
めまいは、ふとした瞬間に感じる体のバランスの乱れで、放置すると大きなトラブルにつながる可能性があります。
本記事では、めまいの種類、原因、生活習慣の改善方法、そしてどの診療科を受診すべきかを解説します。これを読むことで、皆さんが早めの対策を講じるきっかけになると幸いです。
めまいを起こす代表的な7つの病気と、その見分け方
「ぐるぐる回る」「ふわふわする」という感じ方だけでは、原因を決めることはできません。診察で手がかりにしているのは、次の3つです。
- どれくらい続くか(数十秒なのか、数時間なのか、何日もなのか)
- 何をしたときに起きるか(寝返り、起き上がり、きっかけなく突然)
- 耳の症状があるか(聞こえにくさ、耳鳴り、耳がふさがった感じ)
この3つで、代表的な病気はかなり絞り込めます。下の一覧は、日本めまい平衡医学会の診断基準(2017年改定)などをもとに整理したものです。
① 良性発作性頭位めまい症(BPPV)
続く時間:1分以内のことが多い
きっかけ:寝返り、起き上がり、上を向くなど頭を動かしたとき
耳の症状:なし
特徴:耳が原因のめまいで最も多い。同じ動きを繰り返すと軽くなっていく
② 前庭神経炎
続く時間:強い回転性めまいが1日以上。そのあとふらつきが続く
きっかけ:きっかけなく突然。かぜのあとに起きることがある
耳の症状:なし
特徴:激しい回転性めまいは通常1回だけ。吐き気を伴いやすい
③ メニエール病
続く時間:10分程度から数時間
きっかけ:きっかけなく、繰り返す
耳の症状:あり(聞こえにくさ・耳鳴り・耳がふさがった感じが変動する)
特徴:めまいのたびに、聞こえの状態が変わるのが特徴
④ 前庭性片頭痛
続く時間:5分から72時間
きっかけ:片頭痛と同じような場面(光・音・においなど)
耳の症状:ふつうはなし
特徴:片頭痛の持病がある人に起こる。発作のときに頭痛がないこともある
⑤ 内耳炎(迷路炎)
続く時間:数日
きっかけ:かぜや中耳炎のあと
耳の症状:あり(聞こえにくさ・耳鳴り)
特徴:前庭神経炎とよく似るが、こちらは聞こえの症状を伴う
⑥ 聴神経腫瘍
続く時間:はっきりした発作ではなく、ゆっくり進む
きっかけ:とくになし
耳の症状:あり(片側だけ、少しずつ聞こえにくくなる)
特徴:良性の腫瘍。まれだが、MRIで見つかる
⑦ 脳の病気(脳梗塞・脳出血など)
続く時間:突然始まり、続く
きっかけ:きっかけなく突然
耳の症状:ふつうはなし
特徴:ろれつが回らない、ものが二重に見える、片側の手足の力が入らない、立てない・歩けない、強い頭痛を伴う
この一覧は受診の目安であり、自分で診断をつけるためのものではありません。同じ「回転性めまい」でも、耳の病気のことも、脳の病気のこともあります。
すぐに救急車を呼んだほうがよいめまい
次のどれかが一緒に起きているときは、脳の病気の可能性があります。様子を見ずに救急要請をしてください。
□ ろれつが回らない/言葉が出にくい
□ 片側の手足に力が入らない、しびれる
□ ものが二重に見える
□ 支えがないと立てない・まっすぐ歩けない
□ 経験したことのない強い頭痛を伴う
□ 顔の片側がゆがむ
とくに「支えがないと立てない・歩けない」は重要なサインです。耳が原因のめまいでは、つらくても、つかまりながら歩けることが多いためです。
診察と検査でわかること
めまいの診察では、目の動き(眼振)を見ます。目の揺れ方の向きや、頭を素早く動かしたときの目の戻り方で、耳が原因か、脳が原因かをある程度見分けることができます。
そのうえで、脳の病気が疑われる場合にはMRI検査を行います。ここで知っておいていただきたいことがあります。発症してすぐの時間帯は、脳梗塞がMRIに写らないことがあります。急なめまいで来院した方を調べた研究では、発症から48時間以内に撮ったMRIの12%で、実際には脳梗塞があるのに写っていませんでした(Kattah ほか, 2009)。
つまり、画像だけに頼らず、診察所見と合わせて判断することが大切だということです。症状が続くときや、あとから新しい症状が出てきたときは、もう一度受診してください。
当院では、脳の病気が心配なめまいについて、その日のうちにMRI検査を受けていただける体制をとっています(混雑状況により当日に行えない場合があります)。耳の病気が疑われる場合は、耳鼻咽喉科での検査をご案内します。
ここからは、めまいの種類ごとの原因、予防のためにできること、受診する診療科の選び方を順に見ていきます。
めまいの原因と種類
めまいは様々な要因で引き起こされ、感じ方も異なります。体がぐるぐる回る、ふわふわと浮かぶ、目の前が一瞬暗くなるという症状があり、それぞれ原因は異なります。
まずは回転性めまい、浮動性めまい、立ち眩みの代表的な三つの症状のパターンについて見ていきましょう。
回転性めまいの原因
回転性めまいは、体が自分自身を中心に回っているように感じる症状です。これは内耳にあるバランス感覚を司る部分が何らかの理由で混乱することから始まります。一般的には、良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)という病気が考えられます。
良性発作性頭位めまい症は、急に頭の位置が変わったときに、数秒から十数秒間だけ回転するめまいが現れます。メニエール病の場合、めまいは長く続き、難聴(なんちょう)や耳鳴りも伴うことが多いです。
前庭神経炎では、急激に始まる強い回転感とともに吐き気が出るケースが多く、風邪の後などに発症することもあります。内耳の異常を早期に見つけることが治療の鍵です。
このように回転性めまいは耳の働きに深く関係しているため、症状がたとえ軽いと感じた際にも注意が必要です。
浮動性めまいの原因
浮動性めまいは、体がふわふわと浮いているように感じる症状です。これは脳の血流不足や内耳の異常といった要因が背景にある場合が多いです。
具体的には、脳梗塞、脳出血、または脳腫瘍など、脳に直接関係する深刻な病気が隠れていることがあります。急激な頭痛や、体の片側にしびれや違和感があれば、すぐに医療機関を受診してください。
浮動性めまいは、普段の生活に大きな影響を与える可能性が高いため、症状が続く場合や頻繁に起こる場合は早めの対策が必要です。早めに医師の診断を受けることが重要です。
また、しっかりとした休息やバランスのとれた食事、適度な運動を取り入れることで、脳の血流改善が期待できます。日常の中で体のサインを見逃さず、自分自身の変化に敏感になりましょう。
立ち眩みの原因
立ち眩みは、立ち上がったときに一瞬だけ目の前が暗くなるような感覚で、急激な立ち上がりが原因となることが多いです。血圧の急激な低下や、心臓の働きが関わることで脳への血流が一時的に不足するために起こります。
主な要因には、低血圧、起立性調整障害、貧血、さらには心臓の不整脈などが考えられます。近年、降圧剤や抗てんかん薬といった薬剤の副作用で起こる例も見受けられます。
この症状は、一時的なものでも頻繁に起こる場合は深刻な病気の兆しの可能性もあるため、十分な注意が必要です。
また、立ち眩みを防止するために、こまめな水分補給や栄養バランスの取れた食事といった生活習慣の見直しが大切です。
めまい予防のための生活習慣の改善
めまいの予防には、日常生活でのちょっとした工夫が重要です。無理なく始められる習慣を取り入れることで、症状の発生を未然に防ぐことが期待できます。
ここでは、十分な睡眠、寝返り運動、小脳トレーニング、そしてバランスの良い食事と禁煙の効果についてご紹介します。
十分な睡眠
十分な睡眠は、体全体の調子を整える基本です。毎日同じ時間に寝起きすることで体内時計が整い、自律神経のバランスも改善されます。睡眠中は体が修復され、翌日の活力が得られます。
寝る前はスマートフォンやパソコンから少し離れ、ゆったりとした時間を過ごすようにしましょう。静かな音楽や読書も、リラクゼーションに役立ちます。
寝室の環境も大切で、明るすぎず、適度な温度と湿度が保たれる部屋で休むことが、より質の良い眠りにつながります。毎日の良い睡眠は健康の基本となります。
また、短い昼寝を取り入れることで、日中の疲れを効果的にリセットすることができます。規則正しい生活リズムを心がけ、心身ともにリフレッシュする時間を作りましょう。
十分な睡眠を取ることが、めまいの予防や改善に直結します。
寝返り運動
寝返り運動は、特に回転性めまいの予防に効果が期待されるシンプルなエクササイズです。仰向けに横になり、左右にゆっくりと体を傾けることで、内耳の耳石(じせき)の位置を調整する働きがあります。
実際に、朝と晩に左右それぞれ10秒ずつ行うと、症状の緩和が見込める場合が多いです。習慣的に行うことで、自然なバランス感覚が取り戻される効果が期待できます。
ただし、運動中に無理を感じた場合は中止し、症状が続けば医師に相談することが大切です。無理せず、継続的に行いましょう。
日々の寝返り運動は、体全体のリラックスにもつながるため、睡眠の質向上にも効果的です。自分に合ったペースで続けることが、健康な体作りの基本となります。
このようなシンプルな運動を取り入れるだけで、日常生活でのめまいの予防効果を実感できる場合が多いです。
小脳トレーニング
小脳トレーニングは、体のバランス感覚を向上させるために有効な方法です。具体的には、両腕を肩の高さに上げ、動かさずに親指の爪を目で追う運動があります。頭は動かさずに目だけで追うことで、視覚と脳の連携を強化します。
このエクササイズは、普段あまり使わない感覚を刺激するため、バランス感覚を改善する効果を期待できます。最初は数分から始め、徐々に回数や時間を増やしていくとよいでしょう。
継続することで、自然な平衡感覚の回復につながり、日常生活でのふらつきが軽減されることがあります。
自宅で簡単にできる運動ですので、テレビを見ながらでも実践可能です。習慣化することで、体全体のリズムが整い、めまいの予防に貢献します。
また、運動の後はしっかりと水分補給を行い、体のバランスを整えることも忘れずに行いましょう。
バランスの良い食事と禁煙
健康な体作りには、適切な栄養摂取が重要です。たんぱく質、鉄分、カルシウム、ビタミンなど、必要な栄養素をバランスよく摂取することで、血流の改善や疲労回復が期待できます。日々の食事が体の基礎を作るため、食生活の見直しが重要となります。
たとえば、鶏肉や魚からはたんぱく質、レバーや赤身肉からは鉄分、乳製品や小魚からはカルシウムを効率よく摂ることができます。さらに、果物や豚肉などでビタミンBやCを補うと良いでしょう。
また、禁煙は全身の血管の状態を改善し、内耳や脳に十分な血液が行き渡る効果があります。毎日の食生活と習慣の見直しが健康維持のポイントです。
これらの改善は一度に全てを変えるのは難しいですが、少しずつ生活に取り入れることで大きな効果が期待できます。食事や生活習慣の細かな工夫が、将来的な健康トラブルの予防につながります。
健康で活力ある毎日を送るために、まずは自分の食生活を見直し、必要な栄養素を意識して摂取することをおすすめします。
めまいの症状が出たときに受診すべき診療科
めまいの症状が出た場合、どの診療科を受診すればよいのか迷うこともあるでしょう。症状の現れ方や伴う他の症状に応じて、適切な診療科を選ぶことが大切です。
正しい判断をすることで、早期に原因を特定し、適切な治療を受けることができます。ここでは、めまいのそれぞれのタイプに応じた受診科について詳しく説明します。
回転性めまいと耳鼻咽喉科
回転性めまいでは、内耳のバランスを司る部分の異常が疑われるため、まずは耳鼻咽喉科を受診するのが基本です。耳鼻咽喉科では、耳の中の検査や聴力テストを通じて、正確な診断が行われます。
治療方法としては、耳石の位置を正すためのリハビリや、必要に応じた薬物療法が行われることが一般的です。定期的な検査が、再発防止にも繋がります。
症状が改善しない場合や頻度が高い場合は、さらなる検査が必要となる場合もあります。早めの受診で迅速な対処が可能です。
家族にも症状の変化を伝え、必要な際には同行して受診するのも良いでしょう。
浮動性めまいと脳神経内科外科
浮動性めまいには、脳の血流不足や炎症、さらには脳に関連する病気が隠れている可能性があります。そのため、脳神経内科や外科での診察が推奨されます。病院では、頭部の画像診断や各種検査を通じて、脳の状態が詳しく評価されます。
脳梗塞や脳出血、脳腫瘍といった深刻な病気の早期発見が、治療の成功に直結します。症状が長期間続く場合は、専門医に早急に相談することが必要です。
症状が進行する前にしっかりと検査を受け、適切な治療計画を立てることが大切です。
立ち眩みと内科循環器
立ち眩みは、体が急に立ち上がったときに血液が十分に脳へ行き渡らずに起こるため、内科や循環器内科での検査が必要となります。血圧測定、心電図、血液検査などを通じて、原因が詳しく調べられます。
検査結果により、必要に応じた薬物療法や生活習慣改善の指導が行われ、心臓の働きをサポートする治療が検討されます。症状が現れたら、早めに医療機関を受診することが重要です。
大きな病気につながる可能性もありますので、疑わしい症状があればすぐに専門の診療科での対応を検討することが大切です。
普段の健康管理の注意点
めまいが起きたときだけでなく、普段からの健康管理が何より大切です。日々の生活の中で、体調の変化に気づくことが予防への第一歩となります。
ここでは、生活の中で特に気をつけたいポイントと、健康維持のための工夫について詳しく説明します。
日常で気をつけるポイント
現代の忙しい生活の中で、毎日のちょっとした体調の変化は見逃しがちです。しかし、めまいのような症状は、体からの大切なサインでもあります。日々の体調や生活リズムに敏感になり、違和感を感じたら記録する習慣をつけましょう。
体調変化をノートに残すなどすると、後から症状の傾向が分かり、早めの受診につながります。日々の体のサインをしっかりとチェックすることが大事です。
また、ストレスの管理や適度な運動も、体調維持に大きく貢献します。周囲の人と情報を共有することで、更に自分に合った対策を見つけ出すことができます。
体調や気分に変化を感じたら、無理をせずに休息を取ることも忘れずに行いましょう。
生活習慣改善がもたらすメリット
規則正しい生活、バランスの良い食事、適度な運動は、めまいをはじめとするさまざまな健康トラブルの予防につながります。毎日の小さな努力が健康な体を作り上げ、生活の質を向上させます。
たとえば、毎日の散歩や軽いストレッチ、趣味として体を動かすことで、心身共にリフレッシュできる効果が得られます。これにより、慢性的な疲労やストレスが軽減されるでしょう。
また、継続は力なりという言葉の通り、日々の生活習慣を改善し、毎日実践することで、体全体の調子が整い、将来の健康リスクも減少します。
無理のないペースで自分に合った健康管理法を見つけ、楽しみながら改善していくことで長期的な健康に繋げていきましょう。
まとめ
本記事では、めまいの種類や原因、予防策、そして症状が出たときに受診すべき診療科について詳しく解説しました。回転性、浮動性、立ち眩みの特徴を理解し、適切な対処法を知ることで、日々の生活がより安心したものになります。
また、十分な睡眠、定期的な寝返り運動、小脳トレーニングやバランスの良い食事、そして禁煙といった生活習慣の改善が、めまいの予防や健康維持に大変有効であることを確認しました。
自分の体調に注意を払い、もし異変を感じたら迷わず医療機関を受診してください。積極的な健康管理で、安心して毎日を過ごしましょう。
めまいについて よくあるご質問
Q. 耳鼻咽喉科と脳神経外科、どちらに行けばよいですか。
A. 記事の前半でご紹介した「すぐに救急車を呼んだほうがよいめまい」に当てはまるときは救急です。当てはまらず、聞こえにくさや耳鳴りを伴うときは耳鼻咽喉科、頭痛やしびれを伴うとき、症状が長引くときは脳神経外科が適しています。迷うときは、どちらかを受診していただければ、必要に応じてもう一方をご紹介します。
Q. 頭を動かしたときだけ、数十秒ぐるぐる回ります。脳の検査は必要ですか。
A. 良性発作性頭位めまい症の特徴に当てはまります。ただし、同じような症状が脳の病気で起きることもあるため、初めての場合や、いつもと様子が違う場合は一度診察を受けてください。
Q. 片頭痛持ちです。頭痛がないのにめまいだけ起きることはありますか。
A. あります。前庭性片頭痛では、発作のときに頭痛を伴わないことがあります。詳しくはめまいと頭痛の意外な関係?前庭性片頭痛の症状と治療法を解説をご覧ください。
Q. 検査で「異常なし」と言われましたが、めまいが続きます。
A. 画像で異常が出ないめまいもあります。症状の経過を記録して(いつ・何をしたとき・何分続いたか)、持参していただくと診断の助けになります。
参考文献
日本めまい平衡医学会 診断基準化委員会 (2017)「めまいの診断基準化のための資料 診断基準 2017年改定」Equilibrium Research, 76(3), pp.233-241.
日本めまい平衡医学会 診断基準化委員会 (2019)「前庭性片頭痛 (Vestibular Migraine) の診断基準」Equilibrium Research, 78(3), pp.230-231.
日本めまい平衡医学会 (2023)『良性発作性頭位めまい症 (BPPV) 診療ガイドライン 2023年版』金原出版.
Kattah, J.C., Talkad, A.V., Wang, D.Z., Hsieh, Y.H. and Newman-Toker, D.E. (2009) ‘HINTS to diagnose stroke in the acute vestibular syndrome’, Stroke, 40(11), pp.3504-3510. doi:10.1161/STROKEAHA.109.551234
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたもので、個別の診断や治療方針を示すものではありません。症状については医療機関にご相談ください。
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