脳腫瘍の摘出手術を控えている患者さんやご家族にとって、手術前の準備は治療の成功と将来の選択肢を大きく左右します。「とりあえず手術」と急いでしまう前に、必ず確認しておくべき重要なポイントがあります。
本記事では、脳神経外科専門医の視点から、手術前に絶対にやっておくべき8つのことを詳しく解説します。特に、検体保存の重要性や、将来の治療選択肢を残すための準備については、手術後では取り返しがつかないこともあるため、ぜひ最後までお読みください。
本記事の要点
・手術前の腫瘍組織保存とCUSA使用時の検体確保が将来の治療に不可欠
・オンコパネル検査で治療の選択肢が広がる
・信頼できる主治医選びが治療の質を左右する
・大学病院の名前だけで選ぶのは危険
・術後のリハビリと後遺症ケアを見据えた準備が重要
お問い合わせ・ご予約
脳腫瘍に関するご相談、セカンドオピニオンのご希望など、お気軽にいわた脳神経外科クリニックへお問い合わせください。ご予約は、下記から可能です。
目次
1. 腫瘍組織の保存とCUSA使用時の検体確保
手術前に最も重要なのは、摘出した腫瘍組織を適切に保存してもらうことです。これは、将来の治療選択肢を残すために絶対に欠かせません。
腫瘍組織保存が重要な理由
腫瘍組織は、将来の治療に活用できる貴重な資源です。具体的には以下のような用途があります。
- 自家がんワクチン療法:患者さん自身の腫瘍組織から作製する個別化免疫療法
- 遺伝子解析:新しい分子標的薬の適応判定
- 将来開発される治療法:現時点では存在しない治療法への活用
- 再発時の病理診断:初回手術時との比較検討
重要ポイント
自家がんワクチン療法では、ホルマリン固定されたパラフィンブロックを使用できます。手術時に「ホルマリン固定保存」を依頼することで、将来的な治療選択肢が残せます。
保存方法の種類
| 保存方法 | 適用 | 保存期間 |
|---|---|---|
| ホルマリン固定 | 病理診断、自家がんワクチン | 長期(数年〜数十年) |
| パラフィンブロック | 病理診断、遺伝子解析 | 長期(数年〜数十年) |
| 凍結保存(-80℃) | ゲノム研究、RNA解析 | 長期 |
CUSA使用時の特別な注意点
CUSA(超音波吸引装置)は脳腫瘍手術で広く使用される優れた器具ですが、検体保存という観点では特別な注意が必要です。
CUSAとは
CUSA(Cavitron Ultrasonic Surgical Aspirator)は、超音波振動により腫瘍組織を破砕し、同時に吸引除去する装置です。正常な血管や神経を温存しながら腫瘍を摘出できるため、脳腫瘍手術において非常に有用です。
CUSAによる検体消失のリスク
CUSAで吸引された組織は細かく破砕され、そのまま吸引除去されるため、将来の治療に使える腫瘍組織が残らない可能性があります。これは、自家がんワクチン療法やオンコパネル検査を検討している患者さんにとって大きな問題となります。
重要な注意点
CUSA使用が予定されている場合は、必ず手術前に「病理診断用および将来の治療用に十分な量の腫瘍組織を別途確保してください」と主治医に依頼してください。
検体確保の具体的な方法
- 手術開始時の組織採取:CUSA使用前に、鉗子などで腫瘍組織の一部を採取
- 複数箇所からの採取:腫瘍の不均一性を考慮し、可能であれば複数箇所から採取
- 十分な量の確保:病理診断用に加え、将来の治療用として1cm³程度の組織を確保
最近の研究では、CUSAで採取した組織片でも腫瘍免疫微小環境(TIME)の評価が可能であることが示されていますが、それでも十分量の組織確保は重要です。
手術前に主治医に必ず伝えること
「摘出した腫瘍組織を、将来の治療に備えてホルマリン固定で保存してください。CUSA使用前に十分な量の腫瘍組織を別途確保してください」
2. オンコパネル検査について理解する
オンコパネル検査(がん遺伝子パネル検査)は、腫瘍の遺伝子変異を網羅的に解析し、個別化医療の道を開く重要な検査です。
オンコパネル検査の概要
2019年6月に保険収載された検査で、一度に100個以上のがん関連遺伝子を調べることができます。脳腫瘍においても、治療方針の決定に重要な情報を提供します。
脳腫瘍におけるオンコパネル検査の意義
- 分子標的薬の適応判定:遺伝子変異に応じた薬剤の選択が可能
- 予後予測:IDH変異、MGMT遺伝子メチル化などの予後因子の評価
- 臨床試験への参加機会:特定の遺伝子変異を対象とした治験情報の提供
- 家族性腫瘍のリスク評価:遺伝性腫瘍症候群の可能性の検討
ポイント
東京大学医学部附属病院の報告によれば、東大オンコパネルは他の遺伝子パネル検査と比べてより多数の遺伝子をカバーし、DNAだけでなくRNAからも融合遺伝子などの治療標的を検出できる点で優れています。
オンコパネル検査の実施タイミング
理想的には手術前、または手術直後の早期に実施することが推奨されます。標準治療が終了してから検査を行うのではなく、治療計画を立てる段階で遺伝子情報を把握することで、より適切な治療選択が可能になります。
検査には腫瘍組織と血液検体が必要です。保険適用の条件や費用については、主治医やゲノム医療相談窓口で確認しましょう。
3. 信頼できる主治医を選ぶ
脳腫瘍治療は長期にわたることが多く、信頼できる主治医との良好な関係は治療の質を大きく左右します。
良い主治医の条件
- 気軽に相談しやすい雰囲気:疑問や不安を遠慮なく話せる関係性
- 治療選択肢の説明が丁寧:メリット・デメリットを含めた複数の選択肢の提示
- 患者の価値観を尊重:一方的な治療方針の押し付けではない
- 他科との連携が良好:放射線科、腫瘍内科、リハビリテーション科などとのチーム医療
- 最新の知見を持っている:学会参加や論文発表などの学術活動
- 十分な手術経験:その腫瘍タイプの手術を数多く執刀している
主治医選びで確認すべき質問
- この腫瘍の治療選択肢は何がありますか
- それぞれの治療法のメリット・デメリットは何ですか
- 先生はこの種類の腫瘍を年間何例くらい手術していますか
- 術後の合併症や後遺症の可能性はどのくらいですか
- 検体保存や遺伝子検査について対応できますか
- セカンドオピニオンを希望したら資料を準備していただけますか
- 術後の定期的なフォローアップ体制はどうなっていますか
主治医との信頼関係を築くポイント
- 正直に気持ちを伝える:不安や疑問は率直に話す
- 診察前に質問を準備:聞きたいことをメモにまとめておく
- 家族と一緒に受診:複数の視点で医師を評価できる
- セカンドオピニオンへの対応を見る:快く資料を提供してくれるかどうか
これらの質問に対して誠実に答えてくれない、または不機嫌になるような医師は、長期的な治療のパートナーとして適切ではない可能性があります。
4. セカンドオピニオンを検討する
セカンドオピニオンは、現在の主治医への不信感からではなく、より良い治療選択のための当然の権利です。
セカンドオピニオンが特に重要なケース
- 悪性度の高い腫瘍(膠芽腫など)の診断を受けた場合
- 手術が困難と言われた場合
- 複数の治療選択肢がある場合
- 若年者や妊娠可能年齢の女性の場合
- まれな腫瘍タイプの場合
セカンドオピニオンの上手な受け方
- 主治医に正直に伝える:「より納得して治療を受けたいので」と率直に話す
- 必要な資料を準備:紹介状、画像データ(CD-R)、病理診断書、血液検査結果など
- 質問を整理する:聞きたいことを箇条書きにしてメモを持参
- 家族と一緒に受診:複数の耳で聞くことで理解が深まる
- 結果を主治医に報告:セカンドオピニオンの内容を主治医と共有し、今後の方針を相談
費用について
セカンドオピニオンは保険適用外(自費診療)で、通常30分〜1時間で2〜3万円程度です。ただし、病院によって異なるので、事前に費用を確認しましょう。また、セカンドオピニオンは「意見を聞く」ものであり、その場で診療行為(検査や処方)は行われません。
お問い合わせ・ご予約
いわた脳神経外科クリニックでは、脳腫瘍や頭痛の悩みにしっかり寄り添います。また当院公式LINEにてご質問等をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
5. 治療選択肢について十分に話し合う
脳腫瘍の治療は手術だけではありません。患者さんの年齢、全身状態、腫瘍の種類・場所・大きさなどを総合的に考慮した治療計画が必要です。
主な治療選択肢
| 治療法 | 適応 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 手術療法 | 腫瘍の完全摘出または減量 | 確定診断、腫瘍量の減少 | 侵襲的、後遺症のリスク |
| 放射線療法 | 悪性腫瘍、手術困難例 | 非侵襲的 | 晩期障害の可能性 |
| 化学療法 | 悪性神経膠腫など | 全身療法 | 副作用、効果に個人差 |
| 分子標的薬 | 特定の遺伝子変異陽性例 | 個別化医療 | 適応が限定的、高額 |
| 免疫療法 | 研究段階、一部保険適用 | 長期効果の可能性 | 効果予測困難、費用 |
| 経過観察 | 小さな良性腫瘍、無症状 | 侵襲なし | 定期的な画像検査必要 |
話し合うべき重要ポイント
- 治療目標:完治を目指すのか、QOL維持を優先するのか
- 手術の範囲:全摘出か、部分摘出か
- 術後治療の必要性:放射線療法や化学療法の追加の有無
- 臨床試験への参加:新しい治療法の選択肢
- 治療スケジュール:仕事や家庭生活との両立
すべての治療選択肢について説明してくれる医師を選ぶことが重要です。特定の治療法だけを勧め、他の選択肢について話したがらない医師には注意が必要です。
6. 病院選びの落とし穴を避ける
「有名大学病院だから安心」という考え方は、必ずしも正しくありません。病院選びには慎重な判断が必要です。
大学病院の名前だけで選ぶリスク
- 主治医が頻繁に変わる:医局人事により、担当医が短期間で交代することがある
- 若手医師の執刀:指導医の監督下とはいえ、経験の浅い医師が手術することもある
- 待ち時間が長い:外来待ち時間、手術待機期間が長くなる傾向がある
- 個別対応が難しい:多数の患者を抱えるため、きめ細かい対応が困難な場合もある
本当に重要な病院選びの基準
病院選びチェックリスト
- ☐ 執刀医の経験:年間手術件数、専門医資格の有無
- ☐ チーム医療体制:多職種連携(神経内科、放射線科、リハビリなど)
- ☐ 設備:術中MRI、ナビゲーションシステム、神経モニタリング
- ☐ 病理診断体制:術中迅速診断の可否、脳腫瘍専門病理医の在籍
- ☐ ゲノム医療対応:オンコパネル検査の実施可否、エキスパートパネルの有無
- ☐ 臨床試験:新規治療法の臨床試験への参加機会
- ☐ 術後フォロー体制:長期的な外来フォローアップの体制
- ☐ アクセス:通院の利便性(特に術後の定期受診を考慮)
執刀医を確認する重要性
「○○大学病院で手術」ではなく、「△△先生に手術してもらう」という意識が重要です。可能であれば、以下を確認しましょう。
- 執刀医の氏名と専門分野
- その医師の手術経験(年間症例数、総症例数)
- 学会発表や論文発表の実績
- 患者からの評判(可能な範囲で)
専門医制度では、日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医などの資格がありますが、これらは基本的な技能を保証するものであり、個々の医師の技量を示すものではありません。重要なのは、その腫瘍タイプの手術経験が豊富かどうかです。
その上で、気軽に相談できそうか、相性はどうか、確認しましょう。
ポイント
膠芽腫の治療は、手術後も続きます。その際に、「気軽に質問しやすい」か「先生が協力的か」は重要です。
7. 術後のリハビリと後遺症ケア体制を確認する
脳腫瘍手術後は、早期からの適切なリハビリテーションと包括的な後遺症ケアが機能回復とQOL向上の鍵となります。
脳腫瘍術後に必要なリハビリテーション
- 理学療法(PT):運動機能障害(片麻痺、歩行障害など)に対する訓練
- 作業療法(OT):日常生活動作(食事、着替え、トイレなど)の訓練
- 言語聴覚療法(ST):言語障害(失語症、構音障害)や嚥下障害への対応
- 高次脳機能訓練:記憶、注意、遂行機能などの認知機能訓練
リハビリテーション実施のタイミング
| 時期 | 期間 | 目標 | 実施場所 |
|---|---|---|---|
| 急性期 | 術後〜2週間程度 | 早期離床、合併症予防 | 手術を受けた病院 |
| 回復期 | 術後2週間〜3ヶ月 | 機能回復の最大化 | 回復期リハビリ病棟 |
| 維持期 | 術後3ヶ月以降 | 機能維持、社会復帰支援 | 外来、訪問、通所リハビリ |
ポイント
脳腫瘍患者に対する集中的リハビリテーションは、脳卒中向けに有効とされた方法を応用することで、神経症状の改善が確認されています。早期からの積極的な介入が重要です。
主な後遺症の種類と対応
- 運動機能障害:片麻痺、筋力低下、協調運動障害 → 理学療法で対応
- 感覚障害:しびれ、痛み、温度感覚の異常 → 薬物療法、リハビリで対応
- 言語障害:失語症、構音障害 → 言語聴覚療法で対応
- 視野障害:半盲、視野狭窄 → 視覚補助、環境調整で対応
- 高次脳機能障害:記憶障害、注意障害、遂行機能障害 → 認知リハビリで対応
- けいれん発作:術後てんかん → 抗てんかん薬で管理
- 内分泌障害:下垂体機能低下症 → ホルモン補充療法で対応
後遺症ケアに必要な多職種連携体制
多職種連携によるケア体制
- 脳神経外科医:後遺症の医学的管理、薬物療法
- リハビリテーション医:機能障害の評価と訓練計画
- 神経内科医:てんかんなどの神経症状の管理
- 精神科医・心療内科医:うつ病などの精神症状への対応
- 看護師:日常生活ケア、患者・家族教育
- 医療ソーシャルワーカー:社会資源の活用、福祉制度の案内
- 臨床心理士:心理カウンセリング、高次脳機能評価
利用できる社会資源
- 身体障害者手帳:運動障害や視覚障害などが一定基準以上の場合
- 精神障害者保健福祉手帳:高次脳機能障害が認められる場合
- 障害年金:労働能力が制限される場合
- 介護保険:40歳以上で、特定疾病による介護が必要な場合
- 自立支援医療:通院医療費の負担軽減
- 訪問看護・訪問リハビリ:在宅での専門的ケア
手術前に確認すべきこと
- 手術後のリハビリ開始時期と実施体制
- 院内のリハビリ専門スタッフの配置状況
- 予想される後遺症とその対応策
- 回復期リハビリ病棟への転院の可能性と連携先
- 外来リハビリや訪問リハビリの利用可否
- リハビリ実施期間の目安(脳疾患は診断から180日まで保険適用)
- 利用可能な社会資源についての情報提供
- 医療ソーシャルワーカーへの相談窓口
手術前に、予想される後遺症とその対応策について主治医に詳しく聞いておきましょう。また、医療ソーシャルワーカーに相談し、利用可能な社会資源について情報を得ることも重要です。リハビリテーションと後遺症ケアは、機能回復だけでなく、社会復帰や生活の質向上にも直結する重要な治療です。
8. 終末期ケアについても視野に入れる
悪性脳腫瘍の場合、治療を尽くしても根治が困難な場合があります。誰もが避けたい話題ですが、患者さんとご家族が望む最期を迎えるためには、早い段階から終末期ケアについて考えておくことが大切です。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)
ACP(人生会議)とは、将来の医療やケアについて、患者さん自身が家族や医療チームと話し合うプロセスです。元気なうちから、以下のようなことを考えておきましょう。
- どこで最期を迎えたいか(自宅、病院、ホスピスなど)
- どのような医療を受けたいか、受けたくないか
- 苦痛を和らげることをどこまで優先するか
- 意思決定ができなくなった場合、誰に代理を依頼するか
緩和ケアの早期導入
緩和ケアは「終末期のケア」ではありません。診断時から、がん治療と並行して提供されるべきケアです。
緩和ケアで提供されるサポート
- 身体的症状の緩和:痛み、吐き気、呼吸困難などへの対応
- 精神的サポート:不安、抑うつ、恐怖などへの心理的支援
- スピリチュアルケア:人生の意味や価値観に関する対話
- 家族支援:介護負担の軽減、グリーフケア(遺族ケア)
- 意思決定支援:治療選択や療養場所についての相談
在宅療養の選択肢
終末期を自宅で過ごしたい場合、以下のようなサポート体制を整えることができます。
- 在宅医療(訪問診療):定期的な医師の往診
- 訪問看護:看護師による症状管理とケア
- 訪問リハビリ:自宅での機能維持訓練
- 訪問介護:日常生活の支援
- レスパイトケア:介護者の休息のための一時入院
- 緊急時の対応体制:24時間対応の訪問看護ステーションとの連携
終末期ケアについて考えることは、残された時間をより良く生きるための準備でもあります。主治医や緩和ケアチーム、医療ソーシャルワーカーに遠慮なく相談しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. 腫瘍組織の保存は費用がかかりますか?
A. 病理診断のための組織保存は通常の医療費に含まれており、追加費用はかかりません。ただし、研究目的や長期保存を依頼する場合、施設によっては別途費用が発生する可能性があります。事前に確認しましょう。
Q2. オンコパネル検査は全員が受けられますか?
A. 保険適用の条件があります。一般的に、標準治療が終了した(または終了が見込まれる)固形がん患者、または原発不明がん・希少がんの患者が対象です。また、全身状態が良好で、検査結果に基づく治療が可能な方に限られます。詳しくは主治医にご相談ください。
Q3. セカンドオピニオンを受けると主治医との関係が悪くなりませんか?
A. 正直に相談すれば、多くの医師は理解を示してくれます。「より納得して治療を受けたい」という患者さんの気持ちは当然の権利です。もしセカンドオピニオンを嫌がる医師であれば、長期的な治療のパートナーとして適切かどうか見直す必要があるかもしれません。
Q4. 手術後、どのくらいで仕事に復帰できますか?
A. 腫瘍の種類、手術の範囲、後遺症の有無によって大きく異なります。良性腫瘍で後遺症がない場合は、術後1〜3ヶ月で復帰できることもあります。一方、悪性腫瘍で術後治療(放射線療法や化学療法)が必要な場合や、後遺症が残った場合は、半年以上かかることもあります。
Q5. 家族ができる最も重要なサポートは何ですか?
A. 患者さんの話をよく聞き、意思を尊重することです。また、診察に同席してメモを取る、セカンドオピニオンに付き添う、リハビリを一緒に行うなど、具体的なサポートも大切です。ただし、介護者自身の健康も重要ですので、無理をせず、利用できる社会資源を活用しましょう。
まとめ
脳腫瘍の摘出手術は、人生の大きな転機となる重要な治療です。手術の成功は、執刀医の技術だけでなく、手術前の準備によって大きく左右されます。
本記事で紹介した8つのポイントは、いずれも将来の治療選択肢を残し、術後のQOLを高めるために重要なものです。特に以下の3点は、手術後では取り返しがつかないため、必ず手術前に確認してください。
- 腫瘍組織の十分な保存とCUSA使用時の検体確保(自家がんワクチンや遺伝子解析のため)
- オンコパネル検査の実施(個別化医療のため)
- 信頼できる主治医と病院の選択(治療の質と満足度のため)
また、セカンドオピニオンの活用、治療選択肢の十分な理解、術後のリハビリと後遺症ケア体制の確認は、治療の質と満足度に直結します。「有名病院だから」「大学病院だから」という理由だけで選ぶのではなく、執刀医の経験や病院の体制を総合的に判断しましょう。
そして、終末期ケアについても早い段階から考えておくことで、いざという時に慌てずに済み、残された時間をより良く生きるための準備ができます。
当院からのメッセージ
いわた脳神経外科クリニックでは、脳腫瘍でお悩みの患者さんとご家族に対して、セカンドオピニオンや治療相談を行っています。「こんなことを聞いてもいいのだろうか」と遠慮せず、どんな小さな疑問でもお気軽にご相談ください。
あなたの納得のいく治療選択を、全力でサポートいたします。
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