こんにちは。大阪で『赤ちゃんの頭のかたち外来』を行っているいわた脳神経外科クリニックです。

今回はヘルメット治療に関する治療成績をご紹介いたします。

 

はじめに

 

1992年、米国小児学会は乳幼児突然死症候群(SIDS)を予防するために、赤ちゃんを仰向けに寝かせることを推奨しました。

しかし、この勧告により、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生率は低下しましたが、同時に赤ちゃんの頭が片側に平らになる位置性斜頭症(いちせいしゃとうしょう)の発生率が急増しました。

推奨以前は、0.3%だった位置性斜頭症の発生率が48%にまで上昇しました。

 

位置性斜頭症のリスクと合併症

 

位置性斜頭症は、頭の片側が平らになる状態で、軽症の場合は自然に治ることもありますが、重症になると自然治癒は難しく、早期の治療が必要です。

さらに、重症例では以下のような合併症が発生する可能性があります。

  • 頭痛斜視の発症
  • 中耳炎のリスク増加
  • 精神運動発達の遅れ
  • 咀嚼時の歯並びの乱れ

これらの合併症が発生するリスクを軽減するために、早期の治療が推奨されており、効果的な治療法としてヘルメット療法が用いられています。

 

ベビーバンド2によるヘルメット療法の効果

 

位置性斜頭症の治療で特に効果が高いとされるのがベビーバンド2です。

この治療では、CVAI(頭蓋の非対称性指数)という数値を使って、治療前後の頭の形を測定します。

この数値は、頭の左右のバランスを表しており、数値が小さくなるほど頭の形が改善されていることを示します。

 

 

以下に、ある研究での治療成績を紹介します。

研究では中程度以上の位置性斜頭症を持つ224人の赤ちゃんに対して、ベビーバンド2を使った治療が行われました。

 

 

  • 最重症群:CVAIが-9.1改善
  • 重症群:CVAIが-6.6改善
  • 中等症群:CVAIが-4.4改善

治療前と後で、3Dスキャナーを使って頭の形を測定し、CVAIという指標で変化を分析した結果、全ての赤ちゃんで頭の形が大きく改善されたことが確認されました。

特に、症状が重い赤ちゃんほど改善が顕著に表れています。

これらの結果は、ベビーバンド2が頭の形状を効果的に矯正できる治療法であることを裏付ける結果となりました。

 

ヘルメット治療開始時期による治療効果の違い

 

ベビーバンド2によるヘルメット療法は生後4~6カ月での治療開始を推奨しています。

開始時期による治療効果の違いはというと、やはりグラフのように、生後7ヵ月以前に治療を開始した赤ちゃんの方が、より大きな改善を示す結果となっています。

 

 

しかし、生後7ヵ月以降に治療を開始した赤ちゃんでも、軽症まで改善するという、有意な治療効果が見られていました。

データからも、可能であれば生後7ヵ月以前に治療を始めることが推奨されますが、遅れても治療効果が期待できるため、早めの治療開始が望ましいです。

 

ベビーバンド2の安全性

 

治療の安全性についても重要なポイントかと思います。

ベビーバンド2によるヘルメット療法は、治療期間中に赤ちゃんの頭囲の発育を阻害しないことが確認されており、成長に悪影響を与えないことがわかっています。

また、副作用として皮膚の赤みが5例(全体の2.2%)報告されていましたが、深刻な問題には至らず、安全性が高い治療法であると言えます。

 

治療期間について

 

これまでの報告では、治療期間が様々で、平均6.3ヵ月 (参考文献1)、約3~6ヵ月(参考文献2) 、平均21.2週間(標準偏差5.3週)(参考文献3)、平均4.3ヵ月(参考文献4)、平均22.4週間(標準偏差6.0週)(参考文献5)と報告されていました。

 

しかし、ベビーバンド2は以下のデータのように平均3.5ヵ月という短期間での治療が可能です。

 

 

 

治療期間が短いことで、赤ちゃんやご家族への負担も軽減されます。

 

男女間での治療効果の差

 

また、男女間で治療効果に差は見られないことも確認されています。

性別による頭蓋骨の成長に違いがないため、ベビーバンド2は男の子・女の子問わず、同様の効果が期待できます。

 

 

ベビーバンド2は効果的で安全な治療法

 

 

ベビーバンド2によるヘルメット療法は、位置性斜頭症に対して非常に効果的で、安全性も高い治療法だとデータからも証明されています。

特に、症状が重い赤ちゃんほど大きな改善が見られ、治療開始が遅れても十分な効果が期待できることもわかりました。

また、治療期間がこれまでのデータより短く、赤ちゃん・ご家族ともに負担が少ないこともメリットの一つといえるでしょう。

位置性斜頭症の治療を検討しているご家族にとって、ベビーバンド2は安心して選択できる治療法であり、赤ちゃんの健康な成長を支える有力な手段となるかと思います。

 

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当院では治療結果に基づく信頼性の高いケアを提供しておりますので、

赤ちゃんの頭の形について気になる方、まずはお気軽に当院までご相談ください。

 

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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