家族のからだの自由が効かなくなったり、判断力が落ちてしまったりしたとき、安全や安心をできるだけ守ってあげたいという思いは、多くの人が持っていることと思います。

障害や病気を持つ患者さんご自身が、生活へのサポートを求める事もあるでしょう。

介護保険に関わる多くの専門家は、家族や患者さんの悩みをよく理解しており、相談に応じていろいろなアドバイスをしてくれます。

家族だけで介護を抱え込まず、いろいろなサービスに助けてもらいましょう。

今回は、介護保険の福祉サービスの内容や、利用の仕方についてご紹介します。

 

介護保険とは

 

介護保険とは、介護が必要と認められた40歳以上の方に対して、必要なサービスを受けられる制度です。サービスを受けられる条件は、年齢によって異なります。

40~64歳 加齢を原因とした特定の疾患を原因とする、要介護(支援)状態に利用可能

65歳以上 要介護(支援)状態利用可能

 

どんな時に介護保険を申請するのか

 

ご家族の介護、またはご自身の生活に、以下のような困りごとはありませんか?

心当たりがある場合は、お住まいの地域の窓口や、「地域包括支援センター」に相談してみましょう。介護保険を申請することで、どのようなサービスが役に立つのか検討することができます。

・リハビリを受けたい

・家に閉じこもりがちになっており、コミュニケーションの場が不足している

・運動不足のため、身体を動かす場がほしい

・ヘルパーさんなどに家に来てもらい、介護サービスを受けたい

・介護のための備品や用具(車いすなど)を使いたい

・施設入所を考えている

・家族の介護負担が高くてこまっている

 

どこで介護保険を申請するのか

 

申請先は市町村の役所の窓口です。大阪市の場合は、「大阪市認定事務センター」です。地域包括支援センターに相談することも可能です。

記載する書類や持ち物が多いため、お住まいの地域の窓口に一度確認すると良いでしょう。

参考:大阪市の介護保険申請の流れ

 

 

どんなサービスを受けるのがいい?

 

どのサービスが合っているかは人によって様々です。

申請の手続きが進むと、担当のケアマネージャーと一緒にケアプランを考えます。

認定された介護度や、患者さんご本人やご家族の希望によって選択肢が異なりますので、ケアマネージャーや主治医に、具体的な困り事を相談してみましょう。

 

 

介護認定の結果が現状と合わなくなってきたら?

 

介護保険には有効期間があり、期限が来ると更新の手続きが必要です。

しかし、症状が進んでしまうことで、現状のサービスではサポートが不十分になることもあり得ます。

こうした時には、ケアマネージャーに相談して「区分変更」を検討しましょう。

区分変更とは、有効期限が来るのを待たずに要介護度の変更を申請することです。この手続きをすることで介護度が上がれば、現状に合うサポートやサービスを受けられる可能性があります。

ただし、区分変更をしても必ずしも介護度が上がるとは限りません。かえって介護度が下がる可能性もあります。

担当のケアマネージャーとよく相談しながら区分変更を検討することが大切です。

 

当院がおすすめする利用の仕方

 

当院では、物忘れや認知症の患者さんにデイサービスの利用をお勧めしています。サービス内容は、患者さんのニーズや施設によって様々ですが、主に以下のような効果が期待できます。

人と関わる機会が増え、前向きな気持ちになる

 

家に閉じこもったり、テレビを見て過ごす時間が長いと、認知機能の低下が進んでしまう事があります。いくつかの研究をまとめたレビュー論文では、就労や地域グループ活動など本人が何らかの役割を持つことが認知症発症リスクを下げたり、同居者以外との交流が少ないと認知症を伴う要介護状態になりやすい事が報告されています。

また、ポジティブな感情がない人に比べ、高い人では認知症発症リスクが低いことが分かっています。

デイサービスを利用すると家族以外の人と関わる機会が増えます。様々なイベントやレクリエーションを楽しむこともできるため、認知症の進行を遅らせたり、予防したりすることに効果的です。

 

生活リズムが整い、健康や安全確保につながる。

 

認知症になると生活リズムが乱れてしまい、介護をする家族の睡眠時間が削られるなど、周囲へ影響を及ぼすことがあります。症状が進むと、入浴や食事といった基本的な生活動作も難しくなり、生活リズムだけでなく清潔保持や体調管理にも手厚いサポートが必要になります。

決まった時間にデイサービスに通う事で、適度な疲労を感じられるため夜の睡眠が安定したり、メリハリのある生活を取り戻すことが期待できます。また、デイサービスでは入浴や食事の提供もあるため、乱れてしまった生活を整える機会を得られます。

介護や支援は、長期的な目線でとらえ、周囲と協力しながら少しずつ修正や改善を繰り返す事が必要です。

生活の困難を患者さん一人で、または家族だけで抱えてしまうと、狭い範囲や少ない人数に負担が集中してしまうため、短期間で介護が破綻してしまう可能性もあります。

そうなってしまう前にぜひ当院にご相談ください。

患者さんの状態を継続的に観察しながら、介護保険申請や区分変更などのご提案をさせていただきます。

 

 

 

 

参考文献:

・介護保険について(40歳になられた方へ)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf

・介護保険給付一覧表2021 株式会社アントレックス

・要介護認定における区分変更とは?メリットと注意点を正しく理解しよう

https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/kaigo/column5/12/

・高杉友, & 近藤克則. (2020). 日本の高齢者における生物・心理・社会的な認知症関連リスク要因に関するシステマティックレビュー. 老年社会科学42(3), 173-187.

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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