「片頭痛」と聞くと、多くの人が「とてもひどい頭痛」を思い浮かべるでしょう。しかし、片頭痛はそれだけにとどまらず、心身に広範な影響を及ぼす神経の病気です。ご自身の生活にどれほど影響を与えているか、気づいていない方も少なくありません。このページでは、脳神経外科の専門医として、皆さんに知っていただきたい片頭痛の様々な症状を詳しく解説します。



この記事でわかること

  • 片頭痛が「ただの頭痛ではない」理由
  • 頭痛以外に現れる多彩な症状(感覚、気分、胃腸など)
  • 片頭痛の症状が起こるメカニズムの概要
  • 症状をチェックできる40項目のリスト

 

Q. そもそも「片頭痛」とは何ですか?

Q. 片頭痛の定義を教えてください。
A.

片頭痛は、脈打つような強い頭痛を特徴とし、しばしば吐き気や、光・音への過敏さを伴います。しかし、現代の医療では、片頭痛は単なる頭痛ではなく、脳の神経や血管が関与する「神経疾患」として捉えられています。そのため、頭痛以外の様々な症状が全身に現れるのです。

脳・気分 五感 平衡感覚 胃腸 体温・血流片頭痛は脳を中心に、感覚、気分、消化器系など全身に影響を及ぼします。

 

頭痛だけじゃない!片頭痛が引き起こす多彩な症状

1. 五感への影響:いつもと世界が違って見える

特に「前兆(アウラ)を伴う片頭痛」の方では、頭痛が始まる前に五感の異常が現れることがあります。これは脳の感覚を処理する部分が一時的に機能異常を起こすためです。

  • 視覚:目の前にギザギザした光が見える(閃輝暗点)、視野の一部が見えなくなる、物が二重に見える。
  • 聴覚:耳鳴りがする、音が響いて聞こえる(聴覚過敏)。
  • 嗅覚:普段はないはずの匂いがする(幻嗅)、匂いに敏感になる(嗅覚過敏)。
  • 触覚:顔や手足がチクチクとしびれる、触れられると痛みを感じる(アロディニア)。

 

2. 脳機能と気分への影響:思考や感情の乱れ

片頭痛は、脳の様々な機能にも影響を与えます。記憶力や集中力の低下は「ブレインフォグ」とも呼ばれ、多くの方が悩まされる症状です。

  • 認知機能:言葉がすっと出てこない、集中できない、物忘れがひどくなる。
  • 平衡感覚:ぐるぐる回るようなめまい、体がふらつく。(前庭性片頭痛の可能性も)
  • 知覚の異常:物が実際より大きく見えたり小さく見えたりする(不思議の国のアリス症候群)、自分が自分でないような感覚(離人症)。
  • 気分:理由もなく不安になる、落ち込む、イライラしやすくなる。うつ病や不安障害を合併することも少なくありません。
  • 疲労感:十分寝たはずなのに、起き上がれないほどの強い疲労感に襲われる。

 

3. 胃腸への影響:吐き気と食欲の変化

片頭痛発作中は、自律神経の乱れから消化器系の働きが著しく低下します。これを胃内容排出遅延といい、多くの胃腸症状の原因となります。

  • 吐き気・嘔吐:片頭痛の代表的な症状の一つ。食べ物を受け付けなくなります。
  • 下痢または便秘:消化管の動きが乱れることで起こります。
  • 腹痛:特に小児では、頭痛よりも腹痛が前面に出る腹部片頭痛というタイプもあります。
  • 食欲の変化:発作前、無性にチョコレートや塩辛いものが食べたくなることがあります。これは脳がエネルギーを欲しているサインとも言われています。

 

4. 全身の痛みと身体症状

痛みは頭だけに限りません。また、自律神経の乱れは全身に様々な変化をもたらします。

  • 関連痛:首や肩のこり、顎の痛み、耳の痛み、副鼻腔の圧迫感などを感じることがあります。
  • 体温調節の異常:ほてりや悪寒を感じる、手足や鼻先が氷のように冷たくなる。
  • 筋力低下:非常に稀ですが、脳卒中のように半身が麻痺する片麻痺性片頭痛という特殊なタイプもあります。

 

片頭痛の症状を「時間の流れ」で見る

ここまでは、症状を「体のどこに出るか」で整理してきました。ここからは、もうひとつの見方をご紹介します。「いつ出るか」です。

片頭痛の発作には、痛みが始まる前から、おさまった後まで続く一連の流れがあります。医学的には前駆期(予兆期)・前兆期・頭痛期・回復期の4つに分けられます。当院が患者さんからうかがう「頭痛以外の不調」を、この4つの時期に並べると40以上になります。

 

① 前駆期(予兆期)|発作の数時間〜2日前

痛みが出る前から、体はすでに変化を始めています。電子日誌を使って発作前の症状を記録した研究(Giffin et al. 2003)では、97名の患者さんが記録した発作のうち、強い疲労感が72%、集中しにくさが51%、首のこわばりが50%に現れていました。さらに、こうした症状が出た日の記録の72%で、実際に頭痛が来ることを患者さん自身が言い当てていました

※この研究は「発作の前ぶれを自覚している」と答えた方を集めて行われたものです。どなたにも同じ割合で起こるという意味ではありません。

症状どんなふうに現れるか
強い疲労感寝ても取れない。体が鉛のように重い
集中しにくさ話が頭に入ってこない
思考のまとまらなさ何をしようとしたか忘れる
首のこわばり・首の痛み頭より先に首が反応する
あくび眠くないのに止まらない
急な食欲甘いものや炭水化物が無性に欲しくなる
便秘数日前からお通じが止まる
下痢・お腹のゆるさ便秘と入れかわりで出ることもある
頻尿水分は増えていないのにトイレが近い
いらだち・感情の揺れ普段なら流せる言葉に反応してしまう
気分の落ち込み理由が思い当たらないのに沈む
ほてり・悪寒熱はないのに暑い、または寒気がする
手足の冷え・顔色が悪くなる手足や鼻先が冷たくなる

 

② 前兆期(アウラ)|発作の直前5〜60分

前兆は、片頭痛のある方のうち一部に現れます。国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)では、視覚・感覚・言語・運動・脳幹・網膜の6つのタイプが定められています。多くは5〜60分でおさまり、その後に頭痛が続きます。

症状どんなふうに現れるか
視覚の前兆光の点滅、ギザギザした光(閃輝暗点)、視野の欠け、黒い影
チクチク・しびれ片側の手や顔から腕へ広がる
言葉が出にくい言い間違える、言葉が浮かばない
手足の力が入りにくい片麻痺性片頭痛というまれなタイプ
物の大きさや距離感が変わる不思議の国のアリス症候群。まれに報告されます
自分が自分でないような感覚景色が映画のように感じられる
実際にはないにおいを感じるまれな前兆です

 

初めて出た症状は、まず受診してください。手足の力が入らない、言葉が出ない、片側がしびれるといった症状は、脳梗塞など緊急の治療が必要な病気でも起こります。片頭痛の前兆かどうかは、経過を知らなければ区別できません。突然の激しい頭痛やまひ、けいれんを伴う場合は、ためらわず119番へご連絡ください。

 

③ 頭痛期|4〜72時間

痛みが出ている時期です。片頭痛は「片側がズキンズキンと痛む」「動くと悪化する」「吐き気や光・音への過敏を伴う」ことが診断の目安になります。ただし実際には、それ以外の症状のほうが目立つ方もいらっしゃいます。

たとえば首の痛みです。786回の片頭痛発作を記録した研究(Calhoun et al. 2010)では、首の痛みは、片頭痛の代表的な症状である吐き気よりも高い頻度で現れていました。「頭痛ではなく肩こり・首こりだと思っていた」という方が少なくないのは、このためです。

症状どんなふうに現れるか
頭痛片側がズキンズキンと痛み、動くと悪化する
吐き気・ムカムカ食べていなくても気持ち悪い
嘔吐吐いてしまい、薬も飲めなくなる
光がまぶしい(羞明)曇りの日でもまぶしい
音が刺さる(聴覚過敏)生活音がつらい
においがつらい(嗅覚過敏)香水や柔軟剤で悪化する
触れられると痛い(アロディニア)髪が頬に当たる、シャツの首元が不快
動作で悪化する階段の上り下り、車の揺れ
めまい・ふらつきめまいが主役になる前庭性片頭痛もあります
耳鳴りキーン、ザーザーという音
耳の痛み・詰まった感じ耳鼻科で異常が見つからない
鼻づまり・鼻水片側だけ詰まることがある
目の奥や頬の圧迫感副鼻腔炎と間違われやすい
顎の痛み・こわばり朝起きたときに強い
腹痛小児では頭痛より腹痛が前面に出ることがある
不安・予期不安「また痛くなったら」と気になる

 

なお、目の奥や頬の圧迫感、鼻づまりや鼻水があると「副鼻腔炎では」と思われがちですが、副鼻腔炎と考えられていた頭痛が、調べてみると片頭痛だったというケースは少なくありません。鼻の薬を続けても良くならない場合は、一度ご相談ください。

 

④ 回復期(ポストドローム)|痛みがおさまった後の24時間前後

痛みが引いても、すぐに元通りとはいきません。同じ研究グループが回復期を記録した研究(Giffin et al. 2016)では、120名のうち97名(81%)が、痛みがおさまった後にも頭痛以外の症状を経験していました。多かったのは疲労感、集中しにくさ、首のこわばりです。一方で、93%の発作では24時間以内に元の状態に戻っていました

症状どんなふうに現れるか
頭のもや(ブレインフォグ)思考がまとまらない
短期記憶の乱れ直前の会話が思い出せない
筋肉の重だるさ・脱力感腕や脚がやけに疲れる

「痛みは治ったのに、その日はもう使いものにならない」という感覚には、こうした背景があります。周囲から理解されにくい部分でもあります。

 

同じ症状が、時期を変えて何度も出る

ここまで読んで、同じ症状が何度か出てきたことに気づかれたかもしれません。疲労感・集中しにくさ・首のこわばりの3つは、発作前を調べた研究でも、回復後を調べた研究でも、そろって上位に挙がっています。

つまりこの3つは、痛みが始まる前から、おさまった後まで、発作の前後を通して続きうる症状ということです。「頭が痛いのは半日なのに、まる2日調子が悪い」と感じる方がいらっしゃるのは、この流れ全体が発作だからです。

 

もうひとつ、赤ちゃんの頃の話

片頭痛のある方のお子さんが、赤ちゃんのころに理由なく激しく泣き続けた、という話をうかがうことがあります。この乳児疝痛(にゅうじせんつう)と、その後の片頭痛との関連は、繰り返し報告されているテーマです。ご家族に片頭痛のある赤ちゃんで疝痛が多い、という調査もあります。

ただし、疝痛があったから必ず片頭痛になる、という関係が確かめられたわけではありません。「片頭痛は体質として家族のなかで受け継がれることがある」という話として受け止めていただければ十分です。

 

1つの症状が心配なときは

個別の症状については、それぞれ詳しく解説したページをご用意しています。

 

参考文献

  • Giffin, NJ, Ruggiero, L, Lipton, RB, Silberstein, SD, Tvedskov, JF, Olesen, J, Altman, J, Goadsby, PJ & Macrae, A 2003, ‘Premonitory symptoms in migraine: an electronic diary study’, Neurology, vol. 60, no. 6, pp. 935-940, DOI 10.1212/01.WNL.0000052998.58526.A9.
  • Giffin, NJ, Lipton, RB, Silberstein, SD, Olesen, J & Goadsby, PJ 2016, ‘The migraine postdrome: an electronic diary study’, Neurology, vol. 87, no. 3, pp. 309-313, DOI 10.1212/WNL.0000000000002789.
  • Calhoun, AH, Ford, S, Millen, C, Finkel, AG, Truong, Y & Nie, Y 2010, ‘The prevalence of neck pain in migraine’, Headache, vol. 50, no. 8, pp. 1273-1277, DOI 10.1111/j.1526-4610.2009.01608.x.
  • Poutanen, B & Kuitunen, I 2026, ‘The association between parental migraine, infantile colic, and later migraine in childhood: a scoping review of current evidence’, Headache, DOI 10.1111/head.70185.
  • 日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 2018, 『国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)』, 医学書院, 東京.

片頭痛症状チェックリスト

ご自身が経験したことのある症状はありますか。

 

片頭痛症状チェックリスト。腹痛・めまい・冷え・あくび・頻尿など40項目

 

頭痛に関するよくあるご質問

Q. 片頭痛と緊張型頭痛の違いは何ですか?
A.

最も大きな違いは痛みの性質と付随する症状です。片頭痛は「ズキンズキン」と脈打つような強い痛みで、吐き気や光・音への過敏さを伴うことが多いです。一方、緊張型頭痛は頭全体が「ギューッ」と締め付けられるような鈍い痛みが特徴で、日常生活は続けられることが多いです。



Q. 市販の頭痛薬を飲み続けても大丈夫ですか?
A.

市販薬は一時的な頭痛には有効ですが、かえって頭痛を悪化させる「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」を引き起こす可能性があります。頻繁に頭痛が起こる場合は、専門医にご相談ください。



Q. 子供でも片頭痛になりますか?
A.

はい、お子さんでも片頭痛になります。大人のように頭痛をうまく表現できず、「お腹が痛い(腹部片頭痛)」「吐き気がする」「乗り物酔いしやすい」「光を嫌がる」といった症状で現れることもあります。普段と様子が違う場合は、小児科や、頭痛を専門とする医療機関にご相談ください。




その症状、専門医にご相談ください

「たかが頭痛」「いつものこと」と諦めていませんか?
片頭痛は適切な診断と治療によって、症状をコントロールし、生活の質を大きく改善できる病気です。
リストに当てはまる症状でお悩みの方は、ぜひ一度、当院の頭痛外来にご相談ください。

 

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この記事を書いた先生のプロフィール
いわた脳神経外科クリニック 院長 岩田 亮一
医師・医学博士/日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医/日本脳神経血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医/日本頭痛学会認定 頭痛専門医
(日本脳卒中学会・日本認知症学会 所属)

脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。
脳血管内治療(カテーテル治療)の専門医でもあり、くも膜下出血や脳動脈解離など「危険な頭痛」の鑑別・初期対応にも力を入れています。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛と付き合ってきました。だからこそ、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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