「最近、もの忘れが増えた気がする」「同じことを何度も聞き返してしまう」――そんなとき、認知症の検査ってどんなことをするの?もの忘れ外来は何科で受けられるの?と不安に思う方は少なくありません。

認知症やその前段階である軽度認知障害(MCI)は、一つの検査だけで決まるものではなく、問診・記憶のテスト・脳の画像検査などを組み合わせて、医師が総合的に判断します。検査の種類を知っておくと、受診のハードルがぐっと下がります。

この記事では、脳神経外科医の立場から、認知症・もの忘れの検査の種類と流れ、当院で受けられるMRIによる海馬の評価(海馬年齢測定・VSRAD)のうKNOWといった検査の位置づけ、そして早期に調べておく意義を、公的機関の情報に基づいて分かりやすく解説します。

この記事で分かること(結論)

認知症・もの忘れの検査は、問診・神経心理検査・画像検査を組み合わせて総合的に行います。「もの忘れ外来は何科で受けるの?」という方も、まずは気になる症状をご相談いただければ必要な検査をご案内します。MRIでは記憶に関わる海馬の萎縮を調べることができ、VSRADAI海馬年齢測定はその程度を数値で示す手段です。これらは診断を支援するもので、結果だけで認知症が確定するわけではありません。早めに調べておくことは、早期発見・早期対応につながります。もの忘れが気になる方はご相談ください。

この記事のポイント



もの忘れが気になる方の検査も承っています。まずはお気軽にご相談ください。

 

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1.認知症検査の種類と流れ

認知症の検査は、「一つのテストで決まる」ものではありません。年齢による自然なもの忘れなのか、軽度認知障害(MCI)なのか、認知症なのか、あるいは別の病気が隠れていないのかを見分けるために、いくつかの検査を組み合わせて医師が総合的に判断します。

一般的な流れは、次のように進みます。

  • ①問診:いつから、どんなもの忘れが、どのくらいの頻度であるか。ご家族からの情報も大切です。
  • ②神経心理検査:記憶・見当識・計算などを質問形式で調べます(後述のMMSEなど)。
  • ③画像検査:MRI・CTで脳の形(萎縮・血管の状態)を確認します。
  • ④血液検査など:もの忘れの原因となる甲状腺機能の低下やビタミン不足などを調べます。

このように複数の角度から調べることで、「もの忘れの正体」を見極めていきます。なかには、うつ状態や薬の影響、甲状腺の病気など、適切に対応すれば改善が見込めるものが隠れていることもあります。



認知症の検査は何科で受けられる?

もの忘れの検査は、脳神経外科・脳神経内科・精神科・もの忘れ外来などで受けられます。脳神経外科では、記憶に関わる脳の形をMRIで詳しく確認できるのが特徴です。

「どこに行けばよいか分からない」という段階でも問題ありません。まずは気になる症状を相談していただければ、必要な検査をご案内します。軽度認知障害(MCI)そのものについては、こちらの記事でくわしく解説しています。



「これは年齢のせい?それとも…」と迷ったら、自己判断で様子を見ず、ご相談ください。

 

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2.神経心理検査でわかること

神経心理検査は、医師や検査員の質問に答えながら、記憶力・注意力・見当識(日付や場所の感覚)などを調べる検査です。代表的なものに、次の2つがあります。

検査名特徴所要時間の目安
MMSE
(ミニメンタルステート検査)
見当識・記憶・計算に加え、言語・図形模写など30点満点で評価。世界的に広く使われる10〜15分ほど
改訂長谷川式
(HDS-R)
記憶力に重点を置いた30点満点の検査。主に国内で使われる10分ほど

点数だけで決まるわけではありません。
MMSEや長谷川式は、認知機能の状態を客観的に把握するための「ものさし」です。その日の体調・緊張・聞こえにくさなどでも点数は変わるため、一度の点数だけで認知症と判断することはありません。画像検査や経過と合わせて、医師が総合的に評価します。



「もの忘れ=認知症」ではありません

加齢による自然なもの忘れは、「ヒントがあれば思い出せる」「もの忘れ自体を自覚している」のが特徴です。一方、認知症では「体験そのものを忘れる」「もの忘れの自覚が乏しい」傾向があります。この違いを見極める意味でも、神経心理検査は役立ちます。両者の違いは、MCIの記事でもくわしく取り上げています。



3.MRIと海馬の萎縮検査

認知症の画像検査の中心となるのがMRIです。MRIでは、脳全体の萎縮や血管の状態に加えて、記憶をつかさどる「海馬(かいば)」の様子を詳しく確認できます。

海馬とは

記憶に関わる海馬の位置を示す脳の解剖図

海馬は、左右の脳の奥にある小さな器官で、新しいことを覚える「記憶の入り口」の役割を担っています。アルツハイマー型認知症では、この海馬やその周囲(海馬傍回)が比較的早い段階から萎縮しやすいことが知られています。だからこそ、海馬の状態を調べることが早期発見の手がかりになります。



VSRAD(ブイエスラド)とは

VSRAD(Voxel-based Specific Regional analysis system for Alzheimer’s Disease)は、MRI画像をコンピュータで解析し、海馬やその周囲の萎縮の程度を数値(Z スコア)で表す診断支援ソフトです。大日本印刷とエーザイが共同開発したもので、通常のMRI検査に追加する形で行えます。

解析では、あらかじめ登録された健康な方の脳画像データと比較し、「平均から標準偏差いくつ分離れているか」を示します。一般に、内側側頭部の萎縮の程度を段階的に評価しますが、これはあくまで診断を支援するためのものです。

数値が高い=認知症、ではありません。
VSRAD の数値は、海馬周辺の萎縮の「程度」を客観的に示す指標です。萎縮は加齢でもある程度進むため、数値だけで認知症が確定するわけではありません。神経心理検査や問診と組み合わせて、医師が総合的に判断します。



なお、当院では即日のMRI検査に対応しています。MRI検査の体制については、MRI検査のページでご案内しています。



4.のうKNOWと海馬年齢測定

前章のMRI・VSRADが「脳の」を調べる検査だとすれば、ここで紹介するのは「脳のはたらき」や萎縮の程度を、より分かりやすい形で把握するための手段です。いずれも当院で受けられる検査の選択肢です。

のうKNOW(脳の健康度セルフチェック)

のうKNOWは、エーザイが提供する脳の健康度のセルフチェックツールです。トランプを使ったゲーム感覚の課題で、「記憶する」「考える」「判断する」といった脳のはたらきを確認し、同年代の平均と比べたスコアを見ることができます。PC・タブレット・スマートフォンで行えます。

のうKNOW(脳の健康度セルフチェック)の画面サンプル

のうKNOWは、海外で医療機器として承認されている認知機能検査「Cogstate Brief Battery」をもとに、日本では非医療機器のセルフチェックツールとして開発されたものです。疾病の診断・予防を目的としたものではなく、あくまで健康度を把握するためのきっかけとしてご活用いただけます。



AI海馬年齢測定(MRI)

AI海馬年齢測定は、MRIで撮影した脳画像をAIで解析し、海馬の萎縮の程度を「年齢」というイメージしやすい形で示す検査です。同世代との比較や経年的な変化の確認に向いており、検査そのものは数分程度で行えます。

「萎縮度が標準偏差いくつ」と言われてもイメージしにくいものですが、年齢という身近なものさしに置き換えることで、ご自身の脳の状態を理解しやすくなります。これも、海馬の状態を把握するための一つの手段です。

AI海馬年齢測定の解析レポートのサンプル(院長の測定結果例)

※上記は当院院長の測定結果の例です。

これらは「手段」であり、診断そのものではありません。
のうKNOWやAI海馬年齢測定は、脳の状態に気づくきっかけや、経過を追うための補助的な手段です。気になる結果が出た場合は、神経心理検査やMRIなどと合わせて、医師が総合的に評価します。費用や受けられる検査の組み合わせは、症状やご希望に応じてご案内しますので、お気軽にお問い合わせください。



どの検査が向いているか分からない方も、まずはご相談いただければご案内します。

 

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5.早期に検査する意義

「もの忘れくらいで受診するのは大げさかも」とためらう方は少なくありません。けれども、早めに調べておくことには、いくつかの大切な意味があります。

  • 対応で改善が見込めるもの忘れを見つけられる:甲状腺の病気・ビタミン不足・うつ状態・薬の影響など、適切に対応すれば改善が見込めるものが隠れていることがあります。
  • 早期に対応の準備ができる:認知症やMCIであっても、早く分かるほど、生活の工夫や治療の選択肢を医師と相談しやすくなります。
  • ご本人とご家族が安心できる:「異常がなかった」と分かるだけでも、不安がやわらぐことは少なくありません。

国(政府広報)も、認知症は早期に適切な診断を受けることが大切だと案内しています。アルツハイマー型認知症を完全に治す方法はまだ確立されていませんが、早期に発見して適切な対応につなげることで、進行をゆるやかにすることが期待できるとされています。MCIの段階であれば、生活習慣の見直しなどに取り組む時間も持てます。



検査のあと、予防に取り組みたい方へ

検査で脳の状態を把握したうえで、生活習慣や食事の見直し、サプリメントなどの予防的な取り組みに関心をお持ちの方もいらっしゃいます。認知症予防サプリ「フェルガード」については、こちらの記事で、その成分やエビデンスをくわしく解説しています。



6.よくあるご質問(Q&A)

Q. もの忘れが気になります。どのタイミングで検査を受ければよいですか?

「同じことを何度も聞く」「約束やしまい場所を忘れる」「日付があいまいになる」といったことが続き、ご本人やご家族が気になり始めたときが一つの目安です。検査は早すぎて困るものではありません。気になった段階で、お気軽にご相談ください。



Q. VSRADやAI海馬年齢測定の結果だけで、認知症かどうか分かりますか?

いいえ。これらは海馬周辺の萎縮の程度を客観的に示す「診断を支援する」ための検査です。萎縮は加齢でもある程度進むため、数値だけで認知症が確定するものではありません。神経心理検査や問診と合わせて、医師が総合的に判断します。



Q. 本人が受診をいやがります。家族だけで相談できますか?

ご家族だけでのご相談も可能です。ご本人がためらう場合の声のかけ方や、受診につなげる工夫についても一緒に考えます。まずはご家族が気になる点を整理して、ご相談いただければと思います。



Q. 検査は何科で受けられますか?

もの忘れの検査は、脳神経外科・脳神経内科・精神科・もの忘れ外来などで受けられます。当院は脳神経外科で、MRIによる海馬の評価を含めた検査に対応しています。どこを受診すべきか迷う場合も、まずはご相談ください。



7.まとめ:早めに「調べる」ことが安心の第一歩

  • 認知症・もの忘れの検査は、問診・神経心理検査・画像検査を組み合わせて総合的に行います。
  • MMSEや長谷川式は認知機能の「ものさし」。点数だけで判断はしません。
  • MRIでは記憶に関わる海馬の萎縮を確認でき、VSRADはその程度を数値で示す診断支援ソフトです。
  • のうKNOW・AI海馬年齢測定は、脳の状態を分かりやすく把握するための手段で、診断そのものではありません。
  • 早めに調べることは、改善するもの忘れの発見早期の対応につながります。

もの忘れは、年齢のせいと片づける前に、
一度「調べてみる」ことが安心への近道です。
気になることがあれば、いつでもいわた脳神経外科クリニックの専門医にご相談ください。

 

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お問い合わせ・ご予約


もの忘れや認知症の検査について、不安なことがあればしっかり寄り添います。また当院公式LINEにてご質問等をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。

 

 

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この記事を書いた先生のプロフィール
いわた脳神経外科クリニック 院長 岩田 亮一
医師・医学博士/脳神経外科専門医脳血管内治療専門医
(日本認知症学会・日本頭痛学会・日本脳卒中学会 所属)

脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。
脳血管内治療(カテーテル治療)の専門医でもあり、くも膜下出血や脳動脈解離など「危険な頭痛」の鑑別・初期対応にも力を入れています。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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重要:本記事の位置づけ
本記事は認知症・もの忘れの検査に関する一般的な医療情報の提供を目的としたもので、特定の検査・診断・治療を保証するものではありません。検査の必要性や組み合わせ、結果の解釈は、症状・既往歴・経過をふまえて医師が個別に判断します。気になる症状がある場合は、自己判断で様子を見ず、医療機関にご相談ください。



参考文献

エーザイ n.d., のうKNOW(脳の健康度セルフチェックツール), エーザイ, viewed 16 June 2026, <https://nouknow.jp/>.

厚生労働省 n.d., e-ヘルスネット 認知症, 厚生労働省, viewed 16 June 2026, <https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/>.

政府広報オンライン 2025, 知っておきたい認知症の基本, 政府広報オンライン, viewed 16 June 2026, <https://www.gov-online.go.jp/article/202501/entry-7013.html>.

Folstein, MF, Folstein, SE & McHugh, PR 1975, ‘“Mini-mental state”: a practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician’, Journal of Psychiatric Research, vol. 12, no. 3, pp. 189-198, DOI 10.1016/0022-3956(75)90026-6.

Hirata, Y, Matsuda, H, Nemoto, K, et al. 2005, ‘Voxel-based morphometry to discriminate early Alzheimer’s disease from controls’, Neuroscience Letters, vol. 382, no. 3, pp. 269-274, DOI 10.1016/j.neulet.2005.03.038.

Maruff, P, Thomas, E, Cysique, L, et al. 2009, ‘Validity of the CogState brief battery: relationship to standardized tests and sensitivity to cognitive impairment in mild traumatic brain injury, schizophrenia, and AIDS dementia complex’, Archives of Clinical Neuropsychology, vol. 24, no. 2, pp. 165-178, DOI 10.1093/arclin/acp010.