論文まとめ 参考:Hershey et al. (2026)


「学校を休むほど頭が痛い」「薬を飲む回数が増えて心配」「成長期の子どもに“予防の注射”って本当に大丈夫?」——そんな疑問を持つご家族は少なくありません。

子どもの頭痛、とくに片頭痛は“気のせい”ではなく、学業・運動・睡眠・情緒にも影響する病気です。最近は、大人で使われてきたCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を標的とする予防治療が、小児・思春期にも研究され、NEJMでランダム化比較試験が報告されました。今回は、子どもの片頭痛について調べたHershey et al. (2026)の研究を解説します。

この記事で分かること
・子どもの片頭痛で「予防」を考える目安
・Hershey et al. (2026)のNEJM論文ポイント(PICO・結果・副作用)
・生活習慣でできる“再発予防の土台”
・予防注射は誰でも使えるの?(適応の考え方)
・よくある質問



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目次



1. 子どもの頭痛予防:まず押さえるべき全体像

1-1. 「予防」が必要になるのはどんなとき?

片頭痛の治療は大きく①発作のときの治療(急性期)②発作を起こりにくくする治療(予防)に分かれます。 予防を考えるサインとしては、たとえば「頭痛が多くて生活が回らない」「欠席が増える」「薬を飲む回数が増えてしまう」などが代表的です。

予防治療を考える“実務的”な目安

  • 頭痛日数が多い(例:月に8日以上など)
  • 生活障害が中等度以上(例:学校生活・部活・睡眠が崩れる)
  • 複数の予防策(生活・非薬物・薬物)を試しても改善が乏しい

※「小児・思春期への抗CGRP抗体の使用」を検討する際の一つの枠組みとして、月8日以上やPedMIDAS高値などが提案されています(Szperka et al., 2018)。


1-2. 生活習慣は“精神論”ではなく治療の土台

小児片頭痛は、睡眠不足・食事抜き・脱水・ストレス・過度な画面視聴などで悪化することがあります。 予防薬だけでなく、生活の土台を整えるほど治療が安定しやすいのが実臨床の感覚です。

家庭で整えやすいチェックリスト(例)

  • 睡眠:平日・休日の就寝起床を大きくずらさない
  • 水分:部活や外遊びの日は意識して補給
  • 食事:朝食抜きを避け、低血糖を作らない
  • 運動:過負荷は避けつつ、軽い有酸素を継続
  • 頭痛日誌:頻度・誘因・薬の回数を可視化


2. 論文解説:フレマネズマブ(Hershey et al., 2026)をやさしく読む

今回の中心となる論文は、NEJM掲載のランダム化比較試験です。

Hershey et al., (2026)Fremanezumab in Children and Adolescents with Episodic Migraine

PICO(研究の骨格)

  • P(対象):6〜17歳、エピソード性片頭痛(頭痛歴≥6か月、頭痛日数≤14日/月)
  • I(介入):フレマネズマブ皮下注を月1回×3か月(体重<45kg:120mg、≥45kg:225mg)
  • C(比較):プラセボ皮下注を月1回×3か月
  • O(主要評価):月あたり片頭痛日数のベースラインからの変化

研究期間は二重盲検3か月で、短期の有効性・安全性を評価しています。



3. 結果の見方:どれくらい良くなる?数字の意味

主要結果(Hershey et al., 2026)

  • 片頭痛日数:-2.5日(フレマネズマブ) vs -1.4日(プラセボ)
    → 差1.1日、P=0.02
  • 中等度以上の頭痛日数:差1.1日、P=0.02
  • 50%レスポンダー率:47.2% vs 27.0%、P=0.002
  • 急性期薬の使用日数:フレマネズマブの方が減少、P=0.002

ここで大切なのは、「平均で1日減る」がその子の生活にとってどれだけ意味があるかです。 たとえば、週末に寝込む回数が減って部活に行ける、欠席が減る、急性期薬の回数が減る——など、家庭内での“実感”に直結することがあります。

注意点:

PedMIDAS(生活障害)では改善傾向はあるものの、QOL指標については「有意差なし」。階層的検定の途中で有意差に至らず(P=0.10)、統計手順はそこで停止しています(Hershey et al., 2026)。



4. 安全性:副作用は?成長期で気をつける点

NEJM試験で多かった副作用(Hershey et al., 2026)

  • 有害事象:55.3%(フレマネズマブ) vs 49.1%(プラセボ)
  • 最も多い:注射部位の紅斑 9.8% vs 5.4%
  • 「新たな安全性シグナルは認めず」と報告

4-1. 小児・思春期では「成長」と「妊娠関連」をより慎重に

小児・思春期の抗CGRP抗体使用については、米国小児頭痛グループの専門家提言(エビデンスとしては“専門家意見”)で、 適応・禁忌・モニタリングが整理されています(Szperka et al., 2018)。

提言で挙げられている「適応の考え方・禁忌・モニタリング(Szperka et al., 2018)」

  • 適応の目安:月8日以上の頭痛、PedMIDAS高値、複数の予防療法が不成功、原則は思春期後
  • 禁忌/回避の例:血液脳関門の問題が疑われる状況、重い心血管疾患や脳卒中、妊娠・授乳・妊娠予定
  • モニタリング:思春期発達、身長など線形成長、体重/BMI、骨の健康(ビタミンD含む)、感染、妊娠状況

つまり「NEJMで短期的には有望」という話と、「成長期では慎重に適応判断しよう」という話は両立します。 だからこそ、自己判断ではなく、頭痛診療に慣れた医療機関で、頭痛日誌・生活背景・既存治療歴を含めて整理するのが近道です。



5. 実臨床での考え方:誰が「予防注射」の対象になりうる?

予防注射(抗CGRP抗体)は「頭痛がある子全員」に使う治療ではありません。 一方で、欠席や生活障害が強い、あるいは従来の予防が合わない/効かない場合に、選択肢として検討されうる、という位置づけです(Szperka et al., 2018)。

ポイント:
・まずは診断の確度(片頭痛か、緊張型・副鼻腔炎・視力・起立性調節障害など他の要素はないか)
・次に頻度と障害(頭痛日誌・欠席・部活・睡眠)
・そのうえで、生活・非薬物・薬物の“段階的な予防”を組み、必要なら新しい選択肢を検討



6. よくある質問(Q&A)

Q1. 子どもの片頭痛は「そのうち治る」ので予防はいりませんか?

A. “自然に軽くなる”子もいますが、今つらい生活障害が強いなら対策する価値があります。

片頭痛は成長とともに変化することはありますが、欠席・運動制限・睡眠の乱れが続くと、本人の自信や生活リズムに影響します。 生活習慣の土台と、必要に応じた予防治療で「発作の回数・強さ」を下げることが目標になります(Hershey et al., 2026)。

Q2. 予防注射(抗CGRP抗体)は安全ですか?

A. NEJM試験では3か月時点で大きな安全性シグナルは示されませんでしたが、長期は今後のデータが重要です。

試験では注射部位の紅斑が比較的多く、重篤な問題は少数でした(Hershey et al., 2026)。 一方、小児では成長や妊娠関連など、より慎重なモニタリングが提案されています(Szperka et al., 2018)。

Q3. どのくらい効く可能性がありますか?

A. 平均では「月あたり片頭痛日数が追加で約1日減る」差が示され、50%レスポンダー率も上がりました。

試験では、片頭痛日数は -2.5日 vs -1.4日(差1.1日)で、50%レスポンダー率は 47.2% vs 27.0% でした(Hershey et al., 2026)。 ただし「誰に効くか」は個人差があるため、頭痛日誌で“効き方”を評価します。

Q4. まず家庭でできる予防は何ですか?

A. 睡眠・水分・食事・頭痛日誌の4つが、再現性が高いスタートです。

生活の土台は、薬の効き方や急性期薬の使い方にも影響します。 まず「ズレ」を見つけて整えることで、必要な治療が最小限になることもあります。



7. まとめ

  1. NEJMの試験では、6〜17歳のエピソード性片頭痛で、フレマネズマブがプラセボより片頭痛日数を多く減らしました(Hershey et al., 2026)。
  2. 50%レスポンダー率も上がり、急性期薬の使用日数も減っています(Hershey et al., 2026)。
  3. ただし観察は3か月で、長期の有効性・安全性は今後の情報が重要です(Hershey et al., 2026)。
  4. 小児・思春期での抗CGRP抗体は、適応・禁忌・モニタリングを踏まえた慎重な判断が提案されています(Szperka et al., 2018)。
  5. 結局のところ、最適解は「薬だけ」ではなく、生活の土台+必要な医療の組み合わせです。

学校生活に支障が出る頭痛は、早めに相談して「頻度・誘因・薬の回数」を一緒に整理するほど改善しやすくなります。
受診時は、頭痛日誌(いつ・どのくらい・何をしたか・薬は何回か)をメモしてお持ちいただくと診療がスムーズです。

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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参考文献

  1. Hershey, A.D., Szperka, C.L., Barbanti, P., Pozo-Rosich, P., Bittigau, P., Barash, S., Bryson, J., Kessler, Y., Carmeli Schwartz, Y., Ramirez Campos, V. and Ning, X. (2026) ‘Fremanezumab in Children and Adolescents with Episodic Migraine’, New England Journal of Medicine, 394, pp. 243-252. doi: 10.1056/NEJMoa2504546. [Source](https://www.genspark.ai/api/files/s/lIcK7RbK)
  2. Szperka, C.L., Gelfand, A.A., Hershey, A.D., et al. (2018) ‘Recommendations on the Use of Anti-CGRP Monoclonal Antibodies in Children and Adolescents’, Headache, 58(10), pp. 1658-1669. doi: 10.1111/head.13414. [Source](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6258331/)