この記事で分かること

大きないびきや、家族からの「寝ているとき呼吸が止まっている」という指摘——その背景に睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていることがあります。本記事では、見逃されやすい症状とセルフチェック、原因、検査の流れ(簡易検査・PSG)、受診の目安を、脳神経外科・頭痛専門医がやさしく解説します。
放置すると高血圧・脳卒中・心疾患のリスクが高まることも知られています。治療法(CPAPなど)の詳細は別記事にまとめています。

「いびきがうるさいと家族に言われる」「寝ているときに息が止まっていたと指摘された」「しっかり寝たはずなのに、日中ひどく眠い」——こうしたサインに、心当たりはありませんか。

これらは、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)のサインかもしれません。眠っているあいだの出来事は自分では気づきにくく、多くの方が「ただのいびき」「疲れているだけ」と見過ごしてしまいがちです。しかしSASは、放置すると高血圧や脳卒中などの病気につながりうることが知られており、早めに気づいて検査を受けることが大切です。

この記事では、SASの症状とセルフチェック、起こる仕組み、検査の流れ、受診の目安を順番に解説します。「自分は大丈夫だろうか」と気になっている方が、次の一歩を判断できるようご案内します。

SASの気づきにくさは、症状の多くが睡眠中に起こることにあります。だからこそ、家族からの「いびき・無呼吸」の指摘や、日中の強い眠気は、見逃せない手がかりです。検査は自宅でできる簡易検査から始められます。

目次


いびきや日中の眠気が気になる方、ご家族の無呼吸を指摘された方は、お気軽にご相談ください。検査は自宅でできるものから始められます。

WEB予約はこちら



1.睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、眠っているあいだに呼吸が止まったり(無呼吸)、浅くなったり(低呼吸)をくり返す状態のことです。医学的には、10秒以上の無呼吸・低呼吸が1時間あたり5回以上みられる場合に、その可能性を考えます。

大きく分けて、のどの空気の通り道(気道)が物理的にふさがって起こる閉塞性(へいそくせい)と、呼吸の指令を出す脳の働きが関わる中枢性(ちゅうすうせい)があります。多くの方にみられるのは閉塞性のタイプで、いびきをともなうのが特徴です。

※スマホでは横スクロールできます

タイプ 起こる仕組み 特徴
閉塞性(多くの方) のどの気道が物理的にふさがる 大きないびきをともなう
中枢性 呼吸の指令(脳の働き)が関わる いびきが目立たないことがある

けっして「めずらしい病気」ではありません

世界的な推計では、軽度以上のSAS(無呼吸・低呼吸が1時間に5回以上)に該当しうる人は、30〜69歳でおよそ9億人にのぼると報告されています(Benjafield et al., 2019)。
多くの方が気づかないまま過ごしているとも考えられており、「自分には関係ない」とは言いきれない、身近な状態です。



2.SASの主な症状(夜と昼のサイン)

SASの症状は、睡眠中(夜)に起こるものと、日中に現れるものに分けて考えると整理しやすくなります。夜の症状は自分では気づきにくいため、ご家族の気づきがとても重要です。


夜のサイン(家族が気づきやすい)

  • 大きないびきをかく、いびきが途中で止まる
  • 寝ているときに呼吸が止まっていると指摘される
  • あえぐような呼吸、むせて目が覚める
  • 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)
  • 寝汗が多い、眠りが浅い

昼のサイン(自分で気づきやすい)

  • しっかり眠ったはずなのに、日中に強い眠気がある
  • 会議中や運転中など、ふとした場面で眠ってしまう
  • 起床時に頭痛や、すっきりしない感じがある
  • 集中力や記憶力が落ちたように感じる
  • 疲れがとれにくい、気分が晴れない

「朝の頭痛」も見逃せないサインです

睡眠中に呼吸が浅くなると、体の酸素が不足しがちになります。
その影響で、起きたときに頭が重い・痛いと感じることがあり、これがSASに気づくきっかけになることもあります。くり返す朝の頭痛が気になる方は、一度ご相談ください。

日中の眠気が強い場合は、頭痛にともなう眠気との関わりが気になる方もいらっしゃるかもしれません。眠気と頭痛が同時に続く方は、頭痛にともなう睡魔の原因と対処法の記事もあわせてご覧ください。



当てはまるサインが多い、ご家族の無呼吸が気になる——そんなときは、お気軽にご相談ください。

WEB予約はこちら



3.SASセルフチェック

下のチェックリストは、SASに気づくための目安です。当てはまる項目が多いほど、検査をおすすめする目安になります。ご自身だけでなく、ご家族と一緒に確認していただくと、夜のサインにも気づきやすくなります。

当てはまる項目はいくつありますか?

  • 大きないびきをかくと指摘される
  • 寝ているとき、呼吸が止まっていると言われたことがある
  • 日中、強い眠気で困ることがある
  • 朝起きたときに頭痛や、すっきりしない感じがある
  • 夜中に何度も目が覚める、トイレに起きる
  • 太りぎみ、または首まわりに脂肪がつきやすい
  • 高血圧や糖尿病などを指摘されている
  • あごが小さい、または引っ込んでいると感じる

とくに、「いびき・無呼吸の指摘」と「日中の強い眠気」がそろっている場合は、SASの可能性を考える有力なサインとされています。当てはまる項目が複数あり、生活に支障を感じている方は、自己判断で様子を見るのではなく、検査を検討されることをおすすめします。


セルフチェックは「診断」ではありません

このリストは、あくまで気づきのきっかけです。
当てはまる項目が少なくても症状が気になる場合や、反対に当てはまっても不安な場合は、検査で客観的に確かめることが大切です。



4.SASが起こる原因

閉塞性のSASは、睡眠中にのどの気道がせまくなったり、ふさがったりすることで起こります。なぜ気道がふさがりやすくなるのか、代表的な要因を整理します。複数の要因が重なっていることも少なくありません。


体型・体重に関わる要因

首まわりやのどに脂肪がつくと、気道がせまくなりやすくなります。体重が増えると、いびきや無呼吸が起こりやすくなることが知られています。一方で、太っていない方や、やせ型の方でもSASは起こります。


骨格・あごの形に関わる要因

あごが小さい、あごが後ろに引っ込んでいる、といった骨格的な特徴があると、もともと気道がせまく、SASが起こりやすいと考えられています。日本人を含むアジア系では、体型だけでなくこうした骨格の影響も指摘されています。やせ型の方にもSASがみられるのは、このためです。


鼻・のどに関わる要因

鼻づまり(鼻炎など)、扁桃(へんとう)の腫れ、舌の付け根の沈み込みなども、気道をせまくする要因になります。口呼吸の習慣がある方も注意が必要です。


生活習慣に関わる要因

寝る前のお酒(アルコール)は、のどの筋肉をゆるめて気道をふさがりやすくします。喫煙による気道の炎症、睡眠導入薬の影響なども、SASを悪化させる要因として挙げられます。


「やせているから大丈夫」とは限りません

SASは肥満の方に多い一方で、あごの形などの骨格的な要因から、やせ型の方にも起こります
体型だけで判断せず、いびきや日中の眠気といったサインに目を向けることが大切です。



5.放置するとどうなる(脳卒中リスク)

SASでこわいのは、日中の眠気や生活のしづらさだけではありません。睡眠中に呼吸が止まると体が酸素不足になり、そのたびに心臓や血管に負担がかかります。これがくり返されることで、全身の病気のリスクが高まることが知られています。

SASと関連が指摘されている主な病気

  • 高血圧(とくに薬が効きにくい高血圧との関わり)
  • 脳卒中(脳梗塞など)
  • 心疾患(不整脈、心不全、心筋梗塞など)
  • 糖尿病などの生活習慣病

なかでも、脳神経外科の立場から特にお伝えしたいのが脳卒中との関わりです。睡眠時無呼吸がある方を平均約3年追跡した研究では、無呼吸・低呼吸が1時間に5回以上ある人は、そうでない人にくらべて、脳卒中または死亡のリスクが約2倍(約1.97倍)高かったと報告されています(Yaggi et al., 2005)。これは年齢・血圧・喫煙などの影響を調整したうえでの結果です。


脳神経外科だからこそ伝えたいこと

SASは「いびきと眠気の問題」と思われがちですが、脳卒中の隠れた危険因子のひとつでもあります。
当院は脳神経外科として、頭痛やめまい、脳卒中の予防という観点からも、SASのサインを見逃さないことを大切にしています。

こうしたリスクは、SASに気づいて適切に対応することで、軽くしていくことが期待できます。検査と治療によって、これらの病気のリスクをどう下げていくかについては、睡眠時無呼吸症候群の治療(CPAPと心血管リスク)の記事で詳しく解説しています。



6.SAS検査の流れ(簡易検査・PSG)

「検査と聞くと入院が必要なのでは」と心配される方もいらっしゃいますが、SASの検査はまず自宅でできる簡易検査から始められることが多く、負担は大きくありません。一般的な流れを見ていきましょう。


ステップ① 問診・診察

まず、いびきや日中の眠気、生活への影響などをお聞きし、SASが疑わしいかどうかを確認します。ご家族から見た夜の様子が、大きな手がかりになります。


ステップ② 簡易検査(自宅でできる)

SASが疑われる場合、まず簡易検査を行うのが一般的です。指や鼻に小さなセンサーをつけ、自宅で普段どおり眠るだけで、睡眠中の呼吸の状態や血液中の酸素の値を測定できます。入院は不要で、機器を借りて自宅で測定する方法が広く行われています。


ステップ③ 精密検査(PSG)

簡易検査で中等症以上が疑われる場合や、より詳しい評価が必要な場合には、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)へ進みます。PSGは脳波なども測定するため、睡眠の質そのものを評価でき、無呼吸の確定診断や、より詳しい状態の把握ができます。施設での1泊検査のほか、自宅で行える在宅PSGもあります。

※スマホでは横スクロールできます

項目 簡易検査 精密検査(PSG)
場所 自宅 施設での1泊、または在宅
測定項目 呼吸・酸素の値など(少なめ) 脳波を含めて詳しく
分かること 無呼吸の有無・おおよその程度 確定診断・詳しい病態
位置づけ まずはここから 必要に応じて

重症度の目安(AHI)

検査では、無呼吸・低呼吸が1時間あたり何回起こるか(AHI)を調べます。
目安として、5〜15回未満が軽症、15〜30回未満が中等症、30回以上が重症とされ、この値が治療方針を考えるうえでの参考になります。

検査の費用は保険が適用され、自己負担の目安は検査の種類によって異なります。具体的な費用や検査の進め方は、診察のなかでご説明します。



「まず簡易検査だけでも受けてみたい」という方も歓迎します。検査の進め方からご相談ください。

WEB予約はこちら



7.受診の目安と専門医への相談

SASのサインは見過ごされやすく、「いびきくらい」「疲れているだけ」と放置されがちです。次のような場合は、一度医療機関にご相談いただくと安心です。

  • 家族から、いびきや無呼吸(息が止まっている)を指摘された
  • しっかり眠っても、日中の強い眠気が続く
  • 運転中や仕事中に、思わず眠ってしまうことがある
  • 朝の頭痛や、起床時のすっきりしなさがくり返す
  • 高血圧が薬でなかなか下がらない

早めの受診を検討したいサイン

とくに、日中の眠気によって運転や作業に支障が出ている場合は、事故につながるおそれもあるため、早めにご相談ください。あわせて、以下のような頭痛がある場合も、ためらわず医療機関を受診してください。

  • 突然、これまで経験したことのない激しい頭痛が起こった
  • 手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない症状を伴う
  • 意識がもうろうとする、言葉が出にくい

当院は脳神経外科として、頭痛やめまい、脳卒中の予防という観点から日々の診療に取り組んでいます。SASは脳卒中の危険因子のひとつでもあり、いびきや日中の眠気といったサインを、脳の健康という視点からも見逃さないことを大切にしています。必要に応じて、検査の手配や専門の医療機関との連携もご案内します。

「いつものことだから」と我慢されてきた方も、まずは一度ご相談ください。検査によって、ご自身の睡眠の状態を客観的に知ることが、安心への第一歩になります。具体的な治療法については、睡眠時無呼吸症候群の治療の記事もあわせてご覧ください。



8.よくあるご質問

Q. いびきがあると、睡眠時無呼吸症候群なのですか?

A. いびきがあれば必ずSASというわけではありません。ただし、大きないびきはSASのサインのひとつであり、とくに「いびきが途中で止まる」「息が止まっていると指摘される」「日中に強い眠気がある」場合は、SASの可能性が高まります。気になる場合は検査で確かめることをおすすめします。


Q. 検査は入院しないと受けられませんか?

A. いいえ。多くの場合、まずは自宅でできる簡易検査から始められます。機器を借りて、普段どおりご自宅で眠るだけで測定できます。より詳しい評価が必要な場合に、脳波も測る精密検査(PSG)へ進みますが、こちらも在宅で行える方法があります。


Q. やせているのに、いびきがひどいのはなぜですか?

A. SASは肥満の方に多い一方で、あごが小さい・後ろに引っ込んでいるといった骨格的な特徴があると、やせ型の方でも気道がせまく、起こることがあります。「太っていないから大丈夫」とは限らないため、いびきや眠気が気になる方は、体型にかかわらず一度ご相談ください。


Q. 放っておくと、どんな病気につながりますか?

A. SASは、高血圧・脳卒中・心疾患・糖尿病などとの関わりが報告されています。睡眠中の酸素不足がくり返されることで、血管や心臓に負担がかかるためです。とくに脳卒中については、リスクが約2倍高まったという研究報告もあり(Yaggi et al., 2005)、早めに気づいて対応することが大切です。


Q. 何科を受診すればいいですか?

A. SASは、脳神経外科・脳神経内科のほか、呼吸器内科・耳鼻咽喉科などで相談できます。当院は脳神経外科として、頭痛・めまいや脳卒中の予防という観点からもご相談をお受けしています。日中の眠気をともなう頭痛が気になる方は、あわせてご相談ください。



9.まとめ

  • SASは、眠っているあいだに呼吸が止まる・浅くなるをくり返す状態で、大きないびき・無呼吸の指摘・日中の強い眠気が代表的なサインです。
  • 症状の多くは睡眠中に起こるため、家族の気づきがとても重要です。
  • 原因は体型・骨格・鼻やのど・生活習慣などが重なって起こり、やせ型の方にもみられます。
  • 放置すると高血圧・脳卒中・心疾患などのリスクが高まることが知られています。
  • 検査は自宅でできる簡易検査から始められ、必要に応じて精密検査(PSG)へ進みます。

いびきや日中の眠気、ご家族からの無呼吸の指摘が気になるときは、一人で悩まず、いわた脳神経外科クリニックにお気軽にご相談ください。
検査によって睡眠の状態を客観的に知ることが、脳と全身の健康を守る第一歩になります。



お問い合わせ・ご予約

いびきや睡眠時無呼吸が気になる方のお悩みに、しっかり寄り添います。また当院公式LINEにてご質問等をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。

WEB予約はこちら


友だち追加



関連記事はこちら


重要:本記事の位置づけ
本記事は睡眠時無呼吸症候群に関する一般的な情報提供を目的としており、診断や治療を保証するものではありません。症状の感じ方や経過には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

詳しい医師のご紹介はこちら
院長写真

参考文献

Benjafield, A.V., Ayas, N.T., Eastwood, P.R., Heinzer, R., Ip, M.S.M., Morrell, M.J., Nunez, C.M., Patel, S.R., Penzel, T., Pépin, J.L., Peppard, P.E., Sinha, S., Tufik, S., Valentine, K. and Malhotra, A. (2019) ‘Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis’, The Lancet Respiratory Medicine, 7(8), pp. 687–698. doi:10.1016/S2213-2600(19)30198-5. 閲覧日: 2026年6月16日. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7007763/

Yaggi, H.K., Concato, J., Kernan, W.N., Lichtman, J.H., Brass, L.M. and Mohsenin, V. (2005) ‘Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death’, The New England Journal of Medicine, 353(19), pp. 2034–2041. doi:10.1056/NEJMoa043104. 閲覧日: 2026年6月16日. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa043104