【結論】頭痛予防に効果が期待できる栄養素
1. マグネシウム:片頭痛の発作頻度や持続時間を減少させる効果が報告されています
2. ビタミンB2(リボフラビン):高用量投与で片頭痛の発作頻度を有意に減少させます
3. コエンザイムQ10:ミトコンドリア機能を改善し、片頭痛予防に有効とされています
4. その他の栄養素:ビタミンD、ビタミンB群、オメガ3脂肪酸なども効果が期待されます
5. エビデンスレベル:日本頭痛学会ガイドライン2021では「弱い推奨/エビデンスの確実性C(低)」とされています
6. 重要な注意:栄養素は補助療法であり、第一選択薬ではありません。医師と相談しながら活用しましょう
「頭痛薬に頼りたくない…」「副作用の少ない予防法はないの?」「食事で頭痛を改善できないだろうか…」—頭痛に悩む多くの方から、このようなご相談をいただきます。
いわた脳神経外科クリニックでは、脳神経外科医として長年頭痛診療に携わってきた経験から、栄養素を活用した頭痛予防のアプローチもご提案しています。マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10などの栄養素は、国際的な研究で片頭痛予防への効果が報告されており、日本頭痛学会のガイドラインでも言及されています。
本記事では、科学的根拠に基づいた頭痛予防に効果的な栄養素について、脳神経外科医が詳しく解説します。
ご使用前にご確認ください(重要)
- 本記事で紹介する栄養素は栄養補助食品であり、医薬品ではありません
- 疾病の診断、治療、予防を目的とするものではありません
- 頭痛の原因は多岐にわたります。まずは医師の診察を受け、適切な診断を受けることが重要です
- 持病のある方、妊娠中・授乳中の方、他の薬を服用中の方は、必ず医師にご相談ください
- 当院では血液検査を含む栄養解析も行っております。個別の栄養状態に基づいた提案をご希望の方はご来院ください
- 栄養素の摂取により体調に異変を感じた場合は、直ちに使用を中止し、医師にご相談ください
この記事で分かること
・頭痛と栄養の関係:なぜ栄養素が頭痛予防に役立つのか
・マグネシウム:片頭痛予防における役割と摂取方法
・ビタミンB2:高用量投与の効果とエビデンス
・コエンザイムQ10:ミトコンドリア機能改善による頭痛予防
・その他の栄養素:ビタミンD、B群、オメガ3など
・日本頭痛学会ガイドライン:公式な推奨度とエビデンスレベル
・実践的な活用法:栄養素の選び方と注意点
大阪で頭痛相談・栄養療法相談なら、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。ご予約・お問い合わせは、下記から可能です。
目次
1. 頭痛と栄養の関係:なぜ栄養素が頭痛予防に役立つのか
1-1. 片頭痛とミトコンドリア機能障害
片頭痛の病態には、脳のエネルギー代謝障害が関与していることが分かっています (Gaul et al., 2015)。特に、細胞内のエネルギー産生を担うミトコンドリアの機能低下が片頭痛患者で認められることが、複数の研究で報告されています。
ミトコンドリア機能障害と頭痛の関係
- エネルギー不足:ATP産生の低下により、脳細胞がエネルギー不足に陥る
- イオンバランスの乱れ:細胞膜の安定性が失われ、神経興奮性が亢進する
- 血管機能の変化:血管拡張物質の放出が促進される
- 酸化ストレス:活性酸素種(ROS)の産生が増加し、神経炎症を引き起こす
1-2. 栄養素がミトコンドリア機能を改善するメカニズム
マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10などの栄養素は、ミトコンドリアの電子伝達系において重要な役割を果たします (Hajhashemy et al., 2024)。
| 栄養素 | ミトコンドリアにおける役割 |
|---|---|
| マグネシウム | ATP合成酵素の補因子として機能。ATP産生に必須 |
| ビタミンB2 | FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)の前駆体。複合体Iと複合体IIで電子伝達を担う |
| コエンザイムQ10 | 電子伝達体として、複合体I/IIからシトクロムCへ電子を輸送 |
1-3. 抗炎症作用と神経保護作用
これらの栄養素は、ミトコンドリア機能改善だけでなく、抗炎症作用や神経保護作用も持つことが明らかになっています (Okoli et al., 2019)。
- 酸化ストレスの軽減:抗酸化物質として活性酸素を除去
- 炎症性サイトカインの抑制:TNF-α、IL-6などの産生を抑制
- 神経伝達物質の調整:セロトニン、ドーパミンなどの代謝に関与
- 血管機能の改善:一酸化窒素(NO)の過剰産生を抑制
重要なポイント
・片頭痛の背景にはミトコンドリア機能障害がある
・マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10はミトコンドリア機能を改善する
・抗炎症作用・神経保護作用により、頭痛予防効果が期待できる
・ただし、これらは補助療法であり、医薬品の代替ではありません
2. マグネシウム:片頭痛予防の基礎栄養素
2-1. マグネシウムと片頭痛の関係
マグネシウムは、体内で300以上の酵素反応に関与する必須ミネラルです。片頭痛患者では、脳内および血清中のマグネシウムレベルが低下していることが多くの研究で示されています (Gaul et al., 2015)。
マグネシウムが片頭痛予防に役立つメカニズム
- NMDA受容体の調整:グルタミン酸受容体の過剰な活性化を抑制し、神経興奮性を調整
- 血小板凝集の抑制:血液の流れを改善し、脳血流を安定化
- セロトニン分泌の調整:神経伝達物質のバランスを整える
- 血管拡張の制御:カルシウム拮抗作用により、異常な血管拡張を防ぐ
- ATP産生の促進:エネルギー代謝を改善
2-2. 科学的エビデンス
マグネシウムの片頭痛予防効果については、複数のランダム化比較試験(RCT)とメタアナリシスが報告されています。
| 研究 | 用量 | 期間 | 結果 |
|---|---|---|---|
| Gaul et al. (2015) | 600mg/日 | 3ヶ月 | 片頭痛の頻度と強度が有意に減少 |
| Okoli et al. (2019) メタアナリシス |
500-600mg/日 | 12週間 | 片頭痛の重症度減少に関連 (研究間の異質性あり) |
2-3. 推奨される摂取量と食品源
研究で使用されたマグネシウムの用量は、1日500-600mgです。ただし、これは通常の食事から摂取する量とは別に、サプリメントとして摂取した場合の量です。
マグネシウムを多く含む食品(100gあたり)
- 海藻類:あおさ(3,200mg)、ひじき(640mg)、わかめ(110mg)
- 種実類:アーモンド(310mg)、カシューナッツ(240mg)
- 豆類:納豆(100mg)、豆腐(50-130mg)
- 魚類:まぐろ(45mg)、さば(30mg)
- 穀類:玄米(110mg)、そば(190mg)
マグネシウムサプリメント摂取時の注意点
- 過剰摂取のリスク:下痢、腹痛などの消化器症状が現れることがあります
- 腎機能障害がある方:マグネシウムの排泄が低下するため、医師に相談が必要
- 相互作用:一部の抗生物質や骨粗鬆症治療薬との相互作用に注意
- 開始時:少量から始めて徐々に増量することで、消化器症状を軽減できます
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3. ビタミンB2(リボフラビン):ミトコンドリア機能改善の鍵
3-1. ビタミンB2と片頭痛予防
ビタミンB2(リボフラビン)は、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)とFMN(フラビンモノヌクレオチド)の前駆体として、ミトコンドリアの電子伝達系で中心的な役割を果たします (Hajhashemy et al., 2024)。
ビタミンB2が片頭痛予防に効果的な理由
- ミトコンドリア機能の向上:複合体IとIIの機能を改善し、ATP産生を促進
- 酸化ストレスの軽減:抗酸化酵素の補因子として機能
- 神経保護作用:神経細胞のエネルギー代謝を改善
- 炎症抑制:抗炎症作用により、神経炎症を軽減
3-2. 科学的エビデンス
ビタミンB2の片頭痛予防効果は、高用量(400mg/日)での投与で最も効果が認められています。
| 研究 | 用量 | 期間 | 結果 |
|---|---|---|---|
| Gaul et al. (2015) RCT |
400mg/日 | 3ヶ月 | 片頭痛の痛みの強度が有意に減少 HIT-6スコア(頭痛負担)が有意に改善 |
| Okoli et al. (2019) メタアナリシス |
400mg/日 | 3-6ヶ月 | 1件のRCTで片頭痛頻度の有意な減少 (MD -2.00, 95%CI -2.60 to -1.40) |
| 日本頭痛学会 ガイドライン2021 |
400mg/日 | – | 弱い推奨/エビデンスの確実性C |
3-3. 推奨される摂取量と食品源
片頭痛予防のための研究では、1日400mgという高用量が使用されています。これは通常の食事からでは摂取困難な量であり、サプリメントでの補給が必要です。
ビタミンB2を多く含む食品(100gあたり)
- レバー類:豚レバー(3.6mg)、牛レバー(3.0mg)
- 乳製品:パルメザンチーズ(0.68mg)、牛乳(0.15mg)
- 卵類:鶏卵(0.43mg)
- 納豆:(0.56mg)
- 緑黄色野菜:ほうれん草(0.20mg)、ブロッコリー(0.20mg)
※通常の食事からは1日1-2mg程度の摂取が一般的です。400mgの摂取にはサプリメントが必要です。
ビタミンB2サプリメント摂取時の注意点
- 尿の色の変化:高用量摂取により尿が黄色くなることがありますが、これは正常な反応です
- 安全性:ビタミンB2は水溶性ビタミンで、過剰分は尿中に排泄されるため、比較的安全です
- 効果発現まで:最低3ヶ月間の継続摂取が推奨されています
- 光に弱い:保存時は遮光容器に入れ、直射日光を避けてください
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4. コエンザイムQ10:エネルギー産生の中核
4-1. コエンザイムQ10と片頭痛
コエンザイムQ10(CoQ10、ユビキノン)は、ミトコンドリアの電子伝達系で中心的な役割を果たす脂溶性物質です。体内で合成されますが、加齢とともに産生量が減少することが知られています (Hajhashemy et al., 2024)。
コエンザイムQ10が片頭痛予防に効果的な理由
- 電子伝達体:複合体I/IIからシトクロムCへ電子を輸送し、ATP産生を促進
- 強力な抗酸化作用:活性酸素を除去し、酸化ストレスを軽減
- 抗炎症作用:炎症性サイトカインの産生を抑制
- 神経保護作用:神経細胞を酸化障害から保護
- 血管機能の改善:血管内皮機能を改善し、血流を安定化
4-2. 科学的エビデンス
コエンザイムQ10の片頭痛予防効果については、複数のRCTで検証されています。
| 研究 | 用量 | 期間 | 結果 |
|---|---|---|---|
| Gaul et al. (2015) RCT |
150mg/日 (複合配合) |
3ヶ月 | マグネシウム・ビタミンB2との複合投与で、片頭痛頻度が減少傾向(p=0.23) 痛みの強度とHIT-6スコアは有意に改善 |
| Okoli et al. (2019) メタアナリシス |
100-150mg/日 | 3ヶ月 | 片頭痛の頻度、持続時間、重症度について統計学的に有意ではないが減少傾向 (MD -0.44, 95%CI -2.14 to 1.26) |
| 日本頭痛学会 ガイドライン2021 |
100-150mg/日 | – | 弱い推奨/エビデンスの確実性C |
4-3. 推奨される摂取量と食品源
研究で使用されたコエンザイムQ10の用量は、1日100-150mgです。食品からの摂取量は非常に少ないため、サプリメントでの補給が実用的です。
コエンザイムQ10を含む食品(100gあたり)
- 肉類:牛肉(心臓11.3mg、肉3.1mg)、豚肉(心臓11.5mg、肉2.4mg)
- 魚類:イワシ(6.4mg)、サバ(4.3mg)、サケ(1.8mg)
- 植物油:大豆油(9.2mg)、菜種油(6.4mg)
- 種実類:ピーナッツ(2.7mg)、ゴマ(1.8mg)
※食品からの摂取だけで100-150mg/日を達成するのは困難です。サプリメントの活用をご検討ください。
コエンザイムQ10サプリメント摂取時の注意点
- 脂溶性:油脂と一緒に摂取すると吸収率が向上します。食後の摂取が推奨されます
- 還元型と酸化型:還元型(ユビキノール)の方が吸収されやすいとされています
- ワルファリン服用中の方:抗凝固薬の効果を減弱させる可能性があるため、医師に相談が必要
- 副作用:軽度の消化器症状(吐き気、下痢)が報告されていますが、一般的に安全性は高いとされています
- 効果発現まで:最低3ヶ月間の継続摂取が推奨されています
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5. ビタミンD:神経保護と炎症調整
5-1. ビタミンDと片頭痛の関係
ビタミンDは、骨代謝だけでなく、神経系の機能にも重要な役割を果たすことが分かっています。片頭痛患者では、ビタミンD欠乏が高頻度で認められることが報告されています (Hajhashemy et al., 2024)。
ビタミンDが片頭痛予防に役立つメカニズム
- 神経保護作用:神経細胞の生存とシナプス形成を促進
- 抗炎症作用:炎症性サイトカインの産生を抑制
- 酸化ストレスの軽減:抗酸化酵素の発現を促進
- カルシウム代謝の調整:細胞内カルシウム濃度を調整し、神経興奮性を制御
- 神経伝達物質の調整:セロトニンやドーパミンの合成に関与
5-2. 科学的エビデンス
ビタミンDの片頭痛予防効果については、複数の研究で報告されています。
| 研究タイプ | 用量 | 期間 | 結果 |
|---|---|---|---|
| RCT (Hajhashemy et al., 2024) |
50,000 IU/週 | 10週間 | 片頭痛の頻度が有意に減少 |
| RCT (Hajhashemy et al., 2024) |
2,000 IU/日 | 12週間 | 頻度、持続時間、グルタミン酸・NLRP3レベルが改善 |
| メタアナリシス (Hajhashemy et al., 2024) |
1,000-4,000 IU/日 | – | 片頭痛発作の頻度を有意に減少 強度や持続時間への効果は研究により異なる |
5-3. 推奨される摂取量と生成方法
ビタミンDは、日光を浴びることで皮膚で合成されるほか、食品からも摂取できます。
ビタミンDを多く含む食品(100gあたり)
- 魚類:サケ(32μg=1,280 IU)、サンマ(19μg=760 IU)、イワシ(32μg=1,280 IU)
- きのこ類:干しシイタケ(17μg=680 IU)、きくらげ(39μg=1,560 IU)
- 卵類:鶏卵(1.8μg=72 IU)
日光による合成: 夏季の晴天時、顔と手を15分程度日光にさらすことで、約1,000 IUのビタミンDが合成されます(個人差あり)。
ビタミンDサプリメント摂取時の注意点
- 過剰摂取のリスク:ビタミンDは脂溶性で体内に蓄積するため、過剰摂取により高カルシウム血症を引き起こす可能性があります
- 上限量:成人で1日4,000 IUが上限とされています(一部の研究では短期間の高用量使用も報告されています)
- 血液検査の推奨:ビタミンDの血中濃度を測定し、適切な用量を決定することが望ましいです
- 脂溶性:油脂と一緒に摂取すると吸収率が向上します
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6. その他の栄養素:補助的な役割
6-1. ビタミンB群(B6、B12、葉酸)
ビタミンB6、B12、葉酸は、ホモシステイン代謝に関与します。片頭痛患者では血中ホモシステイン濃度が高いことが報告されており、これらのビタミンの補給により、ホモシステイン濃度を低下させることができます (Hajhashemy et al., 2024)。
| 栄養素 | 用量 | 効果 |
|---|---|---|
| ビタミンB6 | 25-80mg/日 | ホモシステイン低下、片頭痛の重症度・頻度・持続時間の改善 |
| ビタミンB12 | 400-500μg/日 | ホモシステイン低下、頭痛頻度の減少 |
| 葉酸 | 2-5mg/日 | ホモシステイン低下、ビタミンB6・B12との併用で効果向上 |
6-2. オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)
オメガ3脂肪酸は、抗炎症作用を持ち、片頭痛の炎症性メカニズムに作用します (Hajhashemy et al., 2024)。
オメガ3脂肪酸の片頭痛予防効果
- 抗炎症作用:炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)の産生を抑制
- 神経保護作用:神経細胞膜の流動性を改善し、神経伝達を円滑にする
- 血管機能の改善:血管内皮機能を改善し、血流を安定化
推奨用量: EPA 1.8g/日で、片頭痛の重症度、頻度、障害度が改善されたと報告されています。
6-3. α-リポ酸
α-リポ酸は、強力な抗酸化物質で、ミトコンドリア機能を改善します (Hajhashemy et al., 2024)。
- 用量: 300-600mg/日
- 効果: 片頭痛の発作頻度、頭痛日数、頭痛強度の減少
- 作用機序: 酸化ストレスの軽減、ビタミンC・Eの再生、ミトコンドリア機能改善
6-4. ナツシロギク(Feverfew)
ナツシロギクは、伝統的に頭痛治療に使用されてきたハーブです。日本頭痛学会ガイドライン2021でも言及されています。
ナツシロギクの特徴
- 推奨: 日本頭痛学会ガイドライン2021で「弱い推奨/エビデンスの確実性C」
- 作用機序: 抗炎症作用、血小板凝集抑制、セロトニン分泌調整
- 注意: 血液凝固に影響する可能性があるため、抗凝固薬服用中の方は医師に相談が必要
頭痛予防・栄養療法の詳細は、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。お問い合わせは、下記から可能です。
7. 日本頭痛学会ガイドライン2021における推奨
7-1. 公式な推奨度とエビデンスレベル
日本頭痛学会が発行する『頭痛の診療ガイドライン2021』では、栄養素による片頭痛予防について以下のように記載されています。
CQ II-3-12:マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10、ナツシロギクなどのサプリメント
推奨文:
「マグネシウム、ビタミンB2(リボフラビン)、コエンザイムQ10、ナツシロギク(feverfew)は片頭痛予防に有効であるとの報告があり、患者の希望、副作用、併用薬等を考慮して使用を検討してもよい。ただし有効性についてはエビデンスレベルが高くはないため、積極的に強く推奨するものではない。」
推奨度: 弱い推奨
エビデンスの確実性: C(低)
7-2. エビデンスの確実性が「低」である理由
ガイドラインでエビデンスレベルがC(低)とされている主な理由は以下の通りです。
- RCTの数が少ない:各栄養素について、質の高いランダム化比較試験の数が限られている
- 標本規模が小さい:多くの研究で参加者数が少ない(40-300名程度)
- 研究間の異質性:研究によって結果にばらつきがある(特にマグネシウム)
- 用量や期間の不統一:最適な用量や投与期間が確立されていない
7-3. ガイドラインが示す位置づけ
これらの栄養素は、第一選択薬ではなく、補助療法として位置づけられています。
| 治療の種類 | 例 | 推奨度 |
|---|---|---|
| 第一選択薬 | β遮断薬、抗てんかん薬、抗CGRP抗体など | 強い推奨/高いエビデンス |
| 補助療法 | マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10など | 弱い推奨/低いエビデンス |
ガイドラインのポイント
・栄養素は「有効である可能性がある」とされています
・副作用が少ないため、患者が希望する場合に使用を検討してもよい
・薬物療法の補助として、あるいは薬物療法を希望しない患者に選択肢として提示できる
・医師との相談のもと、個別の状況に応じて活用することが推奨されます
8. 実践的な活用法:栄養素を取り入れる際のポイント
8-1. 栄養素の選び方
頭痛予防のために栄養素を取り入れる際は、以下のポイントを考慮してください。
栄養素選択のチェックリスト
- ✓ 医師に相談:持病や服用中の薬がある方は、必ず医師に相談してください
- ✓ 単剤から開始:まずは1種類の栄養素から始め、効果と副作用を確認
- ✓ 複合配合も検討:Gaul et al. (2015)の研究のように、マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10の複合配合も効果的
- ✓ 継続期間:最低3ヶ月間は継続して効果を評価
- ✓ 品質の確認:医療機関専売品や信頼できるメーカーの製品を選択
8-2. 推奨される摂取量のまとめ
| 栄養素 | 研究で使用された用量 | 摂取タイミング |
|---|---|---|
| マグネシウム | 500-600mg/日 | 1日2-3回に分けて食後 |
| ビタミンB2 | 400mg/日 | 1日1-2回に分けて食後 |
| コエンザイムQ10 | 100-150mg/日 | 1日1-2回、油脂と一緒に食後 |
| ビタミンD | 2,000 IU/日 または50,000 IU/週 |
1日1回、油脂と一緒に食後 |
8-3. 注意すべき相互作用
薬との相互作用に注意が必要なケース
- マグネシウム:一部の抗生物質(テトラサイクリン系、キノロン系)や骨粗鬆症治療薬(ビスホスホネート)の吸収を阻害する可能性があります。服用時間をずらす必要があります
- コエンザイムQ10:ワルファリン(抗凝固薬)の効果を減弱させる可能性があります。併用する場合は血液凝固能のモニタリングが必要です
- ビタミンD:利尿薬(チアジド系)との併用で高カルシウム血症のリスクが増加します
- ナツシロギク:抗凝固薬や抗血小板薬との併用で出血リスクが増加する可能性があります
8-4. 効果判定の方法
栄養素の効果を適切に評価するために、以下の方法をお勧めします。
頭痛日記の活用
- 摂取開始前:1ヶ月間、頭痛の頻度、強度、持続時間を記録
- 摂取開始:栄養素の摂取を開始し、継続して記録
- 3ヶ月後に評価:以下の項目を比較
- 月あたりの頭痛日数
- 頭痛の強度(軽度・中等度・重度)
- 頭痛の持続時間
- 鎮痛薬の使用回数
- 日常生活への影響(仕事や学業への支障)
- 改善が見られない場合:医師に相談し、他の治療法を検討
8-5. 当院での栄養解析サービス
いわた脳神経外科クリニックでは、血液検査による詳細な栄養解析を提供しています。
当院の栄養解析サービス
・70項目以上の詳細な血液検査:一般的な健康診断とは異なる専門的な検査
・個別の栄養状態の把握:マグネシウム、ビタミンD、B群などの血中濃度を測定
・最適な栄養素の提案:検査結果に基づき、あなたに必要な栄養素を提案
・医療機関専売サプリメント:高品質なサプリメントをご提供
・継続的なフォローアップ:定期的に効果を評価し、必要に応じて調整
9. よくある質問(Q&A)
Q1. 栄養素だけで頭痛は治りますか?
A. 栄養素は医薬品ではなく、疾病の治療を目的とするものではありません。
マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10などの栄養素は、片頭痛予防の補助療法として位置づけられています。頭痛の原因は多岐にわたるため、まずは医師の診察を受け、適切な診断を受けることが重要です。栄養素は、薬物療法と併用することで、より効果的な頭痛管理が期待できます。
Q2. 効果が出るまでどのくらいかかりますか?
A. 最低3ヶ月間の継続摂取が推奨されています。
研究では、3ヶ月間の継続摂取で効果が確認されています (Gaul et al., 2015; Okoli et al., 2019)。栄養素はミトコンドリア機能の改善や抗炎症作用により、徐々に効果を発揮します。即効性を期待するのではなく、長期的な視点で継続することが大切です。
Q3. 複数の栄養素を同時に摂取しても大丈夫ですか?
A. 医師に相談の上、適切な組み合わせで摂取することが推奨されます。
Gaul et al. (2015)の研究では、マグネシウム600mg、ビタミンB2 400mg、コエンザイムQ10 150mgの複合配合が使用され、安全性と有効性が確認されています。ただし、個人の健康状態や服用中の薬により、適切な組み合わせが異なります。当院では血液検査に基づいた個別の提案を行っています。
Q4. 食事だけで必要な量を摂取できますか?
A. 研究で使用された高用量を食事だけで摂取するのは困難です。
例えば、ビタミンB2の推奨用量400mg/日は、通常の食事(1日1-2mg程度)の200倍以上です。マグネシウムやコエンザイムQ10についても、研究で使用された用量を食事だけで達成するのは現実的ではありません。バランスの良い食事を基本としつつ、必要に応じてサプリメントで補うことが実用的です。
Q5. 副作用はありますか?
A. 一般的に副作用は少ないですが、個人差があります。
主な副作用として、マグネシウムでは消化器症状(下痢、腹痛)、ビタミンB2では尿の黄色化(無害)、コエンザイムQ10では軽度の吐き気などが報告されています。いずれも軽度で、多くの場合は用量調整で改善します。体調に異変を感じた場合は、直ちに使用を中止し、医師に相談してください。
Q6. どの栄養素から始めればよいですか?
A. 血液検査で不足している栄養素を優先することをお勧めします。
当院では、血液検査により個別の栄養状態を評価し、最も必要な栄養素を特定します。一般的には、マグネシウムは多くの片頭痛患者で不足していることが報告されており、まず試してみる価値があります。ただし、個人差が大きいため、専門医との相談をお勧めします。
Q7. 妊娠中・授乳中でも摂取できますか?
A. 必ず医師に相談してください。
妊娠中・授乳中は、栄養素の必要量や安全性が変化します。特に高用量のサプリメントは、胎児や乳児への影響が懸念されます。医師の指導のもと、適切な用量と種類を選択することが重要です。
頭痛予防・栄養療法のご相談は、いわた脳神経外科クリニックへどうぞ。お問い合わせは、下記から可能です。
10. まとめ
頭痛予防に効果が期待できる栄養素について、科学的根拠に基づいて解説しました。マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10などの栄養素は、ミトコンドリア機能の改善や抗炎症作用により、片頭痛予防に役立つ可能性があります。
本記事の重要ポイント
- 片頭痛とミトコンドリア機能障害
- 片頭痛の背景には脳のエネルギー代謝障害がある
- マグネシウム、ビタミンB2、コエンザイムQ10はミトコンドリア機能を改善
- 主要な栄養素の推奨用量
- マグネシウム:500-600mg/日
- ビタミンB2:400mg/日
- コエンザイムQ10:100-150mg/日
- ビタミンD:2,000 IU/日または50,000 IU/週
- 日本頭痛学会ガイドライン2021の推奨
- 弱い推奨/エビデンスの確実性C(低)
- 補助療法として、患者の希望や状況に応じて使用を検討してもよい
- 実践的な活用法
- 最低3ヶ月間の継続摂取が推奨
- 医師に相談の上、個別の状況に応じて選択
- 頭痛日記で効果を評価
栄養素による頭痛予防のポイント
- 補助療法として活用:栄養素は医薬品の代替ではなく、補助療法として位置づけられます
- 科学的根拠あり:複数のRCTやメタアナリシスで効果が報告されています
- 副作用が少ない:一般的に安全性が高く、重篤な副作用は稀です
- 個別化が重要:血液検査により、あなたに必要な栄養素を特定できます
- 継続が鍵:効果発現まで最低3ヶ月間の継続が必要です
- 医師との相談:持病や服用中の薬がある方は、必ず医師に相談してください
改めてご確認ください(重要事項)
- 栄養素は医薬品ではありません
- 疾病の診断、治療、予防を目的とするものではありません
- 頭痛の原因は多岐にわたります。まずは医師の診察を受け、適切な診断を受けることが重要です
- 持病のある方、妊娠中・授乳中の方、他の薬を服用中の方は、必ず医師にご相談ください
- 体調に異変を感じた場合は、直ちに使用を中止し、医師にご相談ください
当院の栄養解析サービスのご案内
いわた脳神経外科クリニックでは、血液検査による詳細な栄養解析を提供しています。
- 70項目以上の詳細な検査:一般的な健康診断とは異なる専門的な栄養解析
- 個別の栄養状態の把握:マグネシウム、ビタミンD、B群などの血中濃度を測定
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頭痛は日常生活に大きな影響を及ぼします。薬物療法だけでなく、栄養素を活用した総合的なアプローチで、より快適な生活を目指しましょう。当院では、脳神経外科医として長年の経験を活かし、患者様一人ひとりに最適な頭痛管理をご提案いたします。
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参考文献
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- 厚生労働省(2024)「頭痛[各種疾患 – 医療者]」『「統合医療」情報発信サイト eJIM』. Available at: https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c05/12.html (Accessed: 18 December 2025).














