群発頭痛(ぐんぱつずつう)は、激しい痛みと自律神経症状(涙目、鼻づまりなど)を伴い、患者にとって非常に苦しい頭痛疾患です。この痛みは「耐えがたい」と形容されることも多く、生活の質を著しく損なう場合があります。
本記事では、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とする治療薬「エムガルティ(ガルカネズマブ)」について、群発頭痛の予防に使った海外の研究結果と、日本での扱いを整理します。
はじめにお読みください(日本での扱い)
- エムガルティが日本で承認されている効能は「片頭痛発作の発症抑制」だけです。群発頭痛には承認されておらず、保険も使えません(日本イーライリリー 2022)。
- 本記事で紹介する海外の試験の量(月1回300mg)は、日本で承認されている量(初回240mg、以降は月1回120mg)とは異なります。
- エムガルティは国内で正規に流通している医薬品ですが、群発頭痛への使用は承認の範囲外となります。
- 群発頭痛には、日本で承認され保険が使える治療があります。発作を止めるスマトリプタンの自己注射と、在宅酸素療法です(群発頭痛の記事で詳しく説明しています)。
- 海外の試験で報告された主な副作用は注射部位の痛みでした(Goadsby et al. 2019)。安全性の情報は、片頭痛での使用にもとづくものが中心です。
エムガルティとは?
エムガルティは、片頭痛予防薬として知られるヒト化モノクローナル抗体で、CGRPという神経ペプチドを標的とします。CGRPは頭痛発作の引き金と考えられており、その活性を抑えることで、頭痛の頻度や強度を低下させる効果が期待されています。
群発頭痛への効果:研究結果から見るエビデンス
臨床試験の成果
2019年に米国の医学誌で発表された臨床試験では、エムガルティ(300mgを月1回皮下注射)をエピソード性群発頭痛の患者に投与した結果、次のように報告されています(Goadsby et al. 2019)。
第1週から第3週までの発作頻度の減少
エムガルティ群:週平均 8.7回の減少
プラセボ群:週平均 5.2回の減少
差:週3.5回(P=0.04)
50%以上の発作頻度減少
エムガルティ群:患者の 71%
プラセボ群:患者の 53%
症例報告の視点
日本からは、片頭痛と群発頭痛を併せ持つ患者さん3名に、片頭痛の予防薬(CGRP関連薬)を使った報告があります。このうちエムガルティを使ったのは1名で、量は片頭痛と同じ通常量でした(Kashiwagi et al. 2023)。あくまで少数の症例報告であり、群発頭痛への効果を確かめたものではありません。
注意点と副作用
一般的な副作用
注射部位の疼痛(8%)
その他の有害事象はプラセボ群と大きな差はありません。
適用範囲の制限
現時点でエムガルティの効果が確認されているのは、エピソード性群発頭痛に限られています。
慢性群発頭痛(発作が1年以上ほぼ途切れずに続く型)を対象にした2020年の試験では、プラセボとの差は認められませんでした(Dodick et al. 2020)。
エムガルティは群発頭痛に使えるか?
米国では、エピソード性群発頭痛の予防薬として2019年に承認されています。一方、日本では群発頭痛には承認されておらず、保険も使えません。慢性群発頭痛では、試験で効果が確認されていません。
日本で群発頭痛の発作を止める治療として保険が使えるのは、スマトリプタンの自己注射と在宅酸素療法です。片頭痛を併せ持つ方では、片頭痛の治療としてCGRP関連薬が選択肢になる場合があります。どの治療が合うかは、発作の型や回数によって変わります。詳しくは群発頭痛の記事をご覧ください。
参考文献
- Dodick, DW, Goadsby, PJ, Lucas, C, Jensen, R, Bardos, JN, Martinez, JM, Zhou, C, Aurora, SK, Yang, JY, Conley, RR & Oakes, T 2020, ‘Phase 3 randomized, placebo-controlled study of galcanezumab in patients with chronic cluster headache: results from 3-month double-blind treatment’, Cephalalgia, vol. 40, no. 9, pp. 935–948, DOI 10.1177/0333102420905321.
- Goadsby, PJ, Dodick, DW, Leone, M, Bardos, JN, Oakes, TM, Millen, BA, Zhou, C, Dowsett, SA, Aurora, SK, Ahn, AH, Yang, JY, Conley, RR & Martinez, JM 2019, ‘Trial of galcanezumab in prevention of episodic cluster headache’, The New England Journal of Medicine, vol. 381, no. 2, pp. 132–141, DOI 10.1056/NEJMoa1813440.
- Kashiwagi, K, Katsuki, M, Kawamura, S, Tachikawa, S, Ono, A & Koh, A 2023, ‘Fremanezumab and non-high-dose galcanezumab for comorbid cluster headache in patients with migraine: three cases’, Neurology International, vol. 15, no. 1, pp. 318–324, DOI 10.3390/neurolint15010020.
- 日本イーライリリー 2022, エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター・シリンジ 添付文書(第4版), 医薬品医療機器総合機構.
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