年を重ねるとみられる頬のコケや顔のたるみなどの顔の老化のサインは、肌の弾力性が低下して起こると捉えられてきましたが、実は顔の骨密度が関係しています。顔の骨密度は骨粗鬆症によって減少するため、適切な対策が必要です。本記事では顔の老化のサインと骨粗鬆症の関係について、さらに、普段の生活に取り入れられる対策をお伝えします。

 

顔にみられる老化のサインと骨粗鬆症

骨粗鬆症は、骨密度の減少にともない、骨の強度が低下して骨がもろくなる状態です。骨粗鬆症になると、転倒して尻もちをついた際に、痛みをそれほど感じないままに脊椎の圧迫骨折を起こすことも少なくありません。1)

 

 

骨粗鬆症は骨が弱くなって骨折しやすくなるというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実は、頬のコケやたるみなどの顔の老化にも関係していると考えられています。

 

頬のコケや顔のたるみの要因は骨にもあった

 

 

頬のコケや顔のたるみなど、顔が老けた印象になるのは、肌の弾力性が失われるためと考えられてきました。しかし、最近では、顎の骨のボリュームが減少することで、顔の下部の靭帯や筋肉、皮膚などの軟部組織を支えにくくなり、顔全体のたるみや頬のコケにつながると言われています。2)顔の印象は、肌の土台となっている顔の骨密度が関係しているのです。

 

 

研究によると、顔の骨の骨密度は脊椎と同様に減少し、特に顔の骨の骨密度の減少は脊椎よりも若い年齢でみられます。脊椎の骨密度の減少は61歳以上の高齢層でみられるのに対し、顔の骨密度の減少は40代から始まっていることが示されました。2)

 

イェール大学の研究者によると、皮膚と骨は同じたんぱく質から構成されており、顔のしわなどの皮膚の変化から骨密度の低さがわかるといいます。3)それほど顔のたるみや頬コケなどのサインと骨密度が密接に関係しているのです。

 

顔の老化を引き起こす骨粗鬆症と女性ホルモンの関係

顔の老化を引き起こす骨粗鬆症は、男女ともに起こり得ますが、とくに女性に多くみられるのは、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量の変化が関係しています。エストロゲンは20代~30代をピークに徐々に減少し始めます。4)

 

骨の新陳代謝を調整しているエストロゲンが減少すると、破骨細胞(骨を分解する細胞)の活動が増加し、骨代謝において新しい骨の形成が追いつかなくなって骨粗鬆症が引き起こされるのです。5)

 

特に、閉経時期を迎えると、エストロゲンが急激に低下し、骨粗鬆症になるリスクが高まります。骨粗鬆症により減少した骨量を再び増やすことは難しく、日本人の平均閉経時期である50歳前後を迎える前に対策を取っておくことが必要です。6)

 

骨粗鬆症で顔の骨密度が減少する前にできる対策

骨を強化し、骨密度の低下を予防するためには、若いころからの食事・運動・日光浴に配慮した生活習慣が大切です。骨を丈夫に保つために避けたいポイントもお伝えしていきます。

 

骨密度を増やす食事

骨密度を増加させる栄養素には、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどがあります。

 

カルシウム

カルシウムは骨の主要な構成成分であり、骨密度を維持するために欠かせないミネラルです。以下の食品に多く含まれています。(括弧内は1食あたりに含む目安量を記載)

  • 普通牛乳(220mg)
  • 木綿豆腐(180mg)
  • ししゃも干し物・焼き(149mg)
  • ひじき・ステンレス釜茹で(140mg)

7)

 

ビタミンD

骨量の維持に重要な栄養素です。カルシウムと一緒に摂ることで腸管からのカルシウムの吸収率がよくなります。ビタミンDを含む食品を摂取し、日光を浴びることで活性化します。(括弧内は1食あたりに含む目安量を記載)

  • 紅鮭・焼き(30.2mg)
  • うなぎ・かば焼き(15.2mg)
  • さんま・焼き(13.0mg)
  • きくらげ(11.4mg)

8)

 

ビタミンK

ビタミンKはカルシウムを沈着させ、適切な骨の形成をサポートする栄養素です。1)おもに以下の食材を取り入れることで摂取できます。(1食あたりに含む目安量を記載)

  • ほうれん草・ゆで(256μg)
  • 小松菜・ゆで(256μg)
  • 納豆(240μg)
  • 春菊・ゆで(230μg)
  • だいこん葉・ゆで(170μg)

9)

 

骨の形成を促進する運動

骨に圧力がかかる適度な運動の刺激は骨の形成を促進させます。6)運動不足は骨密度を低下させるので次のような運動を取り入れましょう。運動で足腰を鍛えることで転倒による骨折リスクの予防にもなります。

  • 散歩
  • 階段昇降
  • スクワット(大腿四頭筋など骨盤周りの筋肉)、つま先立ち(下腿三頭筋)などの筋力トレーニング

 

骨を丈夫にするための日光浴

日光浴はカルシウムの吸収をサポートするビタミンDが合成されます。

ベランダに出たり、散歩に出かけたりして日光を浴びましょう。手や足に30分~1時間程度、陽の光を浴びるだけでも効果が期待できます。6)15分ずつなど、1日のうちに何回か分けて日光浴をするのもよいでしょう。外出時は紫外線対策を行い、日焼けが気になる場合は手のひらを日光浴するのもおすすめです。

 

骨を健康に保つために避けたいポイント

カルシウムの吸収を悪くする喫煙、カフェイン、アルコール、インスタント食品やお菓子に含まれるリンの過剰摂取は避けましょう。6)

 

過度なダイエットや食事制限は、栄養バランスが悪くなり、骨の健康を維持するための栄養素が不足しがちになります。また、無理なダイエットや激しい運動は無月経を起こし、エストロゲンの分泌が減少して骨密度が低下します。3ヶ月以上の無月経がある場合は婦人科を受診し、無月経の原因および骨粗鬆症の程度を確認しましょう。10)

 

骨粗鬆症で顔の老化のサインが現れる前に対策を

骨粗鬆症で骨密度が低下するのは脊椎や大腿骨などの身体の骨だけではありません。顔の骨密度も低下し、顎の骨が萎縮して顔のたるみや頬のコケにつながります。

骨量が減少してからでは骨を増やすことはできません。骨粗鬆症は女性ホルモンのエストロゲンの減少が関係しており、20~30代をピークに減少していきます。若いうちから骨を丈夫に保つための対策を取り、骨密度の減少も顔の老化も予防しましょう。

 

参照リンク

1)厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト 事務局(厚生労働省 健康局 健康課)|骨活のすすめ 骨活はなぜ必要なの?

https://www.smartlife.mhlw.go.jp/event/honekatsu/

2)Robert B Shaw Jr et al  Facial bone density: effects of aging and impact on facial rejuvenation Aesthet Surg J. 2012 32(8)937-42

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23012659/

3)Yale School of Medicine Not Just Skin and Bones: Wrinkles Could Predict Women’s Bone Fracture Risk.

https://news.yale.edu/2011/06/06/not-just-skin-and-bones-wrinkles-could-predict-women-s-bone-fracture-risk

4)厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト 女性はライフステージごとに女性ホルモンが大きく影響する?!

https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/lifestage.html

5)東 浩太郎 骨粗鬆症発症のメカニズム 日本老年医学会雑誌 2019 56(2)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/56/2/56_56.116/_pdf

6)日本内分泌学会 閉経後骨粗鬆症

https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=51

7)国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所|カルシウムの供給源になる食品

8)国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所|ビタミンDの供給源になる食品

9)国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所| ビタミンKの供給源になる食品

10)岡山大学|月経不順と骨粗しょう症

https://www.cc.okayama-u.ac.jp/~funin/funinfuiku_hp/sishunki%20topics3%20osteoporosis.html

 

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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