頭痛に悩まされる時、ロキソニンが有効ではない場合、選択肢を見つけることが重要です。
頭痛治療薬には、さまざまな種類や成分の医薬品が存在し、それぞれが異なる作用機序を持っています。特にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、頭痛治療において一般的に使用されるカテゴリーです。この記事では、カロナール、イブプロフェン、ロキソニン、ボルタレン、ナイキサン、インフリーなど代表的なNSAIDsを取り上げ、それぞれの特徴や効果、副作用などを比較検討します。様々な観点から、ロキソニン以外の選択肢について詳細に解説していきます。
頭痛治療薬の種類
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)とは
NSAIDsは、炎症を抑えるために使われる薬であり、頭痛治療に一般的に使用されます。片頭痛の急性期治療薬には、トリプタン(イミグラン、アマージ、ゾーミッグ、マクサルト、エレトリプタン)やレイボーも有効な治療ですが、今回はNSAIDsの解説を行います。
NSAIDsとは、非ステロイド性の消炎鎮痛薬(Non-Steroidal Anti- Inflammatory Drug)のことです。
これは、体の中で炎症や痛みを引き起こす物質(プロスタグランジン)の作られ方を抑える薬です。特に、プロスタグランジンE2(PGE2)という物質が痛みや炎症を強くするのですが、NSAIDsはこのPGE2の作られる量を減らすことで、痛みを和らげたり、熱を下げたり、炎症を抑えたりします。
英語綴りの頭文字からNSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれることもあります。
NSAIDsは、いわゆる「痛み止め」です。この薬だけでは頭痛をコントロールできませんが、痛みをコントロールして日常生活を送りやすくするには有効です。多数の製剤があることが特徴です。
カロナール(アセトアミノフェン)
アセトアミノフェンは、NSAIDsとは違うタイプの頭痛薬になります。市販薬にも含まれよく使用される薬ですので、今回NSAIDsと比較しながら解説します。
アセトアミノフェンは1873年に初めて合成され、臨床応用が開始されてから100年以上にわたり世界中で使用されている薬剤です。消化性潰瘍や腎障害などの副作用が少ないため、他のNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と比べて安全性が高いとされ、解熱鎮痛剤として医療用および一般用医薬品として広く使用されています。特に小児、妊婦、高齢者などに対しても安全に使用でき、頭痛治療において重要な薬剤です。
作用機序
アセトアミノフェンは解熱作用と鎮痛作用の2つの効果を持っています。その作用機序は完全には解明されていませんが、以下のような働きが考えられています:
- 解熱作用:脳の視床下部にある体温中枢に作用し、末梢血管を拡張して体外に熱を逃がす(熱放散)ことで体温を下げます。
- 鎮痛作用:体内で発熱や痛みを引き起こすプロスタグランジン(PG)の生成を抑える酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)を脳で阻害します。また、TRPV1受容体を活性化し、疼痛閾値を上昇させることで痛みの信号を抑制します。
他の鎮痛薬との違い
- NSAIDsと比較して、アセトアミノフェンはCOX-1やCOX-2の阻害作用がほとんどないため、抗炎症作用は弱いです。
- 胃粘膜障害や腎障害、出血傾向などの副作用が少ないです。
- 血小板凝集作用がないため、アスピリンのような血液凝固のリスクがありません。
【臨床試験】
無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、アセトアミノフェンがプラセボよりも片頭痛の治療において有効であることが示されています。2時間後の頭痛反応率や無痛率で有意に優れ、痛みの強度、機能障害、光過敏症、音過敏症も改善しました。
アセトアミノフェンの副作用と注意点
アセトアミノフェンは副作用が少ないですが、大量に服用すると肝機能障害が発現する可能性があります。長期投与する場合は、定期的に肝機能を確認する必要があります。また、市販薬にはアセトアミノフェン以外の成分が含まれている場合があるため、注意が必要です。
各タイプのNSAIDsの特徴
イブプロフェン
NSAIDsの中でも、プロピオン酸系は小児に最も使用されている安全性の高い薬である。アセトアミノフェンと同様に国際的にも小児への使用が推奨されている。
【臨床試験】
イブプロフェンはプラセボとの RCT(ランダム化比較試験) で,服用2時間後の頭痛改善率は 40 〜 70 %と報告されています。
ナイキサン
ナプロキセン(ナイキサン)は半減期が14時間と長いため、持続時間の長い頭痛に使用を考慮されます。
海外での片頭痛に対する効果が豊富です。
アメリカで、スマトリプタン・ナプロキセン複合錠がFDAにより認可され、小児片頭痛に使用されている。
トリプタンだけでは充分な効果が得られない場合にはNSAIDsを併用することをおすすめします。NSAIDsを選ぶ場合も薬物動態を考慮する必要があります。すなわち、Tmaxの短いマクサルトを使用する場合は、T1/2の長いNSAIDs(ナイキサン)、比較的Tmaxの長いアマージを使用する場合はTmaxの短いNSAIDs(ロキソニン)を併用することにより、速い効き目と、頭痛の再燃の予防が期待できます。また、片頭痛発作中には胃の運動が停滞しているため、制吐薬(ナウゼリン)の併用することにより、片頭痛治療薬の吸収を早めることと、片頭痛発作に伴う悪心・嘔吐を予防できる可能性があります。
またナイキサンは頭痛の急性期治療薬としてだけでなく、予防薬としての効果も報告されています。頭痛の予防効果とは、頭痛の強さや頻度を減らし、鎮痛剤の内服回数も減らせることができます。
ボルタレン(ジクロフェナク)
中等度の片頭痛に有効です。保険診療で適応外使用を認められています。強い鎮痛効果が特徴です。
ボルタレン錠、ボルタレンSR、ボルタレンサポと様々な剤型があります。痛みが改善するまでの時間や効果の持続に違いがあります。
インドメタシン(インフリ―)
強力な鎮痛作用を有する。COX-1阻害作用が強いため、胃腸障害を起こしやすい。難治性の頭痛に対して使用する。片頭痛以外にも咳嗽精頭痛、運動時頭痛、持続性片側頭痛、発作性片側頭痛にも著効する。
ロキソニン
プロドラッグタイプの薬になります。プロドラッグとは、飲んでも刺激が少なく、肝臓で代謝を受けてからはじめて効果が現れるタイプの薬です。胃の粘液への影響は、ほかの非ステロイド性抗炎症薬より少なくてすみます。そのため、あまり副作用が少ないと考えられています。鎮痛効果としては、即効性があることが特徴です。
NSAIDsの副作用
1.胃腸障害、腎機能障害
胃腸障害などの副作用が起こる場合があります。副作用を防ぐために、胃薬の併用、決められた以上の量は飲まない、などは必ず守りましょう。また、腎臓の血流が悪くなって腎障害が起こったり、アスピリン喘息といった呼吸器の副作用にも注意が必要です。
2.脳卒中、心疾患のリスク
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)には、痛みや炎症を抑える効果がありますが、心血管イベント、つまり心臓や血管に関連する副作用のリスクがあることが知られています。これには、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが含まれます。
具体的には、NSAIDsは血管を収縮させたり、血液が固まりやすくなる状態を引き起こすことがあり、その結果、心臓や脳の血流が妨げられる可能性があります。特に、長期間にわたって高用量を服用する場合や、もともと心臓や血管に問題がある方は、このリスクが高くなることが報告されています。
そのため、NSAIDsを使用する際には、心血管リスクがあるかどうかを医師とよく相談し、必要最低限の量と期間で使用することが推奨されます。また、既に心血管疾患のある方や、高血圧、糖尿病などのリスク因子を持つ方は、他の治療法を検討することも大切です。
病院へ行くべき症状
頭痛は脳の病気が原因で緊急性を要する場合があります。該当する場合は頭痛外来を受診しましょう。
受診すべき頭痛
- 痛み止め(頭痛薬)が効かない頭痛
- 原因がわからない頭痛
- 繰り返す頭痛
- いつもと違う頭痛
- 生活に支障のある頭痛
- 普段頭痛にならない方の頭痛
- 頭痛以外にも症状がある(めまい・ふらつき、吐き気)
頭痛治療の専門的な知識・技術を持った医師が脳と身体の両方から頭痛に向き合い、症状や要望に合わせて診療しています。
日々の頭痛を根本的に解決したい方は、大阪市城東区にある「いわた脳神経外科クリニック」にご相談ください。
まとめ
いわた脳神経外科クリニックでは、安全性が高く持続時間が長く、予防効果の報告もあるナイキサンを第一選択とすることが多いです。鎮痛効果が弱い場合には、ボルタレンやインフリ―を検討します。
頭痛治療薬の選択には慎重さが求められます。効果や副作用、適切な使用方法について注意深く比較検討し、医師との相談を大切にすることで、より適切な治療が行えるでしょう。片頭痛に悩む患者さんにとって、最適な選択肢を見つけるために、この検討が参考になることを願っています。
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