こんにちは、大阪市の頭痛外来がある「いわた脳神経外科クリニック」です。夏場になり、気温が上昇すると、頭が痛くなることはないでしょうか。頭痛の原因がわからずお困りの方もいるかもしれません。今回は、夏場に起こる頭痛の原因と対処法について解説します。

 

夏に起こる頭痛の原因 

気温や湿度が高くなる夏に起こりやすい頭痛があります。また、梅雨や台風などの気候の影響によっても頭痛が引き起こされる可能性もあります。夏に起こりやすい頭痛の原因をみていきましょう。

 

熱中症

熱中症とは、気温・湿度が高い環境に長時間いることで体温調節機能が作用しなくなり、体内に熱がこもる状態です。[1]熱中症の重症度はⅠ度(軽症)・Ⅱ度(中等症)・Ⅲ度(重症)に分かれ、Ⅱ度以上になると吐き気や嘔吐、倦怠感に加えて頭痛が起こる場合があります。[2]

 

気温が高くなると、人の体は自律神経を介して末梢血管を拡張させ、皮膚に多くの血液を流しこみます。その結果、外気へ熱が放出され、体温を下げることが可能です。また、汗をかくことで水分が蒸発し、熱が奪われて体温が低下します。[2]

 

しかし、汗を大量にかいたまま水分補給ができない状態が続くと脱水状態になり、頭痛を引き起こす原因になります。[3]

 

室外と室内の気温差

環境温度の低下により痛みが強まるという報告があります。夏(6~8月)は気温が高くなりやすい時期です。特に近年は日本の夏の気温は上昇傾向にあり、高温が続きます。[4]

室外の高温の環境から室内の冷房が効いた環境に移動した際に、気温の低下が自律神経に影響して片頭痛が引き起こされる場合があるため、温度差には気をつけましょう。[5]

 

梅雨や台風による気圧の変化

夏の前半に見られる梅雨や夏の後半に発生する台風は、低気圧が停滞しやすく、気圧の変動が生じやすい時期です。[4] 気圧の変動により、自律神経が過剰に反応すると、片頭痛の方の頭痛が悪化する可能性があります。[5]

 

天気により起こる頭痛については下記の記事で詳しく解説しています。

 

 夏に起こる頭痛の予防法

夏場は気温が高くなるため、体力を消耗しやすく、体調の変化が起こりやすい季節です。以下の対策を実践し、夏に起こる頭痛を予防しましょう。

 

 こまめに水分補給を行う

夏は気温が高くなるため、汗をかきやすく、脱水状態になると頭痛が起こる可能性があります。とくに汗をかくと水分や塩分が失われるため、水や経口補水液を飲み、水分補給をしましょう。

 

日常生活で摂取すべき水分量としては、1.2Lが目安とされています。経口補水液は脱水により失われる電解質を効率的に補給しやすい飲み物ですが、製品ラベルに書かれている1日の摂取制限量を守りましょう。 [2]

 

大切なのは、喉が渇いていなくてもこまめに水分補給をすることです。起床時・運動時・入浴前後など、喉が渇く前に水分を摂取しましょう。アルコールは尿の量を増やして水分を排泄する原因となります。[2]また、頭痛を引き起こすきっかけになる場合があるため、過度な飲酒は控えましょう。[3]

 

頭痛を和らげる飲み物については次の記事でも紹介していますので参考になれば幸いです。

片頭痛を和らげる飲み物は?試してみたいおすすめの飲み物を紹介

 

 室内で涼しく過ごす

室内であっても、気温が高くなると発汗が進んで脱水症状が起こり、頭痛につながる場合があります。そのため、室内で過ごす際には以下の対策を心がけましょう。

・冷房や扇風機を活用して室内を適温にする

・カーテンやブラインドを活用して窓から差し込む日光を遮る

・窓を開けて風通しを良くする

 

目安として、室内の温度は28度が推奨されています。[2]冷房が効きすぎた部屋は、外との気温差によって頭痛を引き起こす可能性があり、汗をかいたまま涼しい部屋にいると体が冷えやすくなります。汗をしっかり拭き取り、羽織物で体温を調整して冷えすぎないようにしましょう。

 

外出する際に熱中症対策をする

頭痛の原因となる熱中症を予防するためには、外出時に日傘をさしたり、帽子をかぶったりして直射日光を防ぐことが大切です。また、衣服は熱を吸収する黒色の素材は避け、速乾性や吸水性の良いものを着ることをおすすめします。[2]

外を歩く際は、できる限り日陰を選んで歩きましょう。また、携帯型の扇風機や保冷剤などの冷却グッズを持ち歩き、必要に応じて活用してください。気温が上昇しやすい14時前後の外出を避け、比較的気温が低くなる朝や夕方の時間帯に外出するといった工夫も必要です。[2]

 

 暑さに備えた体作りをする

暑い日が続いても体が暑さに慣れていくと、心拍数増加や体温上昇にともなう生理的ストレスが軽減しやすくなります。[2] ストレスは頭痛を引き起こす要因の1つであるため、対策することで頭の痛みを予防しやすくなります。[3]

 

暑さに慣れるためには「ややきつい」と感じる強度で、毎日30分程度のウォーキングを2週間程度継続することが大切です。暑さに順応すると熱中症にもかかりにくくなり、生活習慣病予防にもつながります。暑さが厳しくなる前から取り組んでみましょう。[2]

 

片頭痛とストレスの関係はこちらでも詳しく説明していますのでチェックしてみてください。

片頭痛とストレスの関係

 

適切な睡眠環境を確保する

夏場になると、暑さで眠れなくなり、睡眠不足になる可能性があります。睡眠時間が足りなくなると、頭痛を引き起こす原因になるため、適切な睡眠環境を作ることが大切です。快適に眠れる室温の上限とされる28度を目安に、冷房や扇風機などを有効活用して寝室を適温に保ちましょう。また、吸水性や通気性の良い寝具を使うことも効果的です。[2]

 

 

夏に起こりやすい頭痛に。痛くなる前の「予防」という選択肢

気温の上昇や気圧の変動を受けやすい夏は、片頭痛患者さんは頭痛が起こしやすくなります。頭の痛みを予防するためには、環境温度の調整や水分補給、ストレス対策、睡眠時間の確保が有効です。

 

片頭痛の薬物治療としては、起きてしまった頭痛を和らげる鎮痛剤などの服用が中心となりますが、頭痛が起こる前に「予防」するという新しい視点の治療があります。

 

それは、頭痛自体を引き起こしにくくする「ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤(「CGRP」頭痛薬剤)」による治療です。

 

「CGRP」頭痛薬剤に関して、当院の院長が動画でわかりやすく解説しています。

「興味はあるけれども、どんな薬なの?」「具体的にはどのような治療を行うの?」という方はぜひご覧ください。

頭痛がなおる!?新しい片頭痛の治療薬

 

動画で解説している「CGRP」頭痛薬剤エムガルティ(ガルカネズマブ)の情報は以下のページでも詳しく解説しています。

【片頭痛発作を抑える治療薬】エムガルティ(ガルカネズマブ)

 

大阪市城東区の「いわた脳神経外科クリニック」では頭痛外来にて頭の痛みに悩んでいる方の治療を行っております。

 

「頭痛の原因がわからない」「いろいろ対策してみたが頭の痛みが治まらない」「頭痛に加えて他の症状も併発している」このような方は、ぜひ当院へお気軽にご相談ください。頭の痛みを解決するための適切な治療方法をご提案させていただきます。

 

頭痛の原因と治療は、こちらも参考にしてください。

 

参考URL

[1] 厚生労働省|熱中症予防のための情報・資料サイト

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/

[2] 環境省|熱中症環境保険マニュアル2022

https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf

[3] 頭痛の診療ガイドライン作成委員会|頭痛の診療ガイドライン2021

https://neurology-jp.org/guidelinem/pdf/headache_medical_2021.pdf

[4]気象庁

https://www.jma.go.jp/jma/index.html

[5]佐藤純 気象変化と痛み Spinal Surgery 2015 29(2)p.153-156

https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/29/2/29_153/_pdf

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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