administration [FDA] 2020)。国内でも、妊娠中期以降に胎児の動脈管が収縮することが知られ、妊娠後期はNSAIDsが使えないよう注意が呼びかけられています (医薬品医療機器総合機構 [PMDA] 2024)。
時期でこう変わります
妊娠初期・中期は「必要なときに医師の判断で慎重に」、妊娠後期(28週ごろ〜)は「使わない」が基本の考え方です。
市販の解熱鎮痛薬にもNSAIDsが多く含まれるため、妊娠中の頭痛には自己判断で使わず、薬剤師や医師に確認しましょう。
「ロキソニンが効かない」と感じる片頭痛の考え方や、NSAIDsの位置づけについては、別記事(4416)でも解説しています。
トリプタンの考え方
トリプタンは、片頭痛の発作によく使われる専用の薬です。妊娠中の使用については、これまでに使われた妊婦さんのデータをまとめた研究があり、大きな先天異常や早産、流産の割合が明らかに増えるという結果は示されていません (Marchenko et al. 2015)。ただし、これは「安全と言い切れる」という意味ではなく、データがまだ限られていることには注意が必要です。
そのため妊娠中のトリプタンは、痛みによるつらさなど「使う利益」が「使うことのリスク」を上回ると医師が判断した場合に、慎重に検討する薬という位置づけになります (Negro et al. 2017)。使う場合の薬剤や量は、主治医が個別に判断します。トリプタン全般のしくみや特徴は総論記事(4522)をご覧ください。
吐き気(悪心)への対応
片頭痛では、頭痛そのものよりも吐き気がつらいという方もいらっしゃいます。妊娠中の吐き気に対しては、メトクロプラミドという薬が使われることがあります。妊娠初期に使用した妊婦さんの大規模な調査でも、大きな先天異常や死産の増加は認められなかったと報告されています (Pasternak et al. 2013)。吐き気が強いときは我慢せず、主治医に相談してみてください。
「この薬は飲んでよい?」と迷ったら、自己判断の前にご相談ください。
3. 片頭痛を予防する薬
発作が起きるたびに薬でおさえる「急性期治療」に対して、発作そのものを減らすのが「予防」です。妊娠中の予防は、できるだけ薬に頼らない方法を先に考えるのが基本です (Negro et al. 2017)。
まずは薬にたよらない工夫から
睡眠・水分・食事のリズムを整える、空腹や寝不足・強い光やにおいなど自分の引き金を避ける、肩や首の緊張をやわらげる、といった生活の工夫が予防の土台になります。妊娠中はとくに、こうした非薬物的な対応が第一に考えられます。前述のとおり妊娠が進むと発作が減る方も多いため、薬を増やさずに経過をみられることも少なくありません。
予防薬を使う場合
発作の回数が多く、生活に大きく支障が出る場合には、予防薬を検討することがあります。妊娠中に比較的使われてきたものとして、プロプラノロール(血圧・動悸などに使うβ遮断薬)や、少量のアミトリプチリンなどが挙げられます (Negro et al. 2017)。いずれも、妊娠週数や体質をふまえて医師が慎重に選びます。
妊娠中に避けたい予防薬
片頭痛の予防にも使われるバルプロ酸は、赤ちゃんへの影響(催奇形性)が知られており、妊娠中は避けます。
妊娠を計画している段階から、予防薬の見直しについて主治医と相談しておくことが大切です。
CGRP関連薬(注射の予防薬)について
近年、片頭痛の予防に使われるようになったCGRP関連の注射薬は、妊娠中の安全性がまだ十分に分かっていないため、妊娠中は使いません。これらの薬を使っている方が妊娠を希望する場合は、いつまでに休薬しておくかを含め、主治医と早めに相談して計画を立てることがすすめられます。自己判断で中止したり続けたりせず、必ず担当の先生に伝えてください。
4. 自己判断せず相談を
ここまで時期別・薬剤別の考え方を整理しましたが、いちばん大切なのは「どの薬をどのくらい使うか」を自己判断で決めないことです。妊娠週数、これまでの経過、持病、ほかに飲んでいる薬によって、最適な選択は一人ひとり変わります。
頭痛が続くときは、「妊娠していること(何週か)」「授乳の予定」「今飲んでいる薬」を医師に伝えていただくと、より安全な選択がしやすくなります。頭痛外来と産科で情報を共有しながら進めることも可能です。つらい頭痛を一人で我慢せず、気軽にご相談ください。
相談のときに伝えるとよいこと
・妊娠の有無と週数(妊娠を計画中かどうかも)
・これまでの頭痛のパターンと、効いた薬・効かなかった薬
・今飲んでいる薬やサプリメント
5. よくある質問
Q. 妊娠に気づかず頭痛薬を飲んでいました。大丈夫でしょうか。
市販薬を数回飲んだ程度で過度に心配される必要はないことが多いですが、飲んだ薬の名前と時期をメモして、産科や主治医に伝えてください。これからの対応を一緒に考えられます。自己判断で不安をかかえこまないことが大切です。
Q. 妊娠中の頭痛に市販薬を使ってよいですか。
市販の頭痛薬にはNSAIDsやカフェイン、複数の成分が含まれるものがあり、妊娠中は成分によって注意が必要です。とくに妊娠後期のNSAIDsは避けます。市販薬を使う前に、薬剤師や医師に成分を確認してもらうと安心です。
Q. 妊娠中の片頭痛はいつまで続きますか。
個人差はありますが、妊娠が進むにつれて発作が軽くなる方が多く、中期から後期にかけて楽になる傾向が報告されています。一方で出産後に再び戻ってくることもあるため、産後の頭痛についても相談しておくとよいでしょう。
Q. 授乳が始まると使える薬は変わりますか。
妊娠中と授乳中では、薬の考え方が変わる部分があります。授乳中の頭痛薬については、母乳への移行なども含めて別に整理が必要です。授乳の予定を主治医に伝えて、その時期に合った選択を相談してください。
6. まとめ
- 妊娠中は多くの方で片頭痛が軽くなり、とくに中期以降に改善しやすい傾向があります。
- 急性期にまず考えるのはアセトアミノフェン(カロナール)です。
- NSAIDs(ロキソプロフェンなど)は妊娠後期には使わず、時期によって扱いが変わります。
- トリプタンは、医師が有益性と危険性を検討したうえで慎重に使う薬です。
- 予防はまず生活の工夫から。バルプロ酸やCGRP関連の注射薬は妊娠中に使いません。
妊娠中の頭痛は、我慢の上に成り立つものではありません。使える選択肢を主治医と一緒に整理していけば、つらさをやわらげながら妊娠期間を過ごせます。一人でかかえこまず、気になることはお気軽にご相談ください。
お問い合わせ・ご予約
妊娠中の頭痛や、飲んでよい薬についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。ご予約は、下記から可能です。
当院公式LINEにてご質問等もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
関連記事
重要:本記事の位置づけ(医療情報として)
- 本記事は、研究報告や公的資料に基づく「一般的な医療情報」です。
- 特定の治療を推奨・保証するものではありません。効果や副作用には個人差があります。
- 実際の治療は、妊娠週数・症状・既往歴・併用薬などを踏まえて医師が判断します。妊娠中・授乳中の服薬は、必ず主治医・産科の医師にご相談ください。
参考文献
- 医薬品医療機器総合機構 2024, シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有するNSAIDs(全ての妊婦が禁忌とされている薬剤を除く)の使用上の注意の改訂について, 医薬品医療機器総合機構, viewed 22 July 2026, <https://www.pmda.go.jp/files/000271181.pdf>.
- Marchenko, A, Etwel, F, Olutunfese, O, Nickel, C, Koren, G & Nulman, I 2015, ‘Pregnancy outcome following prenatal exposure to triptan medications: a meta-analysis’, Headache, vol. 55, no. 4, pp. 490-501, DOI 10.1111/head.12500, viewed 22 July 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25644494/>.
- Negro, A, Delaruelle, Z, Ivanova, TA, Khan, S, Ornello, R, Raffaelli, B, Terrin, A, Reuter, U & Mitsikostas, DD 2017, ‘Headache and pregnancy: a systematic review’, The Journal of Headache and Pain, vol. 18, no. 1, 106, DOI 10.1186/s10194-017-0816-0, viewed 22 July 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29052046/>.
- Pasternak, B, Svanström, H, Mølgaard-Nielsen, D, Melbye, M & Hviid, A 2013, ‘Metoclopramide in pregnancy and risk of major congenital malformations and fetal death’, JAMA, vol. 310, no. 15, pp. 1601-1611, DOI 10.1001/jama.2013.278343, viewed 22 July 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24129464/>.
- U.S. Food and Drug Administration 2020, FDA recommends avoiding use of NSAIDs in pregnancy at 20 weeks or later because they can result in low amniotic fluid, U.S. Food and Drug Administration, viewed 22 July 2026, <https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/fda-recommends-avoiding-use-nsaids-pregnancy-20-weeks-or-later-because-they-can-result-low-amniotic>.















