こんにちは。大阪で「赤ちゃんの頭のかたち外来」をおこなっている、いわた脳神経外科クリニックです。

 

 

 最近、街中でカラフルで可愛らしいヘルメットを被った赤ちゃんを見たことはありませんか? 実はあれが、「頭蓋形状矯正(ずいがいけいじょうきょうせい)ヘルメット」といって、赤ちゃんの頭のかたちを整えるためのものなんです。最近、このヘルメット治療が注目を集め、利用するご家庭が増えています。

 

小児科や脳神経外科の先生のところにも「うちの子、頭のかたちがちょっと…」なんて相談が増えているみたいで、特に都市部では、こうした治療がだんだん知られるようになり、ある程度認知されてきているようです。

でも、全部がうまくいっているわけではなく、実際にはちょっと心配な使われ方も…。

たとえば、本当はしっかり治療が必要な「頭蓋縫合早期癒合症(ずがいほうごうそうきゆごうしょう)」が、ヘルメット治療だけで経過観察されてしまうこともあるようです。

そのため、最近では大学病院や小児病院が「赤ちゃんの頭のかたち外来」を設けて、専門的に診てもらえるようになってきています。

 

どうしてヘルメット治療が増えているの?

 

 この治療が広まったきっかけには、1992年にアメリカで始まった「Back to Sleep(仰向け寝)」キャンペーンがあります。

 

これは乳幼児突然死症候群(SIDS)(にゅうようじとつぜんししょうこうぐん)を予防するための取り組みで、結果的に赤ちゃんの死亡率が大きく減少しました。この流れを受けて、日本でも1998年に厚生労働省が「SIDS予防の3つのポイント」として、仰向け寝(あおむけね)、母乳(ぼにゅう)、禁煙(きんえん)を推奨しました。

 

ただ、この「仰向け寝」が原因で、赤ちゃんの頭が平らになったり、形が歪んでしまう「位置的頭蓋変形(いちてきずがいへんけい)」が増えたとされています。赤ちゃんは頭が柔らかいので、いつも同じ向きで寝ると形が変わりやすいんですね。

 

頭のかたちが気になる…見た目だけの問題じゃないの?

 

頭のかたちが歪むと、基本的には見た目の問題として捉えられることが多いです。でも、一部の研究では「運動発達が遅れるかも」「将来の学業に影響があるかも」なんて話もあります。

とはいえ、こうした研究には偏りがある場合が多く、「本当に頭のかたちと発達が関係あるの?」というと、まだはっきりしていないんです。でも、親としては「もし悪影響があるなら…」と思うと、不安になりますよね。

こういった背景から、矯正ヘルメットを選ぶ保護者が増えているのも納得です。ただ、実際には医師の診断を受けてから慎重に判断することが大切です。

 

位置的頭蓋変形が神経発達症のリスクとはいえない

 

「神経発達(しんけいはったつ)」に焦点を付けて、地域ベースのコホート研究として位置的頭蓋変形との関連についてSTROBE声明に従って調査したのが当論文である(JAMA Pediatr 2024; 178: 899-905

アメリカで行われた研究では、2008年から2012年の間にミネソタ州で生まれた約9,900人の赤ちゃんを対象に調査が行われました。そのうち、位置的頭蓋変形が確認されたのは575人で、発生率は全体で5.8%。正期産(予定日に近い時期に生まれた)では5.3%、早産児(そうざんじ)では11.8%と、早産児の方がリスクが高いことがわかりました。

さらに、位置的頭蓋変形を持つ赤ちゃんのうち、7歳までに神経発達症と診断されたのは30人(7.5%)。ただし、この割合は一般の子どもと比べても大きく変わらない結果でした(たとえば、自閉スペクトラム症の発生率は一般集団で2.3%、この調査では2.2%)

 

 

非対称性が神経発達症に与える影響とは?

 

頭蓋形状矯正器具の使用率と非対称性の重症度

 

位置的頭蓋変形を有する307人の赤ちゃんを対象に、STAR scanner(レーザーを用いた3Dスキャナー)を使った非対称性の測定が行われました。この検査により、位置的頭蓋変形が確認された575人の赤ちゃんのうち、41.7%(240人)が矯正目的で頭蓋形状矯正器具(矯正ヘルメット)を使用していることが判明しました。これは、全乳児の約2.4%に該当します。

 

神経発達症の診断率と非対称性の関係

 

 調査対象のうち、7歳までにミネソタ州オルムステッド郡に住み続けた216人を追跡した結果、16人(7.4%)が神経発達症と診断されました。この結果を非対称指数(CVAI)に基づく「Children’s Healthcare of Atlanta 斜頭症重症度分類」で分類すると、各グレードにおける神経発達症の診断率は以下の通りです

 

  • グレード1(軽度):4.3%
  • グレード2:4.4%
  • グレード3(中等度):12.5%
  • グレード4(重度):0.0%
  • グレード5(最重度):18.2%

 

これらの結果では、グレード間で統計的な有意差は認められませんでした。

 

縦横比(CR)による解析結果

 

頭蓋の縦横比(CR)を用いて分類した場合も、結果に大きな差はありませんでした。

各分類における神経発達症の診断率は以下の通りです

 

  • 短頭症(CRが0.90超):6.9%
  • 正常頭蓋(CRが0.79~0.90):6.6%
  • 舟状頭蓋(CRが0.78以下):20.0%

 

この分析でも、有意な差は確認されませんでした。

 

RSIによる非対称性とリスクの関係

 

一方で、全体左右体積比(RSI)に基づく分析では、非対称性が極端に大きい場合に神経発達症のリスクが上昇する傾向が見られました。具体的には、以下の結果が得られています

 

  • グレード1~4の非対称性を持つ子ども:5.7%
  • グレード5(最重度)の非対称性を持つ子ども:21.7%

 

この結果には統計的に有意な差(P=0.04)が認められました。

 

矯正ヘルメット治療の選択とリスクへの理解

 

これらのデータから、位置的頭蓋変形が神経発達症に直接つながると断定はできないものの、非対称性が極端に大きい場合は注意が必要であることが示されています。矯正ヘルメットは、見た目の改善が主な目的とされていますが、医師の診断を受け、適切な対応を検討することが大切です。

 

親として気をつけたいポイント

 

矯正ヘルメットを検討する場合、次のポイントを押さえておくと安心です。

 

専門医の診断を受ける

 

 頭のかたちが気になる場合は、小児科や脳外科の先生に相談を。頭蓋縫合早期癒合症などの病気が隠れている可能性もあります。

 

極端な歪みには注意

 

 軽度の歪みなら自然に改善することもありますが、極端な場合はヘルメット治療を含めた対応が必要になるかもしれません。

 

過剰な不安に流されない
 

  「神経発達症を予防できる」といった科学的根拠の薄い情報に惑わされないことが大切です。

 

結論:焦らず、冷静に考えることが大切

 

 矯正ヘルメットは、赤ちゃんの頭の形を整えるための有効な選択肢の一つです。でも、必要以上に不安を感じたり、流行に流されて焦って決めるのは避けましょう。

FOMO(Fear of Missing Out:取り残される恐れ)のような風潮に煽られず、専門医のアドバイスを受けながら、最善の選択をしてください。赤ちゃんの健やかな成長を見守るためにも、冷静に情報を整理して行動することが大切です。

当院では治療結果に基づく信頼性の高いケアを提供しておりますので、

赤ちゃんの頭のかたちについて気になる方、まずはお気軽に当院までご相談ください。

 

 

 

 

おすすめ

 

関西 赤ちゃんの頭のかたちセンター

 

【赤ちゃんの頭のかたち外来】頭のカタチを変えることなんて出来るの?

 

院長が赤ちゃんの頭のゆがみ治療に対する想いについて

 

 

 

お子様のあたまのかたちが気になる方はこちらから簡単に計測してみてください。

 

 

 

お問い合わせはこちらから


また当院公式LINEにてご質問等をお受けしておりますので、
お気軽にお問い合わせくださいませ。

 

 

友だち追加

 

この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

詳しい医師のご紹介はこちら
院長写真