年齢を重ねるとともに「髪が細くなった」「髪のボリュームが減った」と感じる女性もいるでしょう。AGAは男性特有と思われがちですが、女性にも似たような薄毛の症状がみられることがあります。女性の薄毛の原因は実に多様です。

本記事では、女性のAGA(FAGA)の特徴や男性のAGAとの違い、女性の薄毛の種類について詳しく解説し、日常生活でできる予防策や医療機関で行われる治療法をご紹介します。

 

女性のAGAとは?

 

男性型脱毛症として知られるAGAは、似たメカニズムで起こる症状が女性にもみられる場合があります。女性のAGAはFAGAとも呼ばれます。女性のAGA(FAGA)のメカニズムと特徴や、男性のAGAとの違いについて詳しく見ていきましょう。

 

AGAの基本的なメカニズム

 

 AGA(Androgenetic Alopecia)は、男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)が毛包に影響を与え、ヘアサイクルを短縮させることで進行する脱毛症です。男性ホルモンは骨や筋肉の発達を促進する一方で、特定の毛包では軟毛化現象を引き起こすと言われています。1)

 

女性にも男性のAGAに近いメカニズムが関与する薄毛がみられる場合があります。ただし、女性の場合は更年期や加齢の影響など、さまざまな影響を受けていると考えられており、要因が男性ホルモンの影響だけではない点が特徴です。「一般的に血中DHTの上昇は認められない」(公益社団法人 日本美容医療協会)2)と言われています。

 

女性のAGA(FAGA)は男性型とは異なる薄毛のパターンがみられ、治療法も異なります。

 

女性のAGA(FAGA)の特徴

 

女性のAGA(FAGA)は以下の3つのパターンがあります。2)

 

・ハミルトン型:男性のAGAと似ており、前頭部や生え際がM字型に薄毛になる

 

・オルセン型(クリスマスツリー型):前頭部から頭頂部にかけて全体的に薄毛になる

 

・ルードウィック型:頭頂部を中心に薄毛になる

 

女性型脱毛症(FPHL)と女性の薄毛の種類

 

近年では女性のAGA(FAGA)に変わって用いられるようになった女性型脱毛症(FPHL)と女性の薄毛の種類について説明します。

 

女性型脱毛症(FPHL)

 

男性ホルモンの影響を受ける女性男性型脱毛症として女性のAGA(FAGA)と呼ばれていますが、女性の薄毛の要因は一つだけではありません。女性における頭部全体にみられる薄毛の症状(びまん性脱毛症)は女性型脱毛症(FPHL: Female Pattern Hair Loss)と呼ばれるようになっています。

 

女性型脱毛症(FPHL)の要因としては、男性ホルモンの影響、加齢、更年期の関与、ストレスなどが挙げられます。3)

 

女性の薄毛の原因のより詳しい解説はこちら

 

女性の薄毛の種類

 

女性の薄毛には女性型脱毛症(FPHL)のほかに、次のような薄毛の種類があります。

 

・慢性休止期脱毛(ヘアサイクルにおける毛髪の成長が止まる休止期の割合が増加して起こる)

 

・全身性疾患(膠原病、甲状腺疾患など)に伴う脱毛症

 

・貧血や急激なダイエットによる脱毛症

 

・悪性腫瘍などの消耗性疾患に伴う脱毛症

 

・薬剤やホルモン補充療法の副作用として起こる脱毛症

 

・円形脱毛症

3)4)

 

男性のAGAと女性のAGA(FAGA)の違い

 

男性のAGAと女性のAGA(FAGA)は似ているようですが、原因や薄毛のパターン、治療のアプローチが異なります。男性のAGA、女性のAGA(FAGA)のそれぞれの特徴を表で示します。

 

 

男性のAGA

女性のAGA(FAGA)

主な原因

DHT(ジヒドロテストステロン)の作用

男性ホルモンの影響、加齢、更年期の影響など

薄毛のパターン

M字型、O字型など局所的な脱毛

男性のAGAに似たM字型の脱毛のほか、前頭部や頭頂部など全体的に薄くなるびまん性脱毛

治療法

男性型脱毛症用薬、ジヒドロテストステロン(DHT)の産生を抑える薬など

ジヒドロテストステロン(DHT)の作用を抑える薬、血行を促進する薬など

 

女性のAGA(FAGA)対策

 

女性の薄毛は早期発見・早期治療が重要です。家庭で行える食事や生活習慣の見直し、適切なヘアケア方法などの予防対策から医療機関で受けられる薬物療法まで、幅広い対策法を紹介します。

 

日常生活に取り入れたい予防策

 

日常生活で薄毛予防のために取り入れたい食事、ストレス、ヘアケア、髪の乾かし方の工夫の4つの対策を紹介します。

 

整った栄養バランス

 

髪の毛の成長には鉄分や亜鉛、タンパク質が重要です。鉄分はほうれん草、亜鉛は牡蠣、タンパク質は魚や肉、卵などに多く含まれます。ビタミンEを含むナッツ類も薄毛の要因の一つである酸化ストレスの軽減が期待できます。5)

 

ストレス管理

 

ストレスはホルモンバランスを乱し、抜け毛の原因となります。自律神経のバランスを保つため、生活リズムを整え、適度な運動や質の良い睡眠を心がけましょう。

 

適切なヘアケア

 

頭皮タイプに合ったシャンプーを選び、頭皮マッサージを取り入れることで血行促進効果が期待できます。

 

髪の乾かし方の工夫

 

濡れた髪をそのまま放置すると髪は傷みやすいため、タオルドライ後は必ずドライヤーで乾かしましょう。頭皮から適度に距離を取り、根元から順に乾かすのがポイントです。

 

医療機関で行う治療法

 

医療機関での女性のAGA(FAGA)に対する主な治療は薬物療法です。主に男性ホルモンの毛包への作用を抑える薬や、血行を促し、発毛促進が期待できる薬などが用いられます。低出力のレーザー照射が行われる場合もあります。

 

オンライン診療で始める女性のAGA(FAGA)治療

 

薄毛は見た目だけでなく心理的にも大きな影響を与える可能性がありますが、適切な知識と対策によって改善する可能性があります。初期症状に気づいたら早めにFAGAの診療を行っている医療機関へ相談し、自分に合った治療法を見つけましょう。

 

忙しい現代女性にはオンライン診療もおすすめです。通院時間を節約し、自宅にいながら相談できるので、家事や育児、自分自身の時間を有効活用できます。「病院に行くのは緊張する」「周りの目が気になる」といった方でも、自宅などのリラックスできる環境で受診が可能です。

 

薄毛のお悩みは一人で抱え込まず、FAGAの専門的な知識を持った医師に相談し、前向きに取り組んでいきましょう。

 

 

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この記事を書いた先生のプロフィール

医師・医学博士【脳神経外科専門医・頭痛専門医 ほか】
脳外科医として関西医大で14年間勤務。大学時代は、脳腫瘍や脳卒中の手術治療や研究を精力的に行ってきました。脳卒中予防に重点をおいた内科管理や全身管理を得意としています。
脳の病気は、目が見えにくい、頭が重たい、めまい、物忘れなど些細な症状だと思っていても重篤な病気が潜んでいる可能性があります。
即日MRI診断で手遅れになる前にスムーズな病診連携を行っています。MRIで異常がない頭痛であっても、ただの頭痛ではなく脳の病気であり治療が必要です。メタ認知で治す頭痛治療をモットーに頭痛からの卒業を目指しています。
院長の私自身も頭痛持ちですが、生活環境の整備やCGRP製剤による治療により克服し、毎日頭痛外来で100人以上の頭痛患者さんの診療を行っています。我慢しないでその頭痛一緒に治療しましょう。

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参考文献

1)日本皮膚科学会 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

2)公益社団法人 日本美容医療協会

https://www.jaam.or.jp/medical/news/34

3)植木理恵 女性型脱毛症の診断と治療 美容皮膚医学BEAUTY 第40号(Vol.5 No.3, 2022)44-45

http://www.igaku.co.jp/pdf/2040_beauty-03.pdf

4)日本皮膚科学会 円形脱毛症ガイドライン2024

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/AAGL2024.pdf

5)Lim Ai Beoy et al.Effects of tocotrienol supplementation on hair growth in human volunteers Trop Life Sci Res. 2010;21(2):91-99

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24575202/