片頭痛の新薬レイボー(ラスミジタン)2026年実臨床データの正しい読み方

この記事で分かること

  • 2026年に発表された日本の「実臨床データ(市販後観察研究)」で、レイボーが実際にどう使われ、どんな効き方・副作用だったか
  • 「実臨床の21.5%」と「臨床試験の40.8%」、なぜ数字が違うのか ―― 研究には”役割の違い”があること
  • トリプタン(従来薬)が使いにくい方、心臓や脳血管に持病がある方にとっての選択肢としての位置づけ

※効果や副作用には個人差があります。本記事は一般的な医療情報であり、診断・治療の代替ではありません。

片頭痛の発作が起きるたびに、仕事や家事の手を止めて暗い部屋でじっと耐える ―― そんな経験を繰り返している方は少なくないと思います。これまでの飲み薬(トリプタン)が効きにくい、あるいは胸の締めつけ感などで合わない、という方もいらっしゃいます。

そうした中で注目されているのが、トリプタン以来およそ20年ぶりの急性期治療薬「レイボー(一般名:ラスミジタン)」です。ただ、いざ調べてみると「レイボー 効かない」「副作用 めまい」といった言葉も目に入り、かえって不安になってしまった、という声も聞きます。

そして2026年、この薬について日本の日常診療での”使われ方”を調べたデータが新しく発表されました。とても貴重な情報なのですが、実は数字の「読み方」を少し知っているかどうかで、受け取り方が大きく変わります。この記事では、薬の基本的な仕組みそのものよりも、「出たばかりのデータをどう読めばよいか」を、できるだけやさしく一緒に整理していきます。

レイボーの作用の仕組み、トリプタンとの違い、対象となる方、費用などの基本情報は、当院の診療ページ「片頭痛急性期治療薬レイボー」で詳しくご説明しています。この記事はその”続き”として、新しく出た研究データの読み解き方に焦点をあてます。


目次



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1. レイボー(ラスミジタン)ってどんな薬?

まずは前提として、ごく簡単に整理します。レイボーは、世界で初めての「ジタン系」と呼ばれる片頭痛の急性期治療薬です。2022年に発売され(製造販売:第一三共株式会社)、トリプタンが登場して以来およそ20年ぶりの新しいタイプの発作治療薬として登場しました。

大きな特徴は、脳の痛みの伝わり方にかかわる「セロトニン5-HT1F受容体」という的にしぼって作用する点です。従来のトリプタンが血管を収縮させる働きをあわせ持つのに対し、レイボーは血管を収縮させずに痛みのシグナルを抑えると報告されています(Sakai et al., 2021ほか)。通常は1回100mgを発作時に服用し、状態に応じて50mgまたは200mgが用いられます。

作用の仕組みやトリプタンとの違い、対象となる方、費用などの基本は診療ページにまとめています。ここから先は、2026年の新しいデータの”読み方”の話に進みます。



2. 2026年、日本の「実臨床データ」が出ました

2026年5月、レイボーについて日本の日常診療での安全性と効果を調べた市販後観察研究(使用成績調査)が報告されました(Sanno et al., 2026)。臨床試験のように条件をそろえた特別な環境ではなく、ふだんの外来で実際に処方された患者さんを対象にしている点が大きな特徴です。

主な結果は次のとおりです。

項目 結果
対象 安全性の解析 400名/有効性の解析 328名(日本・多施設)
服用2時間後に痛みが消えた割合 21.5%(中等度〜重度の発作)
何らかの副作用が出た割合 41.8%(主にめまい8.4%・傾眠3.9%)
重い副作用・死亡 報告なし

論文の結論は「日本の日常診療において、レイボーは管理可能な安全性プロファイルと有効性を示し、新たな安全性の懸念は認められなかった」というものでした。これは実際に使う立場からするととても心強い報告です。

この研究のデザイン:単群(1つのグループのみ)・対照群なし・非介入・前向き観察。つまり「プラセボ(偽薬)と比べる」形ではなく、「実際に使った人たちを後ろから観察する」形の研究です。ここが、次の章の数字を読むうえでとても大切になります。


お薬の効き方や副作用が気になる方は、お気軽にご相談ください。

 

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3.「実臨床」と「臨床試験」、数字が違う理由

ここで多くの方がとまどうのが、「効いた割合」の数字が研究によってバラバラに見えることです。実際に並べてみましょう。

研究 種類 2時間後に痛みが消えた割合
Sanno 2026(日本・実臨床) 市販後観察研究(単群) 21.5%
Sakai 2021(日本・MONONOFU) 第2相RCT プラセボ16.6% / 100mg 32.4% / 200mg 40.8%
SAMURAI(海外) 第3相RCT プラセボ15.3% / 200mg 32.2%
SPARTAN(海外) 第3相RCT プラセボ21.3% / 200mg 38.8%

「実臨床では21.5%なのに、臨床試験では40.8%? 実際にはあまり効かないということ?」と感じてしまうかもしれません。でも、ここで結論を急がないでください。この2種類の研究は、そもそも”測っているもの”が違います。


RCT(ランダム化比較試験)が見ているもの

RCTは、参加者を薬の群とプラセボ(偽薬)の群にくじ引きのように分け、条件をそろえて比較します。注目したいのは、プラセボでも16.6〜21.3%の人で痛みが消えている点です。これは自然に治った分や、薬を飲んだという安心感(プラセボ効果)などを表しています。薬の群(例:200mg 40.8%)から、このプラセボの分を差し引いた”上乗せ分”こそが「薬そのものの効果」です。RCTは、この上乗せ効果を厳密に検証するための研究といえます。


使用成績調査(市販後観察研究)が見ているもの

一方、Sanno 2026のような使用成績調査は、比較する相手(プラセボ群)がありません。ですから21.5%という数字には、薬の効果に加えて、自然経過やプラセボ効果、さまざまな背景を持つ患者さんの状況がすべて含まれています。逆にいえば、RCTのように「薬だけの効果」を取り出した数字ではありません。その代わり、選り好みをしない”ふだんの外来そのもの”の使われ方や安全性を映し出してくれます。

読み方のコツ:使用成績調査の数字を、RCTと同じ物差しで「効果」として比べてはいけません。役割が違うからです。
・RCT=「薬そのものに効果があるか」を検証する
・使用成績調査=「実際の臨床での使われ方・安全性」を確認する
どちらが優れているという話ではなく、両方そろって初めて、薬の全体像が見えてきます。

つまり、レイボーは「RCTで効果が確認され(Sakai 2021ほか)」、「実臨床で大きな安全性の問題なく使われている(Sanno 2026)」という、2つの異なる角度から裏づけられた薬だと読み取るのが正確です。21.5%という数字は”効果が低い証拠”ではなく、”別の質問への答え”なのです。



4. 副作用の数字も「読み方」次第

同じことは副作用の数字にもあてはまります。めまいを例にとると、研究によって割合が大きく違います。

研究 めまい 傾眠(眠気)
Sanno 2026(実臨床) 8.4% 3.9%
Sakai 2021(RCT・全用量) 39.4% 19.3%

実臨床のほうがめまいの割合がぐっと低く見えます。これは「実臨床のほうが安全」と単純にいえるわけではなく、副作用の”拾い方”の違いが大きく影響しています。臨床試験では、研究者が一人ひとりに細かく問診して軽い症状まで積極的に拾い上げます。一方、市販後の調査では、患者さんや医師が気づいて報告した分が中心になりやすく、軽い症状は数字に表れにくい傾向があります。どちらの数字も間違いではなく、測り方が違うだけです。

レイボーの主な副作用は、浮動性のめまい・傾眠(眠気)・倦怠感などです。多くは軽度〜中等度で、Sanno 2026ではめまいが中央値で約3時間、傾眠が約4時間ほどで治まったと報告されています。

運転についての大切な注意:めまいや眠気が出ることがあるため、添付文書では服用後の自動車の運転などは避けるよう求められています。とくに初めて使うときは、横になって休める環境で試すと安心です。また、ごくまれにセロトニン症候群(0.1%未満)が報告されており、他の特定の薬との併用には注意が必要です。気になる症状があれば医師・薬剤師にご相談ください。



5. トリプタンが使いにくい方の選択肢として

ここは、脳神経外科の立場からとくにお伝えしたい点です。片頭痛発作の代表的な治療薬であるトリプタンは、5-HT1B/5-HT1D受容体に作用し、血管を収縮させる働きをあわせ持ちます。この性質のため、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、脳梗塞などの脳血管障害、コントロールされていない高血圧などがある方には、トリプタンは使えない(禁忌)とされています。


レイボーは血管を収縮させないと報告されている

これに対してレイボー(ラスミジタン)は、血管収縮にかかわる5-HT1B/5-HT1D受容体よりも、5-HT1F受容体に440倍以上強く結合する選択性を持ちます。添付文書では、ヒトの冠状動脈や内胸動脈、硬膜動脈などに対して収縮作用を示さなかったと記載されています。禁忌は「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方」のみで、心血管・脳血管に関する禁忌は設けられていません。


トリプタンが使えない方を対象にした解析

この点を裏づける研究として、4つの臨床試験(SAMURAI・SPARTAN・CENTURION・MONONOFU)の5,704名分のデータをまとめた事後解析があります(Krege et al., 2022)。この解析では、トリプタンが禁忌となる患者さん(207名)と、そうでない患者さんとで、レイボーの効果(痛みの消失・軽減など)に差はみられず、安全性のプロファイルも同等でした。さらに、血管収縮を示すような心血管系の有害事象(狭心症・脳梗塞・虚血性脳卒中など)は報告されませんでした。

当院は脳神経外科として、頭痛の背景にある脳・血管の状態をMRIなどで評価したうえで治療方針を考えます。心臓や脳血管に持病・リスクがあって「これまでの頭痛薬が使えなかった」という方にとって、レイボーは検討する価値のある選択肢になり得ます。

ただし、「血管を収縮させない=誰にとっても万能」というわけではありません。前章でふれためまい・傾眠や運転の制限、セロトニン症候群といった別の注意点があり、効き方にも個人差があります。「トリプタンより常に切り替えたほうがよい」ということではなく、体質・併存疾患・生活スタイルをふまえて一人ひとりに合わせて選ぶことが大切です。費用や対象の詳細は診療ページもご覧ください。


心臓や脳の持病があり、頭痛薬の選択にお悩みの方もご相談ください。

 

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6. これからの片頭痛・急性期治療

片頭痛の発作を抑える飲み薬は、ここ数年で大きく広がっています。従来のトリプタン、そしてジタン系のレイボーに加えて、「ゲパント」と呼ばれる経口のCGRP関連薬が登場しました。日本では2025年12月にナルティーク(一般名:リメゲパント/急性期と予防の両方に使えるタイプ)、2026年4月にアクイプタ(一般名:アトゲパント/予防)が発売されています。

つまり、急性期治療は「トリプタン」「ジタン(レイボー)」「ゲパント」を状況に応じて使い分ける時代に入りつつあります。どれか一つだけが突出して優れているということではなく、心血管リスクの有無、眠気の出やすさ、予防薬との組み合わせ、ふだんの生活などをふまえて選んでいくことになります。

選択肢が増えるほど、新しいデータも次々に出てきます。そのときに「これはRCTか、それとも使用成績調査か」「プラセボと比べた効果なのか、実臨床の使われ方なのか」を意識して読むと、ひとつの数字に振り回されずに、自分に合った治療を医師と一緒に選びやすくなります。



7. よくある質問

Q. 「レイボーは効かない」と聞いて不安です。

実臨床で2時間後に痛みが消えた割合は21.5%と報告されていますが、これは前述のとおり「薬だけの効果」を取り出した数字ではありません。効き方には個人差があり、用量(50・100・200mg)の調整や、再発時の追加服用で対応できる場合もあります。合わないと感じるときは、他の急性期薬や予防薬も含めて見直すことができますので、ご相談ください。

Q. トリプタンとどちらが効きますか?

両者を直接比較した質の高いデータは限られており、「どちらが上」と一概にはいえません。実際には、効果の大小よりも「血管を収縮させるかどうか」「眠気の出やすさ」など、その方に合うかどうかで選ぶことが多い薬です。

Q. めまいや眠気が心配です。

主な副作用ですが、多くは軽度〜中等度で、数時間ほどで治まったと報告されています。服用後の運転は避け、初めてのときは休める環境で試すと安心です。日常生活に支障が出る場合は医師にご相談ください。

Q. 心臓や脳の持病があっても使えますか?

トリプタンが使えない方でも候補になり得ると報告されていますが、持病の内容や状態によって判断が変わります。自己判断はせず、必ず医師の評価を受けてください。当院では脳・血管の状態を確認したうえでご提案します。

Q. 予防薬と一緒に使えますか?

発作が起きたときに飲む急性期薬(レイボー)と、発作そのものを減らす予防薬は役割が異なり、併用が検討される場面もあります。組み合わせの可否は、お使いの薬を確認したうえで診察でご相談ください。



8. まとめ

  1. レイボー(ラスミジタン)は、トリプタン以来およそ20年ぶりの片頭痛急性期治療薬で、血管を収縮させずに作用すると報告されています。
  2. 2026年に日本の実臨床データ(市販後観察研究)が発表され、大きな安全性の問題なく使われていることが示されました。
  3. 「実臨床の21.5%」と「臨床試験の40.8%」は、研究の役割が違うため単純には比べられません。両方そろって薬の全体像が分かります。
  4. 副作用(めまい・傾眠など)も研究によって数字が違いますが、これは”拾い方”の違いです。運転の制限には注意が必要です。
  5. 心臓や脳血管に持病があり、トリプタンが使いにくい方にとっての選択肢になり得ます。使い分けは医師と相談して決めましょう。

数字の大小だけにとらわれず、「どんな研究の数字か」を知ることが、自分に合った治療を選ぶ第一歩です。片頭痛のお薬についてお悩みやご不安があれば、どうぞお気軽にいわた脳神経外科クリニックにご相談ください。一緒に整理していきましょう。



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片頭痛の発作治療や予防、これまでの頭痛薬が合わないといったお悩みについて、お気軽にご相談ください。ご予約は、下記から可能です。

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重要:本記事の位置づけ(医療情報として)

  • 本記事は、研究報告や公的資料に基づく「一般的な医療情報」です。
  • 特定の治療を推奨・保証するものではありません。効果や副作用には個人差があります。
  • 実際の治療は、症状・既往歴・併用薬などを踏まえて医師が判断します。
この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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参考文献

  1. Sanno, N., Urayama, K.Y., Mori, J., Yoshizawa, K. and Hashimoto, C. (2026) ‘Real-World Safety and Effectiveness of Lasmiditan in Patients with Migraine: A Post-Marketing Observational Study in Japan’, Neurological Therapy. doi:10.1007/s40120-026-00966-4. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42177382/(閲覧日:2026年6月16日)
  2. Sakai, F., Takeshima, T., Homma, G., Tanji, Y., Katagiri, H. and Komori, M. (2021) ‘Phase 2 randomized placebo-controlled study of lasmiditan for the acute treatment of migraine in Japanese patients’, Headache, 61(5), pp.755–765. doi:10.1111/head.14122. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33990951/
  3. Kuca, B., Silberstein, S.D., Wietecha, L., Berg, P.H., Dozier, G. and Lipton, R.B. (2018) ‘Lasmiditan is an effective acute treatment for migraine: A phase 3 randomized study’, Neurology, 91(24), pp.e2222–e2232. doi:10.1212/WNL.0000000000006641. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30446595/
  4. Goadsby, P.J., Wietecha, L.A., Dennehy, E.B., Kuca, B., Case, M.G., Aurora, S.K. and Gaul, C. (2019) ‘Phase 3 randomized, placebo-controlled, double-blind study of lasmiditan for acute treatment of migraine’, Brain, 142(7), pp.1894–1904. doi:10.1093/brain/awz134. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31132795/
  5. Krege, J.H., Lipton, R.B., Baygani, S.K., Komori, M., Ryan, S.M. and Vincent, M. (2022) ‘Lasmiditan for Patients with Migraine and Contraindications to Triptans: A Post Hoc Analysis’, Pain and Therapy, 11(2), pp.701–712. doi:10.1007/s40122-022-00388-8. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35471625/
  6. 第一三共株式会社 (2024) 『レイボー錠50mg/100mg 医薬品インタビューフォーム(第5版)』. Available at: https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00006417.pdf(閲覧日:2026年6月16日)