エムガルティ治療を複数回受けると片頭痛がどう変わるのか?

 

片頭痛の治療には、エムガルティ(抗CGRPモノクローナル抗体)という薬が効果的であることが知られていますが、1回の治療で病気の進行が止まるわけではありません。そこで、複数回治療を受けた場合に片頭痛がどのように変化するのかを調べた研究があります。

 

 

研究の目的

この研究では、CGRP製剤による治療を12か月連続で1クールとして2クール以上行った後、治療を中止した場合に片頭痛が再発するかどうかを調査しました。特に、1クール目の治療後と2クール目の治療後で、片頭痛の再発率や症状の変化を比較しました。

 

 

研究の方法

片頭痛が頻繁に起こる患者さんや慢性的な片頭痛に悩む患者さんが、CGRP製剤による治療を12か月間続け、その後治療を中止しました。そして、治療を中止してからの1か月間にわたって、片頭痛の回数や痛みの強さ、日常生活への影響などを評価しました。

 

 

研究結果

  • 片頭痛の回数と症状: 2回目の治療を終えた患者さんは、1回目の治療後よりも片頭痛の回数が減り、痛みも軽くなっていました。
  • 鎮痛薬の使用: 2回目の治療後は、鎮痛薬を使う頻度も減少し、片頭痛による日常生活への影響も軽減されました。
  • 再発率: 2回目の治療後に片頭痛が再発する率は、1回目の治療後よりも低くなりました。特に、エピソード性片頭痛(時々起こる片頭痛)から慢性片頭痛への進行や、薬物乱用頭痛への再発も少なくなりました。

 

EM:発作性片頭痛

CM:慢性片頭痛

 

考察と結論

この研究から、CGRP製剤を用いた治療を複数回行うことで、片頭痛の症状が徐々に改善されることが分かりました。2回目の治療後では、片頭痛が再発する可能性が低く、日常生活への影響も少なくなっています。これにより、エムガルティ治療を継続的に行うことが、片頭痛の進行を効果的に抑える可能性があると示唆されています。

患者さんにとって、片頭痛の予防治療を続けることで、より良い生活が送れる可能性が高くなるでしょう。

 

 

 

参考文献

抗CGRPモノクローナル抗体による複数サイクルの治療が片頭痛の経過に及ぼす影響:中止期間に焦点をあてて。多施設共同前向きI-GRAINE試験からの知見

J Neurol. 2024 May;271(5):2605-2614.

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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