普段はあまり頭痛を感じないのに、ある場所に行くと急に頭が痛みだして、十分な睡眠をとっていても、すっきりせず困っている方は少なくありません。人によっては自宅では大丈夫なのに、特定の環境だと痛みが増してしまうこともあります。

 

実は、このようなケースでは臭いが関係している場合があります。次からの項目で理由とメカニズムを解説します。

1.特定の場所で起こる頭痛はしっかり寝ていても治まらない?

1-1. 自宅や病院では大丈夫なのに…特定の環境だけで頭痛が起こる一因

特定の場所へ行くと途端に頭痛が発生することがあります。空調や騒音も影響しますが、臭いが原因になるケースは意外と多いです。

たとえば、通勤電車で隣に座った人の体臭が強いとき、鼻が刺激されて頭痛が誘発されることがあります。

 

 

1-2. そもそも臭いが頭痛を誘発する仕組み

鼻は、ただ空気を吸い込むだけでなく、臭いという刺激を脳へ伝えます。刺激によっては自律神経が乱れやすくなり、筋肉のこわばりや血管の収縮が起こりやすくなります。

その結果、せっかく十分な睡眠をとっていても、頭痛につながることがあるのです。

部屋の換気やマスクなどで臭いを軽減すると症状が落ち着く場合があります。

 

 

2.臭いで起こる頭痛の種類

2-1.どんな臭いが頭痛を引き起こす?

最近の研究(Imai et al. 2023)によると、臭いによる頭痛の誘発原因として、下記が挙げられています。

・香水(55.4%)

・タバコ(47.5%)

・体臭(32.7%)

・汗(19.8%)

タバコの煙は副流煙を含めて鼻やのどを刺激しやすく、頭痛を感じる方が多いです。香水の場合は、アルコールや合成香料の成分が脳にとって強い刺激となり、頭の血管が過剰反応して痛みにつながることがあります。

ワキガ(腋臭症)はアポクリン汗腺から出る汗が細菌によって分解され、特有のきついにおいを発するのが特徴です。他の研究(Silva-Neto RP, et al. 2017)によると、こうしたにおい刺激に敏感な方は自律神経が乱れやすく、偏頭痛などの痛みが出やすい傾向が確認されています。

 

2-2. 周囲の臭いで頭痛が発生?


通勤電車や密閉された部屋など、人が集まる場所で強いにおいを嗅ぎ続けると、鼻だけでなく三叉神経までもが刺激されます。これにより血管が拡張や収縮を繰り返し、頭部に痛みが生じるのです。一度ひどい頭痛になると、家に帰ってしっかり休んでも痛みが尾を引くことがあります。

 

2-3. 実は自分が原因? 他人を頭痛にさせてしまう可能性も


「体臭のきつい人のそばにいると頭が痛い」と感じる方は少なくありません。逆にいえば、自分のワキガや香水が強いと、周りの人の頭痛を引き起こすことが考えられます。

ワキガは本人が慣れてしまい気づきにくい場合も多いです。家族や同僚が頭痛を訴えているのに原因がはっきりしないときは、自分のにおいについて客観的にチェックするとよいかもしれません。

デリケートな問題ですが、原因を把握できれば早めに対策をとることができ、互いにストレスを減らしやすくなります。

 

 

3.臭いによる頭痛を防ぐ日々の対策

臭いが原因で頭痛が起こる方でも、事前に対策しておくと症状を抑えやすくなります。以下の方法を試すと、寝ても治りにくい痛みが軽くなる可能性があります。

 

3-1. 頭痛が起こりやすい空間を意識した消臭&換気対策


家庭や職場など、長時間滞在する場所をこまめに換気すると、空気の停滞を防ぐことができます。トイレや更衣室などのニオイがこもりやすい空間には脱臭機を取り入れると効果的です。鼻が弱い方はアロマディフューザーで気になる臭いを相殺する工夫もあります。眠っても頭がスッキリしない原因が部屋にある場合、改善しやすくなります。

 

3-2. ニオイの強い場所でのセルフケア


満員電車や人混みなど、避けづらい場面ではマスクをつけたり、ハンカチに好みのアロマを少量垂らすと頭が痛みにくくなります。イヤホンや音楽で自分だけの空間を作り、意識を臭いからそらす工夫も一つの手です。外出先で頭が痛くなったら、カフェや休憩所に立ち寄って深呼吸すると落ち着きやすくなります。帰宅後にシャワーを浴びたり枕カバーを取り替えると、寝るときの不快感を減らせます。

 

3-3. 生活習慣の見直しで臭い&頭痛をダブルケア


疲労がたまると自律神経が乱れやすく、臭いに過敏になる方がいます。適度な運動やバランスの良い食事を心がけると、ニオイへの耐性が高まりやすくなります。水分を十分に摂り、体を清潔に保つと体臭が抑えやすいです。快適な温度と湿度に整えて眠ると深い睡眠を取りやすくなり、翌朝の頭痛が軽くなる場合もあります。

 

 

4.日々の対策が面倒な方へ|自分由来の頭痛を抑える方法

タバコや香水と違い、ワキガによる頭痛対策は毎日のケアが大変です。短時間で根本的な対策をとりたい方には、ミラドライやボトックス注射が選択肢になります。

 

4-1. ミラドライでワキガの原因をケア


ミラドライは、ワキガや多汗症の原因となる汗腺をマイクロ波で加熱して減らす治療です。保険適用外ですが、一度受けると効果が長く続くといわれています。脇の臭いが減ると、周囲の人の頭痛や自分のストレスが抑えられます。

 

4-2. ボトックス注射で汗をコントロール


ボトックス注射は、筋肉だけでなく汗腺の働きを抑える目的にも使われています。効果は数か月ほど続くことが一般的です。日常的なケアが負担に感じる方や、ワキガ対策を手軽に始めたい方に好評です。脇の臭いが減ると、頭痛を起こす場所を気にしなくなる方もいます。

 

ボトックスについて、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

(外部リンク:M&B美容皮フ科クリニック)

 

 

 

5.まとめ


毎日の生活を送るうえで、頭痛が続くのは大きな負担です。特定の環境で生じる痛みが寝ても良くならないなら、臭いが関係しているかもしれません。

部屋の換気やマスクなどのセルフケアを行っても解決しにくい方は、ミラドライやボトックス注射による根本治療も選択肢になります。

ワキガを軽減すると自分も周りも快適になり、頭の痛みを気にせず過ごせるようになる可能性があります。

 

 

頭痛についてのご相談は、いわた脳神経外科クリニックへ。

 

 

 

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参考文献

Imai, N, Osanai, A, Moriya, A, Katsuki, M, and Kitamura, E. Classification of odors associated with migraine attacks: a cross-sectional study. Sci Rep. (2023) 13:8469. doi: 10.1038/s41598-023-35211-7

Silva-Néto RP, Rodrigues ÂB, Cavalcante DC, et al. May headache triggered by odors be regarded as a differentiating factor between migraine and other primary headaches? Cephalalgia. (2016) 37(1):20-28.

 

 

この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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