【結論】高血圧の薬「カンデサルタン」に片頭痛を予防する効果があるとするメタ解析が報告されました。効果は中等度で、日本では片頭痛に対しては“適応外”である点に注意が必要です。予防の選択肢は複数あり、自分に合うものは医師と相談して選ぶことが大切です。
1. 注目の研究: 降圧薬カンデサルタン(ARB)に片頭痛の予防効果があるとするメタ解析が2026年に報告されました(Riise ほか 2026)。
2. 効果の大きさ: 4試験・計659人を統合すると、月間の片頭痛日数は平均で約1日、頭痛日数は約1.2日減少。50%以上改善する人はプラセボの約2.7倍でした(Riise ほか 2026)。
3. エビデンスの質はばらつく: 頭痛日数の減少は確実性「高」、片頭痛日数は「低」、改善割合は「中」と評価されています。効果は中等度で、過度な期待は禁物です。
4. 日本では“適応外”: カンデサルタンは高血圧の薬として承認されており、片頭痛予防は適応外使用(原則保険適用外)です。自己判断での使用はできません。
5. 当院でできること: いわた脳神経外科クリニック(大阪市城東区・京阪「野江」駅徒歩4分)では、片頭痛の予防治療のご相談に対応しています。あなたに合った予防法を医師と一緒に検討します。
※ 本記事は2026年6月時点の情報です。薬の使用や中止は必ず医師にご相談ください。本記事には適応外使用に関する情報が含まれます。
大切なお知らせ
本記事はカンデサルタンと片頭痛予防に関する一般的な情報の整理を目的としており、特定の薬の使用を推奨したり、診断・治療効果を保証したりするものではありません。効果や副作用には個人差があり、薬の適否は一人ひとりの状態によって異なります。本記事には日本では承認されていない使い方(適応外使用)に関する情報が含まれます。薬の開始・変更・中止は自己判断で行わず、最終的な判断は必ず医師にご相談ください。
「血圧の薬が、片頭痛の予防に効く?」——そんなニュースを目にして、不思議に思った方もいるかもしれません。実は2026年、高血圧の治療薬であるカンデサルタンに片頭痛の予防効果があるとする研究を統合した「メタ解析」が、頭痛専門の国際誌に報告されました(Riise ほか 2026)。降圧薬と片頭痛——一見すると無関係に思えるこの組み合わせは、実は20年以上前から研究が続いてきたテーマです。本記事では、この研究で何がわかったのか・どのくらいの効果なのか・何にはまだ注意が必要かを、脳神経外科専門医の視点でできるだけ正確に、わかりやすく整理します。
目次
1. カンデサルタンとは?なぜ片頭痛予防で注目されるのか
カンデサルタンは、もともと高血圧の治療薬として広く使われている薬です。「ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」という種類に分類され、血管を収縮させる体内の物質(アンジオテンシンII)の働きをブロックすることで、血圧を下げます。日本でも長年使われてきた、なじみのある降圧薬のひとつです。
この降圧薬が片頭痛予防の文脈で注目されたきっかけは、2003年にさかのぼります。ノルウェーの研究グループが、片頭痛のある60人を対象にした臨床試験で、カンデサルタンが頭痛や片頭痛の日数を減らしたと報告しました(Tronvik ほか 2003)。その後も2014年にはカンデサルタンと別の予防薬(プロプラノロール)を比較した試験が行われ(Stovner ほか 2014)、2025年には457人を対象とした大規模な臨床試験で、1日16mgのカンデサルタンが片頭痛の日数をプラセボより有意に減らした(両群の差は約1.2日)と報告されました(Øie ほか 2025)。こうして20年以上にわたり、研究が積み重ねられてきたのです。
カンデサルタンの基本
- 本来の用途: 高血圧の治療(血圧を下げる薬)。
- 薬の種類: ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)。
- 片頭痛との関係: 予防効果が複数の研究で示されてきた。ただし、なぜ効くのかは完全には解明されていません(血管や炎症、神経への作用などが考えられています)。
2. 2026年のメタ解析でわかったこと
2026年に報告されたのは、これまでのカンデサルタンなどの臨床試験を集めて統合的に分析した「メタ解析」です(Riise ほか 2026)。1つの試験だけでなく複数の試験をまとめることで、より信頼性の高い結論を導こうとする手法です。今回は4つの臨床試験・合計659人(うちカンデサルタンの試験が575人)が統合されました。
2-1. 主な結果
主な結果は次の通りです。「プラセボ(効果のない偽の薬)」と比べて、頭痛・片頭痛の日数がどれだけ減ったかを示しています。
| 評価項目 | 結果(プラセボとの比較) | エビデンスの確実性 |
|---|---|---|
| 月間の片頭痛日数 | 約 1.00日 減少 | 低 |
| 月間の頭痛日数 | 約 1.21日 減少 | 高 |
| 50%以上改善した人の割合 | プラセボの約 2.7倍(オッズ比2.68) | 中 |
※ Riise ほか(2026)のメタ解析より。「50%以上改善」とは、頭痛の日数などが半分以下に減ったことを指します。
2-2. 「エビデンスの確実性」とは
表の右端にある「エビデンスの確実性」は、その結論がどれくらい確からしいかを専門家が評価したものです(高・中・低などで示します)。今回は、頭痛日数の減少は「高」と評価された一方で、片頭痛日数の減少は「低」でした。つまり「効果がありそうだが、今後の研究で結果が変わる可能性も残っている」部分があるということです。研究の著者らは、こうした結果をふまえ「カンデサルタンの位置づけを国際的なガイドラインで見直す価値がある」と述べています(Riise ほか 2026)。
3. 効果はどのくらい?正しい受け止め方
「月に約1日減る」と聞くと、人によっては「思ったより少ない」と感じるかもしれません。実際、カンデサルタンの予防効果は中等度で、飲めば頭痛がすぐになくなるような“劇的”なものではありません。一方で、もともと月に何日も片頭痛に悩まされている方にとって、日数が減ることや「50%以上改善する人が増える」ことには意味があります。効果には個人差が大きく、よく効く人もいれば、あまり実感できない人もいます。
受け止め方で大切なこと
・効果は中等度。「飲めば必ず治る」薬ではありません
・効果の出方には個人差があります
・降圧薬なので、もともと血圧が低い方では血圧が下がりすぎることがあります
・市販では買えません。降圧薬を片頭痛目的で自己判断で使うことは避けてください
予防薬は一般に、飲み始めてすぐに効果が出るものではなく、数週間から数か月かけて効き目を見ていきます。「合っているかどうか」も含めて、医師と経過を見ながら調整していくものだと考えてください。
4. 副作用と「適応外使用」の注意点【最重要】
今回のメタ解析では、カンデサルタンなどARBを使った人では、プラセボと比べてめまい・倦怠感(だるさ)・しびれなどがやや多く報告されました(全体で約10%多い)(Riise ほか 2026)。2025年の大規模な試験でも、最も多い副作用はめまいで、カンデサルタン(16mg)群の約3割(プラセボ群は約1割)にみられました(Øie ほか 2025)。降圧薬なので、当然ながら血圧を下げる作用があり、とくにもともと血圧が低い方や、ほかの降圧薬を使っている方では注意が必要です。妊娠中・妊娠の可能性がある方は使用できないなど、使えない状況もあります。
そして、この記事で最も大切な点が「適応外使用」についてです。適応外使用とは、国(日本)が承認した効能・効果(カンデサルタンの場合は「高血圧」)以外の目的で薬を使うことを指します。日本では、片頭痛の予防を目的としたカンデサルタンの使用は承認されておらず(適応外)、原則として保険適用外です。海外のデータが良好でも、日本での扱いは別である、という点を知っておく必要があります。実際に使うかどうかは、ほかの予防薬の効果や副作用、持病なども含めて、医師が一人ひとりの状況を見て判断します。
5. 他の予防薬との位置づけと、当院での予防治療
片頭痛の予防薬は、カンデサルタンだけではありません。日本では、いくつかの薬が片頭痛予防として承認・使用されています。カンデサルタンは、あくまで選択肢のひとつ(しかも適応外)として理解するのが適切です。
5-1. 日本で使われている主な片頭痛予防薬
代表的なものに、カルシウム拮抗薬のロメリジン(ミグシス)、β遮断薬のプロプラノロール(インデラル)(2014年の試験ではカンデサルタンと比較されました)、そして近年登場した抗CGRP抗体(エムガルティなど)や、2026年に日本で承認された飲み薬のアトゲパント(アクイプタ)などがあります。どれを選ぶかは、頭痛の頻度や程度、副作用、ほかの病気との関係、費用などを総合して決めていきます。
5-2. 当院での片頭痛の予防治療
いわた脳神経外科クリニックは、大阪市城東区・京阪「野江」駅から徒歩4分の脳神経外科です。当院では、片頭痛の予防治療のご相談に対応しています。まずは頭痛のタイプや頻度をていねいに伺い、生活への影響や持病・服用中の薬もふまえて、一人ひとりに合った予防の方法を一緒に考えます。「最近、頭痛薬を飲む回数が増えてきた」「市販薬が効きにくくなってきた」という方は、予防を考えるタイミングかもしれません。昼休みなしの通し診療で、お仕事や家事の合間にも受診いただきやすい体制です。WEB予約・LINEにも対応しています。
6. よくある質問
Q1. カンデサルタンを片頭痛予防のために自分で買えますか?
A. いいえ。カンデサルタンは医師の処方が必要な薬で、市販はされていません。また、片頭痛予防としての使用は日本では適応外です。自己判断で使うことはできませんので、まずは医師にご相談ください。
Q2. 予防薬はどのくらいで効果が出ますか?
A. 一般に予防薬は、飲み始めてすぐではなく、数週間から数か月かけて効果を判断します。すぐに実感がなくても、医師と相談しながら一定期間続けて様子を見ることが多いです。
Q3. いま別の予防薬を使っています。変えたほうがよいですか?
A. 自己判断で中止・変更しないでください。今の薬の効果や副作用の感じ方は人それぞれです。気になる点があれば、現在の治療内容を含めて医師にご相談ください。
Q4. 高血圧もあります。片頭痛と一緒に対策できますか?
A. 高血圧を合併している片頭痛の方では、降圧薬の選択が一つの検討材料になることがあります。ただし片頭痛予防は適応外であり、適否は個別の判断になります。持病やお薬の状況を医師にお伝えのうえ、ご相談ください。
まとめ
- 降圧薬カンデサルタン(ARB)に片頭痛の予防効果があるとするメタ解析が2026年に報告されました(Riise ほか 2026)。
- 4試験659人の統合で、月間の片頭痛日数は約1日、頭痛日数は約1.2日減少し、50%以上改善する人はプラセボの約2.7倍でした。
- 効果は中等度で、エビデンスの確実性は項目によってばらつきます。「必ず効く」薬ではありません。
- 日本では片頭痛予防は適応外(原則保険適用外)。市販もされておらず、自己判断での使用はできません。
- 予防薬には複数の選択肢があります。自分に合うものは、大阪市城東区・野江駅徒歩4分のいわた脳神経外科クリニックで医師とご相談ください。
片頭痛は、「これくらいは仕方ない」とあきらめてしまいがちです。けれど、予防という選択肢で生活が楽になる方もいます。くり返す頭痛にお悩みなら、一度、脳神経外科専門医にご相談ください。あなたに合った方法を、ご一緒に考えます。
お問い合わせ・ご予約
大阪市城東区・京阪「野江」駅徒歩4分のいわた脳神経外科クリニックでは、片頭痛をはじめとする頭痛の診療・予防治療のご相談に対応しています。問診・診察から、必要に応じた検査、その後のフォローまで一貫して対応します。昼休みなしの通し診療で、通いやすさにも配慮しています。
※ 本記事は2026年6月時点の情報です。記載した薬の使用・中止は自己判断で行わず、必ず医師にご相談ください。本記事には適応外使用に関する情報が含まれます。
医療機関名: いわた脳神経外科クリニック/診療責任者: 院長(日本脳神経外科学会 専門医・指導医)/所在地: 大阪市城東区
当院公式LINEにてご質問等もお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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参考文献
- Riise, HS, Thorvik, H, Øie, LR, Stovner, LJ, Tronvik, EA, Linde, M, Hagen, K, Giri, S & Wergeland, T 2026, ‘The effects of angiotensin receptor blockers as prophylactic migraine treatment: a systematic review and meta-analysis’, Cephalalgia, viewed 16 June 2026, <https://doi.org/10.1177/03331024261451481>.
- Tronvik, E, Stovner, LJ, Helde, G, Sand, T & Bovim, G 2003, ‘Prophylactic treatment of migraine with an angiotensin II receptor blocker: a randomized controlled trial’, JAMA, vol. 289, no. 1, pp. 65-69, viewed 16 June 2026, <https://doi.org/10.1001/jama.289.1.65>.
- Stovner, LJ, Linde, M, Gravdahl, GB, Tronvik, E, Aamodt, AH, Sand, T & Hagen, K 2014, ‘A comparative study of candesartan versus propranolol for migraine prophylaxis: a randomised, triple-blind, placebo-controlled, double cross-over study’, Cephalalgia, vol. 34, no. 7, pp. 523-532, viewed 16 June 2026, <https://doi.org/10.1177/0333102413515348>.
- Øie, LR, Wergeland, T, Salvesen, Ø ほか 2025, ‘Candesartan versus placebo for migraine prevention in patients with episodic migraine: a randomised, triple-blind, placebo-controlled, phase 2 trial’, Lancet Neurology, vol. 24, no. 10, pp. 817-827, viewed 16 June 2026, <https://doi.org/10.1016/S1474-4422(25)00269-8>.
- 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修 2021, 『頭痛の診療ガイドライン2021』, 医学書院(CQ II-3-8).
免責事項
本記事はカンデサルタンおよび片頭痛の予防に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の薬の使用を推奨するものでも、診断・治療効果を保証するものでもありません。効果・副作用には個人差があり、本記事の内容がすべての方に当てはまるわけではありません。本記事には日本で承認されていない使い方(適応外使用)に関する情報が含まれます。薬の開始・変更・中止は自己判断で行わず、症状や治療については必ず医師にご相談ください。本記事は2026年6月時点の情報に基づきます。















