ノーベル生理学・医学賞 受賞:坂口志文先生とは?
2025年、日本人としては、免疫学者坂口志文先生がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。授賞理由は「末梢免疫寛容」の発見と確立。免疫には「攻撃」と「抑制」という二つの顔があり、坂口先生はその“ブレーキ”にあたる制御性T細胞(Treg)と、司令塔遺伝子Foxp3の役割を明らかにしました。
本記事では、受賞のポイント、1995年と2003年の基礎研究、2025年の最新の潮流、そして「自分の免疫を活かすがん治療」へのつながりを、知的好奇心の高い読者の方にも読みやすく整理して解説します。
目次
坂口志文先生とは?
どんな人?
1951年生まれ。京都大学で医学博士を取得し、米国での研究経験を経て、日本の免疫学研究を牽引。現在は大阪大学 免疫学フロンティア研究センターで、免疫の恒常性を守る仕組みの解明と医療応用に取り組んでいます。
また、新たな免疫関連医療の創出を目指すベンチャー企業レグセル株式会社の取締役のひとりで、再生医療・細胞医療の専門家として、制御性T細胞を体外培養を活用した医療の開発にも尽力しています。
何の功績でノーベル賞?
The Nobel Assembly at Karolinska Institutet (2025)によると、坂口志文先生含む3人は、免疫系が身体を傷つけることを防ぐ末梢免疫寛容に関する画期的な発見により、2025年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
私たちの免疫系は、毎日、体内に侵入しようとする何千もの微生物から身を守っています。これらは姿形が多様で、ヒトの細胞とよく似た“カモフラージュ”を持つものもあります。では、免疫系は何を攻撃し、何を守るべきかをどのように見極めているのでしょうか。
3氏は、制御性T細胞(Treg)という“免疫の番人”を同定し、自己組織への攻撃を抑える仕組みを明らかにしました。
- 末梢免疫寛容の概念を確立:胸腺での“選別”だけでなく、体の末梢にも免疫のブレーキ機構があることを示した。
- 制御性T細胞(Treg)の同定(1995):CD25陽性CD4T細胞が自己免疫を抑える中核であることを実証。
- Foxp3の同定(2003):Tregを生み出し、機能を司る“司令塔遺伝子”。通常T細胞に導入すると抑制機能を獲得。
その他受賞歴(一部)
2009年:紫綬褒章
2015年:Gairdner International Award
2019年:文化勲章
2020年:Robert Koch Award
2023年:Debrecen Award for Molecular Medicine, Hungary
1995年 制御性T細胞(Treg)の発見(基盤研究)
研究の背景
免疫は外敵を攻撃する一方で、自分自身(自己)を攻撃しないように自己寛容を保っています。1990年代まで主流だったのは、 「胸腺で自己反応性T細胞を除去する(中枢免疫寛容)だけで十分」という考え方でした。
坂口先生らは、体の末梢にも免疫の“ブレーキ”が存在するという仮説を検証。CD25(IL-2受容体α鎖)を指標に、 自己免疫を抑える特殊なT細胞集団を同定しました(Sakaguchi et al., 1995)。
ポイント
- 正常マウス末梢ではCD4+の約10%がCD25陽性、CD8+では1%未満(「活性化/記憶」表現型)。
- このCD4+CD25+集団が、自己免疫の暴走を抑制する制御性T細胞(Treg)の実体。
坂口先生の1995年の研究は、免疫学の常識を変えました。 それまで「免疫の抑制は胸腺の中で完結する」と考えられていましたが、 実際には体の末梢にも“免疫のブレーキ”が存在することを世界で初めて示したのです。
実験デザイン(簡潔)
項目 | 内容 |
---|---|
対象細胞 |
正常マウスの脾臓・リンパ節由来T細胞。 抗CD25抗体+補体でCD25陽性細胞を除去(CD25−画分を作製)。 |
受け手 | 免疫不全のヌードマウス(athymic nu/nu)。 |
介入 |
① CD25−細胞を移入(自己免疫誘発能の検証)/ ② CD4+CD25+細胞を同時または遅れて再移入(抑制能の検証)/ ③ CD8+細胞の効果比較、同種皮膚移植やHA-BSA免疫で非自己応答の影響も評価。 |
主要評価 | 組織学的自己免疫(胃炎・甲状腺炎・膵島炎 ほか)、自己抗体、脾腫、体重推移、皮膚移植拒絶日数、抗原特異的抗体産生。 |
主要結果
この研究で分かったこと
- マウスからCD25という分子を持つT細胞を除くと、免疫が暴走し多臓器の自己免疫疾患が自然発症。
- 逆に、その細胞を戻すと自己免疫は防がれることが明らかに。
- この細胞こそ、免疫の働きを抑える制御性T細胞(Treg)であり、免疫の“ブレーキ役”。
坂口先生は、この「免疫のブレーキ細胞」がなければ、体は自分自身を攻撃してしまうことを証明しました。 つまり、健康を保つには免疫の“アクセル”と“ブレーキ”の両方が必要だということです。
① CD25−移入 → 自己免疫が高頻度に発症
- 多臓器で自己免疫(胃炎・卵巣炎・甲状腺炎・唾液腺炎・副腎炎・膵島炎・腎炎・関節炎)。
- 自己抗体(抗胃壁細胞、抗サイログロブリン、抗dsDNAなど)や脾腫、体重減少を伴う例も。
- 同一条件での全T細胞移入群ではこうした自己免疫は出現せず。
② CD4+CD25+を戻すと発症を予防
- 同時に少数(例:~2×106)のCD4+CD25+を共移入すると、自己免疫は顕著に抑制。
- 遅れて補充すると予防効果は低下(発症前の“窓”に依存)。
- CD8+細胞の共移入は抑制が限定的。
③ 非自己に対する免疫応答も“初期過剰→のち鈍化”
- CD25−移入群は、皮膚移植の拒絶が早い/HA-BSAに対する初期IgG応答が高い。
- 一方で、その後は応答が早期に鈍化(免疫の暴走と破綻を示唆)。
- CD4+CD25+を共移入すると、適正水準に“調律”された応答に回復。
解釈:何が示されたか
- CD4+CD25+=制御性T細胞(Treg)が、自己免疫を抑える中核回路である。
- 自己のみならず非自己応答も“度が過ぎる”と破綻し得るが、Tregはそれを適正化する。
- 末梢に能動的抑制機構が存在し、中枢寛容だけでは説明できない“第二の安全装置”がある。
Tregが足りないとどうなる?
- 免疫が暴走し、胃、甲状腺、膵臓、関節など多臓器に炎症が起こる。
- 自己抗体(抗甲状腺・抗DNA抗体など)が出現。
- 全身の免疫システムが「敵と味方」を区別できなくなる。
Tregがあるとどうなる?
- 自己免疫が抑制され、免疫の暴走を防ぐ。
- 外敵に対する反応も“ちょうどよく”制御される。
- 免疫の安定性(ホメオスタシス)が保たれる。
臨床的な示唆
- 自己免疫疾患:Tregの量・質の異常が病態に関わる可能性。Tregを増強/機能回復する戦略が有望。
- がん免疫:腫瘍局所でTregが過剰だと免疫が抑え込まれる。局所的・一時的なTreg抑制で効果を高め得る。
- 移植医療:Tregを活用した免疫寛容の誘導に発展可能。
研究の限界・品質評価
- 動物モデル(免疫不全受け手)での厳密な機能検証。機序の分子同定はその後の2003年研究(Foxp3)で補完。
- 抗体と補体によるCD25除去という操作的定義だが、複数の指標(自己抗体・病理・機能補充)で整合。
- 結果は再現性が高く、後続研究(Foxp3、ヒトTreg)で外的妥当性が担保。
要点まとめ
- CD4+CD25+細胞=制御性T細胞(Treg)が自己/非自己応答を適正化する。
- Treg欠損で自己免疫が多臓器にわたり自然発症、補充で予防。
- この1995年の機能的同定が、Foxp3(2003)という分子基盤の発見につながり、2025年ノーベル賞に結実。
この発見がもたらしたインパクト
- 自己免疫疾患の発症メカニズムの理解が進み、Tregを増やす治療の道が開かれた。
- がん免疫では、Tregが多いと免疫が抑えられることが判明。がん治療における新たな標的に。
- 臓器移植やアレルギー分野でも、Tregを利用した「拒絶反応を抑える治療」が研究されている。
この研究は「免疫の攻撃を抑える仕組み」を明らかにした初めての報告であり、 2003年のFoxp3遺伝子の発見、そして2025年のノーベル賞受賞へとつながる出発点となりました。
まとめ
- 制御性T細胞(Treg)は免疫のブレーキ。
- Tregが働かないと、免疫が暴走し自己免疫疾患が起こる。
- 坂口先生の1995年の発見は、免疫のバランスを理解する基礎を築いた。
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2003年 Foxp3と制御性T細胞の研究
研究の背景
1995年の研究で制御性T細胞(Treg)が免疫のブレーキ役であることが明らかになりましたが、「どのようにTregがつくられ、機能するのか」はまだ謎のままでした。 そこで坂口志文先生は、免疫抑制の鍵を握る遺伝子を探し出す研究に挑みます。
坂口先生らの2003年の論文にて、Foxp3遺伝子がTregの発生と機能を支配する“司令塔”であることを世界で初めて示しました(Hori, Nomura & Sakaguchi, 2003)。
研究の概要と方法
項目 | 内容 |
---|---|
研究対象 | マウスのT細胞(CD4⁺CD25⁺とCD4⁺CD25⁻)を分離し、Foxp3遺伝子の発現を比較。 |
主要手法 |
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検証ポイント |
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主要な結果
① Foxp3はTreg特異的に発現
- Foxp3はCD4⁺CD25⁺制御性T細胞でのみ高発現。
- ヘルパーT細胞(Th1/Th2)やキラーT細胞(CD8⁺)にはほとんど発現しない。
② Foxp3を導入すると「普通のT細胞」がTregに変化
- Foxp3を通常のCD4⁺T細胞に導入すると、抑制型の性質を獲得。
- サイトカイン(IL-2, IFN-γ)の産生が減少し、他の免疫細胞の増殖を抑制。
- CD25・CTLA-4などTreg特有の分子マーカーを発現。
③ Foxp3欠損マウスは重度の自己免疫疾患を発症
Foxp3が壊れるとTregが作られず、免疫が暴走して多臓器炎が起こる(IPEX症候群と同様の病態)。
- リンパ球が過剰に活性化し、全身に炎症が拡大。
- この結果は、Foxp3がTregの発生と機能を司るマスター遺伝子であることを決定づけた。
研究の意義と臨床への応用
- 自己免疫疾患:TregやFoxp3の機能異常が病態の原因。Tregを増やす薬剤の研究が進行中。
- がん免疫療法:がん組織でTregが増えると免疫が抑制。Foxp3を標的にしたTreg制御で治療強化が期待。
- 移植医療:Tregを利用した「免疫寛容誘導」治療(拒絶反応を抑える)に応用可能。
- アレルギー・炎症性疾患:免疫の過剰反応を抑える“免疫ブレーキ療法”の開発が進む。
要点まとめ
- Foxp3は制御性T細胞(Treg)を生み出す“設計図”となる遺伝子。
- Foxp3が働くことで、T細胞は「攻撃型」から「抑制型」に変化する。
- Foxp3欠損では自己免疫疾患が発症するため、免疫バランスの維持に不可欠。
- この発見は免疫を自在に「抑える/解放する」時代への扉を開いた。
2025年 末梢免疫寛容の新たな展開
背景
1995年の制御性T細胞(Treg)の発見、2003年のFoxp3遺伝子の同定から約20年。 坂口先生らのチームは2025年、免疫学の中心概念である「末梢免疫寛容(Peripheral Immune Tolerance)」を再定義する論文を発表しました(Osaki & Sakaguchi, 2025)。
この論文では、TregやFoxp3の働きをさらに細分化し、どのように免疫が「自分」と「敵」を識別し、暴走を防ぐかを細胞レベル・分子レベルで統合的に解析しています。
近年は、Tregを含む免疫ネットワークを文脈依存的に“強める・弱める”という動的制御の時代へ。自己免疫・アレルギー・移植・がんといった各領域で、「必要な場所でブレーキ」「必要な場面で解除」という精密な介入が模索されています。
研究の概要
- 目的:末梢免疫寛容を維持するTregネットワークの動態と、炎症時の再構築メカニズムを解明する。
- 対象:ヒトおよびマウスのTreg細胞を用いた多層的解析(シングルセルRNA解析、エピゲノム解析、転写因子ネットワーク解析など)。
- 手法:
- Foxp3依存性転写ネットワークの全体像をマッピング
- Tregの分化段階を単一細胞レベルで分類(“resting”、“activated”、“effector”など)
- 炎症環境(腫瘍・自己免疫モデル)におけるTregの再プログラム化を追跡
主要な発見とポイント
① 末梢免疫寛容は「静的」ではなく「動的」な現象
- Tregは常に自己抗原と環境刺激をモニタリングし、炎症局所では即座に活性化。
- 末梢のリンパ組織・粘膜・腫瘍など、環境ごとに異なる転写プログラムを発動。
- 「免疫の可変制御ネットワーク」として再定義された。
② 炎症下でのTregは再構築される「可塑的細胞」
- 炎症性サイトカイン環境(IL-6, TNF-αなど)でFoxp3が部分的に不安定化。
- 一部のTregが“エフェクター化”して炎症を鎮静化する新しいサブセットを形成。
- この変化は可逆的であり、環境が安定すると再び抑制型に戻る。
③ 免疫の「バランス制御」が遺伝子ネットワークとして可視化された
- Foxp3は単独で働くのではなく、他の転写因子(BATF、IRF4、NFATなど)と協調し、 「免疫ブレーキ複合体(Immunoregulatory Complex)」を形成。
- この複合体が免疫応答を微調整し、外敵攻撃後に過剰炎症を鎮める役割を担う。
臨床への応用と展望
- 自己免疫疾患治療:末梢Tregを増やす治療(低用量IL-2療法、細胞治療)が実用化に近づく。
- がん免疫療法:Tregを一時的に抑制して、抗腫瘍免疫を活性化する併用療法(ICI+Treg制御)が研究中。
- 移植・アレルギー分野:Tregネットワークの制御による「寛容誘導療法」が注目。
- 加齢免疫学:高齢化によるTregの機能低下が、炎症性疾患や免疫老化の原因の一端とされる。
要点まとめ
- 末梢免疫寛容は「静的」ではなく「動的」なシステムであり、環境に応じて再構築される。
- Tregは固定された抑制細胞ではなく、環境応答型の可塑的細胞として機能する。
- Foxp3を中心に多因子が協働するネットワークが、免疫のバランスを保つ。
- この知見が、今後の免疫疾患治療・がん免疫療法・臓器移植の新戦略を支える。
坂口先生の想い
「私たちが発見した「制御性T細胞(regulatory T cell)」は、免疫応答を抑制し、過剰な炎症や自己免疫反応を防ぐ重要な細胞です。長い年月をかけてこの細胞の存在と働きを明らかにすることができたのは、多くの研究者の情熱と協力、そして基礎研究の重要性を支えてくださった社会の理解のおかげです。 この研究は、免疫系が「攻撃」と「抑制」という二つの力の絶妙なバランスの上に成り立っていることを示し、人間の体に本来備わる“寛容”のメカニズムを解き明かすものでした。この成果が、自己免疫疾患やアレルギー、がんなどの新しい治療法につながることを心から願っています。」
— 大阪大学 ノーベル受賞記者会見(2025)より
研究はゴールではなく出発点。基礎から臨床へ、そして患者さんのもとへ——坂口先生の姿勢は、医療者にとっても大きな指針です。
2023年 Tregと腫瘍微小環境
坂口先生らの2023年の研究によると、腫瘍内には制御性T細胞(Treg)が集まり、免疫応答を抑制してがんの“免疫逃避”を助けます(Tay, Tanaka, & Sakaguchi 2023)。近年の研究では、Tregの機能を局所的・一時的に抑えてエフェクターT細胞を活性化し、がんを攻撃させる戦略が注目されています。
ポイント
- がん組織の免疫抑制環境(Treg・MDSC・腫瘍関連マクロファージ等)を可視化・分解。
- Foxp3経路・IL-2シグナル・CTLA-4/PD-1などを組み合わせた精密介入で、「攻撃と抑制」の再配線を目指す。
- 標準治療と免疫療法の合理的な併用が鍵(エビデンスは疾患・分子背景で最適化)。
坂口先生のTreg研究は、がん免疫療法の「理論の土台」。“自分の免疫を賢く使う”という発想は、脳腫瘍領域でも重要な視点です。
制御性T細胞というのはがん組織に非常にたくさんいます。免疫反応を抑えているんですね。それを何とか抗体薬とかで減らしてやれば現在のがんの免疫療法がもっと効果的になるんじゃないかということが1つです。
— FNNプライムオンライン(2025年10月6日「イット!」生中継より)
いわた脳神経外科クリニック院長の研究(Iwata et al. 2020)
膠芽腫の中にも制御性T細胞(Treg)がいて、膠芽腫がICOSLGという分子を使って、Tregを誘導、増幅しています。
それを抑える抗体医薬を開発し、マウスモデル治療結果を検証しました。
※その薬は共同研究者のイタリア人Umberto Dianzani先生が開発し、特許申請しております。
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ご相談を検討されている方へ
ご自身の病状と向き合い、最適な治療法を考えたい方は、ぜひ一度当院へご相談ください。患者さん一人ひとりの状況に合わせて、納得できる選択ができるよう全力で支援します。
- 自家がんワクチンは、医薬品医療機器等法に基づく承認を受けていない未承認医薬品です。
- この治療は、公的医療保険が適用されない自由診療(全額自己負担)です。
- これまで報告されている副作用は限定的ですが、今後新たな副作用が明らかとなる可能性は否定できません。
- 当院は「いわた脳神経外科クリニック」であり、ワクチンの製造・開発はバイオ企業「セルメディシン株式会社」が行っています。
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当院では、頭痛の悩みにしっかり寄り添います。また当院公式LINEにてご質問等をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
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膠芽腫における免疫療法という選択肢
自家がんワクチン
参考文献
- Sakaguchi, S., Sakaguchi, N., Asano, M., Itoh, M. & Toda, M. (1995) ‘Immunologic self-tolerance maintained by activated T cells expressing IL-2 receptor α-chains (CD25)’, Journal of Immunology, 155, pp. 1151–1164.(制御性T細胞の根幹研究)
- Hori, S., Nomura, T. & Sakaguchi, S. (2003) ‘Control of regulatory T cell development by the transcription factor Foxp3’, Science, 299(5609), pp. 1057–1061.(Foxp3とTregの因果)
- The Nobel Assembly at Karolinska Institutet (2025) ‘The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2025 – Press release’. Available at: https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2025/press-release/
- Osaka University (2025) ‘ノーベル賞受賞記者会見:坂口志文教授コメント’. Available at: https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2025/10/nobel_press_conference
- Tay, C., Tanaka, A. & Sakaguchi, S. (2023) ‘Tumor-infiltrating regulatory T cells as targets of cancer immunotherapy’, Cancer Cell, 41(3), pp. 450–465.
- Osaki, M. & Sakaguchi, S. (2025) ‘Soluble CTLA-4 regulates immune homeostasis and promotes resolution of inflammation by suppressing type 1 but allowing type 2 immunity’, Immunity, 58(4), pp. 889–908.
- レグセル株式会社 (n.d.) RegCell.jp. Available at: https://regcell.jp/
- Iwata, R., Lee, J.-H., Hayashi, M., Dianzani, U., Ofune, K., Maruyama, M., Oe, S., Ito, T., Hashiba, T., Yoshimura, K., et al. (2020) ‘ICOSLG-mediated regulatory T-cell expansion and IL-10 production promote progression of glioblastoma’, Neuro-Oncology, 22(3), pp. 333–344.
※学術情報は原著論文および公式プレス資料を基に要約しています。個別の治療選択は担当医とご相談ください。
担当医師紹介
担当医師:岩田亮一
研究歴:悪性脳腫瘍に対する免疫治療の開発
2020年度 日本脳神経外科学会奨励賞受賞の様子
担当医師の想い
大学で悪性脳腫瘍のがん幹細胞を標的とした治療法の開発に取り組んできました。
免疫とは、自然免疫と獲得免疫があります。
自然免疫とは、生まれつき体に備わっている防御機能で、ウィルスや細菌などが体内に入るとすぐに反応し、皮膚や粘膜で侵入を防いだり、白血球が異物を食べて処理したり、炎症を起こして他の免疫細胞を呼び寄せる働きをします。
獲得免疫とは、外的となる抗原(マーク)を樹状細胞が認識し、T細胞やB細胞が標的(がん)を攻撃することです。
がんは遺伝子の変異で発生しますが、遺伝子変異によりがん抗原を持っています。これらを標的とする免疫治療の開発が試みられてきましたが、がんは免疫から逃れる仕組みを複数持っており、有効な免疫治療の開発が難しいです。
自家がんワクチンは、単一の特定のがん抗原を標的とするのではなく、自分自身のがん組織を用いて、ワクチンにより免疫誘導(獲得免疫)を起こします。
手術で最大限の摘出、放射線・化学療法との併用で、がんの再発期間を延長することが期待できます。
制御性T細胞(Treg)についても研究しています。
Iwata, R., Lee, J.-H., Hayashi, M., Dianzani, U., Ofune, K., Maruyama, M., Oe, S., Ito, T., Hashiba, T., Yoshimura, K., et al. (2020) ‘ICOSLG-mediated regulatory T-cell expansion and IL-10 production promote progression of glioblastoma’, Neuro-Oncology, 22(3), pp. 333–344. doi:10.1093/neuonc/noz204. Available at: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7442411/pdf/noz204.pdf .
担当医師の脳腫瘍に関する業績
脳腫瘍に関する論文
●Maruyama, M., Nakano, Y., Nishimura, T., Iwata, R., Matsuda, S., Hayashi, M., Nakai, Y. & Nonaka, M. et al. (2021) PC3-Secreted Microprotein Is Expressed in Glioblastoma Stem-Like Cells and Human Glioma Tissues. Biological & Pharmaceutical Bulletin, 44(7), pp. 910–919.
●Iwata, R., Lee, J.H., Hayashi, M., Dianzani, U., Ofune, K., Maruyama, M., Oe, S., Ito, T., Hashiba, T. & Yoshimura, K. et al. (2020) ICOSLG-mediated regulatory T-cell expansion and IL-10 production promote progression of glioblastoma. Neuro-Oncology, 22(3), pp. 333–344.
●Iwata, R., Lee, J.-H., Hayashi, M., Dianzani, U., Ofune, K., Maruyama, M., Oe, S., Ito, T., Hashiba, T., Yoshimura, K., et al. (2020) ‘ICOSLG-mediated regulatory T-cell expansion and IL-10 production promote progression of glioblastoma’, Neuro-Oncology, 22(3), pp. 333–344.
●Iwata, R., Maruyama, M., Ito, T., Nakano, Y., Kanemura, Y., Koike, T., Oe, S., Yoshimura, K., Nonaka, M. & Nomura, S. et al. (2017) Establishment of a tumor sphere cell line from a metastatic brain neuroendocrine tumor. Medical Molecular Morphology, 50(4), pp. 211–219.
●Iwata, R. & Asai, A. (2016) Treatment of metastatic brain tumor. Nihon Rinsho. Japanese Journal of Clinical Medicine, 74(Suppl 7), pp. 752–756.
●Kim, S-H., Ezhilarasan, R., Phillips, E., Gallego-Perez, D., Sparks, A., Taylor, D., Ladner, K., Furuta, T., Sabit, H., Chhipa, R., Iwata, R. & Nakano, I. et al. (2016) Serine/Threonine Kinase MLK4 Determines Mesenchymal Identity in Glioma Stem Cells in an NF-κB-dependent Manner. Cancer Cell, 29(2), pp. 201–213.
●岩田 亮一, 丸山 正人, 大舟 晃平, 中野 洋輔, 大江 総一, 林 美樹夫, 吉村 晋一, 埜中 正博, 淺井 昭雄 (2018) 転移性脳腫瘍とがん幹細胞の関連. Cytometry Research, 28(1), pp.13–18. doi:10.18947/cytometryresearch.28.1_13.
岩田 亮一, 淺井 昭雄 (2016) 【脳腫瘍学-基礎研究と臨床研究の進歩-】転移性脳腫瘍 転移性脳腫瘍の治療. 日本臨床, 74巻増刊7 脳腫瘍学, pp.752–756.
競争的研究費
●科研費 若手研究(B) 2015-2017
B7 familyを標的にした膠芽腫の癌幹細胞に対する新規治療法の開発
役割:研究代表者
●科研費 基盤研究(C) 2015-2018
グリオーマ癌幹細胞を標的とした樹状細胞療法の開発に関する基礎研究
研究代表者:淺井昭雄、役割:研究分担者
●科研費 基盤研究(C) 2017-2020
グリオーマ癌幹細胞特異的に発現する新規バイオマーカーの機能解析
研究代表者:丸山正人、役割:研究分担者
●科研費 基盤研究(C) 2018-2020
グリオーマ幹細胞を用いたがん組織表現型と遺伝子発現への麻酔薬の影響の検討
研究代表者:岩井鉄平、役割:研究分担者
●科研費 基盤研究(C) 2018-2020
グリオーマがん幹細胞におけるOX40シグナルの機能解析
研究代表者:淺井昭雄 役割:研究分担者
●科研費 若手研究 2019-2020
脳転移開始細胞を用いた脳転移の機序解明
役割:研究代表者
●科研費 基盤研究(C) 2020-2022
内向き整流Kチャネルを基軸としたグリオーマ浸潤メカニズムの解明
研究代表者:吉村晋一、役割:研究分担者
●公益財団法人 赤枝医学研究財団 研究助成金
脳転移開始細胞を標的とした新規がん治療法の開発