令和6年6月1日から厚生労働省の診療報酬の改定に伴い、これまでの「特定疾患療養管理料」から「生活習慣病管理料(Ⅱ)」へ移行しております。

 

この改定では、お一人おひとりの服薬・食事・運動・喫煙・家庭での血圧や体重測定・飲酒などの状況に応じた療養計画書を作成し、目標設定を行うことが決められています。医師や看護師、薬剤師などの医療職と患者様が、ともに長期的な管理をサポートしていくためです。

 

生活習慣病の管理には日々の生活習慣の改善が非常に重要です。

 

皆様が自分自身の健康状態を正しく理解し、日常生活の中で具体的な改善策を取り入れるために知っていただきたい情報をまとめました。

 

私たちと一緒に、無理なく取り組める一歩から始め、健康的な生活を目指していきましょう。

 

 

糖尿病とは

 

糖尿病は、長期間にわたって血糖値が高い状態が続く病気です。

すい臓から分泌されるインスリンの量や作用の不足により、血液中のブドウ糖がうまく調整されなくなることで、血糖値が高くなってしまいます。

 

2型糖尿病は、

遺伝的な要因に加えて、加齢と生活環境(食べすぎ、運動不足、ストレスなど)の影響を受けて発症します。

 

 

糖尿病の治療で重要なのは、合併症の発症・重症化を予防すること

 

糖尿病になっても初めのころは、生活に支障が出るような大きな症状が出ないため、日々の仕事や生活で忙しいと、治療の必要性を強く感じられないかもしれません。

 

しかし、糖尿病は一度なると徐々に進行していく病気です。

 

 

糖尿病の治療をせずに放っておくと…重篤な合併症が起こる危険がある

 

高血糖状態が続くと、全身の血管が傷つき、次のような合併症が引き起こされます。

 

脳・心臓・足の血管が傷つき起こる合併症

細い血管が傷つき起こる合併症

・脳梗塞・脳出血などの脳血管障害

・心筋梗塞・狭心症などの冠動脈疾患

・末梢動脈疾患

・網膜症(視力低下、視野欠損→失明)

・腎症(腎機能の低下→血液透析)

・神経障害(足のしびれや壊疽→足の切断)

※年に1回程度のペースで眼科を受診し、目に異常がないかをチェックしましょう。

 

 

昏睡状態・感染症・認知症・骨粗しょう症などを起こすリスクもある

 

急性合併症

そのほかの合併症

・高血糖による意識障害、昏睡状態

・低血糖による意識障害、昏睡状態

・急性感染症(風邪・気管支炎・肺炎・胆のう炎・歯周病・むし歯・膀胱炎・腎盂腎炎・おでき・毛のう炎・水虫・爪白癬など)

・認知症
・骨粗しょう症

・がん

・手足の病変 など

※3ヶ月に1回程度のペースで歯科を受診し、お口のチェックを受けましょう。

 

 

糖尿病の治療目標は、血糖コントロールを行いながら生活の質を保つこと

 

糖尿病の治療は、合併症の発症や重症化を予防し、

糖尿病がない状態と変わらない寿命と生活の質を保つことを目指します。

 

糖尿病治療における血糖コントロール目標を確認する

 

できる限り正常値をめざしますが、年齢(65歳以上は重症低血糖を起こすリスクが高くなります)や病気になってからの期間、体の状態などによって個別に決定されます。

 

目標

血糖正常化を目指す際の目標

合併症予防のための目標

治療強化が困難な際の目標

HbA1c*(%)

6.0未満

7.0未満

8.0未満

出典:日本糖尿病学会(編・著)糖尿病治療ガイド2022-2023

* HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、ヘモグロビン全体の中に、糖が結合したヘモグロビンがどれくらいの割合で存在しているかを表した数値です。1~2ヶ月前の血糖値が反映されるので、検査当日の食事や運動の影響を受けません。

 

血糖コントロール目標を目指すための体重の目標値を知る

 

65歳未満の目標体重(kg)

身長(m)×身長(m)×22

65歳以上の目標体重(kg)

身長(m)×身長(m)×22~25

※75歳以上の方は、体の状態や生活状況、食事の状態やほかの病気などから個別に設定されます。

 

肥満の場合は、まずは5%の減量をめざしましょう。

 

糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法による体重コントロール

 

目標体重に体重をコントロールすることで、血糖値もコントロールしやすくなります。

糖尿病治療薬を服用している人も食事療法と運動療法は必要です。

 

【食事療法】インスリンの分泌や働きを良くする

 

1.1日に必要なエネルギー量を主治医に確認し、しっかりエネルギーを摂取する

2.1日3食を決まった時間に食べる

3.「穀物・いも、豆など」「くだもの」「魚・肉・大豆・卵・チーズ」「乳製品」「油を多く含む食品」「野菜」から、まんべんなく食べる

5.食事はよく噛んで食べる

6.野菜・海藻・きのこなど、食物繊維が多く含まれる食品をとる

7.肉の脂身やバター、ラードなどの動物性脂肪は控える

8.血糖値を急激に上昇させる単糖類が含まれる甘い食べ物・飲み物(ジュース類、菓子パン、ケーキ・大福などの菓子)は控える

9.【飲酒】の量は主治医に確認し、毎日飲まない

10.間食は主治医に確認し、とる場合は牛乳1杯もしくはバナナ1本程度にする

 

食事について、管理栄養士がサポートします。

 

【運動療法】血糖値を下げ、インスリンの効きが良くなる体をつくる

 

1.15~30分間のウォーキングを1日2回(1日8000~9000歩を目安)、週3日以上をめざす

2.日常生活の中で座っている時間をできるだけ短くする

3.家事や仕事をしながら、今より少しでも体を動かす量を増やすように意識する

4.筋力トレーニング(スクワット・腹筋・腕立てふせなど)も行う

5.体の状態によっては運動制限もあるので、運動の量や種類は主治医に確認する

 

 

【薬物療法】は食事と運動のみではまかなえない血糖コントロールをサポート

 

糖尿病の薬には、飲み薬と注射があり、インスリンの分泌やはたらきの程度によって薬が選択されます。

 

糖尿病治療に使用される経口薬と注射薬

 

経口薬

インスリンの分泌を促す薬

・スルホニル尿素薬(SU薬)

・速効型インスリン分泌促進薬

・DPP-4阻害薬

インスリンの効きを良くする薬

・チアゾリジン薬

・ビグアナイド薬

糖の吸収・排泄を調節する薬

・α-グルコシダーゼ阻害薬

・SGLT2阻害薬

注射薬

インスリンを補給する薬

・インスリン注射薬

インスリンの分泌を促す薬

・GLP-1受容体作動薬

 

【服薬】は決められたタイミングで飲む・使う

 

・複数の薬を使うときもそれぞれ決められたタイミングと量を守って飲む

・飲み忘れたとき、体調が悪いときの対処法は主治医・薬剤師に確認しておく

・低血糖が起きたときの対応を主治医に確認しておく

 

服薬について、薬剤師がサポートします。

 

【禁煙】喫煙はインスリンの吸収を妨げ、合併症のリスクを高める

 

喫煙は、インスリン治療のインスリンの吸収を低下させ、脳梗塞・心筋梗塞・糖尿病成腎症などの合併症のリスクを高めます。喫煙している場合は禁煙しましょう。

 

【家庭での血圧・体重】は毎日測定・記録する

 

適正体重の維持・管理のために、体重測定は毎日行いましょう。また、高血圧があると、糖尿病の合併症のリスクが高まります。血圧・体重は、少なくとも1日1回、できれば朝・夕2回測定しましょう。

手帳やアプリで記録し、受診時に主治医に見せるようにしましょう。

 

【ストレス】は糖尿病の大敵。病気や治療の不安があれば医療者に相談を

 

ストレスは血糖値を上昇させます。病気や治療、日常生活について不安があれば、看護師や主治医に相談しましょう。

 

看護師が、糖尿病の治療を進めながら無理なく生活するためのサポートを行います。

 

体重管理・食事・運動・禁煙・飲酒・そのほかの生活の中で、「もう少し取り組みが必要かも」「サポートがあれば達成できそうかも」という内容はありましたか?

少し工夫すればできそうな内容から目標を決めて、達成に向けて一緒に取り組んでいきましょう。

 

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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