アセトアミノフェンは1873年に合成された薬剤で、初めて臨床応用されてから100年以上にわたり世界中で使用されています。他のNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)と比べて、消化性潰瘍や腎障害などの副作用が少ないことから、解熱鎮痛を目的に医療用および一般用医薬品として広く用いられています。
アセトアミノフェンは、小児、妊婦、高齢者など幅広い年齢層で安全に使用でき、頭痛診療においても重要な薬剤です。
カロナールとアセトアミノフェンは、基本的に同じ薬です。
- アセトアミノフェン: これは有効成分の名前で、解熱鎮痛薬として広く使われています。頭痛や発熱、筋肉痛などに効果的です。
- カロナール: これはアセトアミノフェンを主成分とする日本国内で販売されている商品名です。したがって、カロナールもアセトアミノフェンが含まれています。
つまり、カロナールはアセトアミノフェンを成分とする特定の薬のブランド名です。成分自体には違いはありませんが、製品名が異なるだけです。
アセトアミノフェンの作用機序
アセトアミノフェンは、熱を下げる解熱作用と痛みを緩和する鎮痛作用の2つの効果を持ちます。作用機序の一部は未解明な点もありますが、脳の視床下部にある体温中枢に作用し、末梢血管を拡張して体外へ熱を放散することで体温を下げるとされています。
また、体内で発熱や痛みを引き起こす原因物質である「プロスタグランジン(PG)」の合成を抑えることでも、痛みや熱を和らげます。さらに、アセトアミノフェンはTRPV1受容体を活性化し、疼痛閾値を上昇させる効果があります。TRPV1受容体は、痛みや熱の感受性に関与するイオンチャネルで、その活性化により痛みの信号が抑制されると考えられています。
子供の片頭痛に対して
アセトアミノフェンは、子供の片頭痛において第一選択薬とされています。
アセトアミノフェンと他の鎮痛成分の違い
アセトアミノフェンは、他の成分(例えばイブプロフェン、ロキソニン、アスピリン)と比べて、COX-1やCOX-2の阻害作用がほとんどないため、抗炎症作用は弱く、アスピリンのような血小板凝集作用もありません。体温中枢に関与するプロスタグランジンの合成阻害はアスピリンと同程度ですが、末梢でのプロスタグランジン合成阻害はアスピリンに比べて極めて弱いです。そのため、胃粘膜障害(消化管出血や胃潰瘍)、腎障害、出血傾向などの副作用が少ないのが特徴です。
アセトアミノフェンの片頭痛に対する臨床試験
無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、アセトアミノフェンとプラセボを比較しました。その結果、アセトアミノフェンは2時間後の頭痛反応率や無痛率でプラセボよりも有意に高く、痛みの強度や機能障害、光過敏症、音過敏症も改善しました。アセトアミノフェンは片頭痛の治療に効果的で、安全で耐容性も良好であることが示されました。
アセトアミノフェンの注射薬『アセリオ』
片頭痛は強い頭痛発作だけでなく、吐き気や嘔吐を伴います。吐き気で内服が困難な場合には、点滴(アセリオ)での投与が可能です。
アセトアミノフェンの副作用
NSAIDsでは腎障害の問題がありますが、アセトアミノフェンでは腎障害のリスクが少なく、服用後に眠気を引き起こすこともありません。ただし、大量に服用すると肝機能障害が発現する可能性があります。長期投与する場合は、定期的に肝機能を確認することが推奨されます。アセトアミノフェンは、小児、妊婦、高齢者などで幅広く安全に使用できる薬剤です。
市販薬に含まれるアセトアミノフェンで注意すべき点
アセトアミノフェンが配合された市販薬には、セデス、ノーシン、バファリンプラス、バファリンルナ、バファリンプレミアムなどがあります。これらの市販薬には、アセトアミノフェンの含有量が異なるほか、アセチルサリチル酸、エテンアミド、イブプロフェン、無水カフェイン、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロモバレリル尿素など複数の成分が含まれています。
アリルイソプロピルアセチル尿素は、鎮静作用があり、緊張や興奮、いらだちなどを鎮める効果がありますが、依存性があります。カフェインには、血管収縮作用や他の鎮痛薬の効果を増強させる作用、眠気を抑える作用があります。しかし、カフェインの離脱後に頭痛が生じることや、過剰摂取による頭痛が発生する可能性もあります。1か月に10日以上の頻度で内服している場合は、薬物乱用性頭痛に陥るリスクがあるため、自己判断で治療するのではなく、頭痛専門外来での相談が推奨されます。
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