赤ちゃんの頭のゆがみに悩んで、ヘルメット治療を検討している。
でも「ヘルメット治療を終えたあと、また頭がゆがむことがあるのだろうか」と不安になった。
——そんな経験、ありませんか?
大切な赤ちゃんのこと、失敗したくないですよね。
この記事では、ヘルメット治療後に“頭の形がまた戻る”のか?(=再発するのか?)という、
多くの保護者が感じる疑問に対し、2025年の医学研究(Kato et al. 2025)をもとにやさしく解説します。
結論から言うと、「ほとんど再発しません」
この研究では、乳児期にヘルメット治療を受けた中等度〜重度のDPの赤ちゃんを対象に、治療終了から1歳になるまでの頭の形の自然な変化(経過)を明らかにすることを目的としました。
ヘルメット治療を受けた赤ちゃん32人を対象に、
「治療後の頭のかたちは1歳までに再びゆがむのか?」を調べました。
その結果——
ヘルメット治療終了後から1歳までの自然な経過の中で、頭蓋のゆがみが悪化するケースはごくわずかであることが示されました。
大多数の赤ちゃんは「治療後の状態をキープ」できていたのです。
方法
この研究には、2022年12月から2023年7月の間に、日本大学板橋病院の小児科を受診し、ヘルメット治療を開始した中等度から重度の変形性斜頭をもつ乳児32人が参加しました。
頭の形状は、3Dスキャナー(VECTRA® H2)を用いて、治療開始時・治療終了時・1歳時に評価されました。
指標として、頭のゆがみの程度を表す「頭蓋非対称指数(CVAI)」の変化量(∆CVAI)と、ゆがみの重症度(正常・軽度・中等度・重度・最重度)の変化を、治療終了時から1歳時点で比較しました。
▶ Study 1:CVAI(数値)の変化を評価
治療開始時(T1)、終了時(T2)、1歳時点(T3)のCVAIを測定
各時点間の変化量(∆CVAI)を計算し、統計的に有意な差があるかをフリードマン検定で検討
※統計ソフト「JMP(Ver.17.2.0)」を使用
▶ Study 2:重症度分類の変化を評価
治療前→治療後(T1→T2)、治療後→1歳時点(T2→T3)で、ゆがみの重症度(正常〜最重度)にどのような変化があったかを分析
使用されたヘルメット
使用機器:ベビーバンド2(医療機器承認番号:30400BZX00252000)
製造元:株式会社ベリーメディカル
治療方針:入浴や体調不良時以外はできる限り長時間(1日20時間以上)装着
通院頻度:約1か月ごとに通院し、皮膚トラブルや装着のフィット感をチェック
終了基準:ヘルメットが狭くなったとき、もしくは保護者が満足した時点で治療終了
CVAIとは
頭の対角線の長さの差を計算し、短い方で割った値がCVAIになります(単位は%)
※国際的にはCVAI>3.5%が「変形あり」とされていますが、日本では5%未満を正常とする文献が多いため、この研究では5%を基準としました。
結果
表:治療前、治療後、1歳時におけるCVAIの比較
ヘルメット治療前(T1)と治療後(T2)の比較
治療前から終了まで(T1→T2):CVAIは平均6.3%改善(中~重度から、ほぼ正常になりました; p<0.05)
治療後はすべての赤ちゃんが中等度以下に改善
約8割が正常(CVAI<5%)にまで改善しました
治療後(T2)と1歳時点(T3)の比較
治療後から1歳まで(T2→T3):CVAIの変化は0.3%と非常にわずか(治療後から1歳児までの統計的な変化はない;p=0.26)
改善:1人(中等度→軽度)
変化なし:28人(23人=正常、3人=軽度、2人=中等度)
悪化:3人(正常→軽度が2人、軽度→中等度が1人)
→ 再び重度化した例はゼロ
考察
この研究の結果は、ヘルメット治療が終了したあと、1歳までの間に頭のゆがみ(変形性斜頭)が大きく悪化することはほとんどないことを示しています。
約80%の赤ちゃんが、ヘルメット治療で「正常」まで改善し、その後も1歳時点まで維持されました。
逆に悪化が見られた3人も、中等度〜軽度の範囲内で、再治療の必要はないケースです。
実際、CVAI(頭の非対称指数)の変化は最小限にとどまりました。
ヘルメット治療の結果、CVAIは10.5% → 4.2%に改善。
これは、中等度〜重度の頭のゆがみが、正常〜軽度まで改善したことを意味します。
さらに重症度別に見ると:
最重度の赤ちゃん:CVAIが平均9.1%改善
重度の赤ちゃん:6.6%改善
中等度の赤ちゃん:4.4%改善
→ 重症ほど効果が高い傾向
また、治療後から1歳までの変化は平均0.3%とわずかで、他の研究(Aarnivala et al. 2016)とも一致しており、生後後半になると頭のかたちは安定してくることが示されました。
なぜ悪化した子がいたのか?
悪化した3人はすべて正期産児で、1歳の時点でつかまり立ちやハイハイができており、運動発達に遅れは見られませんでした。
ただし症例数が少ないため、「なぜ悪化したのか」は明確には言えません。
ただし傾向としては:
治療が早めに終了していた(6〜9か月)
治療終了後の「寝かせ方」や「生活環境」の影響も考えられる
→ より多くの症例を集めた研究が必要と述べられています。
ヘルメット治療後の家庭での工夫
DP(変形性斜頭)は、外的な圧力で起こるものです。
そのため治療後も、同じ姿勢で寝かせ続けないように工夫することが大切です。
特に:
大泉門(頭の柔らかい部分)が閉じる1〜1.5歳までは注意が必要
動きが出てきたら、自然な体の向きで生活させてOK
→ 治療後も“寝かせ方”に配慮することで再発リスクを下げられると助言しています。
まとめ
今回の研究では、「見た目の戻り」が起こるのはごくわずかで、
しかも重症化した例はゼロ。つまり、
「ヘルメット治療=失敗するもの」とは言いきれない
→ むしろ、多くの赤ちゃんで確かな効果と持続性があった
というのが医学データに基づいた結果です。
「失敗したらどうしよう」と不安に思うのは、本気で赤ちゃんのことを考えている証拠。
だからこそ、信頼できるデータや医師の言葉に基づいて、納得できる選択をしてほしいと思います。
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ヘルメット治療は、正しく使えば「将来の安心」を手に入れるための手段です。
もし不安があれば、遠慮なく専門医に相談してみてくださいね。
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参考文献
Kato R. et al. Natural Progression of Cranial Shape Following Helmet Therapy for Deformational Plagiocephaly. J Clin Med. 2025;14(2):357.
https://doi.org/10.3390/jcm14020357
Aarnivala, H.; Vuollo, V.; Harila, V.; Heikkinen, T.; Pirttiniemi, P.; Holmström, L.; Valkama, A.M. The course of positional cranial deformation from 3 to 12 months of age and associated risk factors: A follow-up with 3D imaging. Eur. J. Pediatr. 2016, 175, 1893–1903.
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