【結論】頭痛(特に片頭痛)は「生活の整え方」で“発作の起きやすさ(しきい値)”を上げられる(Robblee and Starling, 2019)
1. 生活指導は「SEEDS(Sleep/Exercise/Eat/Diary/Stress)」で整理すると実践しやすい
2. コツは“完璧”ではなく一貫性(ルーティン):睡眠・食事・カフェイン・運動のブレを減らす
3. 「トリガー回避だけ」は不十分。ストレス対処や行動スキル(CBT/リラクセーション等)も重要
4. 頭痛日誌は診断と治療最適化の基盤。薬の使いすぎ(薬剤乱用頭痛)予防にも役立つ

大阪で頭痛相談・栄養療法相談なら、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。ご予約・お問い合わせは、下記から可能です。

 


「睡眠を取っているのに頭痛が減らない」「天気やストレスで左右される」「食べ物が原因かも…と不安」—そんなお悩みはよくあります。

本記事では、RobbleeとStarling(2019)の論文で提案されているSEEDS(睡眠・運動・食事/水分・日誌・ストレス)の枠組みを使って、頭痛(特に片頭痛)とライフスタイルの関係を、今日から実行できる形に整理します。


医療広告ガイドライン/薬機法への配慮(重要)

  • 本記事は一般的な情報提供であり、特定の治療効果を保証するものではありません。
  • 症状が強い場合や、急に性質が変わった頭痛、麻痺・ろれつ障害・高熱などを伴う場合は、早めに医療機関へご相談ください。

目次



1. 頭痛(片頭痛)とライフスタイルの基本

1-1. 生活でできることは「発作の起きやすさ」を下げること

片頭痛は「気合い」や「根性」で消えるものではなく、体質・神経の反応性に関連する疾患です。そのうえで、睡眠不足・食事の抜け・脱水・ストレスなど“環境要因”が重なると発作が起きやすくなるため、生活の整え方が重要になります。


1-2. まずは「SEEDS」でチェックすると整理しやすい

Robblee and Starling (2019) は、生活指導を5つにまとめるために SEEDS(Sleep/Exercise/Eat/Diary/Stress)を提案しています。患者さん側も「何から始めるべきか」が見えやすいのがメリットです。

SEEDS(5つの柱)

  • Sleep:睡眠の量と質、規則性
  • Exercise:段階的に運動習慣をつくる
  • Eat:規則的な食事、水分、カフェインの安定
  • Diary:頭痛日誌でパターンと薬の使用を可視化
  • Stress:回避ではなく対処スキル(CBT等)


2. SEEDSで整える:Sleep(睡眠)

睡眠は、片頭痛における「引き金」と「結果」が絡みやすい領域です。著者らは、一般的な睡眠衛生(sleep hygiene)を土台に、“寝室=睡眠の合図”を徹底することを推奨しています(Robblee and Starling, 2019)。

今日からできる睡眠のコツ(例)

  • 寝室は「暗く・涼しく・静か」に
  • 寝室でのスマホ・テレビ・タブレットは避ける
  • 就寝/起床時刻を決めて、できる範囲で揃える
  • 昼寝は基本的に避ける

注意点

  • 「20〜30分眠れないなら一度ベッドを出る」など、ベッド=焦りの場にしない工夫が提案されています。
  • いびきが強い・日中の強い眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるため、医療機関での相談が推奨されています。


3. SEEDSで整える:Exercise(運動)

「運動すると頭痛が出る気がする」という方もいますが、著者らは、体調に合わせた段階的導入を前提に、運動を生活介入の柱に据えています(Robblee and Starling, 2019)。


推奨の目安(論文ベース)

  • 目標:週3〜5回、30〜60分
  • 種類:「何が最良」と決め打ちせず、続けられる運動を選ぶ
  • 開始:最初は小さく始め、少しずつ増やす

運動介入の研究としては、有酸素運動がリラクゼーションや薬(トピラマート)と同程度に片頭痛頻度を減らしたとするRCTもあります(Varkey et al., 2011)。

注意点

  • 運動で悪化する場合は、運動強度・タイミング・水分/補食などの調整が必要になることがあります。無理に継続せず、医療者と相談してください。



頭痛が長引く方は、自己判断せず医療機関での評価がおすすめです。いわた脳神経外科クリニックでは頭痛の診療に加えて、必要に応じて血液検査を含む栄養評価のご相談も可能です(※初診の予約はデジスマ診察券から)。



4. SEEDSで整える:Eat(食事・水分・カフェイン)

食事は「特定の食品を犯人にする」よりも、規則性(食べない時間を作りすぎない、カフェイン量をぶらさない、水分を落とさない)に重点が置かれています(Robblee and Starling, 2019)。


食事・水分の実践ポイント

  • 規則的に食べる(欠食・絶食を避ける)
  • 十分な水分を意識する
  • カフェインは「ゼロ」か「少量で一定」に
  • AMFは一般的な目安として「8杯(8oz)」を紹介しています(AMF記事)

水分については、追加の水分摂取で頭痛エピソードの時間や強さが減った可能性を示すパイロット研究もあります(Spigt et al., 2005)。

注意点「チョコがトリガー」問題

著者らは、発作の前段階(前駆/前兆に近い時期)で甘いものを欲することがあり、「食べたから起きた」ではなく「起きる流れの一部として欲した」可能性もあると述べています。過度な食品回避で生活の質が下がらないよう注意が必要です。



5. SEEDSで整える:Diary(頭痛日誌)

頭痛日誌は、診断の精度を上げ、治療の効果判定をしやすくし、さらに薬の使いすぎを防ぐ“安全装置”にもなります。

おすすめ:信号機(Stoplight)日誌

  • :痛みなし
  • :軽い(生活は回る)
  • :中等度(支障あり)
  • :強い(寝込む)

※AMFでも同様の「ストップライト日誌」が紹介されています。

また、著者らは急性期薬(痛み止め等)の使用が増えすぎると、薬剤乱用頭痛につながり得る点にも触れており、日誌で頻度を把握する重要性を述べています。

参考として、薬剤乱用頭痛の診断基準は国際頭痛分類ICHD-3に記載されています(IHS, 2018)。



6. SEEDSで整える:Stress(ストレス)

ストレスは「なくす」より「扱う」ほうが現実的です。Robblee and Starling (2019) は、トリガー回避だけに頼るのは不十分であり、CBT(認知行動療法)・マインドフルネス・リラクセーション・バイオフィードバックなどのスキルが役立つと整理しています。


ストレス対処(例)

  • 呼吸法・漸進的筋弛緩法などのリラクセーション
  • 考え方・行動パターンを整えるCBT
  • マインドフルネス(瞑想)

睡眠に関連しては、不眠に対するデジタルCBT(dCBT-I)を扱った研究もあり、睡眠課題と頭痛の併存に介入する発想が示されています(Crawford et al., 2020)。



7. よくある質問(Q&A)

Q1. 片頭痛は「原因」を全部避ければ治りますか?

A. トリガー回避は有用ですが、それだけでは不十分とされています。生活全体の「規則性」や、ストレス対処スキルなどを組み合わせて“発作の起きにくさ”を高める発想が推奨されています(Robblee and Starling, 2019)。

Q2. 運動すると頭痛が出そうで怖いです

A. まずは短時間・低強度から始め、徐々に慣らす方法が提案されています(Robblee and Starling, 2019)。また、有酸素運動がリラクセーションや薬(トピラマート)と同程度に片頭痛頻度を減らしたとするRCTもあります(Varkey et al., 2011)。

Q3. 何を食べれば(避ければ)いいですか?

A. 著者らは「唯一の片頭痛食」はないとし、欠食を避ける・水分を保つ・カフェイン量を一定にする等の“安定性”を重視しています(Robblee and Starling, 2019)。

Q4. 頭痛日誌は何を書けばいいですか?

A. 完璧な記録より続く形が大切です。AMFで紹介される「信号機日誌(Stoplight diary)」のように、痛みの程度を色で記録する方法は負担が少なく、医師に状況を伝えやすくなります。



8. まとめ

  1. SEEDS(睡眠・運動・食事/水分・日誌・ストレス)で生活を見える化すると、対策が具体化しやすい。
  2. ポイントは“完璧”より一貫性(ルーティン)
  3. 頭痛日誌は治療を前に進める土台。薬の使いすぎの抑制にも役立つ。
カテゴリ SEEDS管理(推奨 / 方法 / 効果・補足)
睡眠
Sleep
主な推奨:睡眠の質と量を最大化(標準的な睡眠衛生)
具体的な行動
  • 寝室を暗く・涼しく・静かに
  • 就寝・起床時間を一定に
  • 昼寝は避ける
  • 20〜30分眠れない場合はいったん布団を出る
  • 就寝前のスマホ等の画面は避ける
期待される効果:慢性化の抑制や閾値の向上(Inferred)
補足:OSA(睡眠時無呼吸)スクリーニング(STOP-Bang)が推奨/睡眠制限療法で睡眠効率90%を目標
運動
Exercise
主な推奨:週3〜5回、30〜60分の有酸素運動
具体的な行動
  • ウォーキング、ジョギング、クロストレーニング、サイクリング等
  • 最初は「週1回5分」など小さく始めて、徐々に強度アップ
期待される効果:頻度・持続時間・重症度の減少/βエンドルフィン増加(Inferred)
補足:強度が上がるほど効果が高まる傾向。運動がトリガーの人は医師と相談し調整
食事
Eat
主な推奨:規則的な食事・十分な水分・カフェイン量の安定
具体的な行動
  • 1日3食、特に朝食は抜かない(起床30〜60分以内)
  • 水分:1日1.8L(コップ7〜8杯)を目安
  • カフェイン:1日200mg(コーヒー1〜2杯)未満
期待される効果:血糖の安定による発作予防(Inferred)/脱水回避/カフェイン離脱の予防
補足:特定の「片頭痛ダイエット」の根拠は限定的。低GI食・オメガ3に肯定的データが一部。BMI 18.5〜25.0推奨
日記
Diary
主な推奨:頭痛パターン把握+治療反応評価+薬の使用状況を可視化
具体的な行動
  • 頻度・持続時間・強度・随伴症状・月経周期を記録(カレンダー/アプリ)
  • 信号機日記:赤=寝込む/黄=活動制限/緑=機能維持
  • レスキュー薬の使用は週2日未満を目標
期待される効果:診断精度向上/薬剤乱用頭痛の予防/医師との共有がスムーズ
補足:初診前から記録開始が推奨
ストレス
Stress
主な推奨:不安・ストレスを下げる「行動療法」を取り入れる
具体的な行動
  • 認知行動療法(CBT)
  • マインドフルネス
  • バイオフィードバック
  • リラクゼーション(漸進的筋弛緩法、可視化など)
期待される効果:壊滅的思考の減少/障害度の低下/頻度・重症度の改善/不安・抑うつの緩和
補足:ストレス管理の中では、特にCBTのエビデンスが強い。効果は開始約5週間後から顕著になり得る

受診の目安
生活を整えても頭痛が続く、月の半分以上頭痛がある、痛み止めを週に何度も使う、症状が急に変わった—このような場合は、早めに医療機関へご相談ください。

頭痛は日常生活に大きな影響を及ぼします。薬物療法だけでなく、栄養素を活用した総合的なアプローチで、より快適な生活を目指しましょう。当院では、脳神経外科医として長年の経験を活かし、患者様一人ひとりに最適な頭痛管理をご提案いたします。



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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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参考文献

  1. American Migraine Foundation (2021) ‘Lifestyle Changes for Migraine Management’. Available at: https://americanmigrainefoundation.org/resource-library/lifestyle-changes-for-migraine/ (Accessed: 21 January 2026).
  2. Crawford, M.R., Luik, A.I., Espie, C.A., Taylor, H.L. and Burgess, H.J. (2020) ‘Digital Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia in Women With Chronic Migraines’, Headache. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32112436/ (Accessed: 21 January 2026).
  3. International Headache Society (2018) ‘8.2 Medication-overuse headache (MOH) – ICHD-3’. Available at: https://ichd-3.org/8-headache-attributed-to-a-substance-or-its-withdrawal/8-2-medication-overuse-headache-moh/ (Accessed: 21 January 2026).
  4. Robblee, J. and Starling, A.J. (2019) ‘SEEDS for success: Lifestyle management in migraine’, Cleveland Clinic Journal of Medicine, 86(11), pp. 741–749. doi: 10.3949/ccjm.86a.19009. (PDF/Article available at: https://www.ccjm.org/content/86/11/741) (Accessed: 21 January 2026).
  5. Spigt, M., Kuijper, E., van Schayck, C.P. and colleagues (2005) ‘Increasing the daily water intake for the prophylactic treatment of headache: a pilot trial’. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16128874/ (Accessed: 21 January 2026).
  6. Varkey, E., Cider, Å., Carlsson, J. and Linde, M. (2011) ‘Exercise as migraine prophylaxis: A randomized study using relaxation and topiramate as controls’, Cephalalgia, 31(14), pp. 1428–1438. doi: 10.1177/0333102411419681. Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21890526/ (Accessed: 21 January 2026).