この記事で分かること
- 「頭が前後に長い」かどうかは、見た目だけでなく頭長幅示数(CI)=左右の最大幅 ÷ 前後の最大長 × 100 という数字で確かめられます。測り方を図でご説明します。
- 日本の子どもの頭はもともと横に広いかたちが標準的で、欧米の基準値をそのまま当てはめると判断を誤ることがあります。
- 前後に長い頭は、早産で生まれたお子さまに多くみられます。ただし満期産のお子さまにも起こり、めずらしいことではありません。
- 頭蓋骨のつなぎ目が正常に開いていれば、かたちが前後に長くても、脳の大きさや頭囲は変わらなかったと報告されています。
- 一方で、手術が必要な「舟状頭蓋(矢状縫合早期癒合症)」でも頭が前後に長くなります。見分けるサインと、確認の方法をお伝えします。
- 頭のかたちは、寝かせ方やお世話の仕方が悪かったから、こうなるものではありません。
「うちの子、頭がなんだか前後に長い気がする」「横から撮った写真を見るたびに、細長さが気になってしまう」——健診で並んだほかの赤ちゃんの丸い後頭部を見て、急に胸がざわついた、という方もいらっしゃると思います。向き癖があった、吸引分娩だった、逆子だった……思い当たることを一つずつ数え上げて、夜に検索してしまう。よくあることです。
特に、早産で生まれてNICU(新生児集中治療室)で長く過ごしたお子さまのご家族から、退院後にこのご相談をいただくことが多くあります。頭のゆがみというと「後頭部が平ら」「左右が非対称」という話題が中心で、「前後に長い」というかたちの情報は少なく、調べるほど不安になる記述にたどり着いてしまう。「もう手遅れなのだろうか」「脳の育ちに影響しているのだろうか」と、口に出せないまま抱えておられる方もいらっしゃるはずです。
先にお伝えしておきます。「もう手遅れ」ということはありません。月齢が進んでからでも、病気が隠れていないかの確認はできますし、見通しをお伝えすることもできます。調べるほど不安になる情報のなかで、何をどの順番で確かめればよいのかを、この記事で一緒に整理させてください。
頭が長く見える原因の全体像(分娩による一時的な変形、向き癖、自然に整うケースなど)は、新生児の頭が長い・縦長に見える原因の記事で解説しています。本記事はその続編として、「数字での確かめ方」「早産との関係」「病気との見分け方」を掘り下げます。
目次
大阪で赤ちゃんの頭のかたちが気になる方は、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。初診は保険診療で、計測だけのご相談も承っています。
1. 頭が前後に長い(長頭)とは
赤ちゃんの頭を真上から見たとき、前後方向(おでこから後頭部まで)が長く、左右方向(耳から耳まで)が狭い状態を、医学的には長頭(ちょうとう/長頭症/dolichocephaly)と呼びます。後頭部が平らになる短頭(絶壁)や、左右が非対称になる斜頭とは別のタイプです。
混乱しやすいのですが、「長頭」という見た目に対して、原因はおおきく二つに分かれます。
同じ「前後に長い頭」でも、成り立ちが違います
① 位置的(体位性)な長頭:頭蓋骨のつなぎ目(縫合)は正常に開いていて、外からの力のかかり方によってかたちが変わったもの。横向きに寝ている時間が長い場合などに起こります。病気ではありません。
② 矢状縫合早期癒合症による舟状頭蓋:頭のてっぺんを前後に走る「矢状縫合(しじょうほうごう)」というつなぎ目が早く閉じてしまい、横に広がれない分だけ前後に伸びたもの。これは治療(手術)の対象となる病気です。
この二つは、鏡で見た印象だけでは区別がつかないことがあります。実際、米国の頭蓋顔面外来に「頭が前後に長い」ことを理由に受診した4人のお子さまについて、診察所見と頭のかたちの数値からは矢状縫合早期癒合症が疑われたものの、CTを撮ってみるとつなぎ目は開いていた(=病気ではなかった)という報告があります(Beckett et al. 2013)。逆のパターン、つまり「体位性だと思っていたら病気だった」という見落としも起こりえます。
かたちは、育て方の結果ではありません
先にお伝えしておきたいことがあります。向き癖は、赤ちゃん自身の顔の向けやすさや首の傾きやすさによることが多く、寝かせ方やお世話の仕方が悪かったから起こるものではありません。また、生まれるまでのあいだの姿勢や、お産のときの頭の通り方も、かたちに影響します。どれも、ご家族が選べたことではありません。
そのうえで、順序としては、まず「つなぎ目が正常に開いているか」を確認し、そのあとで「かたちがどの程度なのか」を数字で把握する、という流れが現実的です。インターネットの写真と見比べてご自身で判定しようとすると、答えの出ない不安が続いてしまいます。
2. 頭のかたちを数字で確かめる
頭が前後に長いかどうかを客観的に表す指標に、頭長幅示数(CI:Cephalic Index、頭指数・頭蓋示数とも呼ばれます)があります。計算はとてもシンプルです。
図1:頭長幅示数(CI)の測り方

つまりCIは「横幅が前後長の何%あるか」を示す数字です。前後に長いほどCIは小さくなります。
日本の赤ちゃんの目安
ここで大切なのは、CIの基準を欧米の数値のまま当てはめないことです。頭のかたちには人種差があることが知られています。
順天堂大学のグループは、脳の発達に問題のなかった日本の子ども104人(男児62人・女児42人)のCT画像から、年齢別のCIを報告しています。結果は以下のとおりです(Koizumi et al. 2010)。
| 年齢 | 人数 | CI(平均) |
|---|---|---|
| 生後0〜3か月 | 21人 | 86.7% |
| 生後4〜6か月 | 9人 | 87.5% |
| 生後7〜9か月 | 16人 | 89.2% |
| 生後10〜12か月 | 9人 | 86.3% |
| 1歳 | 25人 | 85.9% |
| 2歳 | 15人 | 86.3% |
| 3歳 | 9人 | 83.7% |
この表は、年齢の違う行どうしを見比べて増減を判断するためのものではありません。成長にともなってCIがゆるやかに小さくなっていくのは通常のことで、3歳の値が低いことは悪化を意味しません。
著者らは、日本の子どものCIは欧米の白人小児で報告されている値よりも短頭寄り(横に広い傾向)であったとまとめています。日本の赤ちゃんは、もともと「横に広い頭のかたち」が標準的だということです。そのため、欧米の文献にある「CI 76%未満で長頭」といった区切りをそのまま使うと、日本のお子さまの状態を正しく評価できないおそれがあります。
参考として、ドイツで乳児195人をレーザー計測した研究では、満期産で生まれた赤ちゃんのCIは平均80.0%、比較的遅い時期の早産児で77.2%、非常に早く生まれた早産児で71.4%と報告されています(Ifflaender et al. 2013)。
図2:CIの数直線(測り方が違う2つの研究を、別々に並べています)

数値を読むときの注意点
日本の表の数値はCT画像から、ドイツの数値はレーザー計測から得られたものです。この2つを直接引き算して比べないでください。同じ「CI」という名前でも、測り方が違えば数値はずれます。また日本の研究は対象が104人と多くはなく、各年齢のグループはさらに少人数です。ご家庭でメジャーを当てて出した数値も、あくまで目安としてお考えください。
測り方の違いを差し引いても、早産であるほどCIが小さくなる(前後に長くなる)という傾向は、ドイツの研究がはっきり示しています。次の章で詳しくみていきます。
「うちの子の数字はどうなのか」を知りたい方は、当院の「赤ちゃんの頭のかたち外来」で3D撮影による計測を行っています。ご質問だけであれば公式LINEでもお受けしています。
3. 早産に多い理由(満期産でも起こります)
先ほどのドイツの研究では、早産児については修正満期(本来の出産予定日にあたる時期)の時点で、満期産児と合わせて計195人を計測しています。長頭がみられた割合は次のとおりでした(Ifflaender et al. 2013)。
| 生まれた時期 | 長頭がみられた割合 |
|---|---|
| 満期産(予定日近くに生まれた) | 11% |
| 比較的遅い時期の早産 | 28% |
| 非常に早く生まれた早産 | 73% |
早産のお子さまに多いのは確かですが、満期産で生まれたお子さまでも11%にみられています。「早産ではないのに前後に長い」ということは、めずらしくありません。この章は早産の話が中心になりますが、満期産のお子さまの場合も、横向きに寝ている時間が長ければ同じ仕組みでかたちが変わります。
頭蓋骨がやわらかい時期に、横向きの姿勢が続くため
早産で生まれた赤ちゃんの頭蓋骨は、予定日近くで生まれた赤ちゃんよりもさらにやわらかく、外からの圧に影響を受けやすい状態にあります。そこに、呼吸の管理やモニターの装着といった医療的な必要から、横向きの姿勢で過ごす時間が長くなることが重なります。両側の側頭部が下になる時間が長いと、頭は左右方向に狭く、前後方向に伸びやすくなります。これが、早産児の長頭が生じるおもな仕組みと考えられています。
米国デューク大学の研究では、予定日より8週以上早く生まれたお子さまを調べたところ、入院中のどこかの時点で長頭となったお子さまが54%でした。ある時点で区切ってみたとき割合が最も高かったのは、予定日の6〜8週前にあたる時期(39%)です。一方で、生まれたときの体重や生まれた週数、入院中の合併症の有無と、長頭になるかどうかには関係がみられませんでした(McCarty et al. 2017)。
ドイツ・ゲッティンゲン大学の研究では、3Dカメラで早産児25人と満期産児25人の頭のかたちを比べたところ、早産児で最も多くみられた特徴的な変形が長頭であり、その程度は生まれた週数と修正満期時点の体重に関係していたと報告されています(Santander et al. 2021)。つまり、より小さく、より早く生まれたお子さまほど影響を受けやすいということです。
この報告は「長頭が発達を遅らせる」という意味ではありません
先ほどのデューク大学の研究では、予定日の6〜8週前にあたる時期に長頭があったお子さまは、その後の外来受診の時点で理学療法(体の動きを促すリハビリ)を受けている、あるいは紹介されている割合が高かったと報告されています。ただしこの差は、統計的にはぎりぎり差とは言い切れない水準でした。
そしてこれは「長頭が運動発達の遅れを引き起こした」ことを示すものではありません。もともと状態の重かったお子さまで、長頭も運動面の課題も同時に起こりやすかった、という可能性が十分にあります。この研究は過去のカルテを振り返る方法で行われており、原因と結果の向きまでは判定できません。著者ら自身も、早い時期からの発達支援の必要性を述べるにとどめています。
4. 頭が縦長だと脳の発達に影響する?
「頭が細長いということは、中の脳が窮屈なのではないか」——これは、ご相談の場でとてもよくいただくご質問です。お気持ちはよく分かります。
この点について、参考になる研究があります。米国ハーバード大学のグループは、早産児24人と満期産児20人に修正満期の時期でMRIを行い、頭のかたちと脳を比べました。早産児のグループははっきりとした長頭を示していましたが、脳の組織の量(体積)は満期産児のグループと同じくらいでした。頭蓋骨のかたちが変わったことで大脳皮質(脳の表面の層)の位置は移動していたものの、脳の深い部分の構造には影響がみられませんでした(Mewes et al. 2007)。
先ほどのゲッティンゲン大学の研究でも、早産児のグループと満期産児のグループのあいだで、頭囲および頭蓋の容積に差は認められませんでした(Santander et al. 2021)。頭囲の見方については、月齢別の頭囲の目安の記事もご覧ください。
つなぎ目が開いていれば、容れ物は大きくなれます
頭蓋骨のつなぎ目(縫合)が正常に開いているかぎり、脳の成長に合わせて頭蓋も大きくなります。かたちが前後に長くても、脳が入る空間そのものが足りなくなっているわけではない、というのが上記の研究からうかがえる点です。米国小児科学会も、位置的な頭蓋変形は一般に良性であり可逆的である(元に戻りうる)としています(Laughlin et al. 2011)。
ただし、これらの研究にも限界があります。対象人数はいずれも数十人規模であり、評価した時期も修正満期の前後に限られています。「長頭のお子さまを長期に追いかけて、学童期の発達を満期産児と比べた」という大規模な研究があるわけではありません。「影響がないと言い切れる」のではなく、「現時点で、脳の体積が小さくなるという報告はない」という受け止め方が正確です。
そして、ここまでの話はつなぎ目が正常に開いている場合の話です。つなぎ目が早く閉じてしまう病気では、話がまったく変わります。次の章でご説明します。
「うちの子は病気ではないと確認しておきたい」——そのためのご相談で構いません。大阪で赤ちゃんの頭のことなら、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。
5. 病気との見分け方と受診のサイン
頭のてっぺんを前後に走るつなぎ目を矢状縫合(しじょうほうごう)といいます。ここが通常より早く閉じてしまうと、頭は横に広がることができず、その分を補うように前後方向へ伸びていきます。こうしてできるかたちが舟状頭蓋(しゅうじょうずがい)で、長頭蓋とも呼ばれます。原因となる病気の名前が、矢状縫合早期癒合症です。頭蓋骨縫合早期癒合症は、狭頭症(きょうとうしょう)とも呼ばれます。
真上から見たときのかたちで比べると、違いは次のようになります。体位性の長頭は、両側から押されて左右の幅だけが狭くなり、前後の長さは標準的なかたちとあまり変わりません。これに対して舟状頭蓋は、左右の幅が狭いことに加えて、その分を補うように前後方向へ伸びます。おでこ側と後頭部側が、標準的な輪郭よりも外に張り出してくるのが特徴です。
舟状頭蓋は、横から見たときにも特徴が出ます。おでこが前に張り出し、後頭部が後ろに突き出て見えることが多く、横顔のシルエットが前後に長く感じられます。一方、体位性の長頭では、横から見たかたちは標準とあまり変わりません。
どのくらいの頻度で起こるのか
小児慢性特定疾病情報センターの疾患情報(文責:日本小児神経学会・日本小児神経外科学会)では、頭の骨だけに変形が限られる非症候性(非症候群性)頭蓋骨縫合早期癒合症は全体の約85%を占めると推定され、海外の報告では出生1万人あたり4〜10名の頻度とされています。また矢状縫合と前頭縫合(おでこの中央を縦に走るつなぎ目)の早期癒合は男児に2〜3倍多い傾向があるとされています(小児慢性特定疾病情報センター 2014a)。なお、この割合は資料によって6割程度とするものもあり、報告に幅がある点はご承知おきください。
フィンランドの全国調査(1987〜2010年、877例)では、頭蓋骨縫合早期癒合症全体の頻度は出生1万人あたり6.0で、そのうち最も多いのが矢状縫合癒合症の3.9でした(Vuola et al. 2024)。おおよそ2,500人に1人という計算になります。前後に長い頭のお子さまの大半は、この病気ではありません。ただし、見た目や数値だけで「違う」と言い切ることはできないため、確認が必要になります。
受診をおすすめするサイン
以下にあてはまる場合は、月齢を問わず早めにご相談ください。これらは「該当すれば病気」という意味ではなく、「確認しておいたほうがよい」という目印です。
早めの相談をおすすめする所見
- 頭のつなぎ目に沿って、さわって分かる硬い盛り上がり(骨の稜)がある
- 生まれたときからかたちの偏りがあり、月齢が進んでも改善せず、むしろ目立ってきている
- おでこが前に強く張り出している、または後頭部が後ろに突き出している
- 大泉門(頭のてっぺんより少し前にある、やわらかくへこんだ部分。通常は1歳〜1歳半ごろに閉じます)が、早い時期に触れなくなった(大泉門のへこみ・ふくらみの記事)
- 母子健康手帳の頭囲の成長曲線から、伸び方が外れてきた(月齢別の頭囲の目安の記事)
- 早産でもなく、横向きに寝る習慣もないのに、前後に長いかたちが目立つ
どうやって確認するのか(検査について)
公的な診断の手引きでは、重要な所見として次の4つが挙げられています(小児慢性特定疾病情報センター 2014b)。
- 見た目のかたちに、その病気に特徴的な特徴があるか(視診)
- さわって分かる骨の盛り上がりが、つなぎ目に沿ってあるか(触診)
- レントゲン(頭部単純撮影)で、つなぎ目が閉じていないか
- CT(3次元再構成を含む)で、つなぎ目の癒合と頭蓋のかたちを確認する
同じ手引きでは(小児慢性特定疾病情報センター 2014b)、見た目だけで診断できることが多いとしつつ、確定診断にはレントゲンやCTの画像が必要であるとされています。当院の「赤ちゃんの頭のかたち外来」で、3D撮影とあわせてレントゲン撮影を行っているのは、この「つなぎ目が開いているかどうか」を診察だけで判断しきれない場合があるためです。
レントゲンの被ばくについて
生後まもないお子さまにレントゲンと言われて、不安にならない方はいらっしゃらないと思います。頭部のレントゲンは一瞬で終わる撮影で、CTと比べればはるかに少ない線量です。米国神経外科学会議(CNS)の系統的レビューでも、位置的な頭のゆがみの診断のためにCTを行うべきではないとされており、当院でも全例にCTを撮ることはありません(Mazzola et al. 2016)。
なお当院では、初診は保険診療で受診いただけ、レントゲン撮影も保険適応です。撮影の必要性や手順については診察の際にご説明しますので、疑問はその場でお尋ねください。
病気だった場合の治療
矢状縫合早期癒合症と診断された場合、治療は外科手術になります。ヘルメットだけで治るものではありません。治療法は大きく分けると、頭蓋骨を広げ直す手術と、閉じてしまったつなぎ目を取り除く手術があります。前述の疾患情報では、頭蓋拡大再建術、頭蓋骨延長器装着術、病変部縫合線切除術が挙げられ、近年は内視鏡を使った縫合線切除術と頭蓋形態誘導用ヘルメットを組み合わせた治療が、体への負担の少ない方法として注目されているとされています(小児慢性特定疾病情報センター 2014a)。
米国の総説でも、非症候性頭蓋骨縫合早期癒合症では、生後3〜4か月という早い時期に介入すれば体への負担の少ない方法を選べる一方、その方法では手術のあとのヘルメット療法とご家族の協力が必要になるとまとめられています(Dempsey et al. 2019)。
また、治療せずに放置した場合には、頭の中の圧が高まることや、かたちの偏りが固定してしまうことが問題になります。そのため診断がついた場合は比較的早く手術が行われることが多い、とされています(Governale 2015)。裏を返せば、診断がつけば治療の方法が確立している病気だということです。怖いのは、気づかれないまま時間が過ぎることのほうです。
医療費について
非症候性頭蓋骨縫合早期癒合症は、小児慢性特定疾病(告示番号35)の対象疾病に位置づけられています(小児慢性特定疾病情報センター 2014a)。認定には国が定める基準があり、すべての方が該当するわけではありませんが、診断がついた場合には医療費助成の申請について主治医にご確認いただくことをおすすめします。手続きの窓口は、お住まいの自治体です。なお、体位性の長頭に対するヘルメット治療は、これとは別の自由診療(保険適用外)です。
頭蓋骨縫合早期癒合症全般については、頭のゆがみの原因となる頭蓋骨縫合早期癒合症の記事でより詳しく解説しています。
6. 家庭でできること・相談の時期の目安
つなぎ目が正常に開いている、位置的な長頭であることが確認できた場合、次に気になるのは「何かできることはあるのか」「いつまでに動けばいいのか」だと思います。
相談の時期の目安
まず時間軸の考え方です。赤ちゃんの頭蓋骨は生後数か月のあいだに急速に大きくなり、その成長する力そのものが、かたちを整える原動力になります。成長のスピードが落ちてくると、外から働きかけて得られる変化も小さくなっていきます。
- 病気かどうかの確認:時期を問わずいつでも可能です。気になったときがご相談のタイミングです。
- ヘルメット治療を検討する場合:当院では、早産のお子さまは修正月齢(予定日から数えた月齢)で3〜4か月ごろ、満期産のお子さまは生後3〜4か月ごろを、ひとつの目安としています。
- 月齢が進んでから:ヘルメットの対象からは外れることが多くなりますが、確認と見通しのご説明、生活のなかでの工夫のご提案はいつでもできます。
ただし、この時期の区切りには幅があります。お子さまの状態によって判断は変わりますので、目安として受け取ってください。
NICUでの取り組みについて報告されていること
入院中のポジショニング(姿勢の整え方)については、研究が進められています。米国の研究では、頭をまっすぐ上向きに保ちやすくする市販の用具を使った早産児30人と、通常のケアを受けた早産児65人を比べました。通常ケアのグループではCIが平均5.5週のあいだに80%から77%へ下がった(前後に長くなった)のに対し、用具を使ったグループでは79%から79%と変化がみられませんでした(McCarty et al. 2018)。
この研究の限界と、読み方のお願い
この研究はランダムに振り分けたものではなく、比べる相手は過去のカルテから抽出された集団です。著者ら自身、こうした用具の日常的な使用をすすめるには、より大規模な研究が必要であると述べています。
そして大切なことをひとつ。用具を使っていなかったことは、受けられたケアが不十分だったことを意味しません。NICUでは呼吸や循環の安定が最優先され、それが赤ちゃんの命を守る判断です。入院中の姿勢については、必ず担当の医師・看護師にご相談ください。
退院後、ご家庭でできること
退院後は、特別な道具よりも日々の姿勢の積み重ねが基本になります。起きているあいだの腹ばい遊び(タミータイム)で後頭部や側頭部に体重がかからない時間をつくること、抱っこの時間を増やすこと、赤ちゃんが顔を向けたくなる方向(声のする方、明るい方)を意図的に入れ替えることの3つが柱です。
具体的なやり方は家庭でできる体位変換・タミータイムの記事に、腹ばいを嫌がるお子さまへの工夫はタミータイムを嫌がるときの記事にまとめています。
なお、かたちを気にして横向きやうつ伏せで寝かせることは、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクの観点から推奨されません。米国小児科学会も、頭の非対称がある場合でも健康な赤ちゃんは仰向けで寝かせるべきであると明確に述べています(Laughlin et al. 2011)。詳しくは赤ちゃんの安全な睡眠と頭の形の記事をご覧ください。
ヘルメット治療の位置づけ
頭蓋形状矯正ヘルメットについては、率直にお伝えしておきたいことがあります。研究の蓄積が最も多いのは斜頭(左右の非対称)に対するもので、長頭を主な対象とした質の高い研究は限られている、というのが当院の理解です。体位性の長頭に対してヘルメット治療がどれだけ有効かを、現時点の根拠から断定することはできません。
また、日本の赤ちゃんはもともと横に広い頭のかたちが標準的である(Koizumi et al. 2010)ことを考えると、早産で生まれたお子さまの長頭を、そのまま「治療すべき変形」として扱うことにも慎重であるべきだと考えています。
当院のヘルメット治療の対象は、病的なゆがみの疑いがなく、中等症以上と診断されたお子さまです。長頭のみを理由とした治療については、かたちの程度、月齢、ご家族の希望をお聞きしたうえで個別に判断しています。治療をしないという選択肢も含めてご説明します。効果・費用・副作用については、ヘルメット治療の効果・後遺症・費用を解説した記事および赤ちゃんの頭のかたち外来のご案内をご覧ください。
「まず、病気ではないことを確認したい」というご相談を歓迎しています。大阪で赤ちゃんの頭のかたちにお悩みなら、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。
7. よくある質問
Q1. もう手遅れでしょうか。ヘルメットの時期を過ぎたら、何もできませんか?
A. 手遅れということはありません。まず、病気が隠れていないかの確認は、月齢を問わずいつでもできます。これがいちばん大事な確認です。ヘルメット治療の対象からは外れる時期であっても、今後の見通しのご説明や、生活のなかでできる工夫のご提案はできます。位置的な頭蓋変形は一般に良性で可逆的とされており(Laughlin et al. 2011)、髪が生えそろうにつれて目立ちにくくなることもあります。
Q2. レントゲンの被ばくは、赤ちゃんに影響しませんか?
A. ご心配はもっともです。頭部のレントゲンは一瞬で終わる撮影で、CTと比べればはるかに少ない線量です。CNSの系統的レビューでも、位置的な頭のゆがみの診断のためにCTを行うべきではないとされており、当院でも全例にCTを撮ることはありません(Mazzola et al. 2016)。撮影が必要かどうかも含めて診察でご説明しますので、納得されてから進めていただけます。
Q3. 家でメジャーを使ってCIを測ってもよいですか?
A. 目安としてであれば問題ありません。測る場所は、前後の長さ=眉の少し上から後頭部のいちばん出ているところまで、左右の幅=耳の少し上でいちばん広いところです。授乳のあとなど、落ち着いている時間に行ってください。ただし赤ちゃんは動きますし、髪の毛や耳の位置で数値が変わるため、ご家庭での計測値は数ポイント前後してもおかしくありません。数値の上下に一喜一憂するより、「月齢が進むにつれて目立たなくなっているか、変わらないか、悪化しているか」という変化の方向をみていただくほうが有用です。
Q4. 大きくなったら、見た目で分からなくなりますか?
A. 髪が生えそろい、頭全体が大きくなるにつれて目立ちにくくなることが多いとされています。米国小児科学会も、位置的な頭蓋変形は一般に良性で可逆的としています(Laughlin et al. 2011)。ただし、長頭のお子さまを学童期まで追いかけた大規模な研究があるわけではなく、「どのくらい戻るか」を数字でお約束することはできません。改善の程度には個人差があります。
Q5. 何科を受診すればよいですか。費用はどのくらいかかりますか?
A. 頭のかたちの評価と頭蓋骨の病気の見分けは脳神経外科が専門とする領域ですので、当院では脳神経外科医が診察いたします。当院の初診は保険診療で受診いただけ、レントゲン撮影も保険適応です。ヘルメット治療そのものは自由診療(保険適用外)となり、費用や治療期間は赤ちゃんの頭のかたち外来のご案内に掲載しています。ご予約はデジスマ診療のWEB予約からお取りいただけます。母子健康手帳をお持ちいただくと、頭囲の経過が確認できて助かります。
Q6. 早産で生まれた子の長頭は、自然に良くなりますか?
A. 頭蓋骨のつなぎ目が正常に開いていれば、退院後に抱っこや腹ばいの時間が増え、寝返りが始まって姿勢が多様になるにつれて、目立たなくなっていくことが多いとされています。ただし改善の程度には個人差があり、すべてのお子さまが完全に元どおりになるとお約束できるものではありません。
Q7. 頭が前後に長いと、脳が圧迫されて発達に影響しますか?
A. つなぎ目が正常に開いている位置的な長頭については、脳の体積が満期産児と同じくらいであったという報告があります(Mewes et al. 2007)。頭囲や頭蓋の容積にも差はみられませんでした(Santander et al. 2021)。一方、つなぎ目が早く閉じてしまう頭蓋骨縫合早期癒合症では、放置すると頭の中の圧が高まり、発達に影響が出ることがあると報告されています。ただしこれは「つなぎ目が早く閉じた場合」の話で、つなぎ目が開いている位置的な長頭には当てはまりません。まずはどちらなのかを確認することが先決です。
Q8. 頭が長いのは遺伝ではないでしょうか。私も夫も細長い頭です。
A. 頭のかたちに体質的な傾向があるのは事実で、ご家族に似ることもあります。ただし、ご家族に似ているからという理由だけで病気の可能性を除外することはできません。頭蓋骨縫合早期癒合症は家族内で発生することもあると報告されています(小児慢性特定疾病情報センター 2014a)。「家系のかたちだから」と考えておられる方も、一度は確認しておくことをおすすめします。
Q9. いまNICUに入院中です。今から姿勢について相談してもよいですか?
A. ぜひ担当の医師・看護師にお尋ねください。入院中の姿勢は、呼吸や循環の状態を最優先に決められています。それでも、状態が安定していれば、向きの変え方など相談できることがあります。ご家族から「頭のかたちが気になっている」と伝えていただくこと自体に意味があります。当院への受診は、退院後の落ち着いたタイミングで構いません。
Q10. 周りから頭のかたちを言われるのがつらいです。
A. そのおつらさは、医学の話とは別に、確かにあるものだと思います。悪気なく言われた一言が長く残ることもあります。診察の場では、かたちのことだけでなく、そうしたお気持ちも遠慮なくお話しください。「病気ではありません」と医師から言われた事実そのものが、周囲への説明の助けになることもあります。
8. まとめ
- 頭が前後に長いかたちは「長頭」と呼ばれ、頭長幅示数(CI=左右の最大幅 ÷ 前後の最大長 × 100)という数字で確かめられます。数値が小さいほど前後に長いかたちです。
- 日本の子どものCIは、生後0〜3か月で86.7%、7〜9か月で89.2%と報告され、欧米の子どもより横に広い傾向があります。欧米の基準値をそのまま当てはめない注意が必要です。
- 長頭は早産のお子さまに多く、修正満期の時点で、非常に早く生まれた赤ちゃんの73%にみられたと報告されています。ただし満期産のお子さまでも11%にみられ、めずらしいことではありません。
- 頭のかたちは、寝かせ方やお世話の仕方が悪かったから、こうなるものではありません。
- つなぎ目が正常に開いている長頭では、脳の体積や頭囲は満期産児と同じくらいであったと報告されています。
- 一方、舟状頭蓋(矢状縫合早期癒合症)では同じように頭が前後に長くなり、こちらは手術の対象となる病気です。つなぎ目にさわって分かる骨の盛り上がり、おでこや後頭部の張り出し、大泉門が早く触れなくなったなどがあれば、月齢を問わずご相談ください。
- 見分けには診察に加えてレントゲンなどの画像が必要になることがあり、見た目や数値だけで判定することはできません。
- 「もう手遅れ」ということはありません。病気かどうかの確認は、いつの時期でもできます。
早産でお子さまを迎えられたご家族は、NICUでの日々を懸命に過ごしてこられたことと思います。その時期にできた頭のかたちは、必要な医療を受けた証でもあり、ご家族の関わり方の結果ではありません。向き癖にしても同じで、赤ちゃん自身の向きやすさによるところが大きいものです。「かたちが気になる」というお気持ちと、「本当に大丈夫なのか」という不安は、どちらも自然なものです。私たちは、判定と見通しをお伝えすることで、その不安の輪郭をはっきりさせる役割だと考えています。治療を受けるかどうかを決めてからお越しいただく必要はありません。
お問い合わせ・ご予約
赤ちゃんの頭のかたちが前後に長い、早産で生まれたお子さまの頭のかたちが気になる、といったご相談を承っています。初診は保険診療で、計測だけのご相談も可能です。母子健康手帳をお持ちください。ご予約は、下記から可能です。
当院公式LINEにてご質問等もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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重要:本記事の位置づけ(医療情報として)
- 本記事は、研究報告や公的資料に基づく「一般的な医療情報」です。診断・治療の代替ではありません。
- 特定の治療を推奨・保証するものではありません。効果や副作用には個人差があります。
- 頭のかたちの評価と病気の見分けには、診察および画像検査が必要になる場合があります。本記事の記載のみで自己判断されませんようお願いいたします。
- ヘルメット治療(頭蓋形状矯正ヘルメット)について:保険適用外の自由診療で、費用は全額自己負担です。
- 費用の目安:baby band 370,000円(税込)/ReMO baby 398,000円(税込) ※2025年5月1日改定。費用は改定される場合がありますので、受診時に現在の料金をご確認ください。
- 装着期間・回数:1日23時間の装着で、平均およそ6か月(baby band の場合は平均3〜4か月程度)。この間、おおむね1か月ごとの定期検診に通っていただきます。
- 主なリスク・副作用:皮膚の発赤やかぶれなどの皮膚トラブル、ヘルメットのずれ。効果や副作用には個人差があり、すべてのお子さまで改善するとは限りません。
- 適応:病的なゆがみの疑いがなく、中等症以上と診断されたお子さまが対象です。すべてのお子さまに必要な治療ではありません。
- お問い合わせ先:当院WEB予約(デジスマ診療)または当院公式LINE。詳細は赤ちゃんの頭のかたち外来のご案内をご確認ください。
- 引用した研究には、対象者数が数十〜数百人規模であること、ランダムに振り分けていない研究が含まれること、計測方法が研究間で異なることなどの限界があります。本文中にも該当箇所で記載しています。
- 実際の診療方針は、お子さまの状態・経過・ご家族の希望を踏まえて医師が判断します。
参考文献
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- 小児慢性特定疾病情報センター 2014b, 非症候性頭蓋骨縫合早期癒合症 診断の手引き, 国立成育医療研究センター, viewed 16 September 2026, <https://www.shouman.jp/disease/instructions/11_15_037/>.
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