はじめに


当院では『赤ちゃんの頭のかたち外来』を行っており、赤ちゃんの頭のゆがみが気になって来院される方に対して、ヘルメットによる矯正治療を提供しております。

 

そこでよくある質問として、「赤ちゃんの頭の形を変えることなんて出来るのですか??」という声がありましたので、その点に関して解説していきます。
 
 
 
 
 
 
 

そもそも頭蓋骨の仕組み


大人の頭蓋骨は、固い骨で形成されているので基本的に変化することはできません

そもそも頭蓋骨は、1つの骨で形成されているイメージあるかもしれませんが、実際はいくつかのパーツに分かれて形成されています。

 

もっと詳細に説明すると、前頭骨・頭頂骨・後頭骨・側頭骨があり、それぞれの骨は縫合線でつながっています。また縫合線には、前頭縫合、矢状縫合、ラムダ縫合、鱗状縫合などがあります。

 

 

 

 

 

 

赤ちゃんの頭蓋骨は大人とは違う


赤ちゃんは産まれてくる際、お母さんの産道を通りますが、産道から通りやすくするために赤ちゃんの頭は変形しながら出て来る必要があります。

そのため、赤ちゃんの頭蓋骨は上記で紹介した各パーツが引っ付いていない状態が、生後6か月あたりまで続きます。その後成長していくにつれて、各パーツが引っ付き、一般的によくイメージされる頭蓋骨を形成していくのです。

 

この時期は良くも悪くも頭の形が変形しやすいという特徴があり、一般的には向きグセによって一部に圧力がかかり続けることが原因で、頭のゆがみが発生してしまうことが多く見受けられます。

 

いわた脳神経外科クリニックの院長である私の息子も、出産後に頭のゆがみ(いわゆる絶壁)がありました。

医学の勉強で、「うつ伏せは絶対にダメ!」と徹底的に教えられていましたので、完全、ド真ん中の仰向けを徹底しました。その結果、頭の形にゆがみや絶壁が生じてしまいました。

その時は、「治るだろう」と安直に考えていました。

 

妻からはヘルメット治療があるらしいよと言われましたが、保存的治療を継続してしまいました。後輩は、看護師の妻から強い希望もあり、ヘルメット治療を行っていたと聞いた時は、それはやりすぎだろうなんて思っていました。しかし、絶壁は治りませんでした。

あの時に治療していたらもっとかっこいい頭になっていたのにと、とても後悔しています。

詳しくはこちらのコラムから

 

 

引用元:ヘルモア『子どもの頭蓋骨』

 

 

 

 

危険な頭のゆがみ

 

1か月健診、3か月健診では、頭囲を測定しますが、これは脳の状態を評価するために行っています。この時、激しい頭のゆがみがあったり、頭囲が平均よりも大きい場合、危険な病気が潜んでいる可能性があります。

 

頭のゆがみの原因には大きく2つあります。

まず1つが、外力による頭のゆがみ( 位置的頭蓋変形症)です。

頭のゆがみの多くはこちらに該当し、いわゆる向きグセや仰向け寝によって同一部位が圧迫され続けることで、変形してしまうパターンです。

こちらはあくまで見た目に関する弊害を引き起こす恐れがあるもので、脳の発達に影響を与えることはなく、ヘルメット治療によって正常な形に治療することが出来ます。

 

危険な頭のゆがみは、頭蓋骨縫合早期癒合症と呼ばれる骨の病気です。

頭蓋骨が早期に癒合することによって起こるもので、発生率は約10000人に5~10人とされています。

赤ちゃんの頭が歪むだけでなく、頭蓋が拡大しないことで脳の成長発達に影響が出る場合や顔面骨が変形することもある危険な病気です。

こちらの病気が発覚した場合は、手術によって治療することになります。

 

また赤ちゃんの脳の病気として、水頭症があります。

脳は、非常に柔らかい臓器で、水(髄液)の中にプカプカと浮いています。この水(髄液)が漏れないように、くも膜という膜で水が包まれているのですが、この水が頭で溜まりすぎてしまう病気に、水頭症という疾患があります。

この病気は、早期に適切な治療を行えば頭囲拡大を阻止できますが、未治療で放置すると図のように頭はどんどん大きくなります。

 

引用元:Anaesthesia for neurosurgical procedures inpaediatric patients Girija Prasad Rath, Hari H Dash1 Indian Journal of Anaesthesia

 

症状としては、「ミルクの摂取量が減る」「頭囲が正常範囲を超えて大きくなる」

「元気がなくなる」「哺乳力が低下する」「大泉門が硬く張る」「頭皮顔面の静脈の怒張」「落陽現象(眼球が下方に向いてしまう現象)」などがあります。

また水頭症の原因は様々あり、中脳水道狭窄症や脳室内出血、感染、脳腫瘍による水頭症などが挙げられます。この水頭症も手術をすれば治すことが出来ます。

 

このように頭のゆがみの違和感を放っておくと、手術をすれば治る病気を放置することになり、取り返しのつかない結果になってしまう恐れがあります。

 

当院では、3Dスキャンデータによる解析を行っており、生後3か月〜8か月の赤ちゃんに対して、頭のゆがみを治す「赤ちゃんの頭のかたち外来」にて、撮影のみのご予約も受け付けております。

 

 

 

頭のゆがみは赤ちゃんの時しか治せない

 

赤ちゃん(特に生後6か月までの時期)は頭囲の成長幅が非常に大きく、もし向きグセや分娩方法の影響で頭の形が変形してしまっても、ヘルメット治療にて正常レベルまで治すことが出来ます。

 

 

 

このように、生後2か月の時期と生後8か月の時期を比べると、明らかに成長度合の違いが分かると思います。

 

 

 

こちらが、当院にて実際にヘルメット治療をした赤ちゃんのデータです。

来院当初は「最重症」レベルでしたが、ヘルメット治療を開始してわずか約1か月で「中等度」レベルまで改善されました。

もちろんこのまま治療を継続し、正常レベルまで治療していきます。

大体3か月〜6か月ほどの期間で正常レベルまで治療し、ヘルメット治療卒業といった流れになります。

 

 

 

【番外編】紀元前での遺跡で見つかった頭蓋骨

 

少し話は逸れますが、紀元前の遺跡が見つかることがあり、当時の文明が推測されます。

下記写真のような頭蓋骨を見つけました。

 

 

恐らく縦長の帽子を被り続けた影響で、このように頭蓋骨が変形していると推測されます。

 

古代において帽子は、権力者の権威の象徴として考えられており、階級や職種を表すものとして使用されます。特殊な階級の赤ちゃんが、ヘルメットを着用し育って、頭の形までもが変化していることが予想されます。また頭蓋骨には穴があいており、古代においても頭に対して特殊な操作が加えられています。

 

穿頭トレパネーションは、悪魔の退散、頭の覚醒化などを企図して、古代に行なわれていたと考えられており、頭痛は悪魔の呪いでそれを退散させるというアイデアです。

頭痛は目に見えない疾患ですが、古代から頭痛に悩まされていることがうかがえます。

 

 

 

当院では赤ちゃんの頭の形外来を行っています

 

今回は、「頭のかたちを変えることなんて出来るの?」というテーマで解説していきました。

当院では、赤ちゃんの頭のかたち外来を行っており、小児脳神経外科専門医を取得している先生からの診察を受けることが出来ます。

 

危険な頭のゆがみ(頭蓋骨縫合早期癒合症、水頭症)の疑いはないかを診断し、向きグセなどによる頭のゆがみ(位置的頭蓋変形症)の場合は、完全オーダーメイドのヘルメット治療を提供しております。

 

頭の形は、生後6か月を過ぎると正常のきれいな形に矯正することが急激に難しくなります。

少しでも頭のゆがみが気になる方は、3Dスキャン(1,100円)のみでも大歓迎ですので、お気軽にお問い合わせくださいませ。

 

詳しくは、下記画像をクリックして「赤ちゃんの頭のかたち外来」のページをご覧くださいませ。

 

 

 

また当院公式LINEにてご質問等をお受けしておりますので、
お気軽にお問い合わせくださいませ。

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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