【結論】鉄欠乏性貧血(IDA)は、慢性頭痛と「関連」する可能性が報告されています
・インドの症例対照研究では、慢性連日性頭痛(CDH)患者の51%にIDAがみられ、IDAはCDHと有意に関連しました(OR 2.96、p<0.001)(Singh et al., 2023)
・システマティックレビュー/メタ解析では、IDA患者における慢性頭痛の有病率は38%、慢性頭痛患者におけるIDA有病率は20%、IDAは慢性頭痛リスクが1.76倍と報告されています (Rohilla et al., 2025)
・ただし、研究の中心は観察研究のため、因果関係(鉄を補えば頭痛が必ず治る、など)は断定できません。まずは医師の診察と検査が重要です。

「頭痛が続くのに、脳の検査では異常がないと言われた…」「生理が重くて疲れやすい。頭痛も関係ある?」—このような悩みは少なくありません。

近年、鉄欠乏(とくに鉄欠乏性貧血:IDA)と慢性頭痛・片頭痛の関連を検討した研究が増えてきました。本記事では、添付いただいた論文(症例対照研究・大規模疫学研究・メタ解析)をもとに、“論文が言っていること”を分かりやすく整理します。


大阪で頭痛相談・栄養療法相談なら、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。ご予約・お問い合わせは、下記から可能です。

 


ご確認ください(重要)

  • 本記事は医療情報の提供を目的としたもので、診断・治療を代替するものではありません
  • サプリメントは医薬品ではなく、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません
  • 頭痛の原因は多岐にわたります。慢性化・増悪・神経症状(麻痺、激しい嘔吐、意識障害など)がある場合は、速やかに医療機関へご相談ください
  • 貧血が疑われる場合は、自己判断で鉄剤を開始せず、血液検査(Hb、フェリチン、TSATなど)を含め医師と相談することが推奨されます
  • 広告表現は、誇大・断定(「治る」「必ず改善」等)や、医師の保証と誤認される表現、未承認の効能効果の暗示を避ける必要があります

この記事で分かること
・鉄欠乏性貧血(IDA)と慢性頭痛の「関連」を示した研究の要点
・食事の鉄摂取・フェリチンと「重い頭痛/片頭痛」の関係(疫学研究)
・メタ解析で整理された「IDA⇄慢性頭痛」の全体像
・検査で見るポイント(Hb・フェリチン・TIBC・TSAT)
・食事でできること/受診の目安



目次


1. 鉄欠乏性貧血(IDA)と頭痛が注目される理由

鉄は、赤血球のヘモグロビン(酸素を運ぶタンパク)の材料であるだけでなく、脳機能・神経伝達物質合成などにも関与するとされています。鉄欠乏は、疲労感や息切れなどに加えて、頭痛がみられることがあるとWHOも示しています。

ポイント(論文を読む前の前提)

  • 頭痛は「鉄だけ」で説明できる病態ではありません(片頭痛・緊張型・二次性頭痛など多様)
  • 研究の多くは観察研究で、関連は示せても因果は断定できません
  • それでも、慢性頭痛の一部では“見落としやすい要因”として鉄欠乏を評価する価値が議論されています

2. 論文①:慢性連日性頭痛と鉄欠乏性貧血(IDA)

2-1. 研究デザイン

インド(デヘラードゥーン)の三次医療機関で行われた症例対照研究です。慢性連日性頭痛(CDH)患者100名と、年齢・性別を合わせた対照100名を比較しています (Singh et al., 2023)。

定義(論文内)

  • CDH:1か月に15日以上の頭痛が3か月以上
  • IDA:Hb(男性<13、女性<12 g/dL)+TIBC>360、TSAT<10%、血清鉄<30 などの基準 (Singh et al., 2023)

2-2. 主要結果(数字で理解)

項目 結果 解釈のポイント
CDH患者のIDA有病率 51% 対照より多い
IDAとCDHの関連 OR 2.96、p<0.001 “関連あり”を示すが因果は断定できない
重度IDAと頭痛重症度 OR 9.44、p=0.021 重度の鉄欠乏が強い頭痛負担と結びつく可能性

また、ロジスティック回帰ではIDA、TIBC、トランスフェリン飽和度(TSAT)がCDHと独立して関連したと報告されています (Singh et al., 2023)。

2-3. 限界(そのまま鵜呑みにしないために)

  • 単施設研究で、地域・受診者背景に偏りうる
  • 症例対照研究のため、「IDAが原因」か「頭痛の背景(食事/炎症/薬剤など)がIDAを招いた」かは断定不可

臨床的メッセージ
Singh et al. (2023) では「慢性連日性頭痛(CDH)と鉄欠乏性貧血(IDA)は統計学的に有意に関連していた」という結論です。

ただし、研究デザインは症例対照研究なので、因果(IDAが頭痛の原因か/頭痛側の要因でIDAが起きたか)は断定できません。
慢性連日性頭痛の方は、原因精査の一環として鉄欠乏の評価(Hbだけでなくフェリチン等)を検討する価値がある、という方向性が示唆されます。


頭痛が長引く方は、自己判断せず医療機関での評価がおすすめです。いわた脳神経外科クリニックでは頭痛の診療に加えて、必要に応じて血液検査を含む栄養評価のご相談も可能です。



3. 論文②:食事の鉄・フェリチンと片頭痛(NHANES)

米国NHANES(1999–2004)の成人7,880人を用いた横断研究です。質問票「過去3か月に重い頭痛/片頭痛があったか」でアウトカムを定義し、食事の鉄(24時間思い出し法)と血清フェリチンの関連を解析しています (Meng et al., 2021)

3-1. 女性20–50歳:食事の鉄が多いほど“重い頭痛/片頭痛”が少ない傾向

女性20–50歳では、鉄摂取量が多い群ほど重い頭痛/片頭痛のオッズが低い傾向が報告されました。例として、Q5(多い群) vs Q1(少ない群)でOR 0.571(95%CI 0.398–0.819)などが示されています (Meng et al., 2021)

3-2. 女性50歳以上:フェリチンが高いほど“重い頭痛/片頭痛”が少ない傾向

女性50歳以上では、血清フェリチンが高い群ほどオッズが低い傾向が示され、Q5 vs Q1でOR 0.492(95%CI 0.332–0.730)などが報告されています (Meng et al., 2021)

注意点

  • 横断研究のため因果は不明(頭痛がある人の食事が変わっている可能性も)
  • 頭痛は自己申告で、厳密な診断分類ではない (Meng et al., 2021)

4. 論文③:IDAと慢性頭痛は“双方向”に関連?(メタ解析)

観察研究を統合したシステマティックレビュー/メタ解析です(最終検索:2024年8月10日)。合計13研究を統合しています (Rohilla et al., 2025) 。

指標 統合結果 備考
IDA患者における慢性頭痛の有病率 38%(95%CI 15–69%) 研究間のばらつき大(I² 90%)
慢性頭痛患者におけるIDAの有病率 20%(95%CI 10–35%) I² 97%
IDAと慢性頭痛の関連(RR) RR 1.76(95%CI 1.22–2.52) 慢性頭痛のリスクが約76%高い

この論文は「IDA→頭痛」だけでなく、「慢性頭痛の治療(NSAIDs等)→消化管出血など→IDA」の可能性にも触れており、臨床では両方向から評価する発想が重要だと述べています (Rohilla et al., 2025) 。


5. 実践:検査で何を見る?(Hb・フェリチン・TIBC・TSAT)

論文(Singh et al., 2023)では、IDA評価にHbだけでなくTIBCやTSATなど複数指標を使っていました (Singh et al., 2023)。

よく使われる検査の意味(一般向けの整理)

  • Hb(ヘモグロビン):貧血の有無をみる基本指標
  • フェリチン:体内の貯蔵鉄の目安(ただし炎症でも上がることがある)
  • TIBC(総鉄結合能):体が鉄を運ぼうとする“受け皿”の目安
  • TSAT(トランスフェリン飽和度):運搬タンパクがどれだけ鉄で満たされているか

WHOは貧血の症状として、疲労・息切れに加えて頭痛が起こりうることを記載しています。


6. 食事でできること(安全な範囲の工夫)

Meng et al. (2021)では、特に女性20–50歳で「推奨量より鉄摂取が少ない人が多い」ことが示されました (Meng et al., 2021)

食事の工夫(一般的な方向性)

  • 鉄を含む食品(赤身肉、魚、豆類、緑色野菜など)をバランスよく
  • ビタミンCを含む食品と組み合わせると吸収を助けることがある
  • お茶・コーヒー等は鉄吸収を妨げる可能性があるためタイミングを工夫

※具体的な食事指導は個人差が大きいため、必要に応じて医師・管理栄養士にご相談ください。

鉄欠乏の基本

※サプリなどの錠剤を服用する場合、3ヵ月程度に1度、採血などで評価してもらうことを推奨します。

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7. 受診の目安(危険な頭痛のサイン含む)

すぐに受診を検討したいケース

  • 突然の激しい頭痛(経験したことのない痛み)
  • 麻痺・しびれ・ろれつ不良・意識障害・けいれんを伴う
  • 発熱、項部硬直(首が硬い)など感染が疑われる
  • 妊娠中/産後の強い頭痛
  • 頭痛が15日/月以上で3か月以上続く(慢性化)

慢性頭痛の診療では、頭痛のタイプ評価に加え、貧血や鉄欠乏など「背景因子」を確認することが方針決定に役立つ場合があります (Singh et al., 2023; Rohilla et al., 2025)


頭痛予防・栄養療法のご相談は、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。お問い合わせは、下記から可能です。

 



8. よくある質問(FAQ)

Q1. 鉄欠乏性貧血があると、頭痛が起こりやすいのですか?

A. 「起こりやすい可能性がある」という“関連”が複数研究で示されています。症例対照研究ではIDAが慢性連日性頭痛と関連(OR 2.96)し、メタ解析でもIDAが慢性頭痛リスク1.76倍と報告されています (Singh et al., 2023; Rohilla et al., 2025)。

Q2. 血液検査では何を見れば「鉄欠乏」が分かりますか?

A. Hbだけでなく、フェリチンやTSATなど複数項目の評価が重要です。研究でもTIBC・TSAT等を組み合わせてIDAを評価しています (Singh et al., 2023)。

Q3. 食事の鉄を増やせば、片頭痛は減りますか?

A. 女性20–50歳では、食事の鉄摂取が多いほど重い頭痛/片頭痛が少ない“傾向”が報告されています。ただし横断研究であり、自己申告の頭痛である点など限界があります (Meng et al., 2021)。

Q4. 鉄サプリは自己判断で始めても良いですか?

A. 鉄欠乏の背景には出血や疾患が隠れていることがあり、また過不足の問題もあります。個人差が大きいため、専門医との相談をお勧めしますが、個人での購入も可能です。


9. まとめ

本記事の要点

  • IDAと慢性頭痛・片頭痛には関連が報告されている (Singh et al., 2023; Rohilla et al., 2025)
  • 女性20–50歳では、鉄摂取が多いほど重い頭痛/片頭痛が少ない傾向 (Meng et al., 2021)
  • ただし研究の限界(観察研究・自己申告・施設偏り)から“鉄で頭痛が治る”とは断定できない
  • 慢性頭痛では、頭痛タイプ評価に加えて、Hbだけでなくフェリチン等を含む鉄評価を検討する価値がある

改めてご確認ください(重要事項)

  • 本記事は診断・治療を目的とするものではありません
  • サプリメントは医薬品ではありません
  • 症状が強い場合や長引く場合は、医療機関での評価が優先です

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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参考文献

  1. Singh, R.K., Kaushik, R.M., Kaushik, R. and Goel, D. (2023) ‘Association between iron deficiency anemia and chronic daily headache: A case-control study’, Cephalalgia, 43(2), 3331024221143540. doi: 10.1177/03331024221143540. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36739514/ (Accessed: 14 January 2026).
  2. Meng, S.-H., Zhou, H.-B., Li, X., Wang, M.-X., Kang, L.-X., Fu, J.-M., Li, X., Li, X.-T. and Zhao, Y.-S. (2021) ‘Association Between Dietary Iron Intake and Serum Ferritin and Severe Headache or Migraine’, Frontiers in Nutrition, 8, 685564. doi: 10.3389/fnut.2021.685564. Available at: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8289886/ (Accessed: 14 January 2026).
  3. Rohilla, S., Bushi, G., Khatib, M.N., Ballal, S., Bansal, P.B., Tomar, B.S., Ashraf, A., Kumar, R.M., Sinha, A., Rawat, P., Gaidhane, A.M., Sah, S. and Shabil, M. (2025) ‘The Bidirectional Relationship Between Iron Deficiency Anemia and Chronic Headache Disorders: A Systematic Review and Meta-Analysis’, Anemia, 2025, Article ID 5695022. doi: 10.1155/anem/5695022. Available at: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1155/anem/5695022 (Accessed: 14 January 2026).
  4. World Health Organization (2025) ‘Anaemia’. Available at: https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/anaemia (Accessed: 14 January 2026).
  5. 厚生労働省 (n.d.) 「医薬品等の広告規制について」. Available at: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html (Accessed: 14 January 2026).