2025年に報じられた、広末涼子さんによる追突事故は多くの注目を集めました。事故により被害を受けられた方には、心よりお見舞い申し上げます。
こうしたニュースは、私たちに「交通事故の本当の怖さ」を教えてくれます。見た目に大きなケガがなくても、頭部や首に受けた衝撃(しょうげき)が脳や神経に深刻な影響を及ぼすことがあるのです。
とくに「頭は打っていないから大丈夫」「ちょっと痛いだけだから様子を見よう」と判断してしまうケースは少なくありません。しかし、事故直後に現れない“見えない症状”の中には、放置すると命に関わるものも存在します。
この記事では、脳神経外科専門医・頭痛専門医の視点から、広末涼子さんの事故をきっかけに交通外傷による脳・神経のリスクと適切な受診タイミングについて、わかりやすく解説していきます。
広末涼子さんの追突事故に見る「頭を打った後」の本当のリスク
2025年に報じられた広末涼子さんによる追突事故は、「被害者が頭部を打撲した可能性がある」として多くの関心を集めました。この事故は、私たちにとって“交通事故の本当の怖さ”を考えるきっかけになります。
交通事故の直後、外傷がなく意識もはっきりしていると、「大きなケガではなさそう」と安心してしまいがちです。しかし、頭を打ったあとの数時間こそ、脳の中では深刻な変化が始まっていることがあります。
特に注意すべきなのが、急性硬膜下血腫(きゅうせいこうまくかけっしゅ)や急性硬膜外血腫(きゅうせいこうまくがいけっしゅ)といった脳内出血です。事故直後には症状が出ないものの、数時間後に出血が広がって脳を圧迫し、突然意識を失うといった事態に陥ることがあります。医学的にはこの現象を「ルーシッド・インターバル」と呼び、脳神経外科では最も警戒される症状のひとつです。
さらに、事故後6時間以内は特にリスクが高い時間帯とされており、軽い打撲に見えてもこの間に症状が出てこないか注意深く観察する必要があります。また、バイアスピリンなどの抗血栓薬を服用している人は出血が止まりにくくなるため、少しの衝撃でも危険性が高まります。
今回の広末涼子さんの事故をきっかけに、あらためて「頭を打ったかもしれない」と感じた場合には、迷わず脳神経外科での受診や画像検査を行うことが、命を守る最善の選択であると知っていただきたいです。
「頭を打っていないから大丈夫」と思った人が見落とす脳震盪の症状
広末涼子さんの追突事故に限らず、後ろからの衝突では「頭を打っていないから大丈夫」と思いがちです。しかし実際には、頭をぶつけていなくても脳がダメージを受けていることがあります。
その理由は、脳が“豆腐のようにやわらかい”という構造にあります。脳は頭蓋骨の中に浮いているような状態で、車の衝撃で体が大きく揺れると、脳も中で揺れ動き、内側の骨にぶつかってしまうのです。このときに起こるのが「脳震盪(のうしんとう)」や「脳挫傷(のうざしょう)」です。
特に脳震盪はやっかいで、CTやMRIなどの画像検査では異常が見つからないことが多く、症状だけが残ります。次のような症状がある場合、脳震盪を疑うべきです。
・頭がぼーっとする、集中できない
・まぶしさや音に敏感になる
・吐き気やめまいが続く
・気分の落ち込みやイライラが強くなる
・「自分らしくない」と感じる思考や行動の変化
これらは、交通事故のあとにじわじわ現れる「見えない不調」です。仕事や家事に戻ろうとしても集中できず、事故から数日たってようやく異変に気づく方も少なくありません。
広末涼子さんの事故のようなケースでは、被害者が「頭は打っていない」と安心してしまうことが一番のリスクです。頭をぶつけていなくても、揺れによる脳の障害は起こり得ると理解しておくことが、後遺症を防ぐ第一歩です。
事故後、普段と違う感覚や体調があるなら、念のためでも構いません。脳神経外科の専門医に相談することで、将来的な不調を防ぐことができます。
交通事故後の“首の痛み”が頭痛につながる理由
広末涼子さんが起こした追突事故のように、後ろから強くぶつかられると、首に突然強い衝撃がかかることがあります。このときに起こるのが、いわゆる「むち打ち(頚椎捻挫)」です。
首の筋肉や靭帯(じんたい)が傷つくことで、痛みや動かしにくさが出るのはよく知られていますが、実はこのむち打ちが顔やおでこ、こめかみの“頭痛”として現れることがあるのです。
その理由は、「神経のつながり」にあります。首の後ろ側の筋肉や靭帯が損傷を受けると、その痛みはC2〜C3の頚髄神経(けいずいしんけい)を通じて脳へ伝わります。この痛み信号は、脳の深部で**三叉神経(さんさしんけい)**という顔の感覚を司る神経と交差するポイントに届きます。
この交差点は三叉神経脊髄路尾側亜核(びそくあかく)と呼ばれる場所で、首の神経と顔の神経が情報をやりとりする中継地点です。ここで情報が混ざることにより、「首の痛みが、顔やおでこに響いている」と脳が勘違いしてしまう=関連痛が起こるのです。
こうした関連痛は、事故のあとに「おでこが痛い」「こめかみが重い」といった症状で現れます。顔をぶつけたわけではないのに痛むというときは、この神経のネットワークが原因になっている可能性があります。
広末涼子さんの事故でも、「首は大丈夫そうに見えても頭痛が残る」といった被害者の声が出た場合、むち打ちによる神経の興奮が影響している可能性があります。湿布や痛み止めで様子を見てしまう前に、専門的な視点で首からの影響を診てもらうことが大切です。
「頭が痛いだけ」で済まさない|事故後に受診すべきタイミングと検査
広末涼子さんの追突事故をきっかけに、「事故のあと少し頭が痛いけど、病院に行くほどじゃないかも…」と感じている方もいるかもしれません。しかし、脳神経外科の立場からお伝えしたいのは、“頭が痛いだけ”が、もっとも危険なサインになることがあるということです。
事故後に見た目に大きな外傷がなくても、脳の中では出血や腫れ、神経の異常が進行している可能性があります。特に、事故のあと6時間以内は、急性の脳出血や脳挫傷の症状が現れやすく、この時間帯に変化を見逃すと命に関わることもあります。
また、バイアスピリンなどの抗血栓薬を服用している方は要注意です。血液が固まりにくいため、わずかな衝撃でも出血が止まらず、脳内出血を引き起こしやすくなります。本人が薬の名前を覚えていなくても、「血液をサラサラにする薬を飲んでいる」と伝えることが非常に重要です。
では、どのようなときに受診すべきなのでしょうか。以下のような症状がひとつでもある場合、すぐに脳神経外科での診察や画像検査(CT・MRI)を受けるべきです。
・頭痛が強くなってきた
・吐き気や嘔吐がある
・体の片側にしびれや力が入りにくい
・意識がもうろうとする、会話がおかしい
・視界がぼやける、まぶしく感じる
こうした症状は、体が「今すぐ助けて」と出しているサインかもしれません。見た目や感覚だけで「大丈夫」と決めつけず、専門医による診断と検査を受けることが、命と将来の安心につながります。
広末涼子さんの事故報道を「芸能ニュース」として終わらせるのではなく、私たち一人ひとりが「もし自分だったら」と考え、“念のための受診”を当たり前にすることが、交通事故の本当の被害を防ぐ第一歩になるのです。
まとめ
広末涼子さんの追突事故は、どんなに軽い衝撃でも、私たちの脳や神経に深刻な影響を及ぼす可能性があることを教えてくれました。
事故直後に目立った外傷がなくても、「頭が重い」「いつもと違う」と感じたなら、それは身体からの重要なサインかもしれません。脳震盪や脳出血、首の損傷による関連痛など、早期発見と早期治療が後遺症を防ぐカギとなります。
ご自身やご家族が交通事故に遭われた際は、「様子を見る」ではなく、“念のための受診”を前向きな行動として選んでください。とくに頭を打った場合や首に強い衝撃を受けた場合は、6時間以内の受診が非常に重要です。
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