「頭痛がつらくて仕事に集中できない」「気分が落ち込んで何もやる気が起きない」

そんな悩みを抱えていませんか?

 

実は、片頭痛と抑うつ症状は密接に関係しており、両方を併発するケースが非常に多いことがわかっています。

 

本記事では、片頭痛とうつ症状がなぜ同時に起こるのか、両方に効果があるとされる新しい治療薬「アジョビ(フレマネズマブ)」について、2025年に発表された最新の臨床試験「UNITE試験」の結果も含めて詳しく解説します。

 

 

 

片頭痛とうつ症状が合併する理由

 

セロトニンの関与

 

片頭痛とうつ病の共通点としてよく挙げられるのが、脳内の神経伝達物質「セロトニン」の異常です。セロトニンは、気分の安定や痛みに関わる物質です。

このセロトニンが不足したり、不安定になると、片頭痛の発作と抑うつ症状の両方が引き起こされやすくなると考えられています。

また片頭痛もうつ病も両疾患でCGRPの値が高いという報告もあります。

A.A. Math6 et al.Neuroscience Letters 182 (1994) 138-142​

 

 

長く続く痛みと心理的ストレスの悪循環

 

 

片頭痛は「頭の痛み」だけでなく、吐き気や光・音への過敏、集中力の低下などを伴います。これが頻繁に起こってしまうと、仕事や家庭生活に支障をきたし、自己肯定感の低下や社会的な孤立感を招きやすくなります。

その結果として、うつ症状が悪化し、さらに片頭痛も悪化するという悪循環に陥ることがあります。

 

 

 

合併の割合:片頭痛患者の約30~40%がうつ病を併発

 

 

いくつかの研究結果をみてみると、以下のようなデータが報告されています:

 

・片頭痛患者さんの28%がうつ病を併発している。

Neurol Sci (2009) 30 (Suppl 1):S61–S65

・片頭痛患者さんの約40%が、うつ病を併発している

・片頭痛患者さんは、持たない人と比べて、うつ病の発症リスクが約3.5が高い

N Breslau.et al.:Neurology.2000; 54(2):308-313

 

・片頭痛患者さんが、2年以内にうつ病を発症するリスクは約5.8倍

・うつ病患者さんが、2年以内に片頭痛を発症するリスクは約3.5倍

N Breslau.et al.:Neurology.2003; 60(8):1308-1312

 

このように、片頭痛とうつ症状は決して無関係ではなく、むしろ併存しやすい疾患であることが明らかになっています。

 

 

 

治療の新たな選択肢「アジョビ(フレマネズマブ)」

 

CGRPを標的とした新しい治療法

 

CGRPの値は片頭痛だけでなく、うつ病患者さんでも高くなることが知られています。

アジョビにはCGRPを抑える作用を持っているので、片頭痛にもうつ症状にも効果を示すことが期待されていました。

 

 

A.A. Math6 et al.Neuroscience Letters 182 (1994) 138-142

 

アジョビの特徴:

  • CGRPを抑えることで効果を発揮する
  • 4週に1回、もしくは12週に1回の注射(自己注射が可能)
  • 従来の治療薬・予防薬が効かなかった患者にも有効
  • 副作用が少なく、継続しやすい

 

そして今、注目されているのが、アジョビが「うつ症状」にも効果を示す可能性です。

 

 

 

UNITE試験:片頭痛とうつ症状の両方に効果を示した最新研究

 

新しく発表されたUNITE試験(Fremanezumab for the Treatment of Patients With Migraine and Comorbid Major Depressive Disorder)は、アジョビの新たな可能性を示した画期的な研究です

JAMA Neurology Published online May 5, 2025

Teva Pharmaceutical Industries Ltd. – Teva Phase IV UNITE Study Shows AJOVY® (fremanezumab) Reduced Migraine Attacks and Depression Symptoms in Migraine Sufferers with Major Depressive Disorder

 

<試験の概要>

  • 対象患者:

中等度以上のうつ病を合併する、慢性片頭痛(CM)もしくは反復性片頭痛(EM)の患者さん

  • 期間:

24週間(最初の12週間はアジョビかプラセボを投与、その後の12週間は全員がアジョビを投与)

  • 投与方法:最初の12週間は毎月1回注射、その後の12週間は3カ月に1回注射

 

  • 頭痛症状への効果

毎日の片頭痛日数が減っている(左側のグラフ)のに加えて、1か月の頭痛日数が半分以上減っている(右側のグラフ)が多いこともわかります。

 

 

  • うつ症状の変化

HAM-D、PHQ‐9という、うつ症状のスコアがアジョビを使ってる患者さんで有意に効果が得られています。

 

 

この結果から、アジョビが片頭痛だけでなく、うつ症状の改善にも寄与する可能性があることを示しています。つまり、片頭痛とうつ症状の両方に悩む患者にとって、アジョビは非常に有望な治療選択肢となり得ます。

 

 

 

片頭痛とうつ症状、両方に向き合う時代へ

 

片頭痛とうつ症状は、互いに影響し合いながら患者の生活を大きく制限してしまう疾患です。しかし、その両方に効果を示すアジョビの可能性が示唆された今、希望の光が見え始めています。

 

アジョビ(フレマネズマブ)は、科学的根拠に基づいた新しい選択肢として、片頭痛とうつ症状の両方に悩む方にとって大きな助けとなる可能性があります。

 

もしあなたや身近な人が「頭痛だけでなく、気分の落ち込みもつらい」と感じているなら、ぜひ専門医に相談してみてください。適切な診断と治療が見つかるかもしれません。

 

 

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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