この記事で分かること
「薬を飲んでも、また片頭痛がくり返す」「天気やストレスに振り回される」——そんな方に向けて、片頭痛の予防は毎日の生活習慣から始められることを、脳神経外科・頭痛専門医がやさしく解説します。本記事では、睡眠・運動・食事(水分・カフェイン)・頭痛日誌・ストレス対処の5つの切り口で、今日から実行できる工夫を整理しました。
「完璧」よりも一貫性(毎日のリズム)を大切にすることが、発作を起きにくくする近道です。具体的な薬の治療は、診察のなかでご相談ください。
「しっかり眠っているはずなのに、片頭痛がなかなか減らない」「天気やストレスで頭痛が左右される」「食べ物が原因かもしれないと、不安で食事が楽しめない」——こうしたお悩みに、心当たりはありませんか。
片頭痛は、痛みが起きてから薬で抑えることも大切ですが、それだけではなく、毎日の生活習慣を整えることで「発作の起きにくさ」を高めていくという考え方が、近年あらためて注目されています。睡眠・運動・食事・ストレスといった身近な習慣は、片頭痛と深く関わっているからです。
この記事では、睡眠・運動・食事(水分・カフェイン)・頭痛日誌・ストレス対処の5つの切り口で、片頭痛の予防に役立つ生活習慣を順番に解説します。難しい専門用語を覚える必要はありません。「これならできそう」と思えるものから、ひとつずつ始めていただければ十分です。
目次
くり返す片頭痛にお悩みの方、生活習慣の整え方を相談したい方は、お気軽にご相談ください。お一人おひとりの生活に合わせて、予防の工夫を一緒に考えます。
1.片頭痛と生活習慣の関係
片頭痛は、ズキンズキンと脈打つような痛みがくり返し起こる頭痛で、光や音、においに敏感になったり、吐き気をともなったりすることもあります。痛みが出たときに薬で対処することは大切ですが、それと並んで重要なのが、「そもそも発作を起こりにくくする」ための日々の備えです。
生活習慣でできるのは「発作の起きやすさ」を下げること
片頭痛には、睡眠不足・天候の変化・ストレス・空腹・脱水・アルコールなど、さまざまな「きっかけ(誘因)」があると言われています。ここで知っておきたいのが、片頭痛は「コップの水があふれる」イメージで起こりやすくなるという考え方です。睡眠が乱れて疲れがたまり、ストレスも重なって……と負担が積み重なると、ちょっとしたきっかけで発作が起きてしまいます。
逆に、生活のリズムを整えてコップに余裕をつくっておくと、同じきっかけがあっても発作が起きにくくなると考えられています。生活習慣を整えることは、この「発作が起きるしきい値(閾値)」を上げる取り組みなのです(Robblee & Starling 2019)。
「呼び方」は覚えなくて大丈夫です
この記事で紹介する5つの習慣(睡眠・運動・食事/水分・日誌・ストレス)は、頭痛診療の専門医が提案した「SEEDS(シーズ)」という枠組みにもとづいています(Robblee & Starling 2019)。
ただ、呼び方そのものを覚える必要はありません。大切なのは、「自分の生活のどこに整えしろがあるか」を見つけることです。気になる項目から読み進めてください。
2.5つの習慣 早わかり表
まずは、片頭痛の予防に役立つ5つの生活習慣を、一覧で整理します。「主な工夫」と「期待される効果」、そして気をつけたいポイントをまとめました。すべてを一度に完璧にする必要はありません。続けられそうなものから取り入れていきましょう。
| 領域 | 主な工夫 | 具体的なアクション | 期待される効果 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|---|---|
| 睡眠 Sleep |
睡眠の質と量を整える(基本の睡眠衛生) | 寝室は暗く静かで涼しく/就寝・起床時刻を一定に/昼寝を控える/20〜30分眠れなければ一度寝床を離れる/就寝前は画面を見ない | 慢性化の抑制や、発作の起きにくさの改善が期待される | 大きないびき・日中の眠気がある場合は睡眠時無呼吸の確認を |
| 運動 Exercise |
有酸素運動を週3〜5回、30〜60分 | ウォーキング・ジョギング・サイクリングなど/最初はごく短時間から始め、少しずつ増やす | 発作の頻度・持続時間・重症度の軽減が報告されている | 運動で頭痛が誘発される場合は、強度や時間を調整し医師に相談を |
| 食事 Eat |
規則的な食事・十分な水分・一定のカフェイン | 1日3食、朝食を抜かない/水分は1日約1.8L(7〜8杯)/カフェインは1日200mg未満(コーヒー1〜2杯)を目安に一定に | 血糖の安定・脱水の予防・カフェイン切れの予防 | 「唯一の片頭痛食」はないとされる。極端な食事制限は避ける |
| 日誌 Diary |
頭痛のパターンと薬の使用を記録する | 頻度・持続時間・程度・随伴症状・生理周期を記録/痛みを色分けする「信号機日誌」も負担が少ない | 診断の精度向上/薬の使いすぎ(薬剤の使用過多による頭痛)の予防 | 完璧な記録より「続けられる形」を優先する |
| ストレス Stress |
避けるだけでなく「対処スキル」を身につける | 認知行動療法(CBT)/マインドフルネス・瞑想/バイオフィードバック/筋弛緩法 | 不安や落ち込みの軽減/頻度・重症度の改善が期待される | 効果は始めてから数週間後に現れることが多い |
「完璧」より「一貫性」が大切です
5つすべてを一度に変えようとすると、かえって続きません。
睡眠・食事・カフェイン・運動などのリズムを一定に保つことそのものが、片頭痛の予防では「理想の量」を達成すること以上に大切だと考えられています。まずは一つ、無理なく続けられる習慣から始めてみてください。
「どの習慣から手をつければいいか分からない」という方も、ご自身の生活に合わせて一緒に整理できます。お気軽にご相談ください。
3.睡眠:質と量を整える
睡眠は、片頭痛と特に関わりが深い習慣のひとつです。寝不足はもちろん、休日の「寝だめ」で生活リズムが乱れることも、発作のきっかけになりやすいと言われています。目指したいのは、睡眠の「質」と「量」を、できるだけ一定に保つことです。
今日からできる睡眠の工夫
- 寝室は暗く・静かで・涼しく保つ
- 就寝・起床の時刻をできるだけ一定にし、昼寝は控えめに
- 布団に入っても20〜30分眠れないときは、いったん寝床を離れて、眠くなってから戻る
- 就寝前は、スマートフォン・テレビ・タブレットなどの画面を見ない
大きないびき・日中の強い眠気がある方へ
「しっかり寝ても日中ひどく眠い」「家族にいびきや無呼吸を指摘される」場合は、その背景に睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていることがあります。
睡眠を整えてもなかなか改善しないときは、一度ご相談ください。気になる方は、睡眠時無呼吸症候群の症状とセルフチェックの記事もあわせてご覧ください。
4.運動:有酸素運動を少しずつ
適度な運動は、片頭痛の予防に役立つことが報告されています。目安は、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を、週3〜5回、1回30〜60分ほど。ただし、いきなり頑張りすぎる必要はありません。
大切なのは、「理論上いちばん良い運動」ではなく「自分が続けられる運動」を選ぶことです。最初は1回5分程度のごく短い運動から始め、体が慣れてきたら少しずつ時間や強度を増やしていくと、無理なく習慣にしやすくなります。
運動は薬と同程度の効果を示した研究も
片頭痛のある方を対象にした臨床試験では、有酸素運動(週3回・40分)が、リラクセーション法や予防薬(トピラマート)と同程度に発作の頻度を減らしたと報告されています(Varkey et al. 2011)。
効果には個人差がありますが、運動は予防の選択肢のひとつとして検討する価値があると考えられます。
一方で、運動そのものが頭痛のきっかけになる方もいらっしゃいます。運動で頭痛が出やすい場合は、強度や時間、運動前後の水分補給を見直すとともに、医師にご相談ください。無理のない範囲で続けることが、いちばんの近道です。
頭痛のために運動をためらってしまう方も、安全な始め方からご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。
5.食事・水分・カフェイン
食事については、「何を食べるか・何を避けるか」よりも、「規則正しく、安定して食べること」が大切だと考えられています。空腹(低血糖)や脱水は、片頭痛のきっかけになりやすいためです。
食事のポイント
- 1日3食を基本に、朝食を抜かない(起床後30〜60分以内が目安)
- 長時間の絶食・欠食を避ける
- 水分は1日約1.8L(7〜8杯)を目安に、こまめに補給する
カフェインは「ゼロ」より「一定」に
カフェインは、急にやめると「カフェイン離脱(切れ)」によって頭痛が出ることがあります。そのため、無理にゼロにするより、1日200mg未満(コーヒー1〜2杯程度)を目安に、量を一定に保つことがすすめられています。
「特定の食べ物探し」に疲れていませんか
「あの食べ物が原因かも」と一つひとつ避けるうちに、食事が楽しめなくなってしまう方もいらっしゃいます。専門医の解説でも、万人に当てはまる「唯一の片頭痛食」はないとされています。
また、発作の前に甘いものが欲しくなるのは、食べ物が「原因」なのではなく、発作が始まる前ぶれ(予兆)であることもあります。極端な食事制限はかえって生活の質を下げかねないため、まずは「欠食しない・水分を保つ・カフェインを一定に」という安定性から整えてみてください。
なお、水分摂取を増やすことが頭痛の予防に役立つ可能性は、小規模なパイロット試験でも示唆されています(Spigt et al. 2005)。ただし、これは規模の小さい予備的な研究であり、効果には個人差があると考えられます。
6.頭痛日誌でパターンを知る
頭痛日誌をつけると、「いつ・どんなときに・どのくらいの痛みが出るか」というパターンが見えてきます。これは、ご自身が自分の頭痛を理解する助けになるだけでなく、診察の際に医師へ状況を正確に伝えるための、とても役立つ材料になります。
記録するとよいこと
- 頭痛の頻度・持続時間・程度
- 吐き気・光や音への過敏などの随伴症状
- 女性は生理周期との関係(カレンダーやアプリが便利)
- 痛み止め(頓服薬)を使った日(週2日未満を目安に)
続けやすい「信号機日誌」
毎回こまかく書くのが負担に感じる方には、痛みの程度を色で記録する「信号機日誌」という方法があります。たとえば、緑=軽い(ふだんどおり過ごせる)/黄=中くらい(活動が制限される)/赤=強い(寝込む)のように色分けするだけなので、手軽に続けられます。
日誌は「薬の使いすぎ」を防ぐ手がかりにも
痛み止めを使う日が増えすぎると、かえって頭痛が起こりやすくなる「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」が知られています(International Headache Society 2018)。
日誌で薬を使った日を記録しておくと、使いすぎに早く気づけ、医師と一緒に治療を見直す手がかりになります。頓服薬の使用は、週2日未満を一つの目安にするとよいとされています。
7.ストレスへの向き合い方
ストレスは、片頭痛のきっかけとしてよく挙げられます。ただ、ストレスを完全に避けることは難しいものです。そこで近年は、ストレスを「避ける」だけでなく、「うまく付き合う・対処するスキルを身につける」という発想が大切にされています。
取り入れやすい対処法
- 認知行動療法(CBT):物事の受け止め方を見直す心理的アプローチ
- マインドフルネス・瞑想:「今ここ」に意識を向けて気持ちを落ち着ける
- バイオフィードバック:体の緊張を見える形にして、リラックスを練習する
- 筋弛緩法(漸進的筋弛緩法):筋肉の緊張とゆるみを意識的にくり返す
なかでも、認知行動療法(CBT)は比較的しっかりした効果が示されているとされています。これらは始めてすぐに効果が出るというより、続けるなかで数週間ほどかけて、不安や落ち込み、頭痛の頻度・程度が和らいでいくことが期待されるものです。あせらず取り組むことが大切です。
睡眠とストレスは、つながっています
「眠れない」こと自体が、ストレスや片頭痛と深く関わっています。慢性的な片頭痛と不眠を併せもつ方に対して、デジタルで提供する不眠の認知行動療法(dCBT-I)が役立つ可能性も検討されています(Crawford et al. 2020)。
睡眠・ストレス・頭痛は別々の問題ではなく、ひとつながりのものとして整えていくことが大切です。
8.よくあるご質問
Q. 片頭痛の「原因」を全部避ければ、治りますか?
A. きっかけ(誘因)を避けることは役立ちますが、それだけでは十分でないとされています。睡眠・食事・運動などの生活リズムを一定に保つこと、ストレスへの対処スキルを身につけることなどを組み合わせて、「発作の起きにくさ」そのものを高めていく発想がすすめられています。
Q. 運動すると頭痛が出そうで怖いのですが。
A. まずは短時間・低強度から始め、少しずつ慣らしていく方法がすすめられています。有酸素運動が、リラクセーション法や予防薬(トピラマート)と同程度に片頭痛の頻度を減らしたとする臨床試験もあります。運動で頭痛が出やすい場合は、強度や時間、水分補給を調整し、医師にご相談ください。
Q. 何を食べれば(避ければ)よいですか?
A. 万人に当てはまる「唯一の片頭痛食」はないとされています。特定の食品を細かく避けるより、欠食を避ける・水分を保つ・カフェイン量を一定にするといった「安定性」を重視するほうが現実的です。極端な食事制限は、かえって生活の質を下げてしまうことがあります。
Q. 頭痛日誌には、何を書けばよいですか?
A. 完璧な記録より、続けられる形が大切です。頻度・程度・随伴症状・薬を使った日などを記録します。痛みの程度を色で分ける「信号機日誌」は負担が少なく、医師に状況を伝えやすくなります。薬を使った日も記録しておくと、使いすぎの予防にも役立ちます。
Q. 生活習慣を整えれば、薬はいらなくなりますか?
A. 生活習慣の工夫は予防の土台になりますが、薬による治療に代わるものではありません。痛みが強いときの頓服薬や、発作が多い方の予防薬は、生活習慣の改善と組み合わせて用いるのが一般的です。お薬の調整は自己判断せず、診察のなかでご相談ください。
9.まとめ
- 片頭痛の予防では、生活習慣を整えて「発作の起きにくさ(しきい値)」を高めるという発想が役立ちます。
- ポイントは、睡眠・運動・食事/水分・日誌・ストレスの5つを、無理のない範囲で整えること。
- 大切なのは「完璧」より「一貫性(毎日のリズム)」。続けられる習慣から始めましょう。
- 頭痛日誌は、自分の頭痛を知り、薬の使いすぎを防ぐ土台になります。
- 生活習慣の工夫は薬に代わるものではなく、治療と組み合わせて用いるものです。
「薬を飲んでも、また片頭痛がくり返す」とお悩みのときは、一人で抱え込まず、いわた脳神経外科クリニックにお気軽にご相談ください。
生活習慣の整え方から薬の調整まで、お一人おひとりに合わせた頭痛の予防を、一緒に考えていきます。
お問い合わせ・ご予約
くり返す片頭痛や、生活習慣の整え方のお悩みに、しっかり寄り添います。また当院公式LINEにてご質問等をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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重要:本記事の位置づけ
本記事は片頭痛と生活習慣に関する一般的な情報提供を目的としており、診断や治療を保証するものではありません。生活習慣の工夫の効果や、症状の感じ方・経過には個人差があります。お薬の開始・変更・中止は自己判断せず、気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。
参考文献
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Robblee, J & Starling, AJ 2019, ‘SEEDS for success: lifestyle management in migraine’, Cleveland Clinic Journal of Medicine, vol. 86, no. 11, pp. 741-749, DOI 10.3949/ccjm.86a.19009, viewed 24 June 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31710587/>.
Spigt, MG, Kuijper, EC, van Schayck, CP, Troost, J, Knipschild, PG, Linssen, VM & Knottnerus, JA 2005, ‘Increasing the daily water intake for the prophylactic treatment of headache: a pilot trial’, European Journal of Neurology, vol. 12, no. 9, pp. 715-718, DOI 10.1111/j.1468-1331.2005.01081.x, viewed 24 June 2026, <https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16128874/>.
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