ここでは、片頭痛・緊張型頭痛の予防薬 トリプタノール(アミトリプチリン)をご紹介いたします。
三環系抗うつ薬であるトリプタノールの鎮痛効果は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の再取り込みを阻害することで、下行性疼痛抑制系を活性化し、痛みを抑制します。
下行性疼痛抑制系とは
下行性疼痛抑制系は、脳から脊髄に向かって神経信号を送ることで、痛みを抑制するシステムです。このシステムは、痛みの感覚が脳に到達する前に、その強度を調整する役割を果たします。
下行性疼痛抑制系の主なメカニズムは次の通りです:
脳幹(中脳、延髄)から神経が発信されます。
これらの神経は三叉神経脊髄路尾側亜核や脊髄後角に到達し、痛みを抑制する物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)を放出します。
これにより、痛みの信号が脳に送られる前に弱められ、痛みの感じ方が軽減されます。
臨床試験に基づく予防効果
アミトリプチリン(商品名:トリプタノール)は、片頭痛や緊張型頭痛に対して適応外使用が認められています。
副作用として、眠気、ふらつき、倦怠感、口渇、便秘、排尿障害、眼圧上昇、心拍数増加などが報告されており、10mgを就寝前に投与し、必要に応じて増量します。
さらに、アミトリプチリンは、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)や、緊張型頭痛を伴う片頭痛、睡眠障害を伴う片頭痛、うつに関連する頭痛にも効果的です。特に、ベンゾジアゼピン系薬剤を服用している頭痛患者に対しては、睡眠改善を図りつつベンゾジアゼピンの減量・中止に使用されることがあります。
小児の片頭痛には、夜尿症治療と同様に10~30mgを就寝前に投与することが可能です。
使用上の禁忌
アミトリプチリンは、以下の患者には禁忌とされています:
閉塞隅角緑内障
心筋梗塞の回復初期
尿閉(前立腺疾患など)
モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬を投与中の患者
妊婦への投与は、有益性がリスクを上回る場合に限ります。
緊張型頭痛とアミトリプチリン
緊張型頭痛にはエチゾラム(商品名:デパス)がかつて使用されていましたが、依存性や耐性の問題から現在はあまり使用されていません。代わりにアミトリプチリンの投与が行われています。
臨床試験結果(片頭痛)
アミトリプチリンに関する3件のプラセボ対照無作為化比較試験(RCT)が行われています。これらの試験では、50~150mg/日を8週間、50~100mg/日を4週間、30~60mg/日を27週間の投与で、一貫して片頭痛の予防効果が報告されています。また、メタアナリシスでもその有用性が示されています。
アミトリプチリンとプロプラノロールの比較試験も2件行われ、8週間の治療では両者の予防効果はほぼ同等であることが示されました。6ヶ月以上の比較では、緊張型頭痛を伴う片頭痛患者において、アミトリプチリンがより高い有効率を示しています。
アミトリプチリンの抗片頭痛作用が抗うつ効果に起因するか、独立した作用であるかは明確ではありませんが、臨床的には抑うつ状態の有無にかかわらず、慢性頭痛の予防に有効です。
参考文献
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