令和6年6月1日から厚生労働省の診療報酬の改定に伴い、これまでの「特定疾患療養管理料」から「生活習慣病管理料箇条書き(Ⅰ)(Ⅱ)」へ移行しております。

 

この改定では、お一人おひとりの服薬・食事・運動・喫煙・家庭での血圧や体重測定・飲酒などの状況に応じた療養計画書を作成し、 目標設定を行うことが決められています。これは、医師や看護師、薬剤師などの医療職と患者様が、 ともに長期的な管理をサポートしていくためです。

 

生活習慣病の管理には日々の生活習慣の改善が非常に重要です。

皆様が自分自身の健康状態を正しく理解し、日常生活のなかで具体的な改善策を取り入れるために知っていただきたい情報をまとめました。

私たちと一緒に、 無理なく取り組める一歩から始め、 健康的な生活を目指していきましょう。

 

 

高血圧は生活習慣病による死亡リスクを高める

高血圧は、日本人の生活習慣病による死亡に大きな影響を及ぼす要因です。1)

上の血圧(収縮期血圧)、下の血圧(拡張期血圧)のどちらか一方でも下記の数値以上であれば高血圧と診断されます。2)家庭血圧の数値が優先です。

 

診察室血圧*1 :140/90mmHg以上

家庭血圧*2:135/85mmHg以上

 

*1 診察室血圧:病院で測定する血圧。数回の測定結果で判定

*2 家庭血圧:自宅で測定する血圧。5~7日の平均で判定

 

診察室血圧130/80mmHg以上、家庭血圧125/75mmHg以上も合併症のリスクを高めるため、注意が必要です。

 

高血圧のほとんどは生活習慣や遺伝的体質が原因

高血圧は、本態性高血圧(原因が1つに定められない高血圧)と、二次性高血圧(原因が明らかな高血圧)に分類されます。2)

 

日本人にみられる高血圧の約8〜9割は、本態性高血圧です。原因は、遺伝的な要因、肥満、食塩の過剰摂取、運動不足、ストレス、飲酒などが組み合わさって起こるとされています。1)2)

 

二次性高血圧は、甲状腺や副腎の病気、血管の病気、薬の副作用などによって起こります。2)

 

高血圧を放置するとさまざまな合併症につながる

高血圧を放置すると、動脈硬化が進み、以下の病気を起こす危険性があります。1)2)

 

  • 狭心症
  • 心不全
  • 心筋梗塞
  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • 腎臓病

 

呼吸困難・めまい・ふらつき・足の冷え・早朝の頭痛・夜の頻尿などの症状は、高血圧により、心臓や脳、腎臓などにも影響が及んでいるサインかもしれません。2)症状があれば、主治医に伝えましょう。

 

高血圧の治療目的は心臓病・脳卒中・腎臓病の発症・悪化の予防

高血圧の一般的な治療では、以下の血圧を目指していきます。2)

 

 

75歳未満の目標

75歳以上の目標

診察室血圧

130/80mmHg未満

140/90mmHg未満

家庭血圧

125/75mmHg未満

135/85mmHg未満

 

合併している病気などにより、目標とする血圧は変わります。

主治医が決定した目標値を目指しましょう。

 

高血圧治療は生活習慣を整えることが重要

高血圧の治療は、生活習慣を整えることが重要です。高血圧の要因となる塩分、肥満、飲酒、運動、ストレスの対策と禁煙を実践しましょう。

 

食塩は1日6g未満

食塩の摂取量が多い人が減塩すると、血圧を下げる効果が期待できます。

1日に摂取する食塩は「6g未満」にしましょう。2)

 

以下は、食塩の摂取量を抑える食生活の工夫です。2)

 

  • 食べ過ぎない
  • 麺類の汁は残す
  • 調味料をたくさん使わない
  • 外食や加工品は控える
  • 香味野菜や香辛料などを使用し、調味料を控える
  • 低塩タイプの調味料を選ぶ

 

管理栄養士が栄養食事指導により、適切な食生活をサポートします。

 

適正体重を維持

肥満の場合は適正体重への減量により、血圧の低下が期待できると言われています。2)肥満に該当するかは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割って出る「体格指数(BMI)」で判断が可能です。2)

 

BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

 

BMIの適正範囲は18.5~25.0(kg/m2であり、BMI25.0を超える人は肥満に該当します。

適切な食生活と運動習慣の継続で、適正体重を維持しましょう。2)

 

飲酒は適量

多量な飲酒は高血圧の原因となります。アルコール自体の1日の摂取目安量は以下のとおりです。2)

 

男性のアルコール摂取量

20〜30mL/日以下

女性のアルコール摂取量

10〜20mL/日以下

 

お酒の種類ごとの飲酒量の目安は、以下を参考にしてください。2)

  • ビール中瓶:1本
  • 焼酎:半合
  • 日本酒:1合
  • ウイスキー・ブランデー:ダブルで1杯
  • ワイン:2杯

 

運動は継続が大切

高血圧の治療には、速歩き、ステップ運動、ランニングなどの有酸素運動がよいとされています。運動の強度はややきつい程度が適切です。「きつい」と感じる運動を続けると、血圧が上がる可能性があります。2)

 

運動のポイントは以下のとおりです。

  • 毎日30分以上、もしくは週180分以上の運動
  • 有酸素運動+レジスタンス運動(スクワットや腕立て伏せなどの筋力トレーニング)やストレッチ運動の組み合わせ
  • 歩く機会を増やす、階段を使う、掃除するなど、日常生活でも身体を動かす

2)

 

十分な睡眠と休養をとる

精神的なストレスや過度の疲れが蓄積すると、血圧は上がりやすくなります。4)5)毎日規則正しい生活を送り、十分な睡眠と休養をとることを心がけましょう。病気に関する不安や悩みがあれば、主治医や看護師に相談しましょう。

 

看護師は、血圧コントロールのために必要な生活習慣に関するアドバイスを行います。

 

喫煙者は禁煙する

喫煙は動脈硬化を加速させ、心臓病や脳卒中、腎臓病のリスクを高める原因になります。喫煙者は禁煙しましょう。3)禁煙サポートが必要な場合は主治医に相談しましょう。

 

血圧を下げる薬は決められたとおりに服用する

血圧のコントロールがうまくいかず、目標の血圧値まで下がらない場合は、降圧薬を服用します。おもな降圧薬の種類と副作用は以下のとおりです。2)

 

降圧薬の種類

目的

おもな副作用

β遮断薬

心臓の過剰な作用を抑制して血圧を下げる

糖脂質代謝異常・呼吸器疾患の悪化など

カルシウム拮抗薬

血管を拡張して血圧を下げる

便秘・動悸・ほてり・むくみ・歯茎の腫れなど

利尿薬

血管から水分と食塩を抜いて血圧を下げる

低カリウム血症・高尿酸血症・日光過敏症など

ARB、ACE阻害薬

血管を収縮させる体内物質をブロックして血圧を下げる

ARB:高カリウム血症など

ACE阻害薬:血管の浮腫、咳・高カリウム血症など

※血圧値や全身状態、その他の病気の有無などを考慮し、主治医が適切な薬の種類や量、組み合わせ、飲む時間帯を決めます。

 

高血圧以外の治療中の病気や飲んでいる薬がある場合は必ず主治医に伝えましょう。

 

薬を飲み忘れた場合の対処法は、薬の種類によって変わります。事前に主治医や薬剤師に確認しておくことが大切です。2)

 

 

家庭血圧の測定は高血圧治療に必要不可欠

血圧は、人によって測定する場所や時間で値が変わる場合があります。診察室で測定するときだけ高くなる方や、家庭で測るときだけ高くなる方、ストレスがかかっているときに高くなる方など、さまざまです。2)5)そのため、家庭で継続的に血圧を測ることが重要です。

 

家庭で測定する際は、以下に注意して測定しましょう。

  • 朝と夜の1日2回
  • 座った姿勢で測定する
  • 動いた後は1~2分安静にしてから測定する
  • 測った血圧はすべて血圧手帳に記録する
  • 職場やストレスがかかっているときも測定する
  • 血圧計は上腕にカフを巻いて測るものを選ぶ(手首で測るタイプは血圧値が正確に出にくいため選ばない)

 

血圧測定での不明点や疑問点は看護師、主治医に相談しましょう。

 

 

体重管理・食事・運動・禁煙・ストレス・飲酒などの生活習慣で、「もう少し取り組みが必要かも」「サポートがあれば達成できそうかも」という内容はありましたか?

少し工夫すればできそうな内容から目標を決め、達成に向けて一緒に取り組んでいきましょう。

 

 

 

参考URL

 

1)厚生労働省|e-ヘルスネット 高血圧

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-003.html

2)高山市|一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話

https://www.city.takayama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/018/062/04.pdf

3)厚生労働省|e-ヘルスネット 喫煙と循環器疾患

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-002.html

4)国立研究開発法人 国立循環器病研究センター|高血圧

https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/hypertension-2/

5)服部朝美,宗像正徳 高血圧とストレス―24時間血圧コントロールの重要性

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/60/5/60_398/_pdf

 

 

 

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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