頭痛は誰でも一度は経験したことがある、非常に一般的な症状のひとつです。その中でも、後頭部(頭の後ろから首にかけて)は頭痛がよく発生する部位です。
後頭部が痛いとき、市販薬で様子を見ても良いのでしょうか?それとも、放置すべきではない原因があるのでしょうか?本記事では、後頭部の痛みについて解説します。
後頭部の頭痛の分類
MRIで異常があるもの
後頭部には、皮膚、筋肉、神経、骨、脳、血管など、さまざまな組織が存在します。ここでは、特に注意すべき脳や脳血管に関連する頭痛について説明します。
後頭部の頭蓋骨の奥には「後頭蓋窩(こうずがいか)」と呼ばれる窪みがあり、そこには脳の中でも重要な小脳と脳幹が位置しています。この後頭蓋窩は、大脳とは「テント」と呼ばれる硬膜で仕切られており、非常に狭い空間です。脳幹は心臓や呼吸をコントロールする生命維持の中枢であり、極めて重要な部分です。この狭い空間に異常が生じると、圧が上昇し、硬膜にある知覚神経が刺激されて後頭部に痛みが出現します。
脳出血や脳浮腫などで脳圧が上昇すると、脳幹が圧迫され、生命の危機に陥る可能性があります。具体的には、急性に発症する小脳出血(しょうのうしゅっけつ)、小脳梗塞(しょうのうこうそく)、くも膜下出血が考えられます。これらの疾患は命に関わるため、早期の診断と治療が必要です。また、脳腫瘍やキアリ奇形など、徐々に進行する疾患も後頭部の痛みの原因となることがあります。
特に、子どもの脳腫瘍は後頭蓋窩に発生することが多く、注意が必要です。子どもが後頭部の痛みを訴えた場合、二次性頭痛の可能性を考慮し、速やかに医師の診察を受けることが重要です。
小脳の異常が原因の場合、めまいやふらつきが伴うことが多いです。また、くも膜下出血は動脈瘤の破裂によって発症し、急な激しい頭痛が特徴です。少量の出血であれば「マイナーリーク」と呼ばれる状態で、項部硬直や後頭部の重たい感覚が見られることがあります。
オタワSAHルール
突然の頭痛がくも膜下出血(SAH)であるかどうかを判断するためのガイドラインである「オタワSAHルール」は、以下の6項目のいずれかに該当する場合、SAHの可能性を示唆します。
– 40歳以上
– 頸部痛や項部硬直
– 意識消失
– 労作時に発症
– 雷鳴頭痛(突然の激しい頭痛)
– 頸部屈曲制限
これらに当てはまらない場合、SAHの可能性を感度100%で除外できるとされています(特異度は15.3%)。
脳血管の疾患
後頭部の痛みを引き起こす他の脳血管疾患として「椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)」があります。これは頸部から後頭部にかけて突然強い痛みが発生し、左右どちらかに偏ることが多いのが特徴です。若年性脳卒中の原因としても知られており、頻度の高い疾患です。
診断にはMRIやMRAによる脳血管の評価が必要です。
MRIで異常が見つからないもの
後頭部の痛みがMRIで異常が見つからない場合、筋肉や神経の炎症が原因であることがあります。後頸筋群(こうけいきんぐん)の疲労や緊張による緊張型頭痛、後頭神経痛が代表的です。また、帯状疱疹(たいじょうほうしん)による神経の障害も後頭部の痛みを引き起こすことがあります。
帯状疱疹は、後頭部にピリピリ感を伴う痛みが出現し、その後発疹が見られることが特徴です。早期に治療しないと、帯状疱疹後神経痛などの後遺症が残る場合があります。
さらに、片頭痛が後頭部に痛みを引き起こすこともあり、片頭痛には適切な薬物治療が必要です。
後頭部が痛い頭痛の場合のセルフチェック
以下の症状がある場合は、重大な病気が原因である可能性があります。すぐに119番通報して救急車を呼んでください。
– 突然、激しい頭痛が起こった
– 頭痛が悪化している
– めまいや嘔吐を伴う
– 物が二重に見える
– 手足や顔の動きが鈍い、麻痺を感じる
– けいれんが起こった
– 話しにくい
– 頭がぼんやりする
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